ワーグナー 「ワルキューレ」 カラヤン指揮メット
六本木けやき坂。
毎冬の風物詩のイルミネーションは、青と白、SNOW&BLUE。
何年か前は、シルバーとレッドが時間で切り替わるものだったけど、わたしはこの色合いが落ち着いていて好き。
歩いて往復80分くらいの散歩コースなのですが、年々キツくなってきた。
寒いのもあるが、歳とともに落ちる体力を実感してる。
今年は帰りは、途中で電車に乗ってしまった。
来年は、まとめて歩かずに、毎日少しづつでも歩くことを重ねていきたいと思ってる。
で、今年最後はワーグナー。
ちょっとおっかないジャケットだけど、ニルソンBOXから。
ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」
ウォータン:テオ・アダム
ジークムント:ジョン・ヴィッカース
ジークリンデ:レジーヌ・クレスパン
ブリュンヒルデ:ビルギット・ニルソン
フンディンク:マルッティ・タルヴェラ
フリッカ:ジョセフィーヌ・ヴィージー
ワルキューレ:ジュディス・デ・ポール、キャルロッタ・オーデッセイ
グェンドリン・キレブルー、ルイーゼ・パール
マルシア・バルドウィン、フィリス・ブリル
ジョアン・グリロ、シャーリー・ラブ
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 メトロポリタン・オペラハウス管弦楽団
(1969.3.1 メトロポリタン・オペラハウス)
ベームとカラヤンのリングのキャストを混ぜたような歌手たち。
レコードでは、ヤノヴィッツがジークリンデで、クレスパンはブリュンヒルデ。
よりリリックな組み合わせで、「カラヤンのリング」を特徴づけるワルキューレだった。
ベルリンフィルをピットに入れることで、カラヤンのオペラの美学の完成を求めたザルツブルク・イースター音楽祭。
4年をかけた「リング」のスタートが「ワルキューレ」で、ザルツブルクの本番は、1967年。
そして、同じキャストで、ザルツブルクの上演に合わせて発売できるように1966年にベルリンのイエスキリスト教会でレコーディング。
こんな仕組みが、このあと何年も続くことになり、完成度の高い「カラヤンとベルリンフィルのオペラ」がいくつも録音されることになった。
同時に、カラヤンはアメリカの市場も、同じ仕組みでねらって、レコードが発売されるタイミングで、メトロポリタン・オペラに客演して「ラインの黄金」と「ワルキューレ」を指揮していた。
さすがカラヤンなれど、「ジークフリート」と「黄昏」だけは指揮しておらず、そのかわり、自身のザルツブルクの演出は引き継がれ、ラインスドルフやエールリンクの指揮で上演されている。
メットのデータベースを調べたら、カラヤンのメットでの指揮は全部で15回で、「ラインの黄金」と「ワルキューレ」のみ。
1967年11月、12月 「ワルキューレ」 5回
1968年10月、11月 「ラインの黄金」 3回 「ワルキューレ」 3回
1969年2月、3月 「ラインの黄金」 2回 「ワルキューレ」 2回
これらのうちの、1969年3月の「ワルキューレ」が今回の貴重な録音で、ここでの指揮がカラヤンのメトロポリタン・オペラでの最後の指揮であります。
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カラヤンのライブはやはりスゴイ。
燃える指揮なのだ。
試みに演奏タイムを比較。
1幕 2幕 3幕
1966年スタジオ録音 67分 97分 72分
1969年メットライブ 61分 86分 63分
各幕に、熱狂的な拍手が入ってるので、ライブはもう少し短い。
スタジオでは、よりをかけて入念に指揮しているし、編集もあって細部にこだわり完璧にしあがっているからであろう、その分テンポも伸びているし、緩急はそんなにつけてない。
しかし、メットライブは局所局面で、舞台上のドラマにのめり込むような箇所が多くあり、1幕の終わりの方などは官能と激情のほとばしりとともに、急速なアクセルふかしとなっていて興奮の極致だ。
2幕も同じく、ジークムントの死の告知あたりから、ただならぬ興奮が漂いはじめ緊迫の演奏となっている。
感動的な父娘の対話も、熱っぽい。
カラヤンに煽られてるのか、カラヤンを煽ってるのか、ニルソンとアダムの歌のすごさも、ここでは目をみはるばかりで、ベーム盤を思い起こすような感じだ。
ウォータンの告別の感動の高まりも冷静なカラヤンとは思えないほどの熱さで、快速調だが、実に情のこもったものだ。
アメリカのオーケストラらしく、奏者自らも感動しちゃって興奮しちゃってる感じも伝わってくる。
スタジオ録音での完璧さと、きれいごとに包まれてない、カラヤンのライブは、本来の劇場の人であるカラヤンのほんとうの姿かもしれない。
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ニルソンはやはりニルソン。
幾多のブリュンヒルデやイゾルデをほかにもたくさん聴いてきたけれど、ニルソンは安心して聴いていれるし、自分には、スタートがニルソンだったし、ブリュンヒルデとイゾルデはニルソンでないとダメなのだ。
冷凛たる声と高貴さ。強靭さとしなやかさ、いずれもニルソンの声にはあると思う。
本来のジークリンデの声であったクレスパン。
メットでも実はニルソンとあわせてブリュンヒルデを歌っていたようで、ヤノヴィッツもジークリンデを歌った日があるようだ。
だがここでのクレスパンは、ショルティの録音のものより、少し不安定な感じを受けた。
ヴィッカースは相変わらずで、いつものヴィッカースで威勢はよいが、キングのような不幸を背負ったような悲しみの切迫感が弱めです。
テオ・アダムは完璧!
文句なしのウォータンで、ステュワートの回でなく、アダムの録音が残されたのは幸いだった。
あと、J・ヴィージーもここでも最高のフリッカです。
ワルキューレたちは、完全なアメリカ娘で、激しくておおげさで笑えちゃうのも時代を感じさせるところ。
年代を考えるとモノラルなところが残念ですが、音質は良好で、このドラマチックなワルキューレを大いに楽しめるものであります。
ニルソンBOX、まだまだ面白い録音がたくさんありますので、またとりあげましょう。
令和を迎えた日本。
内外ともに、安穏としていられない情勢は年々高まりつつあると思います。
そして、自分や家族・親族になにかと変化がありました。
そんななかでも、やはり音楽を聴くという行為は相変わらずでして、それをブログというツールに記録していくということも週1ぐらいのペースで継続できました。
暮れは、好きな演奏家の訃報もあって記事は頻出させましたが、またゆったりとやっていきたいと思ってます。
多くのコメントもいただきましてありがとうございました。
来年はベートーヴェンイヤーとなりますな。
何を聴こうかな・・・・
よいお年をお迎えください。
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