ベートーヴェン 三重協奏曲 ワルベルク指揮
河津桜と菜の花。
神奈川県松田町の松田山から。
ほぼ日本人だけの桜の季節。
9年前の震災のときも、そして嫌な禍が降りかかってきても、等しく桜の季節はやってくる。
ベートーヴェン ピアノ,ヴァイオリン,チェロのための協奏曲 ハ長調 op56
~三重協奏曲~
ピアノ :クロード・エルファー
ヴァイオリン:イゴール・オジム
チェロ :アウローラ・ナトゥーラ
ハインツ・ワルベルク指揮 ウィーン国立交響楽団
(1960年代 @ウィーン)
なんだか地味な存在のベートーヴェンのトリプル協奏曲。
ピアノ・トリオをソリストにした協奏曲は、演奏会でもあまり取り上げられません。
また昔話ですが、ベートーヴェンの生誕200年に発売された、ソ連の巨人3人(リヒテル、オイストラフ、ロストロポーヴィチ)と西側のカラヤン&ベルリンフィルのレコードで、この曲の存在を知ることとなりましたが、当時はそのレコードを買うこともなく、CD時代になってからの入手でした。
その記事はこちら→
そして、当時、加入していた会員制レコード頒布組織「コンサートホール・ソサエティ」からも、このトリプル協奏曲は発売されました。
それがこのワルベルク盤で、CD時代に再加入してから購入したもので、かれこれ20年前。
ジャケット画像は、その時の会報誌からスキャンしたもの。
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作品番号56で、そのまえ55が「英雄」、次の57が「熱情」、58が第4ピアノ協奏曲。
こんな充実期にあった中期作品。
なのに、ちょい地味。
バロックのコンチェルト・グロッソを意識した形式ながら、その形式を取り入れることに苦心の跡があり、かえってバランスを崩してしまったのかもしれません。
ピアノは平易なのに、ヴァイオリンとチェロはなかなかの技巧を要するように書かれている。
音色的にもピアノが突出してしまうことを考えたのでしょうか。
でも、ハ長が基本の明るくて屈託のない作品で、英雄と熱情に挟まれた健康優良児みたいな憎めない可愛い存在に感じるのだ。
長いオーケストラ前奏のあと、独奏はチェロから始まって、次はヴァイオリンで、ふたつの弦での二重奏となり、やがてそこにピアノがするするっと入ってくる。
この開始の仕方がとても好き。
そしてベートーヴェンに特有の抒情的な、まるでピアノトリオのような2楽章。
休みなく入る3楽章は、おおらかすぎかな。
後期の様式の時代にも、もう一度チャレンジしていたら、トリプル協奏曲第2番はどんな曲になっていたでしょうか?
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懐かしの指揮者、ハインツ・ワルベルクの指揮するウィーンのオーケストラは得体のしれない名前になってますが、これはウィーン・トーンキュストラ管弦楽団のことです。
レーベルの関係で名乗れなかった。
ワルベルクはこのコンビで、コンサートホールに、いろいろ録音していて、ワーグナーやブルックナーもあって、なかなかの演奏ですが、録音がモコモコしてるのが難点です。
こちらのベートーヴェンも、録音がいまひとつですが、曲を味わうには十分です。
オケの音色にも、良き時代のウィーンの響きを感じますし、懐かしさすら感じます。
カラヤンとベルリンフィルの音とは別次元にあるこのオーケストラの音。
世界中の現代の高度なオーケストラが個性を失っていくなか、そのローカルな響きはまさにノスタルジーの世界です。
N響に何度も来てたワルベルクさん、無難さとともに、器用なところもあって、そのレパートリーは広大でした。
そしてなによりもオペラ指揮者で、合わせものは抜群にうまかった。
3人のソロの名前も渋いところが揃いましたが、いずれの奏者もコンサートホールレーベルで活躍してました。
それぞれの名前を検索すると、なかなかの奏者であったこともわかります。
ピアノのエルファーは、フランス人で、カサドシュのお弟子で、現代ものを得意にした才人。
ヴァイオリンのオジムは、旧ユーゴ・スロヴェニア出身で、音源も多く出てまして、わたくしの初「四季」は、オジムさんでした。
そののびやかで明るい音色のヴァイオリンは、いまでも耳に残ってます。
あと、チェロのナトーラは、アルゼンチン生まれの女流で、カザルス門下で、作曲家のヒナステラの奥さん。
各国さまざまな出自のソリストですが、音色の基調は明るく、ワルベルクの穏健なウィーンサウンドとよく溶け合ってます。
久しぶりに、懐かしい、そして楽しい聴きものでした。
オマケ画像。
DGがカラヤンを貸し出したEMI音源が、日本ではソ連音源のレーベル、新世界レーベルから出た歴史感じるチラシ。
人類遺産とされました!
早く、堂々と桜の下でお花見ができますように・・・
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