ホルスト 第1合唱交響曲 ウェットン指揮
有楽町駅前の交通会館のイルミネーション。
安定の美しさ。
クリスマスが終わっても、ウィンターシーズンはずっとやってますので、うれしい。
そして年末、あと2日で、音楽界は第9ばかりで、スーパーに行っても喜びの歌が流れてる。
これだけあふれかえると食傷気味に。
あの合唱の4楽章ばかりでなく、その前の3つの楽章を、じっくりと聴いてほしいものである。
で、わたくしは、ホルストの「合唱交響曲」を。
ホルスト 第1合唱交響曲 op41
ソプラノ:リン・ドーソン
ヒラリー・デイヴォン・ウェットン指揮
ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
ギルドフォード・コラール・ソサエティ
(1993.3 @ヘンリーウッドホール)
「惑星」ばかりがホルストじゃないよ、と英国レーベルにかなりあるホルスト作品を収集してます。
確かに「惑星」の面白さや、作品としての精度の高さはないかもしれないが、どの曲も、ホルストならではの神秘感や東洋風の雰囲気、ゴージャスな響き、それと、英国詩情なども聴き取ることができて楽しいものです。
ホルスト(1874じゃら1934)の作品分野に多いのは、合唱作品。
自国の文学や、インド文学などに傾倒していたこともあり、それらを素材にした作品が多く生み出されたし、朋友のR・V・ウィリアムズの影響もあったりして、洒落たパートソングなどにも、多くの曲を残しています。
交響曲の分野では、若いころの「コッツウォルズ交響曲」が、純粋オーケストラ作品であるほか、あとは、合唱とソプラノソロを伴った「第1合唱交響曲」があるのみ。
「第2合唱交響曲」は、スケッチのみが残され、完成されずじまい。
1923~24年に書かれた1番の方の合唱交響曲は、作曲家と教師としての名声をすでに得ていた充実期の作品ながら、25年のリーズでの初演は、そこそこの成功となったものの、その後の再演が不評で、以降、あまり返り見られることのない作品として埋もれてしまった。
逆に、「惑星」が有名になりすぎてしまったことの反動でもあります。
ちなみに、その「惑星」は、1916年の完成。

曲は長さにして約50分。
プレリュードを含む5つの部分となっていて、そのプレリュード以外の4つの部分が交響曲の体をなしております。
18世紀末のイギリスの詩人、ジョン・キーツの詩をそのテキストに用いてます。
「前奏曲」 Invocation to Pan
重苦しいなかに、合唱が祈りともつぶやきとも取れない抑揚のない歌を。
神秘的な、まるで秘儀に立ち会うかのような感じ。
「バッカナールの歌」 Song of Bacchanal
ヴィオラソロとソプラノによる、まるでV・ウィリアムズのような
晩秋の様相たたえた美しい出だし。
その後は、ソロと合唱が交互に、ことに合唱はにぎにぎしくなり、
バッカスをたたえる。
「ギリシアの壺に寄す」 Ode to Grecian Um
キーツの代表作に付けた第2楽章=緩徐楽章的な存在。
木管が印象的な合いの手をうちつつ、合唱が語りかけるように歌い進める。
ギリシアの壺に書かれた絵をみて、あれこれ思いをめぐらすキーツの原詩。
ときに、慰めに満ちた葬送風なところもあり、最後の最後の1節にソプラノが
美しく登場。
「スケルツォ」 Fancy Chorus
ここでのオーケストラは、まさに「惑星」の「天王星」のよう。
早口の女声コーラスにハープがからんで面白い。
ベルや木琴、チェレスタも登場し、楽しいスケルツォ。
繰り返すが、惑星っぽい。
「フィナーレ」 Finale
19分あまりの一番大きい楽章。
ソプラノがアカペラで歌いだす。
「魂よ」という詩で、そのあと合唱も加わって荘重な雰囲気に。
そしてまた、ソプラノに明け渡され、弦とハープを背景に美しい。
さらに合唱も、ソットボーチェで歌い始めると、背景は金管が重々しい。
ここは、「土星」っぽい。
やがて、もりあがり、トランペットがぴきーーんと鳴り響き眩しい。
さらに、再び静まり、ハープとソロヴァイオリンを伴ったソプラノ。
ここは実に美しい。
パターン的に、こうして超美的なシーンを経て、そのあと、合唱が爆発。
という具合に、喜びと感謝、実りの果実を戴く賛歌となる。
各声部がフーガのように橋渡しをしてゆくのも楽しい。
しかし、最後の最後は、音楽は弱まって、この章の冒頭の「魂よ」に戻って
ソロの歌を合唱が引き継いで、静かに、静かに終わっていきます。
こんな流れの合唱交響曲。
正直、テキストは難解です。
物語性もなく、対訳もなく、英詩を眺めていてもさっぱりわかりません。
この作品によく言われるのは、キーツの詩が散りばめられているだけで、詩と音楽の流れと融合性がないとのこと。
まさにそのように思いますが、わたくしは、シンプルに、ホルストの筆致をそこそこに感じ、聴きとることで、この作品の良さを味わうことができました。
ことに、抒情的な部分は、きわめて美しく、優しい味わいがありました。
この作品の初録音が、今回のハイペリオン盤。
なじみのない指揮者ですが、合唱を主体として、うまくまとめていると思います。
その合唱はなかなか巧いが、おなじみのドーソンが、最初の方、ちょっとフラットぎみで不安定。でも静かな部分はとても素敵。
最近、A・デイヴィスがシャンドスに、ヒコックスの後を引き継いでホルスト作品を継続的に録音しtれおり、この作品も出ている様子。
そちらも是非聴きたいものです。

年末ぎりぎりまで、いろんなことが起きた2018年。
平成30年、最後の投稿は、あともうひとつ。
「惑星」以外のホルスト作品 過去記事
「雲の使者」 ヒコックス指揮
「エグドン・ヒース」 プレヴィン指揮
「パートソング集」 ホルスト・シンガーズ
「コッツウォルズ交響曲」 ボストック指揮
歌劇「サーヴィトリ」 ヒコックス指揮
歌劇「パーフェクト・フール」からバレエ音楽 ゲッツェル指揮
| 固定リンク
コメント