バックス 交響曲「春の炎」 マーク・エルダー指揮
春は、初夏の日差しを伴って、一挙に訪れる。
自然の織りなす色彩は、目にも鮮やかでなかには、人の手で変化し生まれた色合いもあるかもしれないが、「色」を作り出した神の差配に感謝です。
バックス 交響曲「春の炎」~Spring Fire~
サー・マーク・エルダー指揮 ハレ管弦楽団
(2010.3.18 @ブリッジウォーターホール、マンチェスター)
アーノルド・バックス(1883~1953)は、英国音楽好きのわたくしにとって大切な作曲家のひとり。
オペラ以外のジャンルの残された数々の作品、シャンドスレーベルのおかげで、そのほとんどを集めることができました。
生粋のロンドンっ子でありながら、ケルト文化を愛し、イギリス各地を旅して、自らの音楽の作風に反映させていった。
イギリスの作曲家ならではの抒情性と、神秘感あふれるミステリアスな雰囲気、そしてダイナミックな響き、自然の厳しさ、寂しさなども満載のその音楽。
前にも書きましたが、シャープでスモーキーなアイラ・モルトウイスキーを愛でるに等しい、そんなバックスの音楽です。
「春の炎」は、もう11年も前に、このブログで記事にしてますが、そのときの演奏は、ヴァーノン・ハンドリーとロイヤルフィルの演奏のもの。
今回は、英国音楽から、イタリアオペラやワーグナーまで、広範なレパートリーを持つエルダーの指揮によるもので。
7曲ある純粋交響曲の前、1913年のバックスの初期作品のひとつ。
5つの表題のついた楽章からなる、「森」を主人公にした交響詩のようなもの。
1.「夜明け前の森にて」
2.「夜明けと日の出」
3.「一日」
4.「森の国の愛」(ロマンス)
5.「メナド(maenads)」
1.夜明け前、雨が降り注ぐ森。雨の雫を感じさせるような美しく、夢見るような雰囲気。
2.印象派風の曖昧な幻想的な雰囲気から、徐々に音たちが立ち上がってくる日の出の生き生きとした様相。
3.ついにお日様も全開!春、爆発的に来りて、森は陽気な雰囲気に満たされて、あらゆる妖精たちが活動開始。
4.春の森は、愛の森でもある。まさにロマンス、ソロ・ヴァイオリンの甘い音色と、ソフトフォーカスなオーケストラの背景が美しい。
5.ギリシャ神話のディオニュソスを称える女性の取り巻きメナド。神話の中では、狂喜乱舞するという女性たちだが、超自然的な存在の象徴ともとられ、ここではダイナミックなオーケストレーションが駆使され、まるでR・シュトラウス的な眩さがあり、森は眩しくも賑やかな雰囲気につつまれる。
全曲33分、連続して演奏されます。
日本の、緩やかで、ほのぼのとした春とは大違いに、バックスの描いた春は、かくもミステリアスでかつ、ダイナミックなものでありました。
ハレ管のライブ録音である当盤。
ロンドンのオケともちょっと違う、少しばかりローカルな印象も、ケント・ナガノ以来、バリっとした現代的なオーケストラに変貌した。
でも、こうした英国音楽をハレ管で聴くと、いわゆる本場ものという思いを強くする。
音楽への共感の度合いが、指揮者とともに、やはり違うのであろう。
美しくも明るい演奏で、録音の生々しさも手伝って「春」の爆発力を感じます。
このCDには、あと、ディーリアスの「春への牧歌」「北国のスケッチ」から「春の行進」。
そして、ブリッジの「春の訪れ」が収められてます。
いずれも素敵な曲であり、すてきな演奏です。
青空も花々も、タワーもまぶしい~
4月最後の、そしてどうやら平成最後のブログ記事となりそうです。
過去記事
「ハンドリー指揮 ロイヤルフィル」
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コメント
このアルバム、素敵ですね〜
3月中ばくらいから桜が散るまで、ほぼ毎日聴いてました。
投稿: ももも | 2019年4月29日 (月) 13時25分
もももさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
毎日聞かれた由、ほんと、春を迎えるに相応しいステキな1枚でした。
このコンビは、英国の風景という1枚も出してまして、そちらも素晴らしい選曲となってます。
投稿: yokochan | 2019年4月30日 (火) 08時44分