ワーグナー 「ニーベルングの指環」 ベルリン・ドイツ・オペラ 2021
東京タワーの横にある「もみじ谷」公園にて。
今年は青空がやたら青くて、いまのところ連日の晴れ。
赤が映えます。
(ラインの黄金~ローゲと神々のみなさま)
ベルリン・ドイツ・オペラの新しい「リング」が、昨年から始まって、11月に完了。
RBB(ドイツのネット放送)で、全4部作を高音質で聴くことができた。
ベルリン・ドイツ・オペラのリングといえば、われわれ日本人が通しリングを始めて体験した、ゲッツ・フリードリヒのトンネル・リングが長らく定番として上演されてきました。
それに代わる「リング」
コロナの影響を受けて、「ワルキューレ」のみ2020年、ほかの3作を2021年に相次いで上演して新リングを完成させました。
演出は、人気のステファン・ヘアハイムということもあり、4部作は映像収録され、来年に発売されるそうだ。
お値段次第でポチっとするかもしれないけど、トレーラーを見てなんともいえない気分になるのは、昨今の演出のありがちなこと。
全部見なくちゃわからんが、正直言って、ギャグ満載のリングのパロディ化か・・・・
いや、面白いよ、きっと。。。たぶん・・・・
各役柄にいろんな意味を持たせる手法、それが観劇すれば説得力を持って、劇のなかで大きな流れのなかのパズルのひとつになる。
そうなれば、万々歳なんだけど・・・・ヘアハイム・リングはどうなるだろうか。
(ワルキューレ~夫婦喧嘩を見守る群衆、盾もお笑い)
音だけで4部作を聴いての悪印象は、登場人物の歌以外に発する声。
うなり声、叫び声、笑い声、それも下卑たヒヒヒだったり多数・・・、音だけで聴いてると、正直、音楽の感興を阻害することとなる。
で、舞台写真やトレーラーから推察される、それらの声。。
なんで、そんなことまでして、ワーグナーの本来の本質をわざと外して意味付けを行い、解釈をするんだろうか・・・・
アルベリヒと息子のハーゲンのいやらしいヒヒヒはキモイ。
しかも、彼らの顔は、バッドマンのジョーカーそのものだ。
さらに、グンターに変身したジークフリートは、オバQみたいだったww
すいません、つらつらと、ちゃんと全部見て語れってことだけど。
しかし、その演奏面は素晴らしい。
まずもって、長らくベルリン・ドイツ・オペラを率いる、スコットランド出身のドナルド・ラニクルズの指揮が素晴らしい。
ワーグナーやリングを指揮して30年以上、と本人も語るとおり、演出抜きして堂々たるワーグナーを聴かせてくれる。
重厚なれど軽やかで、しかも鮮明で一点の曇りなし。
大きな流れをまず構築しつつ、細部を緻密に積み上げ、壮大かつダイナミックな雄大なワーグナー。
バイロイトでも90年代タンホイザーを指揮、そのころから聴くようになったラニクルズ。
ここで、こう決めて、こう伸ばして、こう、がぁーーっときて、という具合に、ワタクシが思う流れがぴたりと符合して心地いい。
左手に指揮棒、サウスポーのワーグナー指揮者ラニクルズ氏の待望のリングです。
サンフランシスコ・オペラとベルリン・ドイツ・オペラの指揮者であり、英国でもBBC系のオーケストラとの音源多数。
ラニクルズのマーラーやブルックナーも素晴らしいです。
(ジークフリート~ミーメさんと主人公)
ベルリン・ドイツ・オペラのオーケストラの巧さも定評のあるところ。
傷も散見されたが、ピットの中の熱気あふれる演奏を堪能。
神々の黄昏の大団円は、ことさらに感動的だった。
(神々の黄昏~たぶん自己犠牲のシーン、下着まみれ・・・)
歌手では、なんといっても、シュティンメのブリュンヒルデが、安定感と力強さ、しなやかさで比類ない存在を示してました。
しかしね、ヘアハイムって、下着姿が好きなんだよな、ほかの演出でも。
全編にわたって、その下着姿が氾濫していて、ブリュンヒルデにも容赦ない。
ラインの乙女たちも、あられもない姿で、男とアレしちゃうし、下着姿の群衆が、いたるとこでヤリまくってる・・・・
何だこりゃって感じで、R指定になるよこりゃ・・・
ジークフリートで登場したアメリカのテノール、クレイ・ヒレイ(Clay Hilley)が驚きの歌声。
明るく屈託のない、よく伸びる声は自然児ジークフリートにぴったり。
黄昏では、より厳しさも求めたいところだったが、スタミナも十分で最初から最後まで元気な声。
なかなかの巨漢で、動きがアレなのはしょうがないが・・・
ミーメのチュン・フン?(Ya-Chung Huang)もびっくりの発見。
台湾出身の新星で、のびやかでクリアーボイス。
ベルリン・ドイツ・オペラの専属になったようで、今後の活躍も期待。
ウォータン&さすらい人は、スコットランド出身のパターソンで、このバスバリトンも最近ウォータンを各地で歌っており、パリのジョルダン・リングでもそうだった。
やや軽めで、もう少し力強さも求めたいところだけど細やかな歌いまわしは巧みで、アルベリヒやミーメとの絡みは面白かった。
ただラインの黄金では、オーストラリア出身のデレック・ウェルトンがウォータンで、より若々しい雰囲気。
あえて、ラインの黄金のウォータンを異なる立場で描きたかった演出意図なのかもしれない。
あと印象に残ったのは、アメリカのヨヴァノヴィチのジークムントは豊かな実績を裏付ける力唱だし、ダムラウのヴァルトラウテもシュティンメのブリュンヒルデに負けず劣らずの存在感。
ほかの諸役も初めて聞く名前ばかりだが、いずれもベルリン・ドイツ・オペラの水準の高さを物語る歌唱でありました。
「ラインの黄金」
フロー :アットリオ・グラッサー ローゲ:トマス・ブロンデーレ
フリッカ:アンニカ・シュリヒト フライア:フルリナ・シュトゥッキ
エルダ :ユデット・クタシ ファゾルト:アンドリュー・ハリス
ファフナー:トビアス・ケラー アルベリヒ:マルクス・ブリュック
ミーメ :ヤ-チュン・フン ウォークリンデ:ヴァレリア・ザヴィンスカヤ
ウェルグンデ:アリアナ・マンガネッロ フロースヒルデ:カリス・トラッカー
(2021.6/12)
ジョーカーのアルベリヒは、トランペットを手にしつつ、4部作中、ずっと据えられているピアノの中から即、指環を取り出し、黄金強奪となった。
悪魔くんみたいなローゲは、見た目は悪魔に変身したミッキーマウスか?
やさぐれた神々たちも情けない雰囲気。
聴衆から笑い声もあがる(笑)
でも虹色はきれいだな。
ジークリンデ:エリザベス・タイゲ
フリッカ:アンニカ・シュリヒト ブリュンヒルデ:ニーナ・シュティンメ
ワルキューレは本物の狼さんが出てるし大丈夫か?
ジークムントはニートみたい。
ピアノから剣を引っこ抜くのは無理筋じゃね?
そうそう、ピアノからみんな登場するね。
ヘアハイムのパルジファルでも、クンドリーは貞子みたいに、穴からせせりあがってきたし。
ジークリンデの感動的な感謝の歌をピアノ伴奏するブリュンヒルデ。
告別シーンはどんなだろ?
見てみたい。
「ジークフリート」
ジークフリート:クレイ・ヒレイ ミーメ:ヤ-チュン・フン
さすらい人:イアン・パターソン アルベリヒ:ヨルダン・シャナハン
ファフナー:トビアス・ケラー エルダ:ユデット・クタシ
ブリュンヒルデ:ニーナ・シュティンメ
森の小鳥:ドルトムント少年合唱団員
(2021.11.12)
ほぼワーグナーそっくりのミーメ。
ピアノから楽譜を誕生させる楽器職人かい。
それにしてもジークフリートがでかい、小柄なミーメの3倍もあるよ。
大蛇ファフナーが秀逸で、牙がラッパになってるし、そこからファフナーは引っ張り出される。
巻き付けた白い布をジークフリートにくるくるされて、時代劇の悪代官みたいに、あれぇーー、とばかりに、ほれはれほれはれ、されてしまいステテコ姿にされたあげく刺されちゃう。
しかし、大きな疑問は、鳥の声を少年に歌い演じさせたこと。
苦し気だし不安しか感じない。
さらに血まみれで横たわってたし・・・・まさかジークフリートに・・ってか??
ハッピーエンドも、主役の二人以外に、下着男女が乱れまくり、やりまくり・・・・・
なんだかんだで、観てみたいww
「神々の黄昏」
ジークフリート:クレイ・ヒレイ ブリュンヒルデ:ニーナ・シュティンメ
グンター:トマス・レーマン
ハーゲン:アルベルト・パッセンドルファー
アルベリヒ:ヨルダン・シャナハン グルトルーネ:アイレ・アスゾニ
ワルトラウテ:オッカ・フォン・デア・ダムラウ・
第1のノルン:アンナ・ラプコフスカヤ
第2のノルン:カリス・タッカー 第3のノルン:アイレ・アスゾニ
ウォークリンデ:ミーチョット・マレッロ
ウエルグンデ:カリス・タッカー フロースヒルデ:アンナ・ラプコフスカヤ
(2021.10.17)
ノルンたちはスキンヘッド、どうでもいいけど、下着マンたちのひらひらはどうにかならんのか?(笑)
元気にピアノを弾くブリュンヒルデ。
ギービヒ家はリッチマンのおうち。
最初は普通の人だったハーゲン、夢に父親が現れてからジョーカー顔に変貌。
ラインの乙女もスキン化してしまうのか?
ラストシーンも下着衆ぞろぞろ、手のひらピラピラ鬱陶しい。
いやはや、やっぱり全部観てみたいww
聴衆の反応のyutubeもあり、歌手と指揮者にはブラボーの嵐。
演出家ご一行が出てくると、ブーが飛んでました。
でも、さすがはドイツ、コロナがまだ蔓延してるのに、リングをやってしまう。
そして、聴衆も演出はアレ?で批判しつつも、ワーグナーを求める心情止み難しで、演奏と音楽には大熱狂。
行かなかったけど、日本でも2年越しのマイスタージンガーが上演された。
世界中、やはり、ワーグナーがなければ生きていけないのだ。
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しかし、35年前に観劇した「トンネル・リング」が懐かしい。
同時期に、二期会による日本人リングも観劇していたが、そちらは新バイロイト風の抽象的な舞台だっただけに、具象的な動きで表現意欲も強かったトンネル・リングは当時の自分には驚異的ですらありました。
映像で親しんだ、シェローのリングや、クプファーのリングも、いまや懐かしの領域に。
いずれも現代の演出からしたら穏健の域にあるが、でもそのメッセージ力は、なんでもありのいまのものからしたら、ずっとずっと強かったと思う。
晩秋から初冬を抜かして、本物の冬がしっかりときました。
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