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2020年6月 1日 (月)

オペラストリーミング大会の軌跡 ⑦

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もう2か月前のチューリップ。

季節のめぐりがとても速く、自粛生活を国民が続けている間に初夏となってしまった。

桜が咲いて、春が爆発的にやってきて、花が咲きまくって・・・、でも新緑になると色とりどりの花は少なめに。

アジサイ以外、なんか色合いが寂しい季節なので,撮りだめた春の色彩をここに。

で、相変わらずのオペラ生活。
改めてですが、ツイッターでつぶやいてる内容を、自身の鑑賞記録のためにもここに残していくシリーズ。
ずっと終わらないよ・・・

Ariadone

 R・シュトラウス 「ナクソスのアリアドネ」 ウィーン 5月13日

「ナクソスのアリアドネ」ウィーン2014
美しい舞台。
初見。いつもより穏健なベヒドルフ演出だけど、序幕はよしとして、本編オペラで作曲家が、ツェリビネッタのピアノ伴奏をするのはいいけど、最後まで出てきて、本編のワーグナー的な主役ふたりに代わって、しかもチューしちゃうのはどうだろう。


同演出で、初稿の「町人貴族」版もあるが、長くなるのを覚悟で両版ともにやるのもいいかも。
 ビジュアルよし、声量歌唱いまいちの準主役。
その真逆の主役ふたり。
コッホさんと、愉快なハルレキンたち、いずれもしっかり固める、さすがのウィーン。
そのウィーンフィルあってのテシーレマンの凄さ
 。
劇中劇をあえて、かなりリアル化させた演出で、その枠でのツェリビネッタと作曲家との恋愛にフォーカス。
その意味で準主役となったのバッカスが出てきて、思い切り歌ったら、執事の爺さん、びっくり椅子からころげ落ちて、思い切りわろた( ´艸`)


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 R・シュトラウス 「ナクソスのアリアドネ」 MET 5月14日

「ナクソスのアリアドネ」MET 1988
30年前NHKで放送されたものを録画して楽しんだのが、このオペラの詳細を知ることになったきっかけ。
懐かしい出演者たち、ト書きに忠実な原点のような演出に舞台。
あらゆるオペラにいえるけれど、こうした舞台を観てから、新しい演出のものに挑戦すべきかと思う。


そういう意味では、METとウィーンと東京は伝統解釈がいまも中心かな。
亡くなってしまった方が多いが、やはりノーマンの声の存在感は抜きんでてるし、ジークムントのようなキングもヘルデンしててあの時代ならでは。
あとなんといっても、トロヤノスが素晴らしすぎる!

一世を風靡したバトルはコケティッシュで所作も可愛いけれど、その後にグルベローヴァを知ってしまったので、歌唱面ではちょい甘めかな。
レヴァインの全盛期の指揮は明朗快活で、シュトラウスの地中海的な澄んだ世界にぴったりだ。

映像の最後に、映像監督ブライアン・ラージの名前が出てくるのも、20世紀末の映像作品ならでは!
懐かしいひとときをありがとう~Thank you MET!


Don-pasquale-wien

 ドニゼッティ 「ドン・パスクワーレ」 ウィーン 5月14日

ドン・パスクワーレ」ウィーン 2016
めちゃくちゃ面白かった♪
2015年のプレミアで、演出はイリーナ・ブルックで、かのピーター・ブルックの娘さん。
華やかだけど、品があって嫌みのないビューティフルな舞台で、人物たちの動きも含めて納得感とユーモアをともなった面白みがしっかり決まっている。


ブリテンの「真夏の夜の夢」も彼女の演出だった。
その時の可愛いなと、思って見ていたひとりが今回のヒロイン、ノリーナ役のナフォルニツァ。

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ドン・パスクワーレさんじゃないけど、美人・スタイルともによしで、おじさんメロメロ。
ペルトゥージのタイトルロールは最高の面白さ、とんでもいい!

完フローレス、パパゲーノでブレイクしたプラシェトカもいい味だしてる。
ベルカントオペラ指揮者の最高峰、ピド氏がウィーンフィルを万全に指揮するのもさすが。
本日30年前のメットのアリアドネと同時に観たこのドン・パスクワーレ。
演出も歌唱も時代の変化を感じた。

陶酔的に歌うのでなく、スマートな歌いぶりが求められ、かつ高度な演技力が必須の現代。
伝統解釈ばかりでなく、時代を変えたり、ドラマの解釈に読込みを求められる演出。
劇場でしか味わえなかったオペラが、スクリーンやモニターで楽しむ時代になり、仔細なまでにこだわる必要性がいやでも生まれた。


こうした時代の変遷に、歌手も演出家も装置家も進化しつつ対応ているのが現在のオペラ界だと強く認識。
伝統解釈でもそれは同じく。
で、なによりも、そのすべてを掌握して統率しなくてはならない指揮者も、オペラを降らない人との実力格差が出るのではとますます思う。


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 ワーグナー 「ラインの黄金」 ウィーン 5月15日


「ラインの黄金」ウィーン 2019
久々にワーグナーに帰ってきた感じ、謹慎がとけて自宅の風呂に入ったかのような慣れ親しんだ安心感をまず味わう。
ベヒトルフ演出は簡略にすぎる舞台で、ちまちまと動きすぎる人物たちが妙にそぐわな憾じ。
同時期のウォーナーのトーキョー・リングの方がはるかに面白い。
コバーさんの指揮がよい。
この指揮者、かつてのシュタインやシュナイダーのような貴重な存在となりそう。
ウォータンのコニチュニーは、どうにもその声が苦手で、悪玉テルラムントにしか思えない悲しみ。
あとはいい感じ。
ウィーンの無難な演出はリングぐらいになると、もっとひねりが欲しいな。


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 ブリテン 「ピーター・グライムズ」 MET 5月15日

「ピーター・グライムズ」MET 2008
2008年のライブストリーミングで映画館でみたもの。
あのとき味わった、救いのない暗澹たる気持ちがよみがえる。
ヴォツェックにも通じる、自らどんどん深みにはまってしまう宿命的な主人公に、目線を合わせたブリテンの社会派的な思いは、実は優しい。


燻されたような壁に囲まれた閉鎖的な家並みのなか。
演出家は、漁師町出身でピーター・グライムズの物語に即したものを再現。
狭い社会での監視・密告社会に、アウトローのピーターははみ出してしまう。
彼を擁護する同情心あふれるふたりがいい。


Lucia

 ドニゼッティ 「ルチア」 MET  5月16日

「ランメルモールのルチア」MET 1982
伝説級の舞台でDVDにもなってるが初見。
主役ふたり合わせて110歳。
サザーランドは最盛期をとうに過ぎてたけど、さすがの貫禄と美声で、懐かしさも充分。
そして素晴らしいのはクラウスで、耳洗われる清流のような歌唱、息の長い名テノールだった。

ともに逝去し、いま健在は、指揮のボニングかな。
ベルカントとバレエ音楽の達人だった。
シンフォニックな作品や協奏曲が皆無というユニークな指揮者。
エンリーコがミルンズあたりだったら、ほんとはもっとMETっぽかったな。
Thanks MET♪


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 モーツァルト 「イドメネオ」 MET 5月19日

「イドメネオ」MET 2017
荒唐無稽で、生真面目なセリアなので、今の時代、ポネルの伝統演出を切替えたり、時代考証を経たオーケストラピットからの音でもって、もっと刺激的な舞台であってもよいのかも。
 しかし、パヴァロッティより続くこの伝統演出はMETは、おいそれとは変えられないんだろな。

METのイケメンテノール、ポレンツァーニ君のイドメネオが予想以上によかった。
あと怒ってばっかりのエレットラのヒーファーさんがよい。
レヴァインは相応で、聴衆から大喝采。
今思えばあれで、活動末期の頃かな。
しかし、モーツァルトの歌満載のイドメネオ、いいオペラです。


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 ワーグナー 「神々の黄昏」 ウィーン 5月19日

「神々の黄昏」ウィーン 2017
ウィーンっ子のシュナイダーが、聴衆から大喝采。
年度を替えての2度目のウィーンのストリーミング・リング。
黄昏が歌手も含めて一番充実してた。
テンポがゆったりになったが、弛緩した感じが一切ないのは、音がすべて有効で雄弁だから。
ワーグナーを知り尽くした指揮。
1984年ショルティが降板したバイロイトリングの急場を救ったシュナイダー。
85年だけど、エアチェックした音源はお宝です。
その時の演奏時間が4時間16分。
今回は、4時間35分。
シュナイダー先生、ばら騎士で2回、リングオケバージョンで1度聴いてます。
スワロフスキー門下の名匠、ずっとお元気で!

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ジークフリート殺傷の場面。
打ち合わせしていたのに、なんでやねん的な素敵なアイフェのグンターが好き。
このウィーン・リング、舞台が暗くて、簡素すぎるのに、歌手が動きすぎの演出、ぼちぼち新しいのが欲しいところ。
C国資本が蔓延したウィーン、コロナ後のリングでもマジで描いてみて。


Freischtz

 ウェーバー 「魔弾の射手」 ウィーン 5月20日

「魔弾の射手」ウィーン 2018
同年がプリミエの新しい舞台。
ウィーンには珍しい、読み替え演出は、ラートさん。
射手マックスを作曲家に見立て、アガーテの祖先がウェーバーそのもの。
この作品には、ドイツの森が出てきて欲しいが、それはちょっとだけで、あとは無機質なモダーンな室内仕立て。


狼谷では楽譜を1枚1枚書いて行き、ピアノに火が付き、狂気の作曲家になってしまう。
ここ面白かった。
ラストシーンでは悪魔くん・ザミュエルが懲りずに出てきて、救われたマックスとアガーテがふたり共同で作曲する様子を眺め見る。
これは、魔界に魅せられたワーグナー夫妻のことなのか??


アガーテのガブラーさん、同性愛風な存在のエンヒェンのレイスちゃん(彼女、実演で接し好きなんです)がよろしい。
指揮はプリミエのネトピルに代わって、お馴染みのヴァイグレ。
演出は、1度観ただけじゃわからんが、音楽面ではさすがのウィーンクオリティ!


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 ワーグナー 「ローエングリン」 MET 5月20日

「ローエングリン」MET 1986
DVDでも高名なこの舞台、初見。
バイロイトのG・フリードリヒ演出でのP・ホフマンが刷り込み状態で、こちらのメットでのホフマンもいい!
スポーツで鍛え抜かれた肉体と、ロックも歌う強靭な喉、真っ直ぐな張り詰めた無駄のない声!
素晴らしいホフマンのローエングリン
 。

旬を過ぎたが、すさまじいリザネックのオルトルートに、カーテンコールでは投げ花の嵐バラ

エヴァーデングの演出、84年のハンブルクオペラの来演で観たものと同じで懐かしかった。
その時と同じテルラムントのロアーもいい。」
なんといっても気合とやる気に満ちたレヴァインとオーケストラが素晴らしい。

幾多のローエングリンを聴いてきたけど、いまの時点でのローエングリン・ランキング。
コロとホフマン(同率No1)→トーマス→フォークト→キング→コーンヤ・・・こんな感じ。


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なんだか、4月と5月はあっという間で、あまり記憶がない気がする。
諸所、正常化を目指す6月は、梅雨ではありますが、鮮やかな初夏、そして心も晴れるような日々であってほしい。

そして各地のオペラハウスからの配信は6月も続く。
とくに、ウィーンとMETの日替わりメニューはため息したでない・・・あ~忙しい~

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