ハウェルズ チェロ協奏曲 ジョンストン
鮮やかなとりどりの紫陽花が旬です。
連日の雨でふさぎがちな日々に、ちょっと癒しを与えてくれます。
ハウェルズ チェロ協奏曲
チェロ:ガイ・ジョンストン
クリストファー・シーマン指揮 ブリテン・シンフォニア
(2018.12~2019.1 @キングズカレッジ、ケンブリッジ)
英国作曲家ハウェルズ(1892~1983)は、私の大好きな作曲家のひとりで、ヴォーン・ウィリアムズやフィンジに通じる叙情派。
過去記事で何度も書いてますが、42歳で、最愛の息子をポリオで突然に亡くしてしまうことから、陰りを帯びたシリアスな作品を書くようになった。
それまでは、田園情緒あふれるオーケストラ作品や、室内作品、瀟洒なピアノ曲などを中心に書いてます。
グロースターシャーで、家族と過ごした夏、9歳の息子マイケルを失ってしまい、満身創痍となったハウェルズ。
その気持ちを切り替えるため、さらにその思いを照射するためにもと、娘のウルスラは、父に作曲に戻るように勧めました。
そして出来上がったのが「楽園讃歌」で、まだ息子が存命中だった1933年から手掛けていた後のチェロ協奏曲。
ただ、チェロ協奏曲は、協奏曲としての形を結ぶことができず、「チェロと管弦楽のための幻想曲」という17分あまりの作品として完成される。
続く2楽章は、チェロとピアノスコアだけが残されることとなり、それを1992年にクリストファー・パーマーが補筆完成。
この作品は、チェロ協奏曲の2楽章ということでなく、「チェロと管弦楽のための挽歌」という曲として残されることとなります。
パーマーは、作曲家・プロデューサーとして多くの仕事をなしており、英国作曲家たちの作品を掘り起こしたり再生したりするばかりか、執筆家としても数々の作曲家について残してます。
残念ながらパーマーは1995年に49歳で亡くなってしまう。
パーマーの死でその先がなくなってしまったチェロ協奏曲の完成。
ハウェルズ財団のサポートを得て、今度はハウェルズの研究者でもあり、オルガン奏者でもあったジョナサン・クリンチが「幻想曲」と「挽歌」をそれぞれ1楽章と2楽章とすることで、それぞれとの整合性を第一優先にした第3楽章を創作しました。
2010年から、ラター、ロイド・ウェッバー、ペインなどの助言を受けつつ完成させ、2016年に、今回の演奏者ガイ・ジョンストンのチェロによって初演されております。
以上が、この作品の生い立ちで、CD解説書などを参照しまとめました。
第1楽章は、モダンな雰囲気のなかに、痛切なペシミズムと哀愁を感じさせるもので、少しばかり受け止めは重たいです。
でも第2楽章になると、その気分も救われます。
憂鬱と孤独が何故だか心地いい、そんな癒しの音楽で、ともかく美しい。
そして前ふたつの楽章を統合しつつ、エネルギッシュな気分に押される前向きな音楽となった3楽章。
クリンチ自身も語ってますが、ウォルトン風でもあります。
悲しみと、ぶつけようの怒りや痛みを開放するような、そんな爽快さもありました。
私には慣れ親しんできた、ハウェルズの作風がしっかり投影されている立派なハウェルズ作品と思えました。
これも、クリンチの言葉ですが、ハウェルズはチェロを男性の声とみなし、その声はまさに作曲者の声となっていると語ってます。
今回聴いた、新しい録音は、教会での録音でもあり、響きがとても豊かで、でも音の芯はしっかりとしている優秀なもの。
演奏も初演者だけあって大いに共感しながらのもので、オケとともに音色もキレ味も素晴らしいと思いました。
当CDは2枚組で、この余白にはオルガン作品が、もう1枚にはテ・デウム、ミサ曲、マニフィカトなどの宗教作品が収められてます。
この合唱宗教作品は、ことのほか美しく、いずれの機会にまた取り上げたいと思います。
「幻想曲」と「挽歌」は、こちらのヒコックス盤にも収められていて、これが世界初録音でした。
ハートのような紫陽花見つけました💛
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