ヴェルディ ラ・トラヴィアータ スコット
ベタですが、椿。
こちらも冬の吾妻山ではたくさん咲いてます。
なんたって、町の木が椿なのですからして。
ヴェルディ ラ・トラヴィアータ
ヴィオレッタ:レナータ・スコット
アルフレード:ジャンニ・ライモンディ
ジェルモン :エットーレ・バスティアニーニ
フローラ :ジュリアーナ・タヴァラッチーニ
アンニーナ :アルマンダ・ボナート
ガストン :フランコ・リチャルディ
ドビニー侯爵:ヴィルジリオ・カルボナーリ
医師グランヴィル:シルヴィオ・マイオニカ
ジュゼッペ :アンジェロ・メルクアーリ
使者 :ジュゼッペ・モレーシ
アントニーノ・ヴォットー指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
ミラノ・スカラ座合唱団
(1962.7.2~7 @ミラノ・スカラ座)
頑張れ!イタリア!
Buona Fortuna!
そして、イタリアの名歌手、レナータ・スコットのヴィオレッタを。
先日、惜しくも亡くなられたフレーニさんの追悼特集のときにも書きましたが、永く聴いてきた往年の歌手たちの最近の動向を、ときおり検索したりして安心したりもしてます。
フレーニの訃報を聞いて、すぐに調べたのがスコットさんだったのです。
1934年サヴォーナの生まれで、2002年に引退はしたもののまだまだご健在。
2月24日にお誕生日をむかえられました。
そう、フレーニは1歳下で、彼女は27日が誕生日で、生まれもモデーナでイタリアの北の方。
レパートリーも似通っていたけれど、ライバルでもなんでもなく、オペラ界にともに君臨した名花であることに変わりはありません。
ふたりの共演盤もあったけれど、いまは廃盤の様子。
現在は、後進の指導にあたっているようで、なんと、今月3月にサヴォーナで日本人若手を招いてのマスタークラスが開催される予定でしたが、きっと中止。
→http://nolimusicafestival.blogspot.com/2019/11/masterclass-con-renata-scotto-japan.html?m=0
関係者の皆様には、ほんとうにお気の毒なことです。
イタリアをはじめ、欧米、そして我が国も、ほとんどの演奏会・オペラが休止。
音楽好きからすると、多くの演奏家のことが心配です。
そして、北イタリアにいらっしゃるご高齢のスコットさんに、もしものことがあったらと思うと不安でなりません。
あくまで、ひとりの音楽好きの人間として、世界の音楽家・音楽好きの安全を願って、トラヴィアータを聴きます。
1973年NHKホールの落成にあわせて上演された、第7期イタリア歌劇団の公演は、「椿姫」「アイーダ」「トスカ」「ファウスト」の4演目でした。
何度も書くことで恐縮ですが、中学生だったこのとき、テレビで全4演目を必死になって観劇しましたし、FM放送も聴きまくりました。
3年後の76年の最後のイタリア歌劇団公演には、ついに実際の舞台に接することができました。(シモンとアドリアーナ)
このときの、ヴィオレッタがスコットで、アルフレードはデビュー2年後の若手カレーラス、ジェルモンには、ベテランのブルスカンティーニという今思えば豪華なものでした。
伝統的な舞台に、華やかな衣装、そしてきらびやかな女性が、一転して悲劇のヒロインとなる。
そんな筋立てを、見事に描きわけたヴェルディの音楽に釘付けとなった中坊でした。
ともかく、かわいそうなヴィオレッタ。
嫉妬に狂ったアルフレードが、皆の面前で、ヴィオレッタを辱める・・・、もうハラハラしました。
そして、最後は誤解も解けるも、死を覚悟して歌うヴィオレッタに涙した純情なワタクシでした。
長じて、初老の身となったいま、ヴィオレッタへの同情と憐憫の気持ちは変わらねど、父ジェルモンの身勝手な行動に、腹が立つようになりました。
ついでに世間知らずのぼんぼんの息子ジェルモンにも。
以前も書いたかもしれませんが、このあたりの一工夫が、台本にもあれば、もう少し、人間心理に切り込んだヴェルディならではの音楽が別の姿で生まれたかもしれません。
もちろん、ふんだんすぎる豊富なメロディは耳にも心にもご馳走ではありますが。
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久しぶりに取り出したDGのスカラ座シリーズから。
前奏曲からして、あきらかにオーケストラの音色がヴェルディそのもので、以降もオペラを知り尽くしたオーケストラが、舞台の歌と一緒になって奏でる渾然一体の輝かしい演奏には、それこそ耳が洗われる思いがする。
ヴォットーの温厚だけれど、すべてが順当な指揮も、ここでは安心して聴ける。
若々しいスコットのヴィオレッタ。
同役でデビューした彼女は、まだ28歳の頃の声で、瑞々しさがいっぱい。
聴き手によっては、その張り切りすぎた高音がキツイという意見もありますが、私は、スコットのそんな一生懸命な歌が好きなのです。
レッジェーロからコロラトゥーラの声だったこの時分かと思います。
その最初の全盛期は、このころからあと、数年となりますが、声の変革を多大な努力のもと行い、きっとその過渡期が、日本でのヴィオレッタの舞台だったしょうか。
そして、ドラマティコ、リリコ・スピントの領域へその声も移行し、70年代後半以降、多くの録音を残したことはご存じのとおりです。
このあたり、フレーニの歩みともほぼかぶります。
20代のスコットのヴィオレッタは、まずその声の美しさが際立ってまして、80年のムーティとの再録音に聴く落ち着きとはまた違う若々しさが魅力です。
そして、例えは稚拙ですが、スコットの声には庶民的な親しみがあるんです。
カラスやテバルディのような、圧倒的な威力と強靭な声と個性などとは大きく異なるその声。
わたしには、フレーニと同じく、ずっと聴いてきた耳に安心感のある声なのです。
そして、DGのこちらのシリーズ最大の聴きもののひとつは、バスティアニーニ。
ジェルモン向きの声ではないかな、とも思いますが、その朗々とした明快な声には痺れざるをえません。
その歌声から風光明媚なプロヴァンスの海と陸が脳裏に浮かんでくるのを感じます。
申し少し、存命だったら、と思わざるをえない。
あと録音の少ないライモンディの素直な声も、まさにアルフレードに相応しく、純正イタリアをここにも聴くことができる思いです。
録音もいまもって新鮮です。
聴き古したオペラだけれど、たまに聴くとほんと感動します。
スコットさん、いつまでもお元気で、心より祈ってます。
少し前ですが、家の庭には、沈丁花が今年は早くも開いて、かぐわしい香りが。
奥には、ピンクの河津桜。
いい香りに包まれると、不安な気持ちも和らぎます。
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コメント
1960年代前半ならではの、主役陣から脇役迄トゥッティ・イタリアーニの、今となってはまさしく夢のような配役に、溜め息が出るのみですね。ヴォット&スコットの、イタリアオペラ全曲盤ではやはりDG原盤の、ポッジのロドルフォにゴッビのマルチェルロと、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団が付き合った、プッチーニ/『ラ・ボエーム』も、どこか気になる一組です。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年3月15日 (日) 19時53分
DGの60年代のイタリアオペラ録音は、EMIやデッカのスタジオにスターを揃えるやり方でなく、イタリアのオペラハウスでの上演をそのまま録音した感じで、当時、どんな水準でオペラ上演がなされていたかがよくわかり、ほんとうにありがたい存在です。
ヴォットーの「ボエーム」は聴いたことがないのですが、ポッジのロドルフォがボンクラで聞き難いという評を読んだことがあり、むしろ聴いてみたい思いがしてます!
投稿: yokochan | 2020年3月17日 (火) 09時13分
最近鬼籍にお入りになった某評論家が、ポッジの事をいつもけちょんけちょんに、書いていらっしゃいましたね(笑)。最近の歌手では、F-フルラネットが、同じ憂き目に遭っていらっしゃったような‥。でも、聴いてみないと判りませんねぇ。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年3月17日 (火) 09時43分
yokochan様
中学生時分に、それらのオペラ作品を食い入るように、御覧になっていらっしゃったとは。鑑賞眼の高さに、ただただ畏れ入ります。
私のこの当時のTVでのクラシック番組の記憶ともうしますと、『NHKシンフォニー・ホール』で、かのバレンボイム様が、NHK交響楽団に客演し、激しい表情と大きな身振りで、チャイコフスキーの『第四交響曲』を、指揮しておいでだった事くらいでしょうか‥。鑑賞力など、まるでございませんでしたね。第3楽章で弦のパートがすべて指ではじいていらっしゃるのを観て、『うわっ、何これ?面白いなぁ。』と、感嘆していたのを恥ずかしく、思い出します(笑)。
投稿: 覆面吾郎 | 2023年10月30日 (月) 18時20分
バレンボイムの握りこぶしを繰り出す力んだ指揮ぶりは私もよく覚えてますし、ニューヨークフィルとの録音も、そのときを思い出しながら購入しました。
投稿: yokochan | 2023年11月 9日 (木) 09時05分
yokochan様
貴ブログを閲覧させて戴いている内に、忘れ去った記憶が呼び起こされるような事が在る事は、以前に御報告した覚えが、ございますけれど‥。
殆ど同時期に、マゼールが当時手兵としていたベルリン放送交響楽団のTV放映で登場し、R・シュトラウスの交響詩『ティル‥』&ベートーヴェンの『
投稿: 覆面吾郎 | 2023年11月12日 (日) 00時03分
yokochan様
貴ブログを閲覧させて戴いている内に、忘れ去った記憶が呼び起こされるような事が在る事は、以前に御報告した覚えが、ございますけれど‥。
殆ど同時期に、マゼールが当時手兵としていたベルリン放送交響楽団のTV放映で登場し、R・シュトラウスの交響詩『ティル‥』&ベートーヴェンの『
投稿: 覆面吾郎 | 2023年11月12日 (日) 00時04分
yokochan様
交響曲第8番ヘ長調』を、取りあげていらっしゃったのも、当時の思い出の一つですね。コンマスに豊田耕児さんが就いておられ、『あれっ、当時日本人が居る?』と、びっくりしたのもこれまた恥ずかしい思い出です。それでは。
投稿: 覆面吾郎 | 2023年11月12日 (日) 00時20分
ベルリン放送と来日したときは指揮棒なしで、顔芸もかなり豊かで、テレビで観ていてマゼールってほんと面白い指揮者だなと思いました。
ところがその数年後に、フランス国立菅とやってきたときもテレビ観劇でしたが、まったく違う指揮者に思えました。
投稿: yokochan | 2023年11月25日 (土) 09時27分
yokochan様
このマゼールと言うお方、一筋縄では行かぬ癖の強い音楽家と言う受け取られ方を、少なくとも日本ではされていたせいでしょうか。どこかクラシック音楽界の異端児‥っぽい感じで‥(笑)。
でも御逝去の際に、『レコ芸』では、吉井亜彦さんの二ページにわたる追悼文のみで、案外小さい扱いなのには、少々意外な感を抱いたのを、覚えております。購読をS新聞にも夕刊二面の下の方に、チョロッと訃報が載ったのみで‥。
我が国では、高い評価と支持はさほど得られなかった訳でしょうか。
投稿: 覆面吾郎 | 2023年11月27日 (月) 11時22分
yokochan様
このマゼールと言うお方、一筋縄では行かぬ癖の強い音楽家と言う受け取られ方を、少なくとも日本ではされていたせいでしょうか。どこかクラシック音楽界の異端児‥っぽい感じで‥(笑)。
でも御逝去の際に、『レコ芸』では、吉井亜彦さんの二ページにわたる追悼文のみで、案外小さい扱いなのには、少々意外な感を抱いたのを、覚えております。購読をS新聞にも夕刊二面の下の方に、チョロッと訃報が載ったのみで‥。
我が国では、高い評価と支持はさほど得られなかった訳でしょうか。
投稿: 覆面吾郎 | 2023年11月27日 (月) 11時24分