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2019年12月12日 (木)

ヤンソンスを偲んで ④ピッツバーグ

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ヤンソンス、追悼シリーズは、アメリカへ。

ヤンソンスは、アメリカの楽壇にもしばしば客演してましたが、1997年に、マゼールの後任として、ピッツバーグ交響楽団の音楽監督に就任しました。
2004年までその任にありましたが、残された正規のレコーディンは1枚のみ。
これが、いまとなっては痛恨の極みであります。

アメリカのオーケストラは、専属にするのにも、録音契約を結ぶのにもお金がかかります。
EMIは、この当時、サヴァリッシュとフィラデルフィアの録音はよく行ってまして、さらにそこにアメリカで2枚看板を掲げる余裕もなかったのでしょうか。
また、その当時、メジャーレーベルの勢いにも陰りが出てきた時期なので、その後の新興レーベルやオーケストラの自主制作が主体となるまでの、ちょうど端境期にあったことも要因かもしれません。

マゼール時代は、レコーディンに恵まれていたピッツバーグ交響楽団の録音がヤンソンス時代、極端に少なくなったのは残念でなりません。
ただ、ピッツバーグ交響楽団は、財政的にも豊かだったし、地元放送局が高品質のレコーディングアーカイブを持っているので、いつかその音源が正規に出てくるような気もします。
 年々か前に、自主制作的に、ヤンソンス&ピッツバーグの数枚組のCDが出てましたが、とても高額なものでした。

これ→Pittsburgh-3

ベートーヴェンやチャイコフスキー、ヴェルレクやマーラー10番(アダージョ)なんかが入ってる垂涎の一組です。

Shostakovich-sym8-jansons-1

  ショスタコーヴィチ 交響曲第8番

 マリス・ヤンソンス指揮 ピッツバーグ交響楽団

         (2001.2.9~11 @ピッツバーグ、ハインツホール)

ショスタコーヴィチ全集の1枚で、8番のみのピッツバーグの担当で、ライブ録音です。

あらためて、何度か聴き直しましたが、ライブとはいえ、オーケストラの抜群の巧さと、機動性の高さを感じます。
またヤンソンスならではの、気迫の込め方とノリの良さが、スケルツォ的な2楽章や、行進曲調の3楽章では見事な迫力を伴って興奮を呼び起こします。
だが、音色が少しばかり明るすぎることも確かで、アメリカのオーケストラならではの解放感が、曲の持つ深刻さと無慈悲さをちょっと後退させてしまった感もあります。
それが、この8番という交響曲の難しさであり、二律背反的な面白さでもあるように思います。
思い切りスコアのみを信じ、きわめてシンフォニックな演奏に徹したハイティンクの演奏が自分的には一番と思ってますし、ムラヴィンスキーの厳しい透徹感と寒々しさもスゴイと思うし、聴きやすさで一番のプレヴィンもいいと思う。
 そんななかでのヤンソンスの8番は、バイエルンあたりで再録が欲しかったかも・・・

こんな風に思うほどに、ヤンソンスとピッツバーグの演奏は、もっといろいろ聴いてみたかった、という結論になります。

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父アルヴィド・ヤンソンスも1984年に心臓発作で指揮中に死亡。

オスロで、心臓発作に襲われたマリス・ヤンソンスは、ピッツバーグに着任してから、当地の病院で埋め込み型の細動器を装着する手術を行いました。
しかし、ピッツバーグで指揮中、その機械が動かなくなることがあり、まるで撃たれたかのように見えたそうです・・・
それでも手摺をつかみながら指揮を終えたヤンソンスだったとのこと、訃報のニュース記事に楽員が話として出てました。
 任期中に、9.11もありました。
そのときは、コープランドの「市民のためのファンファーレ」を演奏したそうです。
 そして、初のアメリカでの仕事、優れたコミュニティに感嘆し、自らも地元のバスケットチームの熱烈な応援団になり、遠く日本に来演していたときも、そのチームの勝ち負けが気になってアメリカに電話したりしていたそうです。
この8番のCDの最後のトラックに、リハーサル風景が収録されてますが、ユーモアたっぷりで、楽員たちからの笑い声もしばしば起きてます。
また新聞記事ですが、楽員たちは、ヤンソンスが指揮台からよくジョークを飛ばす。
そして、なによりも、ともかく「いい人」だったと・・・・・

なんだか泣けてきますね。

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ピッツバーグ響は、今年の始め頃まで、FM放送の過去のアーカイブをかなりの量でネット公開してましたが、夏ごろよりなくなってしまいました。
そこで、まだあるころに見つけて録音したのが、バレンボイムとのブラームスのピアノ協奏曲の1番と2番。

Barenboim-jansons

   ブラームス ピアノ協奏曲第1番・第2番

      Pf:ダニエル・バレンボイム

  マリス・ヤンソンス指揮 ピッツバーグ交響楽団

            (2016 @ハインツホール)

バレンボイムとはほぼ同年齢の間がら。
しかしながら、そのバレンボイムのピアノは痛々しいほどの出来栄えで、ミスタッチの連続。
風格と造りの大きさだけが、そのピアノから伝わってくるというあんばいです。
それでも、両曲ともに、演奏の終了時には、ものすごい歓声が沸きます。
このピアノにつけるオーケストラも冷や冷やものだったかもしれませんが、リズムやテンポには弛緩がなく、そこはさすがのバレンボイムの年輪による芸風だと思います。
 ヤンソンスの指揮するオーケストラは、しっかりとブラームスしていて、ドイツ的な音色を持つピッツバーグならではの響きを感じます。
バレンボイムの名誉のため、この両曲の緩徐楽章の味わいの深さは、並大抵のものでなく、オーケストラもしっとりとヨーロピアンな雰囲気でもってつけてます。。
バイエルンでもこのコンビでやっていると思いますが、貴重なピッツバーグ録音を手元に残すことができました。

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12月2日、いまの音楽監督、マンフレート・ホーネックは定期演奏家に先立ち、ヤンソンスの功績を称え、追悼の言葉を述べました。

Jansons1

ウィーンフィルでも、奏者として、ヤンソンスの指揮のもとで演奏していたかもしれません。
いま、絶好調のホーネックとピッツバーグの追悼演奏は、シューベルトの「万霊節のための連禱」のオーケストラ編曲バージョン。

Jansons2

「お休み平安の中で すべての魂よ」と歌われる、美しくも深い歌曲です・・・・

ピッツバーグを卒業すると、ヤンソンスはヨーロッパへ帰り、いよいよ名門オーケストラふたつとの仕事に取り掛かります。

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コメント

録音が少ないのが残念なコンビでしたが、一度、来日公演で横浜みなとみらいホールへ出かけました。五嶋みどりさんがブルッフのバイオリン協奏曲を弾き、メインは、ブラームスの1番だったような記憶があります。2002年の来日公演でした。音はアメリカのオーケストラらしく機能的でしたが、十分潤いがありました。ブルッフのみどりさんに付けるヤンソンス指揮が絶妙だったのをよく覚えています。まだまだこの指揮者は伸びるなと思った公演でした。なお、みどりさんとヤンソンスのブルッフはベルリンフイルとのCDが残されています。聞き直したいと思います。

投稿: beaver | 2019年12月17日 (火) 18時00分

beaverさん、ピッツバーグとの来日を聴かれたとのこと、うらやましいです。
演目は、いつものヤンソンス通りですね。
このコンビで、ガーシュインとかコープランドを残してほしかったです。
ヤンソンスは協奏曲などの合わせものもうまかったですね。
ベルリンフィルとみどりさんの共演盤があるのは知らなかったです。ヤンソンスのブルッフは私もライブで聴きましたので探してみます。

投稿: yokochan | 2019年12月19日 (木) 08時46分

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