モーツァルト レクイエム ハンニガン指揮
先週の吾妻山。
まだまだ、桜のつぼみは固くて、数輪がほころんでいただけ。
今頃は、きっと5分咲きぐらいかな。
ネットでミュンヘンフィルの演奏会を鑑賞したので、そちらを記事にしてみます。
指揮は、最近、レパートリーを広げつつある、指揮もするソプラノ、バーバラ・ハンニガン。
シェーンベルク 「地上の平和」
ベルク ヴァイオリン協奏曲
~ある少女の思い出に~
Vn:クリスティアン・テツラフ
モーツァルト レクイエム
S:エリザベス・カラーニ Ms:トゥーリ・デデ
T:トーマス・エルヴィン Br:エリック・ロセニウス
バーバラ・ハンニガン指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
ミュンヘン・フィルハーモニー合唱団
(2019.3.9 ガスタイク、ミュンヘン)
近現代ものを歌う、特異なソプラノ、いや、それも超ド級のテクニックと涼やかで、超クールな美声の持ち主、というイメージのハンニガン。
「ルル」と「グラン・マカーブル」の印象もものすごく強くて、その迫真の演技もすさまじいし、その身体能力もまったく驚きの彼女。
歌いながら指揮もし、指揮ながら歌う。
そんな指揮者としての彼女の、指揮者としての歌わない演奏会。
プログラミングが素敵すぎる。
シェーンベルクの合唱曲に、得意とするベルクの作品、そして自らは歌わないモーツァルトの彼岸のレクイエム。
レクイエムまたは、永遠といったテーマが貫かれてます。
透明感にあふれたシェーンベルクに、怜悧ななかにも、雄弁さを感じさせるテツラフのソロが素晴らしいベルク。
ベルクにおいては、オーケストラはさほどに個性的ではないけれど、終楽章の美しさと和声の響かせ方はなかなかのもの。
指揮棒を持たずに、しなやかに指揮をするハンニガン。
動画でも多く見れますが、その指揮姿はかなりまっとうで、拍子を取りつつ、片手はしっかり音楽表現を振り分けていて、指揮者としてのその才覚は、大いに納得できるものです。
演奏時間45分ぐらいで、快速モツレクといっていい。
しかし、単なる無味乾燥なテンポの速さだけではなく、ヴィブラートを極力排した見通しの良さから浮かびあがってくる、磨きあげられた音ひとつひとつの光とその影の陰影の強さ。
かなりの集中力と緊張感の表出、音楽への踏み込みと強さとその意思を感じました。
そして、際立つリズムのよさと、明解さ。
アクセントも効きすぎるくらいに効いて、聴きなれたモツレクが極めて新鮮に聴こえました。
そして、面白いのは、後半のジェスマイヤーの手による部分。
ここでは、思い切りメリハリをつけて、繰り返しのマンネリ化を感じさせないように、一気呵成な感じ。
でもかえって、後半の霊感のなさが浮き彫りにされてしまうことも・・
しかし、素敵な指揮ぶりだな、バーバラさん。
彼女は、今度は、ストラヴィンスキーの「レイクス・プログレス」の集中して取り組んでます。
音楽の選択肢が、これまでの女性指揮者にはなかったものだ。
---------------------
女性指揮者の活躍が目立ってきた。
ポストを持って、世界を駆け巡る女性指揮者は、これまで数えるほどしかいなかったが、ここ数年は個性的な指揮者も続々登場し、活躍の場も広がっている。
ベテランのお馴染みの女性指揮者と、ハンニガンをのぞく、活躍中の彼女たちを集めてみました。
①イヴ・クウェラー(米)シュトラウスの「グンドラム」をはじめ、オペラ指揮者として成功
②マリン・オールソップ(米) 南北アメリカにポストを持ち、ロンドンでも大活躍、CD多し、取り上げる作品も有名どころから渋いところまで網羅。
③シモーネ・ヤング(豪) 母国とドイツでオペラ指揮者 リング、ブルックナー全曲を初録音した女性 ハンブルクオペラの音楽監督は画期的。
④スサンナ・マルッキ(フィンランド)オペラにたけ、ヘルンシンキフィルの首席指揮者に
⑤アロンドラ・デ・ラ・パーラ(メキシコ) 母国やアメリカから飛び出し、豪のクィーンズランド響の音楽監督へ
⑥エマニュエル・アイム(仏) クリスティ門下 バロック、古楽の指揮者
⑦アヌ・タリ(フィンランド)パヌラ門下 妹とともに自身でオケを創設
⑧ミルガ・グラジニーテ=ティーラ(リトアニア) ネルソンスのあとのバーミンガム市響の指揮者 DGの専属に 彼女は海外配信で一番多く聴いてる。プログラミングも知的だし、音楽の鮮度は抜群。
⑨カリーナ・カネラキス(米) オランダ放送フィル首席に ここ数年Promsで聴いてきたが、オーソドックななかに光るものが
⑩ソフィ・イェアンニン(スゥエーデン) メゾソプラノで、BBCシンガーズの指揮者 バロックから近現代まで、彼女の今後に注目したい
⑪Xian Zhang シャン・ジャン(中国)ミラノのヴェルディ響、NYPOの副指揮者を経てニュージャージー響の音楽監督
⑫Elim Chan エリム・チャン(香港) ハイティンクに師事 スコテッシュ管の首席客演、今年からアントワープ響の音楽監督
⑬ベアトリーチェ・ヴェネッツィ(伊) ヴェルディ音楽院卒 プッチーニ音楽祭首席客演指揮者 オペラに強し プッチーニCD登場予定
⑭オクサーナ・リニフ(ウクライナ) オペラの叩き上げ、グラーツ歌劇場の音楽監督に
⑮ヨアナ・マルヴィッツ(独)ピアニスト 指揮はハノーファーから出発して、いまやニュルンベルク歌劇場の音楽監督に
日本
松尾葉子、三ツ橋教子、西村智実、田中裕子、斎藤友香理、藤本亜希子
以外と知らない、そして聴いたことが少ない日本人女性指揮者たち。
国内で長く活躍する人に加え、海外で活躍中の指揮者たちも増えてきた。
世界の彼女たちも含め、日本のオケもポストを設けて欲しいとも思います。
そして、われわれ聴き手も変わらなくては。
相模湾と富士、かすかに残った菜の花、で、いまは満開の桜。です。
| 固定リンク
コメント
またお邪魔いたします。確か故・岩城宏之氏が「女性指揮者が少ないのは、四拍子の二拍目振る際に胸が邪魔になるから」という、ジョーク混じりでも今日では確実にアウトの珍説を披露しておられました。まあ時は確実に動いているのでしょうね。
ハンニガンは先年NHKBSにてメリザンドの精緻な歌唱に接しましたが、指揮でも「ルル」組曲を観ました。あと歌手兼業ではナタリー・シュトゥッツマンが水戸室内管で「イタリア」を振ったのも。歌手としては確か'95年の初来日以来、何度も生で接したのですが。指揮でも長身ゆえ舞台映えしますが、映像で一曲だけでは何とも。
まあほとんどの歌手が全盛期を過ぎると後進の指導か家庭に入る道を選択する中、指揮者という選択肢もあるということですね。勿論、それだけの音楽的裏付けが求められるのでしょうが。
女性指揮者全体では、確かに大きなうねりとなっている感が。若き日の小澤征爾氏が海外で「お前は良い指揮者か悪い指揮者か?」と問われ「自分は良い指揮者になるだろう!」と応じたエピソードがありますが、性別など無関係に皆さんそのような気概をお持ちなのでしょう。ただ、例によってわが国のオケ現場はいささか後れを取っている感も…。
投稿: Edipo Re | 2019年4月15日 (月) 17時15分
Edipo Re さん、こんにちは、コメントありがとうございます。
岩城さんは、ユーモアもいっぱいで、レコードで買った第9にそのリハーサル風景が入っていて、そこでも今ならアウトのコメントがありました(笑)
そう、シュトゥッツマンも今回の特集に名をあげるべきで、失念してました。
男性歌手たちでは、FDやシュライヤーの例もありますが、彼らは意外と大人しい指揮ぶりでした。
でも女性歌手たちの指揮は、表現意欲にあふれ、聴かせてくれますね!
海外のオケが積極的に女性指揮者を登用していて、メジャーなオケにも、副指揮者として日本人女性指揮者の名前も見出すことがあったりします。
彼女たちが大成して、日本に凱旋できるようになると、われわれの音楽の聴き方の楽しみの幅がまた広がると思いますね。
投稿: yokochan | 2019年4月16日 (火) 08時32分