オペラストリーミング大会の軌跡 ⑫
梅雨だけど、朝顔も咲きます。
豪雨かんべん、でも、週間天気に晴れマークが出るようになって、ちょっと嬉しい梅雨明け心待ち。
で、まだまだオペラ見てます。
ほぼMETのみになってしまった。
Youtube配信では、ロイヤルオペラ、グラインドボーン、シュッツトガルト、フランクフルトなどがまだまだ継続。
忙しいよ・・・・
ヴェルディ 「ドン・カルロ」 ウィーン 2017
スルーしようかと思ってたけど、観てみた。
ありがとうウィーン。
まさかの、僕らのツィトコーワたんが出てるじゃない!
しかも、アバド息子の演出。
しかし、躊躇したお名前は、ドミンゴとフルラネット。
ドン・カルロそのもののドミンゴに違和感、最盛期を過ぎたキレのないもごもごしたフィリッポ2世。
そのふたり、やっぱり好みじゃないけど、ツィトコーワにストロヤノヴァ、ヴァルガス君がよろしい。
アバド息子、もっと精進望む。
ガン撲滅のスターチャリティ・レコード(1976)
アバドとロンドン響で、ドミンゴが2役を歌うロドリーゴの死は、擦り切れるほど聴いた。
いまバリトン歌手となったドミンゴには感じられない鮮烈な深い声があった。
ドミンゴのここ数年のバリトンには、テノールのドミンゴの延長でしかないテカテカぶり。
ムソルグスキー 「ホヴァンシチナ」 ウィーン 2014
この年プリミエ、ショスタコーヴィチ版による上演で、3管編成の分厚い響き。
ラストの分離派教徒たちの殉教を覚悟したシーンはフォルテで悲劇的に終わる。
アバドの1989年の上演では、最後だけストラヴィンスキー版を採用し、静かに、それこそボリスのように終わる。
足場だらけで、出たり引っ込んだり、上がったり降りたり、脱いだり着たりで、なんだかなぁ?の印象。
垂直線の動きばかりで、人物たちは横でほとんど交わらない。
閉塞感はよく出てた。
最後はみんな沈んで、オペラの開始のシーンが回帰した。
変わらぬロシア、終わりも始まりもつながってるってことか。
表題役のフルラネットがよかった。
けど、途中から声がおかしくなり、幕間に喉不調的なアナウンスあった。
しかし、絡んだ喉が、ドスと凄みがでるとは皮肉なもんだ。
ビシュコフさんの指揮ステキ。
マルファ役のマクシーモワがなかなかよし、気に入った。
アダムズ 「ドクター・アトミック」 MET 2008
2005年のアダムズ作品。
文字通り、原爆の開発者オッペンハイマーが主役で、日本への原爆投下の半月前、ニューメキシコ州での実験葛藤を描いたオペラ。
アダムズならではの繰返し音型と、色彩豊かな音色の洪水に酔える・・が内容がシリアスすぎだし日本人には辛い。
ドイツの原爆開発を恐れて始めた計画、しかしそのドイツは降伏したのに、原爆を日本に、というワシントンの命。
科学者たちは疑念にとらわれ、神への祈りや心の葛藤にとらわれる。
日本地図、廣島の市街図、博士が語るナガサキ、ヨコハマ、ナゴヤ、ヒロシマ・・という言葉
悲しみのラストは実験投下後、白い光のなかに日本語で女性の声。
「お水をください、谷本さん助けてください。子供たちが・・・」という言葉が繰り返され幕となった・・・
ここまでやるなら、「Dr.アトミックⅡ」を作って、原爆投下後の開発者・為政者・日本を描いて欲しい!
辛かった緊張のオペラ。
ベッリーニ 「夢遊病の女」 ウィーン 2017
「夢遊病の女」2017ウィーン
マッターホルンの麓の洒落たホテル。
演出の読込みも、で、あのデセイだったから気の毒だけどヒロインも及ばなかった。
それでもウィーンの歌姫ファリーちゃん、可愛い、頑張った。
ナザロワも可愛い。
相変わらずのフローレス、完璧でにくらしいくらい。
サン=サーンス 「サムソンとデリラ」 2018 MET
METの好む美男美女、しかし歌唱も完璧なアラーニャとガランチャ。
「あなたの声に心が開く」はほんと素晴らしかった
しかし、禍々しいバッカナーレは気持ち悪い。
オラトリオ的なこのオペラ、難しいな。
マスネ 「マノン」 MET 2019
昨年秋の新しいマノンは、リゼッテ・オロペサ。
明晰な声、確かな技量に素直な歌唱は誰しも好ましく思う。
2006年の「つばめ」での印象がずっと残ってて、以来いろんなちょい役で出てた彼女、世界的にブレイク!
キューバの血を引くアメリカ歌手。
一挙に好きになりました。
デグリューは、同じアメリカのファビアーノ。
初聴きだけど、この声も驚きで、青臭い情熱とシャイな感じは褒めすぎだけど、カレーラスを思わせる。
カツラもお似合いだ・・・
あとポーランドのルキンスキーのレスコーもよかったし。
ラストのぼろぼろのマノン、冒頭の田舎出のおぼこ娘を思い出し、思わず涙す。
アメリカは今、ずたずたで大変だけど、こんな素晴らしいオペラハウスを築くことができたのも、血も色も関係ない理想国家あってのものだったはずだ。
頑張れ、アメリカ!
ヴェルディ 「ファルスタッフ」 ウィーン 2016
もしかしたら、最後のウィーンの無料ストリーミング。
オオトリとして、人生の境地を描いたシェイクスピア劇のヴェルディオペラ。
素晴らしき選択。
マクヴィガーのシェイクスピア時代設定の幻想的舞台が素晴らしい。
ファルスタッフの化身、マエストリ!
ちょっと重いけど、メータの指揮。
数年後のいま、旬になった歌手もよし
オテロと並ぶ、ヴェルディの行き着いた自在の作風のオペラは、偉大です!
今日はウィーンのファルスタッフ。
レコード時代買えなかったオペラはCD時代に外盤で。
対訳シリーズのお世話になった。
訳によっては、いまやご法度のセリフも
今日のMETは「鼻」
ショスタコーヴィッチ第1交響曲のあとのオペラ。
夕方鑑賞予定、それまで鼻伸びそう。
ショスタコーヴィッチ 「鼻」 MET 2013
大野和士も絡んだリヨン、プロヴァンスとの共作。
ショスタコの若き日の作品、アバンギャルドな作風で、当時レニングラードという西欧の風の吹きやすい場所で得た西側の最新の音楽が盛り込まれてる。
床屋さんに鼻を切られ、その鼻が権威や地位を持って歩きだし、事件も起こす。
最後は戻った鼻に浮かれる主役。
「どうしてこの作者たちは、祖国に対して何の役にたたない題材を取り上げたのか?」というシニカルな虚しい最後のオチがあって、ショスタコならでは。
前衛と体制賛美の第2交響曲も同時に作曲で作風は同じ。
この難役を得意にするジヨットというバリトン、すごいわ。
「ルル」と同じケントリッジ演出で、切り絵を映像にしたマッピングが、ここではうまく機能してたと思うし、描きにくい登場物の「鼻」をうまく処理できた感じ。
ともかく面白かった!
観客たちも、ときおり爆笑。
劇場で観てみたいオペラ!
雨ばっかり、寒いし、夏が恋しい、かも。
まだ少し続くよオペラストリーミング大会。
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コメント
LP時代にも安さと盤質で輸入盤を求めることしばしばでしたので、やはり音友の新書判オペラ対訳シリーズは随分買い求めました。あれは'63年のベルリンドイツオペラの初来日以来、演目に合わせて発刊されていたらしく上演に携行するにも丁度で。
その中でもワーグナー担当で小説「ベートーヴェン詣り」なども読んでいた高木卓氏が戦前、芥川賞を突っ返して菊池寛を激怒させていたことを知り、当時('70年代)の文学少年としては驚嘆しました。まあその一件以来、主催側が受賞の意志ありやなしやを事前に確認するようになったそうですが。つい先日も毎度の築地の料亭で選考会がありましたが、大昔は何か落ち着かない気分でその日を過ごしたものでした。今はもうまるで別世界の出来事で!?
投稿: Edipo Re | 2020年7月17日 (金) 10時04分
なるほど、この対訳本の巻末のリストを見るとベルリンドイツオペラに始まってますね!
いまはネットで翻訳もかなり見れますので、対訳本は日陰者になってしまいました。
一連のオペラ配信では、パソコン画面をふたつに割って、対訳を見ながらオペラを観るという芸当を確立しました(笑)
芥川賞のお話し、まったく存ぜぬ内容で驚きです!
選考会の写真を見てみましたが、毎年同じ絵面ですね。
新喜楽という料亭でしょうか、調べたら目の玉飛び出るようなお値段で・・・・
投稿: yokochan | 2020年7月19日 (日) 10時20分