« ベートーヴェン 交響曲第4番 | トップページ | シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」 ベーム指揮 »

2020年10月11日 (日)

R・シュトラウス「アルプス交響曲」 ダウスゴー指揮

Ninomiya-sunset-01

ある日の壮絶な夕焼け。

いつも書いてますが、夕焼け大好き。

こうした赤紫の色のときは、雨が降る前夜ともいわれるそうで。

Ninomiya-sunset-02

夕焼け2態。

こちらは、翌日は晴れたけど、でも雲が低いのと、それも入道雲的なものが遠くに見えるので、雨がパラっと降ったりもしました。

いつになく気象予報士的な巻でした。

Strauss-alpen-dausgaard

  R・シュトラウス アルプス交響曲

 トマス・ダウスゴー指揮 シアトル交響楽団

       (2017.6.15,17 @ベナロヤ・ホール、シアトル)

シアトル交響楽団の自主製作レーベルからの1枚。
現在、音楽監督のダウスゴーの指揮によるシュトラウスを聴く。

前項のベートーヴェンの4番でも取り上げた指揮者ダウスゴーを、このところよく聴いてます。
繰り返しますが、BBCスコテッシュ交響楽団の首席でもあることから、BBCの放送にのることも多く、そのライブをたくさん聴いてきたし、母国デンマークやスウェーデンのオーケストラとの共演盤も集めつつあります。

その特徴は、基本はテンポは速めをとり、古典・ロマン派ではビブラート少な目な演奏様式をとり、一方、後期ロマン派では、テンポ速めは同じくして、情熱も加味した熱めのサウンドを聴かせ、お得意の現代作品では、緻密かつ分かりやすい音楽を展開してます。
総じてスッキリ系でありつつ、情熱派でもあり、そんなイメージをダウスゴーに持ってます。

コンサートや録音のプラグミングも巧みで、Plomsでは、フィンランドの伝統音楽と5番の交響曲のオリジナル版を組み合わせてたりもしましたし、このCDでも、アルペンの前に、デンマークの作曲家ランゴー(1893~1952)の音楽劇の前奏曲を取り上げてます。
ランゴーの「アンチキリスト」という作品は、反キリスト者数人が語る受難曲的な作品で、何度も改訂を加えた曲のようですが、ここでは、その原典版の前奏曲初録音とのこと。
 そして、ニーチェの「アンチキリスト」からの影響もありとされる「アルプス交響曲」。
ランゴーの音楽も、このところBBCで交響曲とか声楽作品を聴いてるけれど、シュトラウスの音楽にも近似性を感じるもので、わたくし、ダウスゴーによる交響曲全集と「アンチキリスト」を発注済みで入荷待ちであります。
コロナで欧州からの物流は遅れがちなのか、なかなか来ません。。。

  --------------------

シアトル響の本拠地でのライブ録音、まずは音が目覚ましくよろしい。
こうした作品は、まず録音がよくないと始まらない。
冒頭の下降音階による低弦の唸り、爆発的なフォルテも鮮やかなホールトーンも、いずれも心地よく楽しめる。
そしてオーケストラも抜群にうまい。
シュウォーツが長く指揮者を務め、数々の録音があるけれど、メジャーも顔負けの力量と確信。

Dausgaad

ダウスゴーのすっきり感とスピード感のよさは、演奏時間を見ると45分ぐらいで、時間からすると早いが、聴くとさほど快速に感じない。
同じぐらいの演奏時間では、ショルテイ盤があるけど、あちらはザッハリヒともとれるくらいの印象を受けるけれど、ダウスゴー盤は、ストレートな解釈ながら、各所に情熱的な歌と、各声部への緻密な心配りから、いろんな楽器がよく聴こえる透明感もあるので、存外に味わいが深い。
昨年のBBCスコテッシュ響との来日で聴いたマーラー5番の指揮ぶり。
かなり大きな振り姿で、でも、各奏者へのキュー出しも細かく、細かく振り分けているのが印象的でした。
アダージェットは極めて美しく、聴きつくしたこの作品で、思わず落涙してしまうほどでした。

そんなきめ細かな指揮が思い浮かんでくるようなアルプス交響曲の演奏で、意気揚々と山頂に登りつめるまでは、実にスピード感があって爽快。
しかし盛大に盛り上がるか所よりは、歩みを止めて風景を愛でるような場面や、急ぎ下山したあと、しみじみと山登りを振り返るようなシーンがとても味わい深く、爽やかな達成感を聴く私にも与えてくれるような、そんな共感できる演奏なのでした。

マーラー10番も特質大の素晴らしさで、ダウスゴーとシアトル交響楽団のコンビ、これからも期待大なのですが、コロナといい、なにかとシアトルが怪しい雰囲気なのがちょっと心配。
オーケストラの活動も徐々に再開しているようだが、デンマークに住むダウスゴーは、しばらくは渡米できないかもしれない。

 ---------------------------

Seatlte-07

アメリカのオーケストラシリーズ。
シアトル交響楽団は、1903年より活動を開始したオーケストラで、初代指揮者は、作曲家のヘンリー・ハドリーで、そこそこの作品を残していて気になる存在です。
そのあとは、クリーヴランド管の初代指揮者でもあるニコライ・ソコロフ。
そして、なんとトマス・ビーチャムが短期ながら在位し、マニュエル・ロザンタールとなじみの名前が続きます。
シアトル響の実力を高め、オペラ劇場までも創設したミルトン・ケイティムスが22年に渡り指揮者を務めまして、このコンビのレコードもあるようだ。
そのあとは、読響にも来てビゼーの録音のあるライナー・ミーデル。
そして、このオーケストラになくてはならない指揮者、ジェラード・シュウォーツが26年間君臨し、数々の録音でこのコンビの名声を高めました。
そのあときっとやりにくかったであろう後任は、フランス系のリュドヴィク・モルローで、現代ものやフランスものを特に取り上げ、自主製作レーベルにもかなりの録音があります。
シュウォーツとモルローを名誉指揮者に、2018年から音楽監督に就任したのがダウスゴー。

Seatlte-08

本拠地は市内中心部にあるベナロヤ・ホールで、1998年の開設。
大きな寄付寄せた慈善家の名前から付けられた名称で、アメリカっぽい。

   ----------------------------

Seatlte-01

 シアトル市は、アメリカ西海岸、ワシントン州の北西部に位置し、海と湖、そして山にも囲まれた美しい街として「エメラルドシティ」と呼ばれているそうな。
気候も年間通じてよろしく、夏は涼しく、冬はそれほどに寒くならない。
水運都市でもあることから、地政上、太平洋で向き合う東洋との海洋貿易の中心地でもあって、日本とのつながりも深い。

Seatlte-02

人口は74万人ぐらいで、実は昔から移民に寛容な都市だったので、もっといるんじゃないかともされてます・・・
もともとが先住のインディアン系の地域で、その酋長の名前に由来するのが、シアトルということらしい。
 そして、シアトルの名前を世界的にしているのは、ビッグネームの企業の発祥都市ということ。
ボーイング、マイクロソフト、アマゾン、スターバックス、シアトルベストコーヒーなどなど。
ニンテンドーアメリカもあることから、IT産業都市でもあるらしい。
でもなんといっても、マイクロソフトとアマゾンの存在が大きいですな。

音楽ではロック系のものが盛んで、ジミー・ヘンドリクスの出身地でもあり、ハートや、かつてのベンチャーズなんかも由来があるらしい。
スポーツでは、そう、イチローのいたマリナーズもここ。
バスケットボールもフットボールも強いチームがあるそうだ。

Seatlte-03

シアトルの南方には、ワシントン富士と呼ばれる4,300メートル級の「レーニア山」があり、市内からは雪を頂いたその姿が遠望できる。

Seatlte-04

山と海と湖に囲まれていることから、美味しいもの、ナチュラルなものもたくさん。
ワインは全米第2位の生産量とのことで、ビールではなく、フレッシュな白ワインでシーフードなどを頂いてみたいものです。

Seatlte-05

水辺の歴史ある有名なレストラン、雰囲気いいですね。

Seatlte-06

こんな食事なら日本人向けだし、ワタクシもOK!

    ------------------------

さて、いいことづくめのシアトルなんですが、ミネアポリスでの黒人致死事件を契機に、各地でデモや抗議活動、またANTIFAによる暴力的な事件も頻発。
シアトルでは、6月にBLM抗議デモから派生した動きが、自治区を作るまでになり、シアトル市内のキャピトル・ヒルというお洒落な店の集まる地域の一部を事実上占拠しました。
警察との衝突もありましたが、話し合いによる円満な解決を望むジェニー・ダーカン市長は強い介入を命じません。
その市長は元連邦検事で民主党でリベラル派。
自治区なので、公園を改造して農園としたりしてましたが、徐々に風紀も乱れ、治安も悪化し、銃撃事件も起きましたが、救急隊は警察を伴わないと危険なので動けないし、バリケードで封鎖されていて入れない。
そんな発砲事件も2つ続き、破壊活動や強盗も相次ぐようになり、自治区メンバー(BLM運動家)はさらに市長の家に押しかけ、警察の解体を直訴しようとしました。
これに恐れをなした市長は、ついに警察の介入を認め、自治区の解体を命令。
7月、約3週間で、自治区はきれいさっぱりと解放され、占拠してた連中は霧散しました。
解放の指揮をとったのは、この地区の警察署長で黒人女性というのも皮肉なもので、「彼女は平和的なデモは支持するが無法で野蛮なものは容認できない。黒人の命は大事だ。しかしもうたくさんだ、警察には地域社会を保護する責任がある」と強く語りました。
 まったくそのとおりで、BLM運動に名を借りた行き過ぎた暴力行為や、白人になにをしてもいい的な風潮は看過できません。
来月に迫った大統領選挙も絡んで、アメリカでは対立をあえて煽る動きはまだまだ続くことでしょう。
そして、10月に入ってシアトルでは、スターバックスが襲撃され放火される事件も起きて、また暴動が再燃しそうだとか・・・・

分断や民族の自主を促すことで、国が分裂し、喜ぶのはK産主義者ばかり。
この動きはヨーロッパにも、かたちを変えて日本にも及んでます・・・・・

さて長々と書いてしまいましたが、ひとまず落ち着いたシアトルですが、リベラル市長がいて、超大企業があって市民が意識高い系だったりするので、アメリカのいまの縮図みたいな都市だと思うのです。

でも大自然はウソつかない(インディアン風に)
レーニア山を調べたら、まるでアルプスの光景じゃないですか。

Seatlte-09

ネットでレーニア山の風景を見ながら、もう一度ダウスゴーの「アルプス交響曲」を聴こうじゃないか。

ついでながら、録音したアメリカのオーケストラによる「アルプス交響曲」
 ・ハイティンク&シカゴ
 ・ホーネック&ピッツバーグ
 ・ハーデイング&サンフランシスコ
 ・ラングレー&シンシナティ
 ・ルイージ&ダラス

アメリカ人は「アルプス交響曲」がお好き。

|

« ベートーヴェン 交響曲第4番 | トップページ | シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」 ベーム指揮 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ベートーヴェン 交響曲第4番 | トップページ | シューベルト 交響曲第9番「ザ・グレート」 ベーム指揮 »