バレンボイムの欧・露音楽
靖国神社の「みたままつり」2021、お詣りしてきました。
昨年は中止、今年は出店や音楽舞台、神輿などの奉納行事は一切なく、美しい幻想的な提灯と懸雪洞のみ。
立錐の余地のなくなるこれまでと違い、静かな境内は落ち行きあるものでした。
梅雨明け前夜、ほのかな月も美しかったです。
特に、この期間のみ、宮の中庭も拝観・参拝できまして、普段は入ることのできない場所だけに貴重な体験もできました。
仙台から奉納された七夕飾り。
今年は短くなり、しかし、よく見ると千羽鶴なんです。
中庭参観で授かった呼鈴守りには、「この国難に、一日も早い感染症の終息を祈念致します」とありました。。。
ほんとそう、みたままつりは、新入社員時代の会社が至近にあったのでそのときから行ってました。
あのときの賑やかさが戻ることを・・・・・
さて、音楽の方は賑やかに、若きバレンボイムに誘われて、旅気分でいきましょう♬
R=コルサコフ スペイン狂詩曲
ダニエル・バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団
(1977.3 @オーケストラホール、シカゴ)
シカゴの音楽監督になるまえに、70年代後半に、DGへヨーロッパとロシアの音楽を特集したレコードを数枚録音しました。
私はロシア盤だけレコードで購入し、他はCD時代になって聴きました。
ということで、まず、第1弾のロシアへまいりましょう。
「はげ山」「ダッタン人の踊り」「ロシアの復活祭」「スペイン狂詩曲」の4曲。
これがまあ、明るくて楽しくて、レコードの鳴りもよくて大学生だった自分は毎日聴いたものです。
ロシアの憂愁やおどろおどろしさ、暗さなどは皆無。
あっけらかんと、どっかーーんと、大音量で楽しむに限る。
シカゴの名人芸を、35歳の若きバレンボイムが、自ら楽しむがこどく堪能してる感じであります。
バレンボイムは、以外やロシアものが得意。
ことに、オペラを存外に好んで指揮していて、コルサコフだと「皇帝の結婚」、「エウゲニ・オネーギン」、プロコフィエフの「賭博者」に「修道院での婚約」なども取り上げてます。
いずれも、ロシアというか、ドイツ目線の演奏に感じますが、才気あふれる指揮であることには変わりなく、多彩な人だと実感。
シカゴの録音はDGのものが一番好き。
当時のデッカはメディナテンプルで、DGはオーケストラホール。
音の分離の良さや重厚さではデッカ、響きの良さとやや乾いたホールトーンも楽しめる雰囲気があるのはDG。
そんなイメージをずっと持ってます。
この時期の、アバドやジュリーニの録音もそうですね。
バレンボイムとシカゴは、後にエラートに録音するようになりましたが、演奏も録音も、DG時代の方がはるかに好きです。
ブラームス ハンガリー舞曲第1、3、10番
ドヴォルザーク スラヴ舞曲 op.46-1、8
ダニエル・バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団
(1977.11 @オーケストラホール、シカゴ)
これまたシカゴのゴージャスサウンドが楽しめるけれど、こうして聴くとやはり、ブラームスはバレンボイムの性に合ってる感じ。
東欧音楽の1枚は、あと、「モルダウ」と「レ・プレリュード」が併録されてます。
リストもバレンボイム向きなだけに、なかなかシリアスな名演になってます。
アンコールピースみたいないずれの曲だけれども、真剣勝負のシカゴはここでもすごい。
ハンガリー舞曲では、独特のうねりのような情念も感じられ、オケももしかしたら古き良き過去の大指揮者を思いつつ懐かしんでる風情があり。
一方のスラヴ舞曲は、構えが大きく、チャーミングさ不足か。しゃれっ気が欲しいくらい。
そういえば、バレンボイムはドヴォルザークを振りませんね、新世界すらない。
メンデルスゾーン 「真夏の夜の夢」序曲
ダニエル・バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団
(1979.3 @オーケストラホール、シカゴ)
ドイツ名曲集は、この「真夏の夜の夢」に加えて、「フィガロ」「オベロン」「舞踏への勧誘」「ウィンザーの陽気な女房たち」そして、シューマン全集から「マンフレッド」序曲が加えられてます。
さすがにドイツものとなると、バレンボイムとシカゴの面目躍如で、どっしりと構えつつ、堂々たる音楽の運びで充実してます。
フィガロやウィンザーには、より軽やかさを求めたくもありますが、オベロンと真夏の夜は、ロマンティックでドイツの森を感じさせ、単体で聴くオーケストラピースとしては完結感にもあふれていて実に気分がよろしくなります。
ちなみに、この録音の5年後に、シカゴ響はレヴァインとこの作品を録音してますが、そちらは軽やかで威勢のよさを感じます。
バレンボイムは、より堂々としていて、重たいです。
ワーグナーもこの時期、のちのエラートの時代でなく、シカゴで録音して欲しかったものです。
サン=サーンス 交響詩「死の舞踏」
ダニエル・バレンボイム指揮 パリ管弦楽団
(1980.10 @パリ)
1975年にパリ管の首席に就任していたバレンボイム。
当然のように、フランス管弦楽作品は、パリ管。
しかし、寄せ集め感があって、既存録音のサムソンとデリラやベルリオーズなどからチョイスされてます。
「ローマの謝肉祭」「ベンヴェヌート・チェッリーニ」「ノアの洪水」「サムソンとデリラ」「魔法使いの弟子」などが収録。
シカゴから順番に聴いてくると、ここで明らかにオーケストラの毛色がまったく変わったのがわかります。
もちろん、録音の違いも大きいですが。
サラッとしてて、しなやかなサウンド。
バレンボイムの指揮ですから、重心はやや下にありますが、ヨルダノフのヴァイオリンソロも含め、木管のさりげないひと吹きも色艶があって、魅惑的です。
ドビュッシー、ラヴェルやフランク、ベルリオーズなど、パリ管時代に残してくれた数々の録音は、いまや達観の域にあるバレンボイムの若き貴重な遺産だと思いますね。
しかし、パリ管は、フランス人指揮者が首席にならないし、毎回、よく変わります。
ミュンシュ→カラヤン→ショルティ→バレンボイム→ビシュコフ→ドホナーニ→エッシェンバッハ→P・ヤルヴィ→ハーディング→マケラ
ディーリアス 「春はじめてのかっこうを聞いて」
「川の上の夏の夜」
2つの水彩画
「フェニモアとゲルダ」間奏曲
ダニエル・バレンボイム指揮 イギリス室内管弦楽団
(1974.5 @ハンブルク)
音楽旅は、大好きな英国へ。
パリから、ロンドンに着くと、音楽も演奏も、1枚ヴェールがかかったように、くすんでいる。
本格的な指揮活動は、イギリス室内管と。
いうまでもなく、モーツァルトの弾き振りからだったのですが、EMIで徐々にレパートリーを拡張。
「浄夜」と「ジークフリート牧歌」にヒンデミットを組み合わせた1枚なんて、最高だった。
ベルリンでも録音したエルガーを除くと、英国音楽の録音は、この1枚と、RVWの協奏曲のみかもしれない、ましてディーリアスはありえない。
「グリースリーヴス」「揚げひばり」、ウォルトン「ヘンリー5世」が併録。
のちに、RVWのオーボエとチューバの協奏曲も録音。
室内オケでありながら、恰幅のよさはバレンボイムならではですが、ひたすらに肩の力を抜いて慎ましい演奏に徹しているのがよかった。
時節柄、「川の上の夏の夜」に「水彩画」、「フェニモア」がことさらによろしく響き、窓から入り込む夏の風もどこか爽やかに感じるがごとくでありました。
指揮者としての日本デビューは確か、1971年で、こちらのイギリス室内管と。
モーツァルトを中心とするプログラムで、髪の毛はもじゃもじゃだった。
その時に、N響にも来演し、ズッカーマンとメンデルスゾーン、チャイコフスキーの4番を指揮してます。
テレビで見ましたが、あの時の指揮はよく覚えてます。
http://wanderer.way-nifty.com/poet/2006/09/post_4a42.html
あのときのごりごりした指揮ぶりとは別人の神妙さ。
懐かしい郷愁の響きもここでは感じます。
バレンボイムも若かった、イギリスのオケも味わいがあった・・・・
先ごろも、ピアノストとして来日し、ベートーヴェンを聴かせてくれたバレンボイム。
78歳、まだまだ活躍しそうな感満載のずっと精力的なこの芸術家は、音楽史上まれにみる存在であります。
ベルリン・シュターツカペレとは、もう40年近くになります。
また、このオーケストラを率いて来演して、オペラも含めて指揮をして欲しいと熱望します。
心落ち着く日がともかく恋しい。
若きバレンボイムによる音楽旅、楽しかった。
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コメント
いきなりの猛暑、お見舞い申し上げます。靖国神社のすぐそばの学校に12年通ったのですが、何故かあまり立ち寄ることもありませんでした。小学校入学式の後に待ち合わせていた満開の桜の下で微笑む祖母の姿のみが今も記憶に鮮明です。昨今は入学式には既に葉桜のようで。
数年前、16枚組の「アート・オブ・ダニエル・バレンボイム」と題したDG時代の初期録音のセットを購入しました。LPで聴いていた盤もかなりありましたが、マゼールとは違う意味でやはり若き日のバレンボイムに惹かれるので。特に小品は意外な?センスの良さが光っているように感じます。
英国物の一枚もLP時代から愛聴盤で、特に「グリーンスリーヴス幻想曲」はオーディオチェックに必須でした。フルート、ハープに弦楽のシンプルな編成が、却ってカートリッジやケーブルでの微細な変化を聴き取るのに向いていたかと。ズーカーマンとの「揚げ雲雀」もまた。
そう言えば最近はバレンボイムは来日公演での初期と最後のソナタ集との取り違えに、ズーカーマンはアジア系学生への差別的発言と、妙な話題ばかりですが、ズーカーマンはチョン・キョンファとの因縁が未だ尾を引いてるのかなどと考えてしまいましたが、さて…。
投稿: Edipo Re | 2021年7月19日 (月) 20時00分
Edipo Reさん、暑中お見舞い申し上げます。
わたしも、小学校入学の色褪せた写真がありますが、桜は満開、そういうメリハリある四季がある時節でした。
なんだかんだで、バレンボイム、EMIからDGにかけての録音は相当数集めました。
その後はさっぱりですが、オペラだけは追いかけてます。
英国編のヴォーン・ウィリアムズ、わたしも好きですが、同時期のマリナーの「さわやかな世界」の方に惹かれ、あっさりしてますが、あちらばかりでした。
でも、CD化されたものをじっくり聴くと、録音もよろしく、じわじわきますね!
バレンボイムの演目取り違え、弘法も云々であればよろしいのですが、お歳で。。ということは勘弁してほしいです。
朋友ズッカーマンも件、ご指摘のとおりだと思います。
あちら系の方々は情熱的で強烈ですしね。。
小澤さんと、ヨーヨーマが、以前テレビ談話で、微妙な話にさしかかり、この先は・・・と止めた場面を見たことがあります。
ま、音楽は音楽、それをのみ楽しむということで。。
投稿: yokochan | 2021年7月21日 (水) 08時54分
yokochan様、暑中見舞い申し上げます。
さて愚生もダニエル殿の、シカゴとのロシア物及びECOとのイギリス物、所持して居りますので、改めて聞き返してみました。前者は編集物っぽい『ロメオとジュリエット』、『スペイン奇想曲』、『禿山の一夜』、『ロシアの復活祭』を収めた、429-365-2と言う番号のDG盤。後者はタワー様の復刻して下さったPROC-1315と言う、アルバムです。やはり1970年代のこのお方の音楽には、えも言われぬ魅力が漂っておるな‥との実感が沸いて参りました。無論、2020年代に突入の現在も、指揮者としてピアニストとしてたゆまぬ御活躍ぶりでありますが、才気と意欲のバランスの取れた、見事な個性の照射ぶり、この時分が良かったな‥と、独り呟いて居ります。
投稿: 覆面吾郎 | 2021年7月22日 (木) 18時14分
覆面吾郎さん、こんにちは。
バレンボイムのこのシリーズは、CD化にあたっては、週六時間が余ってしまうので、ごった煮みたいになってしまい、オリジナル感がなくなってしまったのが残念です。
レコードでのシカゴの鳴りの良さは、CDよりも良かったと思ったりしてます。
60~70年代のバレンボイムは、いろんな音楽にチャレンジしていく意欲が、そのままその演奏にあらわれていて、いずれも今聞いても新鮮です。
いまは、達観しすぎて、すべてがそぎ落とされてしまった感がありますが・・・
でも、ツボにはまると、ライブのバレンボイムはすごいものがありますね。
投稿: yokochan | 2021年7月26日 (月) 08時34分
めでたく大学生になった娘が独り暮らしを始めました。寂しい。。。引っ越しの準備も部屋の片付けや整理を率先して行いました。家具を買いそろえ冷蔵庫をはじめ電化製品も準備しました。初めての独り暮らしに娘は大喜び。喜べば喜ぶほど寂しい。傷心のまま帰宅。高2の吹奏楽部のコンクールの自由曲の「ロシアの復活祭」を聴きました。バレンボイム&シカゴです。懐かしい懐かしいこのジャケットを見ながら聴く青春の一曲に傷心のおじさんは涙が止まりません。こちら荒い仕上がりの演奏、終末部での金管のフライングのミスも構わず録音されています。「私の独り暮らしを応援して」と言われた父はここでの金管パートよりも甚だしくフライングをしてしまい「お父さんに任せなさい」と言ってしまいました。愚かでした。アンナこと言わなきゃ良かった、、ええカッコしいで娘命の長く暑く暗い夏の始まりです。
投稿: モナコ命 | 2021年8月10日 (火) 17時29分
モナコ命さん、傷心の思いの吐露、しかと拝読いたしました。
父は寂しいものです。
あとなんといっても、いろいろと母親に相談したりして、父は事後承諾ばかりですからねぇ・・・
ロシアの復活祭は、ちょっと苦手な曲でして、バレンボイムのこの1枚のなかでは、一番聴かないきょくだったりします。ミスも気が付かずにいますし。
暑い夏をバレンボイムとシカゴで乗り切りましょう!
投稿: yokochan | 2021年8月12日 (木) 08時31分