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2020年7月

2020年7月24日 (金)

オペラストリーミング大会の軌跡 ⑬

Takeshiba-01

晴れると寸暇を惜しんで歩き回る。

スカイツリーもいい塩梅に見える。

近未来風の船は、松本零士のデザインで「ヒミコ」という名前らしい。
同じようなデザインであと2種あって、お台場・日の出・豊洲・浜離宮・浅草を行き来してます。

あとついでに、芝浦運河には水上タクシーも走ってます。
しかし、このコロナ禍で、どちらも運用は大変でしょう・・・・

さてさて、まだ観てます、ネットでオペラ。

毎日配信はウィーンが終わり、METだけとなり、あとは、欧州各地のハウスが期間限定で時おり配信。
そちらも見てますが、日々配信の切迫感がないので、その記録はいつか残したいと思う。

Ondonpasquale1979

 ドニゼッテイ 「ドン・パスクワーレ」 MET 1979

歴史的映像。
今日のMETは、79年のビヴァリー・シルズの「ドン・パスクワーレ」だが、さしがに音も画質も古い。
つまみ視聴にて候。
シルズの可愛い声が好きで、結構音源も集めたけど、やはり耳で聴くに限るかな。
クラウスにバッキエ、歴史的なメンバーだし、レッシーニョなんてカラスとよく共演してた指揮者だ。


Del-lago

 ロッシーニ 「湖上の美人」 MET 2015

その音楽は、なぜかポリーニが指揮者となったCDで聴いていたけれど、恋人がズボン役、晴れやかテノールも二人で、耳で聴いてるだけでは、よくわからなかったロッシーニのセリア。
よく理解できました、面白かった。
前から思ってたあひる口、ディドナートがステキ!


あと、またもフローレス様にやられ、メゾの男前のバルチェローナの男前ぶりにも惚れた。
指揮のマリオッティ君、アバドの指揮ぶりにそっくり。
ロッシーニと同郷の生まれながらのオペラ指揮、いいわ!


Salome_20200721172801

 R・シュトラウス 「サロメ」、「エレクトラ」

本日は泣きたくないのでMETのボエームはスルー。

音楽配信で、ルイージ&ダラス響の「サロメ」、ネルソンスのロイヤルオペラの「エレクトラ」をながら聴き。
ダラスの優秀なオケを確認、切り詰めた音なのに豊饒サウンドのルイージ。
かたや、ダイナミズムを活かし、局面の各所では大見えを切るネルソンス!


(補足~サロメ:アウスリーネ・スタンディテ、エレクトラ:クリスティーネ・ゲールケ)

Milenes

 ヴェルディ 「イル・トロヴァトーレ」 MET 1988

スルーしようと思ったけど、好きなミルンズが出てるので、つまみ視聴。
最盛期は過ぎたが、いかにもアメリカ西部劇風のミルンズの美声と爆声はやっぱりいい。
いまの視線からするとゆるすぎの演出が辛い。
パヴァロッティもマンリーコ的でないし・・・


Cosi_20200721173701

 モーツァルト 「コジ・ファン・トゥッテ」 MET 2014

今のプロダクションの前の演出。
美しい舞台で、それは出演者のビジュアルにもおよび、まさにbeautiful。
レオナルドさん好き!
元気な快活レヴァインに、アメリカ人歌手たちの明るい、わかりやすい歌唱。
愉悦にあふれたモーツァルトの音楽はやはり素晴らしい。


Francesca-01

今日のMETは、ザンドナーイ「フランチェスカ・ダ・リミニ」2013
ワーグナー的なヴェリスモ。
夜に観るべき濃厚オペラだな。

日本初演観ました(自慢)
レアCD持ってます(自慢)
口を開けて目が笑っている笑顔

Francesca-02

こんなレア作品もMETのレパートリー。
ダンテの神曲の地獄編からの戯曲化が元のオペラ。
許されない恋をしてしまった、女性が地獄を彷徨うというのがダンテの原作。
これを脚本して、トリスタンや、ロメジュリ的な不幸な愛憎劇にしたオペラ。


さすが美麗な舞台。
花嫁の敵対勢力との政略結婚の相手は、醜男。
忖度して美男の弟を嫁との初見に出したら、見事に恋に落ちた二人。
あとは、トリスタンやオテロ的な嫉妬と密告で悲劇に陥るふたり。
そんなオペラです。
ヴェリスモ・ワーグナーであります。
若いウェストブロックよろしい。


10年前の日本初演に立ち会いました。
ワーグナー好き、グレの歌好き、プッチーニ好きなら気に入ってもらえると思います。
でも、アリアはありません。


過去記事 フランチェスカ・ダ・リミニ 日本初演

Onegin-01

チャイコフスキー 「エウゲニ・オネーギン」 MET 2013

「エウゲニ・オネーギン」MET 2013
英国のデボラ・ワーナーの演出。
光と影、淡い色彩に、フェルメールのような遠近感の美しさ。
よけいな読替えのない節度もある舞台が、悩まなくていい、ストレスフリーなことを実感。
でも、少々の刺激は欲しいけど・・・
この頃のネトレプコの清々しさ。

Onegin-02

10代のタチャーナが気品ある大人に、ネトレプコの演技も歌唱も目線、指先まで見事に描きわけてる。
 クヴィエチェン、声よろし、でも身勝手なこの人物を演じるには、この時期はまだまだで、今の彼で聴きたいな。
指揮棒なしゲルギエフ、舞台の声に応じつつ、かなりオーケストラをコントロールしてた 。

Tristan_20200721175001

 ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」 MET 1999

古風に感じる映像。
ケルト風の衣装や髪形が、主役たちのふとっちょビジュアルで、相撲レスラーを思わせることとなった。
2008年のライブビューイングは視聴済みで同じ演出。
映像はイマイチ、歌唱はいずれも見事でヘップナーが実にいい。
でもイーグレンは・・・?

しかし、チラ見で音声のみは優秀でありました。

Manon-les-01

 プッチーニ 「マノン・レスコー MET 2016

オポライスのビジュアル満載、その声は悲劇臭があって、突き抜けることのない陰りが声にある。
プッチーニ向けの声。
オジサンの域のアラーニャは、やはりその声はヴェルデイよりはプッチーニ。
ルイージの歌心と大胆にオケをドライブする指揮が素晴らしかった!


Manon-les-02

フランス革命前の時代から、ナチス政権占領下のパリに設定を移設した舞台。
田舎から出てきたあとは、きらびやかンマリリン・モンローのような風貌に。
ラストのアメリカの荒野は、破壊され荒廃した教会の内部。
時代を無理やり移設したけど、なんの意義も見いだせなかぅた気がするが・・・・


Takeshiba-02

こんな感じのお船。

おっ、奥には、ほぼ完成してるオリンピック村。
こんな感じで、対岸の豊洲はマンションだらけ。

Takeshiba-03

ちょっと拡大して見てみましょう。

来年は、ちゃんと本来の目的で使えるでしょうか。
そのあと、マンションとして購入予定の方々も気が気でないでしょうね。
1年間使われないで、維持管理費も大変だ。 

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2020年7月18日 (土)

バーンスタイン ウェストサイドストーリー シャーマーホーン指揮

Takeshiba

どんより空と止めどない雨が継続の関東。

日々、こもりっきりなので、ちょっとのやみ間を見つけては歩きまわります。

羽田空港への飛行経路が変更されて、都心上空から空港へ向かう飛行機が眺められるようになりました。

レインボーブリッジの下には、再開した東京湾クルーズ船も見えます。

まだ空いてるけれど、若いカップルさんが楽しそうに乗船待ちしているのを何組も見ましたね(byオジサン)

こちらは日の出桟橋からの運航で、一方、竹芝桟橋からのクルーズ船は、コロナ禍にあって、事業撤退してしまい、船は寂しく停泊したままになってます・・・・・

West-side

 バーンスタイン ウェストサイド・ストーリー

  マリア:ベッツィ・モーリッソン  トニー:マイク・エルドレッド
  アニタ:マリアンネ・クーク    リフ :ロバート・ディーン
  その他多数

 ケネス・シャーマーホーン指揮 ナッシュビル交響楽団

          (2001.9.17~18 @ナッシュビル)

言わずと知れた作品で説明不要。
現代版、といってももう60年以上前の「ロメオとジュリエット」。
ポーランド系とプエルトリコ系のともにアメリカ人のグループ同士の抗争と、それに巻き込まれた恋人たち。

ジェローム・ロビンスの原作に、音楽担当がバーンスタインのミュージカルで、1957年ブロードウエイ初演。
舞台は見たことがないけれど、1961年の映画版は、テレビで何度か観た。
そう、淀川長春さんの解説の「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」の日曜洋画劇場です。
日曜夜の洋画は、けっこう楽しみだった。
大河ドラマが終わって、洋画を見て、23時で、もう月曜日の憂鬱が始まる、そんな毎週の繰り返しだった子供時代。
 余談ですが、亡父がホテル系の仕事だったので、若い頃勤務してた熱海の施設に、淀川さんがよく湯治に来ていて、ネクタイをもらったりして、ちょっと親しくしていたらしい。
水色の水玉のネクタイ、まだ実家のタンスにあります。

Westside

これも実家にあった映画のパンフレット。
ナタリ・ウッドとジョージ・チャキリスのマリアとトニー、憧れました、かっこよかった。
よき時代のアメリカ映画を見て、アメリカってすごいな、的にいつも思ってました。

それがいま、どうでしょう。
この映画は、アメリカの縮図のひとつ、ポーリッシュとプエルトリカンは、ごく一部で、多種多様の人種の他民族・自由と民主の国がアメリカ。
数回前のブログで少し書きましたから、もう触れませんが、大統領選を控えて再選阻止を図る国内はおろか国外勢力の暗躍が、アメリカを混沌に陥れようとしている・・・・

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West-side-berstein

この作品を、オペラ的に演奏してCD録音した84年のバーンスタインの自演盤は、記事にしたかと思ったらしてなかった。
初出以来、よく聴いたけれど、カレーラスとテ・カナワといった人気歌手たちの声が立派すぎて、バーンスタインも重厚すぎたりで、何度も聴くと疲れるかもしれない。

Bernstein-west-side-story-1

もうひとつ、ワーズワースとロイヤルフィル、ボニーの歌った盤も持ってますが、こちらはスマートでかつ耳当たりのいい心地よいウエストサイド。
ボニーのマリーがステキな1枚ですが、英国風で上品な仕上がり。

そして、今回とりあげたのが、ナッシュビル録音。
ここに聴かれる、アメリカの日常感は、肩ひじ張らず、さらりと聴けるし、シンプルに音楽の良さ、歌の良さ、リズムの良さなどを楽しめる。
あまり知らない歌手たちも、普通でよろしく、オペラ的な歌唱はなく、これなら聴き疲れすることはないかもしれない。
オーケストラについて、どうこう聴きとれるものは、このような作品ではありませんが、テネシー州の州都、ナッシュビルのオーケストラは、ネット配信などで、最近の演奏をいくつか聴いてますが、なかなかの実力です。
 バーンスタインの弟子でもあったシャーマーホーンは劇場経験も豊富で、若い頃、バンドでトランペットを吹いたりしていたこともあり、実に雰囲気豊かな、軽やかな指揮ぶりに思います。

アメリカのオーケストラ巡りシリーズ。
ナッシュビル交響楽団は、1946年の創設で、初代ストリックランドという音楽監督のもとに発展。
ずっと年月を経て、1983年、本盤のケネス・シャーマーホーンが指揮者となってから大躍進して、実力を高めたが、長く続いたシャーマーホーン時代は、2005年の氏の逝去により終了。
そのあとを救ったのが、ビルダーのスラトキンで、ナクソスへの録音も引き継ぎ、2006年の新しいホール完成もスラトキンの指揮でこけら落とし。

Schermerhornsymphonycenter

そのホールが、美麗な、その名もシャーマーホーン・シンフォニー・センター。

2008年から、ニカラグア出身のエルシステマ系の指揮者、ジャンカルロ・ゲレーロで、この指揮者といま蜜月にあって、録音もアメリカ音楽を中心にたくさん出てますし、日本人コンマスとして二人目の岩崎さんが、現在もコンマスを務めてます。

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ナッシュビルは、多くの古い建物や景観条例などがあって、ユニークな建造物が多いようです。
西部のアテネとも呼ばれ、原寸大のパルテノン神殿もあるそうな。

Schermerhorn-2

で、シャーマーホーン・センターの外観もこんな感じで、重厚です。

Nashville-01

アメリカ中南部に位置するテネシー州とその州都ナッシュビル。
月並みながら、Wikiを参照に、街紹介。
周辺の都市圏を併せると、人口190万で、Music Cityと言われるくらいに音楽業界の中心地で、カントリー・ミュージックの聖地みたいな都市。
チェット・アトキンス、グレッグ・オルマン、ジョニー・キャッシュ、グレン・キャンベル、エイミー・ブラント、ドリー・パートン、パット・ブーン、エミルー・ハリス・・・etc
多くの著名なミュージシャンが、この街とゆかりがあります。

Nashville-02

このように、川に囲まれ、さらに位置的に鉄道路線の要でもあったことから、南北戦争当時、ナッシュビルを奪取することが戦争の行方を支配するとされたことから、ここは激戦地となったそうな。
美しい街並みからは、そんなことはいま想像もつかないが、古いものへのリスペクトや、カントリー・ミュージックが興隆したのは、こうした歴史もあることからかもしれません。

Nashville-04

 近年、ナッシュビルは経済的にも急成長して、工業・商業ともに2000年代以降は大進展。
日産の米国会社の本社も当地にあって、ニッサンスタジアムも建造され、フットボール場として街の中心、このオーケストラホールの近くにあります。
ちなみに、メジャーリーグはなくて、マイナーリーグの「ナッシュビル・サウンズ」という、いかにもなチーム名になってる(笑)

Nashville-05

名物料理は、ホットチキンと、この画像に代表される「ミート・アンド・スリー」というもの。
メインの肉料理に、3つのサイドディッシュメニューをそれぞれ選べるもの。
いかにもアメリカっぽいっ!
この歳になると、自分には日本の一汁三菜の方がはるかに良いです(笑)

ナッシュビルの最近の現地ニュースを見てみたら、コロナ感染は延べ16,000人で、死亡者数は151人。
ほかのアメリカの都市に比べたら、そんなに多くはない。
問題のデモも、ここでは大きなものは起きてないが、警戒した市行政は、一時、夜間外出禁止令を出したりしてました。
あと、市長がマスクの着用を執拗に呼びかけていて、マスク不着用者やディスタンスを守らない悪質な連中を見つけて発表するようなこともしてます。
日本のマスク着用や、非土足文化が見直されてますが、マスクはどうしても嫌いなようですな。

もう海外旅行なんて、ずっとずっとできないのではないかと思われます。
そして行けない以上に、来れないのが困る。
今年の外来演奏家は、ほぼ全部無理。
来年も危ぶまれます。

Bulue-01

晴れない話題に後半はなりましたが、ここでもう一度、気持ちいい画像を。

早く青空が見たいな。。。。。

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2020年7月17日 (金)

オペラストリーミング大会の軌跡 ⑫

Asagao

梅雨だけど、朝顔も咲きます。

豪雨かんべん、でも、週間天気に晴れマークが出るようになって、ちょっと嬉しい梅雨明け心待ち。

で、まだまだオペラ見てます。

ほぼMETのみになってしまった。
Youtube配信では、ロイヤルオペラ、グラインドボーン、シュッツトガルト、フランクフルトなどがまだまだ継続。
忙しいよ・・・・

Don-carlo-01

 ヴェルディ 「ドン・カルロ」 ウィーン 2017

スルーしようかと思ってたけど、観てみた。
ありがとうウィーン。
まさかの、僕らのツィトコーワたんが出てるじゃない!
しかも、アバド息子の演出。

 しかし、躊躇したお名前は、ドミンゴとフルラネット。
ドン・カルロそのもののドミンゴに違和感、最盛期を過ぎたキレのないもごもごしたフィリッポ2世。
そのふたり、やっぱり好みじゃないけど、ツィトコーワにストロヤノヴァ、ヴァルガス君がよろしい。
アバド息子、もっと精進望む。


Don-carlo-02

ガン撲滅のスターチャリティ・レコード(1976)
アバドとロンドン響で、ドミンゴが2役を歌うロドリーゴの死は、擦り切れるほど聴いた。
いまバリトン歌手となったドミンゴには感じられない鮮烈な深い声があった。
ドミンゴのここ数年のバリトンには、テノールのドミンゴの延長でしかないテカテカぶり。


Khovan-01

 ムソルグスキー 「ホヴァンシチナ」 ウィーン 2014

この年プリミエ、ショスタコーヴィチ版による上演で、3管編成の分厚い響き。
ラストの分離派教徒たちの殉教を覚悟したシーンはフォルテで悲劇的に終わる。
アバドの1989年の上演では、最後だけストラヴィンスキー版を採用し、静かに、それこそボリスのように終わる。


足場だらけで、出たり引っ込んだり、上がったり降りたり、脱いだり着たりで、なんだかなぁ?の印象。
垂直線の動きばかりで、人物たちは横でほとんど交わらない。
閉塞感はよく出てた。
最後はみんな沈んで、オペラの開始のシーンが回帰した。
変わらぬロシア、終わりも始まりもつながってるってことか。

表題役のフルラネットがよかった。
けど、途中から声がおかしくなり、幕間に喉不調的なアナウンスあった。
しかし、絡んだ喉が、ドスと凄みがでるとは皮肉なもんだ。
ビシュコフさんの指揮ステキ。
マルファ役のマクシーモワがなかなかよし、気に入った。

Atomic

 アダムズ 「ドクター・アトミック」 MET 2008

2005年のアダムズ作品。
文字通り、原爆の開発者オッペンハイマーが主役で、日本への原爆投下の半月前、ニューメキシコ州での実験葛藤を描いたオペラ。
アダムズならではの繰返し音型と、色彩豊かな音色の洪水に酔える・・が内容がシリアスすぎだし日本人には辛い。


ドイツの原爆開発を恐れて始めた計画、しかしそのドイツは降伏したのに、原爆を日本に、というワシントンの命。
科学者たちは疑念にとらわれ、神への祈りや心の葛藤にとらわれる。
 日本地図、廣島の市街図、博士が語るナガサキ、ヨコハマ、ナゴヤ、ヒロシマ・・という言葉


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悲しみのラストは実験投下後、白い光のなかに日本語で女性の声。
「お水をください、谷本さん助けてください。子供たちが・・・」という言葉が繰り返され幕となった・・・
 ここまでやるなら、「Dr.アトミックⅡ」を作って、原爆投下後の開発者・為政者・日本を描いて欲しい!
辛かった緊張のオペラ。


Sonnambula

  ベッリーニ 「夢遊病の女」 ウィーン 2017

「夢遊病の女」2017ウィーン
マッターホルンの麓の洒落たホテル。
演出の読込みも、で、あのデセイだったから気の毒だけどヒロインも及ばなかった。
それでもウィーンの歌姫ファリーちゃん、可愛い、頑張った。
ナザロワも可愛い。
相変わらずのフローレス、完璧でにくらしいくらい。


Samson_20200716214501

 サン=サーンス 「サムソンとデリラ」 2018 MET

METの好む美男美女、しかし歌唱も完璧なアラーニャとガランチャ。
「あなたの声に心が開く」はほんと素晴らしかった
しかし、禍々しいバッカナーレは気持ち悪い。
オラトリオ的なこのオペラ、難しいな。


Manon-01  

 マスネ 「マノン」 MET 2019

昨年秋の新しいマノンは、リゼッテ・オロペサ。
明晰な声、確かな技量に素直な歌唱は誰しも好ましく思う。
2006年の「つばめ」での印象がずっと残ってて、以来いろんなちょい役で出てた彼女、世界的にブレイク!
キューバの血を引くアメリカ歌手。
一挙に好きになりました。

デグリューは、同じアメリカのファビアーノ。
初聴きだけど、この声も驚きで、青臭い情熱とシャイな感じは褒めすぎだけど、カレーラスを思わせる。
カツラもお似合いだ・・・
あとポーランドのルキンスキーのレスコーもよかったし。


Manon-02

ラストのぼろぼろのマノン、冒頭の田舎出のおぼこ娘を思い出し、思わず涙す。
 アメリカは今、ずたずたで大変だけど、こんな素晴らしいオペラハウスを築くことができたのも、血も色も関係ない理想国家あってのものだったはずだ。
頑張れ、アメリカ!


Falstaff-01

   ヴェルディ 「ファルスタッフ」 ウィーン 2016

もしかしたら、最後のウィーンの無料ストリーミング。
オオトリとして、人生の境地を描いたシェイクスピア劇のヴェルディオペラ。
素晴らしき選択。
マクヴィガーのシェイクスピア時代設定の幻想的舞台が素晴らしい。
ファルスタッフの化身、マエストリ!


Falstaff-02

 ちょっと重いけど、メータの指揮。
数年後のいま、旬になった歌手もよし


オテロと並ぶ、ヴェルディの行き着いた自在の作風のオペラは、偉大です!

Falstaff-03_20200716220101

今日はウィーンのファルスタッフ。
レコード時代買えなかったオペラはCD時代に外盤で。
対訳シリーズのお世話になった。
訳によっては、いまやご法度のセリフも
大爆笑


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今日のMETは「鼻」鼻
ショスタコーヴィッチ第1交響曲のあとのオペラ。
夕方鑑賞予定、それまで鼻伸びそう。


Nose

 ショスタコーヴィッチ 「鼻」 MET 2013

大野和士も絡んだリヨン、プロヴァンスとの共作。
ショスタコの若き日の作品、アバンギャルドな作風で、当時レニングラードという西欧の風の吹きやすい場所で得た西側の最新の音楽が盛り込まれてる。
 床屋さんに鼻を切られ、その鼻が権威や地位を持って歩きだし、事件も起こす。


最後は戻った鼻に浮かれる主役。
「どうしてこの作者たちは、祖国に対して何の役にたたない題材を取り上げたのか?」というシニカルな虚しい最後のオチがあって、ショスタコならでは。
前衛と体制賛美の第2交響曲も同時に作曲で作風は同じ。
この難役を得意にするジヨットというバリトン、すごいわ。


「ルル」と同じケントリッジ演出で、切り絵を映像にしたマッピングが、ここではうまく機能してたと思うし、描きにくい登場物の「鼻」をうまく処理できた感じ。
 ともかく面白かった!
観客たちも、ときおり爆笑。
劇場で観てみたいオペラ!


Asagao-02  

 雨ばっかり、寒いし、夏が恋しい、かも。

まだ少し続くよオペラストリーミング大会。

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2020年7月 9日 (木)

オペラストリーミング大会の軌跡 ⑪

Tokyo-tw-01

雨ばかりの合間の曇天を縫って歩き回ります。

それにしても線状降水帯による長期にわたる豪雨、その被害の大きさに心傷みます。
日本は地震とともに、かねてより水害も多い国。
天気予報の精度も高くなっているので、災害マップなど、いろんなデータを入手しつつ、そしてそうした情報を得にくい方々にいかに共有していくか、早めの行動も含めて予防措置はできるのではないかとも思ったりもしますが、、、、
 でもね、いざとなったら突然の災害には無力となるかもです・・・
まだ続く雨、引き続きご注意いただくとともに、被災されたみなさまにはお見舞いと哀悼を捧げます。

いまのところ安全なところからすいません。

まだまだ観てるよオペラストリーミング。

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 プロコフィエフ 「賭博者」 ウィーン 2017

姉御、S・ヤングの指揮。
またも陶酔境の気分を過ごさせていただいた。
レビューはまた明日。
ストリーミングプログラムで活路が開けたオペラは、ベルカント諸作と、プロコフィエフだ!
オペラを克服した耳で聴く7つの交響曲も実にいい、よろしい!


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日本語字幕がありがたい。
これでほぼ全容をつかめた感じで、プロコフィエフの若き日の作品がますます気に入った。
バレンボイムに次ぐこのオペラ2度目のこの配信で、こちらのウィーンではグルーバーの意欲的な演出。
マリンスキー配信もあり、もう頭の中が賭博者の虜。
やばいよ。

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ドイツのリゾートの物語で、メリーゴーランドとルーレットを絡めた舞台が秀逸。
登場人物たちが、次々と賭けにハマり泥沼化し、破綻してゆく。
最後、主人公は愛する女性を救うために、賭けに挑み、勝ちに勝ち大金を手にするも、金では彼女を得ることはできなかった。
この際、IRは反対っ!


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カジノの主催者側が悪人メイクで、最後のルーレット大会で集う人々は完全に悪魔。
勝ちに乗る主人公も悪魔風になっていくという巧みな仕掛けだけど、ラストは独自解釈で虚しさ哀しさ倍増。
ウィーンにしては過激に頑張った感じ。
ディディクの主役は適役で、がんがん鳴るオケに負けてなかった。


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グセヴァの相手役も声よし、美人でよし。
あとベテラン、お馴染みのリンダ・ワトソンが婆さん役で、富豪から、すってんてんになってしまう味わい深い歌と演技。
ヤング姉御はこのオペラを得意にしていて、ウィーンのオケからリズミカルであり、抒情性もある音を引き出してる。

ヤングさん、ウィーンでは「炎の天使」もやる予定になってるが、あれをウィーンで上演することもすごいな・・・

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 ヴェルディ 「ナブッコ」 ウィーン 2017

レオ・ヌッチを長く聴いてきて、3年前だけど、その健在ぶりに感心!
やっぱり素晴らしいイタリアンバリトンだな。
スミルノワのアビガイーレもおっかなさと超絶技量、ともに最高。
彼女はチューリヒと同じ適役。
しかし、演出は自分には最悪。


Nabucco-02

クレーマーの2001年のプロダクションだけど、スタジオ的な舞台を作り、装置はほとんどなく、抽象的。
しかし、人物の動きは雄弁。
そのギャップが、ヴェルディ初期の原初的な感情のままの音楽の激しさにそぐわない感が。
歴史を抽象化することで焦点を見失った舞台かと。
ごめんなさい、また文句。


Maschena-01

 ヴェルディ 「仮面舞踏会」ウィーン 2016

1986年から続く息の長い伝統解釈舞台。
プリミエがアバドの音楽監督就任の上演で、パヴァロッティ、カプッチッリ、プライス。
アバド好きにとっては、この演出は世の流れに逆らってもずっと残していってほしい。
スウェーデン版でリッカルドはグスタフになってる。


Maschena-02

豪華な仮面舞踏会は、猫や人形面、中華面、ねずみ、トルコ風、貴族面など、思わず見入ってしまった(笑)
 この1年半後に亡くなってしまうホロストフスキー、この時は脳腫瘍であることを告知して舞台に立っていた、まさに壮絶なその姿と歌に感銘。
歌手はすべてみんな素晴らしい。


指揮のロペス・コボスもこの2年後に癌で亡くなってしまう。
リングの日本上演初体験はベルリン・ドイツオペラのコボスの指揮だった。
黒髪黒ひげのドイツ音楽も得意な名スペイン指揮者、シンシナティ響で残されたマーラーが実にいい演奏だ。
10番はお勧め!


Arumida

 ロッシーニ 「アルミーダ」 MET 2010

魔法使いの王女、愛のキューピットと悪魔の化身を使い分ける。
6人のテノールと主役フレミングの歌が超絶技巧の驚きの凄オペラ。
英雄リナルドに袖にされ、最後は悪魔界に身を投じるアルミーダ。
こんなロッシーニオペラをレパートリーにするMETの懐の深さに感心!


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 ヤナーチェク 「マクロプロス家のこと」 ウィーン 2015

大昔のことから何でも知ってる大女優のミステリー。
1920年頃、ヤナーチェク作曲時の時代設定で、主役のエミリア・マルティが生まれたのは1585年で、彼女の年齢は337歳ということ!
あらゆる男を虜にしてしまう魅惑の女性で、ちょっと高飛車な女性に描かれてる。


Makroplos-02

50年前に付き合ってたという爺さんが、なんとツェドニク、この時75歳で相変わらず芸達者だ。
原作にほぼ忠実な舞台は、美しくわかりやすいP・シュタイン演出でウィーンならでは。
ウィーン専属の歌手たちは粒ぞろいで、指揮のお馴染みフルシャが的確すぎる!
実に含蓄ある意味深いオペラです。


ラストは、推理ドラマよろしく全員が登場し、そこでエミリアがすべてを告白。
あまりに長く生きるのは辛いこと、恋も多くは望んではならないこと、そして恐ろしい孤独と精神が死んでいたことを語る。
若い女性に長生きの秘伝の書を託したが、その彼女は焼却してしまう。
そこで永遠の命の終焉。


ここでは、エミリアはミイラのようになって倒れたけど、私の体験した二期会オペラでは、白髪でよぼよぼになった程度、でも高貴さを保ったまま舞台奥に消えていった・・・
12年前の舞台、小山由美さんが素晴らしかった。
天皇陛下も来席された舞台でした。
当時のブログを。


二期会公演 2008

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  ヴェルディ 「シモン・ボッカネグラ」 ウィーン 2018

すべてが完全に耳にすりこまれたヴェルディ作品。
どんなバリトンとバスとソプラノが、シモンを、フィエスコをアメーリアを歌おうと、どんな指揮者が振ろうと、自分の耳にあるカプッチッリ、ギャウロウ、フレーニとリッチャレッリ、そしてアバドにはかなわない。

 ある意味、自分にとって他の選択肢のない、好きなのに哀しい名作オペラ。
2002年プリミエの簡潔でスタイリッシュなP・シュタイン演出は、アバドも同年フィレンツェで取り上げてる。
ウィーンのこの前のプロダクションが1984年からのスカラ座のストレーラーのもので、アバドはウィーンで20回指揮。

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ハンプソンも実に立派だし、メーリ始め、ほかの諸役もみんないい。
ピドさんの勘所を押さえたオペラティックな指揮もよい。
でも、これでまたケタ違いのアバド盤と2度の実演体験の素晴らしさが再確認できてしまう、ある意味感動的な追体験ができた稀有の事例でありました。

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 プッチーニ 「蝶々夫人」 新国立劇場 2019

時間切れ前に早朝から涙。
新国のストリーミング配信で高校生のための鑑賞会のもの。
奥ゆかしく、美しい所作にあふれた和の「蝶々さん」。
歌はこれ以上のものはたくさんあるだろう、でもプッチーニの思い描いた「蝶々さん」の本質を日本目線で描いたものは、やはりいい。

演出の栗山さんは、海外の違和感あるものを正そうと、日本的なものになりすぎると、かえって違う結果になってしまうと語る。
シンプルで、装置も少なく、動作も少なめ、光と影をうまく使った美しい舞台は正解かと。
つつましく、涙誘うスズキの山下さんがステキ。

土足でどかどか居間にあがるピンカートン、美しくはためく星条旗。これもアメリカだ。
いまのアメリカの風潮からして、かの国ではこのオペラの上演は難しい局面となったと思う。
 またまた、11年前の新国での泣き虫オジサンの鑑賞記録を貼っておきます。

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 ヤナーチェク 「カーチャ・カバノヴァ」 ウィーン 2017

ウィーンのヤナーチェクはいい。鋭角にならない木質の音色がこの作曲家独特の語法にもぴったり。
夢見るカーチャの憧れと自制の葛藤が、優しい旋律とリズムの刻みで見事に表出。
音はずっと聴いてきたけど、多くの登場人物と覚えきれない名前でややこしかった 。

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映像で字幕もあって、ほぼ十全の理解が。
ありがたき配信。
NYと思しき都会に設定を変えても、人目を気にし封建的な社会があり、でも自分は勝手に行動したり、そこから飛び出す前向きな人、そしてそこに忠実にあろうとしつつも絡めとられてしまい、破滅してしまう人・・・・

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ヤナーチャクの人間目線は厳しくも優しい。
しかし、ラストはむごさを際だたせた演出だった・・・
デノケは、こうした薄幸と危うさを伴った役を歌わせると完全だ。
ヘンシェルの憎々しさも見た目からして適役。
2幕の二組の逢引はトリスタンみたいで、ほんと美しかった。 

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歩き回って早朝サントリーホール。

徐々に、諸所、対策を施しながら開始した演奏会。

しかしながら都内の感染者数はまたも急増。
でも、その中身の分析や、実体の公表が必要で、数字だけで委縮しては、また経済や文化の活動も停滞してしまう。
経路と年代もしっかり公表して欲しいものだ。

ワタクシは、かかると一番やばいタイプに属してます・・・・

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2020年7月 5日 (日)

コープランド 交響曲第3番 ティルソン・トーマス指揮

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お台場の対岸、レインボーブリッジの芝浦側にある公園から。

この橋、カタカナ好きの都知事が、赤くしたりしてましたが、そうしたくなる気持ちもわかる、実に見栄えのいい橋です。

一番上は首都高、その下が一般道路と歩道、新交通線ゆりかもめ、ということで、車と電車と人間も通るすごい橋。
何度か、歩いて対岸に渡ってますが、高いところがやや苦手なので、ものすごい恐怖を感じます。
足下に海がもろに見えるし、車の振動と風圧も結構くる。
心臓の弱いかたは、おやめになったほうがいい。

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話は変わって、7月4日は、アメリカ合衆国の独立記念日でした。

ホワイトハウス様から、トランプ大統領のツィート画像をお借りしました。

Independence Day ~ 日本人にはわからないけど、この言葉はきっとアメリカ人の誇りと気概を高めるものでありましょう。

244年目の今年、アメリカはおそらく建国以来の混沌に陥っています。

その混沌を整理すると、
①覇権国としてのしてきた中国との経済摩擦。
②新型コロナ肺炎の蔓延。
③警官の黒人容疑者圧殺を契機とする人種差別を起因とするさまざま動き
 これが細分化、最初はANTIFA =アンチファシスト、つぎは、Black Lives Matterと、より広義の人種差別反対運動になり、全米でデモが起きて、さらに見境のない連中が暴徒化。
反警察の動きも顕著になり、警察官もやってらんないとして辞めてしまう動きも。
しかし、なによりも、白人への報復がひどくて、見るに耐えない残酷な映像もネットで見ることとなりました。
杖をついた高齢女性の顔をすれ違いざまに殴り、卒倒させる若い黒人男性など・・・
民族も色も関係なく、みんな星条旗のもとにひとつだったのに・・・・

アメリカが好きな自分、憧れた自分。
こんなの見せられて泣きました・・・・

やがて、一部の市のエリアが占拠され無法地帯化。
無法地帯化したのは、シアトルだったが、ここは警察が頑張って排除。
しかし、その連中は、違うところに移動してあらたな拠点を築いた・・・

①~③の混沌には、いずれも流れがあり、意図があるとしなくてはなりません。
秋の大統領選挙が迫っていることと、①~③はリンクしてます。
これまでの秩序を変えてしまおうとする動きは、世界へ・・・・

当ブログの趣旨からしたら、もうこれ以上は触れません。

ただひとつ、言えることは、「Make America Great Again!」だ。
アメリカもいろいろと悪どいし、なにかとあるが、でも自由と民主の旗印の国だ!
日本を負かせたアメリカが、ずっと強くあって欲しいんだ。

そんな気持ちと、アメリカへのエールを込めて、コープランドの交響曲を。

 コープランド 交響曲第3番

  マイケル・ティルソン・トーマス指揮 サンフランシスコ交響楽団

            (2018. @サンフランシスコ)

この演奏は、サンフランシスコ交響楽団の公式ネット配信で聴いたものを録音したものです。
サンフランシスコ交響楽団の音質は、驚くほど優秀で、CDで聴くのとなんら変わりありませんでした。
4つの楽章からなる本格的な交響曲で、1944年、まさに我が国との戦争も勝機も見え大転換中の時節で、当然に愛国的な雰囲気・要素にあふれてる。
勝ったものの強みといえば、それっきりですが、でも、自由と民主主義を第一に歌うアメリカの建国精神が、しっかりと刻まれた、そして我こそは、その自由と民主主義を守るんだ的なヒロイズムと、絶対なんだという明るい肯定主義、そんな雰囲気がこの曲にはあります。

でもなんたって、この交響曲は、自作の「市民のためのファンファーレ」が1楽章で、その片鱗が、終楽章ではそのまましっかりと鳴り響くことがキモで、終楽章では、ワタクシ日本人でもまっこと感動しますし、その雰囲気のまま最後のフィナーレを迎えるときには、はなはだ感動します。
サンフランシスコの聴衆の熱狂ぶりも加えて感動。

やっぱり、アメリカ人の心に火を灯す音楽なんですな。

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バーンスタインのDG盤で記事にしようと思ったけど、ところがCDが見当たらない。
最近、管理不行き届きのせいか、行方不明の音源が多い・・・・悲しい。

でも、ともかく頑張れアメリカ!
負けるなCに(意味深)

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お台場から左に転じれば、オリンピックの選手村と、その先の左には豊洲市場も見えます。

本来なら真っ最中、でも、もうね、オリンピックは来年も無理かも・・・それでいい。

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2020年7月 4日 (土)

ハウェルズ チェロ協奏曲 ジョンストン

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鮮やかなとりどりの紫陽花が旬です。

連日の雨でふさぎがちな日々に、ちょっと癒しを与えてくれます。

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 ハウェルズ チェロ協奏曲

   チェロ:ガイ・ジョンストン

 クリストファー・シーマン指揮 ブリテン・シンフォニア

     (2018.12~2019.1 @キングズカレッジ、ケンブリッジ)

英国作曲家ハウェルズ(1892~1983)は、私の大好きな作曲家のひとりで、ヴォーン・ウィリアムズやフィンジに通じる叙情派。
過去記事で何度も書いてますが、42歳で、最愛の息子をポリオで突然に亡くしてしまうことから、陰りを帯びたシリアスな作品を書くようになった。
それまでは、田園情緒あふれるオーケストラ作品や、室内作品、瀟洒なピアノ曲などを中心に書いてます。

グロースターシャーで、家族と過ごした夏、9歳の息子マイケルを失ってしまい、満身創痍となったハウェルズ。
その気持ちを切り替えるため、さらにその思いを照射するためにもと、娘のウルスラは、父に作曲に戻るように勧めました。
そして出来上がったのが「楽園讃歌」で、まだ息子が存命中だった1933年から手掛けていた後のチェロ協奏曲。

ただ、チェロ協奏曲は、協奏曲としての形を結ぶことができず、「チェロと管弦楽のための幻想曲」という17分あまりの作品として完成される。
続く2楽章は、チェロとピアノスコアだけが残されることとなり、それを1992年にクリストファー・パーマーが補筆完成。
この作品は、チェロ協奏曲の2楽章ということでなく、「チェロと管弦楽のための挽歌」という曲として残されることとなります。
パーマーは、作曲家・プロデューサーとして多くの仕事をなしており、英国作曲家たちの作品を掘り起こしたり再生したりするばかりか、執筆家としても数々の作曲家について残してます。
残念ながらパーマーは1995年に49歳で亡くなってしまう。

パーマーの死でその先がなくなってしまったチェロ協奏曲の完成。
ハウェルズ財団のサポートを得て、今度はハウェルズの研究者でもあり、オルガン奏者でもあったジョナサン・クリンチが「幻想曲」と「挽歌」をそれぞれ1楽章と2楽章とすることで、それぞれとの整合性を第一優先にした第3楽章を創作しました。
2010年から、ラター、ロイド・ウェッバー、ペインなどの助言を受けつつ完成させ、2016年に、今回の演奏者ガイ・ジョンストンのチェロによって初演されております。

以上が、この作品の生い立ちで、CD解説書などを参照しまとめました。

第1楽章は、モダンな雰囲気のなかに、痛切なペシミズムと哀愁を感じさせるもので、少しばかり受け止めは重たいです。
でも第2楽章になると、その気分も救われます。
憂鬱と孤独が何故だか心地いい、そんな癒しの音楽で、ともかく美しい。
 そして前ふたつの楽章を統合しつつ、エネルギッシュな気分に押される前向きな音楽となった3楽章。
クリンチ自身も語ってますが、ウォルトン風でもあります。
悲しみと、ぶつけようの怒りや痛みを開放するような、そんな爽快さもありました。

私には慣れ親しんできた、ハウェルズの作風がしっかり投影されている立派なハウェルズ作品と思えました。
これも、クリンチの言葉ですが、ハウェルズはチェロを男性の声とみなし、その声はまさに作曲者の声となっていると語ってます。

今回聴いた、新しい録音は、教会での録音でもあり、響きがとても豊かで、でも音の芯はしっかりとしている優秀なもの。
演奏も初演者だけあって大いに共感しながらのもので、オケとともに音色もキレ味も素晴らしいと思いました。

当CDは2枚組で、この余白にはオルガン作品が、もう1枚にはテ・デウム、ミサ曲、マニフィカトなどの宗教作品が収められてます。
この合唱宗教作品は、ことのほか美しく、いずれの機会にまた取り上げたいと思います。

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 「幻想曲」と「挽歌」は、こちらのヒコックス盤にも収められていて、これが世界初録音でした。

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ハートのような紫陽花見つけました💛

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