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2021年4月18日 (日)

ドニゼッティ 「ドン・パスクワーレ」 ムーティ指揮

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3月31日、東京の上空の数か所に、ニコちゃんマークが描かれました😊

アクロバット・パイロットの室屋義秀さんが、空を見上げることで気分を良くして、明るくなりましょう、ということで実行したイベント。
これまで在住する福島や、栃木など、複数の場所で、スマイルマークを描き、文字通り笑顔を届けてきたそうです。

この日、情報を事前キャッチしたので、予定場所のひとつ、東京タワーの近く陣取りましたが、結構な上空でした。
でもたくさん集まった人々、みんな空を見上げて、ニッコニコでした!

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よくわからないかもしれませんが、黄緑色の桜です。

調べたら御衣黄(ギョイコウ)という品種だそうで、毎年気になってました。

ということで、関係はありませんが、当ブログには珍しいドニゼッティのオペラを。

というか、ドニゼッティ初登場です。

なんどもしつこく書いてますが、ヴェルディは早くから好んで聴いていたけれど、ヴェルディより前のベルカント系のオペラは、ちょっと苦手で、正直、食わず嫌いでした。
アバドのロッシーニが、アバドゆえの例外で、アバド以外のロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニは、「ルチア」と「ノルマ」以外は、まともに聴いたことがなかった。
 そして、何度も書きますが、コロナのおかげか、なんとやら、日々続いた世各地のオペラハウスのストリーミングで、あたり構わずに視聴しまくり、なんのことはない、なんでこんな素敵な世界に気が付かなかったんだろ、といまさらながらの開眼でした。
 そんな中から、楽しかった作品、「ドン・パスクワーレ」を。

オペラだけでも、70作以上もあるドニゼッティ(1797~1848)の決して長くない人生の、充実期・後期作品から取り上げ、そのあとは女王三部作などに挑戦してまいりたいと思います。

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  ドニゼッティ 「ドン・パスクワーレ」

   ドン・パスクワーレ:セスト・ブルスカンティーニ
   ノリーナ     :ミレッラ・フレーニ
   マラテスタ    :レオ・ヌッチ
   エルネスト    :イェスタ・ウィンベルイ
   公証人      :グゥイド・ファブリス

  リッカルド・ムーティ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
               アンブロージアン・オペラ・コーラス

      (1982.11,12 @キングス・ウェイホール、ロンドン)

   ドン・パスクワーレ:独身で富豪の70代
   マラテスタ:ドン・パスクワーレの有人で医師
   エルネスト:ドン・パスクワーレの甥
   ノリーナ :マラテスタの妹で、エルネストと恋仲

1842年に、ほぼ1か月半で完成させてしまった早書き。
というのも、1810年にステファノ・パヴェーシという戯曲家が書いた「セル・マルカントニオ」が初演され、同時に自分で作曲もしてオペラ化。
いまいち不評だったこの作品、台本をカンマラーノという作家がリメイクして、それが気に入ったドニゼッティが30年後にすんなりオペラ化したもの。
 内容は、当時のブッファものでよくある筋立てで、とりたたて目新しいものでないが、時代設定を変えたり、少しの解釈を施したりすると、皮肉の効いた風刺的なものにもなったりで、いろんな目線を見出すこともできるオペラだと思います。

そして、ドニゼッティの音楽は旋律にあふれ、どこまでも伸びやかで、聴き手を楽しい気分にしてしまいます。

いろんなサイトでその筋立てが読めますので、ごく簡略に。

ときは現代とあり、作曲当時の19世紀前半。

ドン・パスクワーレから美しい女性を嫁に、と頼まれていたマラテスタ。
自分の妹をそれに仕立てようと企て、老人はすっかりその気になりワクワクする。
甥のエルネストは、自分は結婚したいと申し出るが許されず、老人は、それより先に自分が結婚して財産もそちらに分与するから、おまえにはやらんよと言う。

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              (MET 兄と妹)

 マラテスタは、妹のノリーナがエルネストからの別れの手紙で悲しんでいるのを見て、ドン・パスクワーレとの結婚をしたてあげて、懲らしめようということになり、田舎育ちのおぼこ娘に扮することに。

パスクワーレ邸で、エルネストが悲しみに沈んでいる。

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             (Wien 結婚の儀)

一方、マラテスタに連れてこられたノリーナを一目見て気に入り、即座に結婚の準備ということになり、公証人が仕立てられ、さらにもう一人の公証人が必要とのことで、わけのわからないエルネストにそのお鉢がめぐってきて混乱。

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            (MET 嫁豹変の巻)

マラテスタが、そこはまあまあ、となだめ、正式書類が交わされると、ノリーナ態度豹変。
舘で働く人々の給金を値上げすると決め、買物もしまくるぞ、と息巻く。
エルネストも芝居とわかり、すっかり困ったドン・パスクワーレは嘆きと怒りごちゃごちゃに


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         (ROH 放蕩の限りを尽くす嫁)

ノリーナの買い物の金額は膨大で、ドン・パスクワーレは憂鬱になっていてノリーナと大げんか。
去り際にわざと落とした恋文をみつけ、呼ばれたマラケスタは浮気の現場に踏み込んで証拠をみつけるのが一番と進言。

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          (Wien 甘い夜に彼氏登場)

 夜になり、庭にやってきたエルネストは、甘いセレナードを歌い、ノリーナと二重唱。
ドン・パスクワーレが踏み込むが、エルネストは、すぐに姿をくらまし、地団駄を踏み、もうこりごり、こんな女とは離婚、エルネストに前から言ってた女性と結婚しなさい、ふたりに財産はあげると宣言。
 マラテスタは、エルネストを呼び、彼の恋人はノリーナだったことを話し、これまで仕組んだのが計略でしたとします。
善意から出た計略と認めたドン・パスクワーレ、最後は「万歳パスクワーレ」幕。

現実にはありえへん物語だけど、身の程知らずの金持ち爺さんもイカンですが、そのお年寄りをたぶらかすようにして、ひどいめに合わせるのも気の毒なものだ。
いまの世なら、パパ活して、本気になった、もしかしたら婚活中の中高年男性にさんざん貢がせて、わたし結婚しますの、とポイ捨てされちゃうみたいなもの。
まぁ、どっちもどっちか、やはり冷静に、自分をわきまえることが肝要かと・・・・
でも、このオペラでのドン・パスクワーレの描かれ方は、可哀想で、最後の最後にしか、いい人になれない。

 ムーティが70年代初め、注目株の指揮者として、ザルツブルク音楽祭にデビューして、指揮したのが「ドン・パスクワーレ」。
その十数年後、フィルハーモニアとフィラデルフィア、フィレンツェを手兵にしたムーティがスタジオ録音したもの。
まだまだ活きのいい時代だった頃のムーティ、序曲からして元気溌剌、飛ばしてます。
喜劇的なオペラとはいえ、一点一画もおろそかにしない厳格さも、この当時からムーティのオペラに対する姿勢は変わらず、ユーモアや愉悦感も欲しい感じはしますが、でも歌にあふれたドニゼッティの楽しい音楽がしっかりあり、そしてオペラティックな感興が律儀な演奏のなかにもしっかり息づいているのが、さすがのムーティ。

 もともと、フレーニの声質からしたらぴったりの役柄がノリーナ。
清廉であり、コケットリーでもあり、豊穣な声を堪能しました。
あと狂言回し的な存在の兄上、ヌッチもこうした役柄はほんとにうまくて楽しい。
大ベテラン、ブルスカンティーニも単体としてはいいし、わたしには懐かしい歌声なんだけど、同じバリトン同士のヌッチとの声の対比があまりよろしくないかもしらん。
 スウェーデンのテノール、ウィンベルイは、この頃活躍を始め、ここに抜擢されたが、美声でもしかしたらパヴァロッティを意識してたのかな、とも思わせましたが、イタリア人歌手たちのなかにあって、やや異質な部分も感じたりも。
その後、カラヤンにも重宝され、やがて声は重くなり、ついには最高のローエングリンやヴァルターともなったウィンベルイ。
早逝が惜しまれます。

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映像で観劇した「ドン・パスクワーレ」は、メットとウィーンのふたつと、音だけでコヴェントガーデン。

メトロポリタン 2010 レヴァイン、ネトレプコ、デル・カルロ、クヴィエチェン、ポレンツァーニ シェンク演出

ウィーン    2015  ピド 、ナフォロルニツァ、ペルトゥージ、プラチェトカ、フローレス ブルック演出

コヴェントガーデン 2019 ピド 、ペレチャッコ、ターフェル、ヴェルバ、ホテーア ミキエレット演出

メトは、シェンクの演出だけあって、原作に忠実な伝統的な演出。
最初は、こうした無難なものを見てからじゃないといけませんね。
ネトレプコは、歌に演技に元気いっぱいだけど、もうこの頃の彼女は声が重くなってきていて、軽やかさも求めたいところ。

実に面白かったのがウィーンで、ピーター・ブルックの娘さん、イリーナ・ブルックの演出。
現代に設定を置き、ドン・パスクワーレは実業家で、彼の営むバーのような店舗が舞台。
2幕冒頭の、トランペットの泣きのソロは、舞台に上がり、嘆き飲んだくれるエルネストの脇で演奏するミュージシャンとなっていた。
こんな風に随所に工夫が施されてあって、色彩的にもあざやかで、舞台映えがよろしい。

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  (ヴァレンティナ・ナフォロルニツァ)

フローレスが圧巻だったけど、4人のバランスがとてもよく、ナフォロルニツがとても可愛くて好き!
彼女は、同じブルックの演出で、ブリテンの真夏の夜の夢にも出ていて、そこでもかわゆかった。

音だけだけど、ピドの指揮が、ウィーンのものと同じくとてもよかったのがロイヤルオペラ。
ターフェルのドン・パスクワーレが、しっかりとバスで引き締めていて、聴きごたえあり。
話題のペレチャッコもよい。
画像を数枚みただけだけど、ミキエレットなので、これもまた見てみたい演出。

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ロッシーニ(1792~1868) ペーザロ出身(ボローニャの近く)
ドニゼッティ(1797~1848)ベルガモ出身(ミラノの北東)
ベッリーニ(1801~1835) カターニャ出身(シチリア島)
ヴェルディ(1813~1901  パルマ近郊出身(ミラノとボローニャのぐらい)

4人の生没年とその出身地を見てみましたが、ベッリーニだけ南イタリアの出身なんですね。
これから遅まきながら聴き進めていきたい作曲家たち。
しかし、時間がないねぇ~

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青空に浮かぶにっこりさん。

かなりあっという間にその笑顔を崩れて、なくなってしまう儚さもありましたよ。

またどこかの空に描かれることでしょう。

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緑の桜も、いまではとうに葉桜になってまして、今年の桜はめでる間もなく、あっという間に咲いて、散ってしまった感じ。


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コメント

愚生のレコード棚には、サラ・コールドウェル指揮ロンドン交響楽団、B・シルス、ドナルド・グラム、アルフレード・クラウス、アラン・タイタス他のEMI原盤のLP(EMI・Italiana,3C-165-03372~73)が、在るのみです(笑)。当時の東芝音工が、当然の如く?リリースを見送った、盤でありますけれども、豪勢な顔触れでドニゼッティの楽しいブッファを、満喫されて貰えるレコードかと存じます。お取り上げのムーティ、Decca原盤のケルテス唯一のイタリア・オペラとなった録音も、以前から一聽してみたいものと思いつつ、未だ果たせておりません。ドニゼッティは割りと肌に合う作曲家でして、『アンナ・ボレーナ』はヴァルヴィーゾにボニング、『愛の妙薬』がボニングにフェルロ、『連隊の娘』は仏語版がボニング、伊語版はカンパネッラと、『ルチア』はセラフィンのstereo、ボニング、ロペス・コボスと、大抵復すの盤を取り揃え、聴いているのですけれども、『ドン・‥』は何故か一組のみなのです。どうしてでしょうね(笑)。

投稿: 覆面吾郎 | 2021年4月21日 (水) 07時37分

シルスのEMI盤は、探したのですが見当たらず、こちらのムーティ盤を手にしました。
何と言ってもクラウスが聴きたいですし、METのストリーミングで、シルズのモノクロの映像もみまして、この役にぴったりと思ってました。
ご指摘のケルテスも昔から名盤とされてますね、聴いてみたいです。
 遅きに始まったドニゼッティですが、棚をみたら、「ルチア」は、コボス盤とモッフォ盤を持ってましたが、カラスはレコードのみ。
ほかも諸所収集中ですが、シルスとグルヴェローバ、サザーランドばかりです。

投稿: yokochan | 2021年4月22日 (木) 08時39分

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