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2020年6月 3日 (水)

オペラストリーミング大会の軌跡 ⑧

Hibiya-02

 休日になまりきった身体に、かなり歩きます。

早朝なのでひと気の少ない日比谷公園。

そして日比谷公会堂。

いまは休館中だが、90年の歴史を持つ老舗ホール。

私は、1982年にここで、アンタル・ドラティ指揮する読響で、ハイドン104番と、マーラー1番を聴きました。
デッドなホールで生々しい音が迫力満点。
動きの好きないドラティの指揮から、どうしてこんな爆発的な音が出るんだろうと驚いた若き日の思い出です。

1975年に来日したクーベリックが、ここでマーラー9番が予定されていたものを、文化会館に変更させたという話は有名です。
そのときにこちらで変更されて演奏されたのがベートーヴェン7番だったかと。

Ballo-maschera

 ヴェルディ 「仮面舞踏会」 MET  5月21日

「仮面舞踏会」MET 2012
最初から最後まで豊富なメロディにあふれるヴェルディ中期の名作。
オーケストラがこのあたりから雄弁になり、大胆なリズムや和声も特徴。
ルイージの指揮がメリハリと明快さで見事。
 アルバレスと亡きホロストスキーのコンビの友愛と憎悪の歌と演技もかっちょいい!

オールデンのスタイリッシュな演出は読み替えは少なめ、空間の活かし方と群衆の動かし方のうまさが光る。
終場の舞踏会のシーンは、鏡面を巧みに利用し、人物たちがフェイスマスクをしつつ、交差し、やがて起きる暗殺がどうなるのか?というスリリングな予感を聴衆に抱かせるという見事なものだった。


Turandot-1

 プッチーニ 「トゥーランドット」 MET 5月22日

「トゥーランドット」 MET 2019
昨年10月の新しい上演記録で、セガンの初プッチーニである以上に、同年亡くなったゼッフィレッリの追悼上演。
 お馴染みの豪華絢爛舞台。
でも細かいところ、とくにトゥーランドットが心動かされ、表情にもそれを表出させる細やかさが見事。

 カラフのエイヴァゾフはネトレプコの今の旦那だけど、ドラマティコでないから、強力なゲールケの王女さまに圧倒されっぱなし。
ウォータンしか思い起こせないその声、モリスのティムールに、気の毒なブラットーのリュウもよかった。
で、セガンの躍動感あふれる、振幅豊かな指揮がよし!


Turandot-2

「トゥーランドット」MET
しかし、漢民族はこのオペラでもわかるように残虐だし、おまけに周辺民族への弾圧ぶりが激しい。
プッチーニが描いた東洋の様子は「蝶々夫人」とともに、最大公約数をしっかりつかんでる。
「西部の娘」のアメリカ西部劇的な世界と合わせて、正しい認識だと思う。


Faust

 グノー 「ファウスト」 MET 5月24日

「ファウスト」MET 2011
あの震災の年の暮れのプリミエでセガンの指揮で私は初見。
ファウストの書斎は、アトミック研究所のなっていて、そこに出現したメフィストフェレスは戦前にタイムスリップさせて若返りをはかる。
ワルプルギスの場面では、原爆投下後と思わせる被爆者も登場、なんじゃこりゃ!


原爆投下国がこの、無理筋の演出を取り上げるのか。
もう一度会いたいというファウストが遡って、マルガレーテと会い、彼女は昇天するが、最後は戻ったファウストが原爆開発をあきらめ、老死するというシナリオ。
むちゃくちゃすぎ、被爆国をなんと思うんだ!


演出はNO!
主要歌手の3人は素晴らしい。
演出意図に反対して降りたゲオルギューに代わってのポプラフスカヤが相当にいい。
 1973年のNHKイタリアオペラでの、クラウス、スコット、ギャウロウの3人が、テレビとFMですっかり刷り込みにすぎて、なかなか他はダメ
あの音源、正規化されないかな・・


Arabella-1

 R・シュトラウス 「アラベラ」 ウィーン 5月24日

「アラベラ」ウィーン 2014
シュトラウスのオペラでも大好きな作品で、実演も何度か。
ベヒトルフ演出は、ここではかなりビジュアル的にも麗しい。
妙なことはしていないのがいいが、舞踏会がいかがわしい雰囲気だし、女装の男たちが始終出てる。
これはズデンカが男の子として生きてきたことの反証か
 ?

美人のシュヴァンネウィリムス、ウォータンより、ずっといいコニチュニー。
 3人のアラベラ追っかけ隊が、成金、ヲタク、フリーダム人とになってて、実に趣きあり(笑)
ステキなラストシーンは、過去の写真を破り捨て、抱擁するふたりに、予言を的中させた占い師が何気に出てきて、物語を完結。


Manon-met

 マスネ  「マノン」 MET  5月25日

「マノン」 MET 2012
ローラン・ペリーの美しく、かつユーモアあふれた舞台。
ネトさまが、シルクハットの紳士たちを指一本で操り、3幕の名アリアでは、あっちへお行き、と命じるとさっと解散してしまう男たち。
数えたら、だいたい30人、あら虚しい。


坂や勾配をうまく使ったペリー演出が、ビジュアル的にもよろしく、終幕の監獄の遠近感はよい。
美しいマスネの音楽が、最近耳にこびりついてやまない。


Zu

 モーツァルト 「魔笛」 ウィーン 5月26日

「魔笛」ウィーン 2017
面白かった。
タミーノの笛で出てきたのは、くまさん、ゴリラくん、恐竜、サイ、そしてそろりそろりとダチョウさん。
これには客席も笑いが。
ぽっちゃりタミーノは美声で実によかった。
パペ以外はみんな初の歌手たち、ウィーンの専属歌手たちのレヴェルの高さと安定感はさすが
 。
 もう何十年も前の初ウィーンで見たオペラが「魔笛」。
でもフォルクスオーパーで、タミーノはのちにトリスタンも歌う歌手に成長したR・ガンビルだった。
中学生ぐらいの子供たちもたくさん観劇してて、やはり、パパゲーノは人気者!
「魔笛」は、ウィーンの観光の目玉だね。


Ernani

 ヴェルディ 「仮面舞踏会」 MET  5月27日

「エルナーニ」MET 2012
音源でしか接してなかったけど、こうして豪奢な舞台を観ると、筋立てのムチャクチャぶりがよくわかる(笑)
広大な領地、ハプスブルク、神聖ローマ帝国などを手中に収めることになるのちのカール大帝が人の家に忍び込んだり、墓から出てきたりで、軽やかな存在。


そのホロストスキーが素晴らしい。
他の歌手たちの歌唱もビジュアルもメットならではの豪華さ。
ヴェルデイ比較的初期作品だけど、歌が満載、そして興奮呼ぶ劇性もあり、中期・後期とは違ったヴェルデイのオペラの楽しみが味わえました。


Rentai

 ドニゼッティ 「連帯の娘」 ウィーン  5月27日

「連隊の娘」ウィーン 2016
いやぁ~面白かった。
いくつかのアリアは聴いてたけど、全曲を初視聴。
ローラン・ペリーのユーモアとセンスあふれる演出は、N・デセイでブレイクした演出だけど、ほんと楽しいし、人と群衆の細かな動かし方が巧み。

以前より気になってたJ・フックスの歌も演技も、所作もチャーミングなマリー役がステキ。
フローレスのハイCに慣れてしまった耳には、ちょっと気の毒だけど、イケメン、テシエ氏は頑張りました。
しかし、面白いオペラだな、2幕冒頭ではここでは、英語のミュージカル風の歌が挿入されてた。


Salome-01

 R・シュトラウス 「サロメ」 ウィーン 5月28日

「サロメ」 ウィーン 2020
コロナ前、今年1月24日の上演。
1972年から続く伝統と格式の演出は、日本への引越し公演もあり。
1980年のベーム最後の来日の時にはホルライザーが指揮し、テレビとFMで視聴。
クリムト風の世紀末と旧約聖書の物語の融合はいまでも色あせない。


リンドストロムのサロメ。
注目してたドラマテックソプラノだけど、キンキン声が改善され、北欧出身ならではの硬質さに、繊細な歌いまわしが加わった感じで、とてもよかった。
マイアーさんの鬼ママもいいし、フォレ、ペコラーロもさすが。
ただ、なんで最後にオケがこけたんだろ・・・・


リンドストロムさんを初聴きのブログをリンク。
あと、3月のパリ、セガン指揮の影のない女でもよかった。
美人さんなのがまたいい。

フランケッティ「ゲルマニア」
http://wanderer.way-nifty.com/poet/2011/10/post-fdb7.html

Hibiya-01

緑が濃くなってきました。

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コメント

'75年のクーベリック日比谷騒動、当事者というか被害者でした。マーラー目当てでチケットを入手していたのですが、そのクーベリック盤(DG)を貸してくれた恩師と、日比谷でマーラーがちゃんと出来るのかなどと話してたらまさかの告知。朝イチでプレイガイドに駆けつけチケット交換しましたが、まあ振り回されました。

詳しくは少し前にAmazonレビューにも書いたのですが大熱演には圧倒され、翌朝は寝過ごし大遅刻。職員室に顔を出すと事情を知ってる恩師はニヤニヤ笑ってましたが。ちょうど十年後のバーンスタインの凄演と、生涯に二度も忘れ難い体験をしたのは幸甚でした。

METの「トゥーランドット」、レヴァイン指揮のLDが出たのは'89年の5月だったかと。まあ圧倒されましたがその直後に天安門事件が起き、かの国の今昔に思いを馳せ複雑な感慨に襲われた記憶も。

その一方で同じmet

投稿: Edipo Re | 2020年6月 5日 (金) 06時35分

失礼しました。同じMETで「ファウスト」のような噴飯もののプロダクションがかかっているのはいかがなものかと。震災直後ですからカウフマンのキャンセルの理由付けにもなったのでしょうか。穿った見方ですが。

投稿: Edipo Re | 2020年6月 5日 (金) 06時41分

あら、あの時の当事者でらしたのですね。
主催側があの曲のなんたるか、いまひとつ把握してなかったのでしょうね。
放送オケならでは恩恵で、NHKのFMとテレビ、全部視聴し、録音も残してます。
わが祖国で文化会館の指揮台にたったとき、指揮者の上を見上げて、まぶしそうな顔をしたので、なかなか神経質な方なのだなぁ、なんて思ったりもしましたが、後年の好々爺風のクーベリックとはまた違う壮年期の厳しさでしょうね。
あのときのマーラー9番を聴かれてことがとてもうらやましいです。

天井が金が降ってくるトゥーランドット演出は、ほんとMETならですね。
昨日は天安門の日ですし、いまもやってることは変わりません・・・
で、もう一方の大国もおおらかすぎるというか、実体を見たくないのか・・・
古めの上演もどんどん配信してくれるので、そのとき日本は、自分は、どうだったかなと思いつつ見るのもまた楽しいものです。

投稿: yokochan | 2020年6月 5日 (金) 12時52分

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