シューマン ピアノ協奏曲 ブレンデル&アバド
寒かった2月もおしまい。
季節はちゃんとめぐり、梅の芳香が街にただようになりました。
しかしながら、世界は自然の移ろいを愛でる余地や心地を与えてくれません。
日本だけが崇高なる9条をかかげ、たてまつるなか、そんな夢想ともいえる理想郷を吹き飛ばしてしまった独裁者。
そんなヤツが実際にいて、死んだような眼で、侵攻を正当化し、核で脅す行為を行った現状を世界に見せつけた。
悲しいのは、そんな暴君を支持せざるをえなかった音楽家たちも断罪されつつあること。
いや、その度合いにもよるが、指揮者Gは支持者でもあり友人でもあったが、ロシアの一般の人々が、自分はそうじゃありませんという声明をせざるをえないのが悲しすぎる。
その国の国民であることで謝罪をしなくてはならないっておかしくないか。
日本人も、戦後にそうした教育をほどこされ、自虐史観の固まりとなり、やがて国力さえ弱めるような事態にいまなっている。
ウクライナの無辜の民、それから命令で赴き、命を散らしてしまったロシアの兵士たち、それぞれの命の重みは同じ。
西側の脅威があったとはいえ、これをしかけた指導者P大統領、そして危機が迫るのを知りつつ安穏としていたウクライナ政府、それぞれに問題ありだと思う。
他山の石は、日本に即ふりかかる。
めずらしく音楽以外のことを・・・黙ってらんない
危機のときに、やってきてくれるウルトラセブンは、もういないと思っていい。
シューマン ピアノ協奏曲 イ短調 op.54
アルフレート・ブレンデル
クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団
(1979.6 @ウォルサムストウ、ロンドン)
初めて買ったシューマンのピアノ協奏曲がこのブレンデル&アバド盤。
DG専属だったアバドのフィリップスレーベルへの登場もあり、ともかくすぐに飛びつきました。
デジタル移行まえ、アナログの最終期の録音で、当時、フィリップスの録音の良さは定評があり、このレコードを代表に、最新フィリップスサウンドを聴くというレーベル主催の催し物に抽選で当たり、聴きに行きました。
大学生だった自分、会場はちょうど通学路にあった塩野義ビルのホールで、スピーカーはイギリスのKEFだったかと思う。
名前は忘れてしまったがMCは著名なオーディオ評論家氏で、このシューマンや小沢のハルサイとか、ネグリのヴィヴァルディとかが紹介され、ともかく自宅では味わえない高音質サウンドに魅了されたものです。
いま聴いても、芯のある録音の素晴らしさは極めて音楽的で、ピアノの暖かな響きと、オーケストラのウォーム・トーンがしっかりと溶け合って美しい。
ブレンデルのピアノが、折り目正しい弾きぶりのなかに、シューマンのロマンティシズムの抽出が見事で、柔和ななかに輝く詩的な演奏。
アバドとロンドン響も、ともかくロマン派の音楽然としていて、溢れいづる音楽の泉にとともに、早春賦のような若々しい表情もある。
春や秋に聴く音楽であり、演奏でもあると思う。
久々に聴いて、学生時代を思い出したし、若かった自分、いまとまったく違った若者の街、渋谷を懐かしくも思い出した。
遡ること小学生の自分。
ウルトラQ→ウルトラマンと続いて名作「ウルトラセブン」に夢中だった。
同時期にサンダーバード。
プラモデルで、ウルトラホーク号や、サンダーバード1~5号、ピンクのペネロープ号など、みんな揃えましたね。
そして衝撃的だったウルトラセブンの最終回。
戦い疲れ、もうあと1回変身したらあとがないと知ったセブン=モロボシ・ダンは、アンヌ隊員に「アンヌ、僕はねM78星雲からきたウルトラセブンなんだ!」と告白します。
ここで衝撃を受けるアンヌ、画面は彼女のシルエットとなり、流れる音楽はシューマンのピアノ協奏曲の冒頭。
アンヌは「人間であろうと宇宙人であろうと、ダンはダンで変わりないじゃないの、たとえウルトラセブンでも」
いまなら涙なしには見れない感動の坩堝となるシーン。
最後の戦いの間、シューマンの音楽は流れます。
このときの演奏は、リパッティとカラヤンのもので、刹那的なロマンを感じる演奏ですね。
昔のレコ芸で、ウルトラマンやウルトラセブンを数本監督した実相寺昭雄氏とウルトラセブン以降、ウルトラシリーズの音楽をすべて担当・作曲した冬木徹氏の対談を読んだことがあります。
あの感動のシーンの音楽は悩んだ末の窮余の一策で、チャイコフスキーのコンチェルトでとか言われたけれど、なんか違うなということになり、家から持ってきたレコードだったと冬木氏は語ってます。
円谷プロの円谷一氏は、早逝してしまったが、ヴァイオリンも習っていたしクラシック好きだったと。
だから冬木氏の作り上げたウルトラセブンに流れる音楽も、シンフォニックで格調高い。
円谷氏は、テレビで流される音楽を聴いてたら日本中の子供たちは耳が悪くなっちゃう、そうじゃない、子供たちの耳が音楽的な耳に育つようなものを作ってよ、と冬木氏に語ったそうな。
ほぼほぼ、セブンの時代は、ワタクシがクラシックに目覚めたころ。
あれがシューマンの曲だと知ったのはずっとあとのことだったけれども、ウルトラセブンのあのシーンは、きってもきれないことになった。
子供時代、青春時代がないまぜになって、どこか切なく甘い思い出です。
ウルトラセブンに出演していたウルトラ警備隊のメンバーも物故したりしてますが、ヒーローのモロボシ・ダン役の森次晃嗣さんは、藤沢の鵠沼でジョリー・シャポーというレストランを経営していて、お店によくいらっしゃるとのこと。
一度行ってみたい。
ヒロインのアンヌ隊員役の、ひし美ゆり子さんは、多くのお孫さんに恵まれ、孫の預かりを日々楽しみにしていらっしゃるご様子。
SNSでよく拝見してます。
そして、私もそっくり歳を重ねて孫も生まれたし、今月、東京を去ろうと決意し準備中で超忙しい。
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コメント
セブン!謎が溶けましたね!!なんとなく大人の雰囲気漂うのはなぜと思っていましたが理由はそこかもしれません。ウルトラマン大好きでレオまではガッツリ見ましたがセブンの最終回涙なしでは見られませんでしたw多分放映されたのが生まれた年なので再放送なのかな?おっと、バレバレですが、セブンのその後のDVDがあるのご存知ですか?ウルトラ警備隊の隊長にフルハシ隊員(毒蝮三太夫)がなってました。息子の幼稚園の友達のお父さんから借りて見たのでもう、十年以上前でしたが、主人と食い入るように見ましたね☆セブン(ダン)とフルハシの友情なんかも描かれていましたっけ。もとい、まだ、このブレンデルとの共演盤また聞いたことがありません。これを機会に聞いてみたいと思います( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧
ありがとうございます。
投稿: にょろふきん | 2022年3月 2日 (水) 12時09分
yokochan様
私めも指揮者Gのプーチンへの露骨な寄り添い、快く思ってはおりませんでした。ン年前、シリアのパルミラ宮殿(でしたか?)で迎合するコンサート、やってましたし。そしたらこのウクライナ侵攻!もう何おや言わんか、です。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年3月 2日 (水) 13時28分
ブレンデルとアバドのシューマン、何故か未聴でした。アバドではポリーニ盤とペライア盤はあるのですが。ブレンデルは実演も縁が薄く、‘81年スカラ座クライバー指揮「オテロ」の幕間ロビーで雨傘片手に悠然と闊歩している姿を目撃したのみでした。
小3〜小4の「Q」「マン」に比べ小5時の「セブン」には当時今ひとつ熱意が湧かず、幼稚園年少時の「モスラ」以来ほぼ皆勤だった東宝特撮も足が遠退いた頃でした。それでも最終回のシューマンと「皇帝円舞曲」をバックにウルトラホーク2機がランデヴーで帰還する場面は鮮明に記憶しています。
ロシアとマエストロGをめぐる諸々、大戦中のフルトヴェングラーのケースを思い出していました。ただしナチスとヒトラーにいささかも迎合しなかったフルトヴェングラーとでは違い過ぎる露骨なすり寄りですが。また他の多くのロシア人音楽家も同様かと。勿論フルトヴェングラーの方がナイーヴ過ぎたとの指摘ももっともですが。しばらく前にクーベリックやフルネのケースを考えていて、二人とも母国のポストに留まったことで時の傀儡政権に迎合したとの批判を受けて戦後にまで禍根を残したわけですが、当時三十そこそこでしかも母国の聴衆に音楽を提供したかった一念であったのですから。既に功成り名遂げたGはイタリア国内に保有する資産の売却に乗り出したとか。Gの指揮する「ボリス・ゴドゥノフ」や「展覧会の絵」とりわけ「キエフの大門」が虚しく響きます。
東京を去られるとか。風光明媚な湘南へ戻られるのでしょうか。素晴らしい原風景をお持ちでかねてより羨望を禁じ得ませんでした。当方は一昨年から入退院を繰り返している都心の病院旧館の鐘楼が唯一の原風景です…生家が真ん前でしたので。入院中も病室の窓から鐘楼を眺めてしばしの心の平穏を味わっておりました。ご多忙中長文にて失礼いたしました…。
投稿: Edipo Re | 2022年3月 3日 (木) 11時04分
にょろふきんさん、こんにちは。
ウルトラセブンに流れる音楽はオーケストラで奏でられてますね。
いまならPCで作ってしまうのでしょうが、手作りの丁寧な番組作りに関心してしまいます。
ドラマも環境問題を取り上げたり、心理的なストーリーだったりと、子供にはわかりにくいものもあったので、いま見ても発見がありますね。
「その後のセブン」は残念ながら見たことがないのですが、90年代の番組だったようです。
毒蝮三太夫さんも懐かしいお名前でいまも健在。
ウルトラマンでもアラシ隊員で出てましてお馴染みの方です。
みんないつまでも元気でいて欲しいと願ってます。
ブレンデルとアバド、カップリングのウェーバーもステキな作品であり、演奏ですよ。
投稿: yokochan | 2022年3月 4日 (金) 08時36分
覆面吾郎さん、こんにちは。
日々激化するウクライナ侵攻、痛ましい限りです。
こともあろうにベラルーシも仲間入りして、キエフ陥落もあるかもです・・・・
G氏、ミュンヘンフィルを解任され、ネトレプコもメトロポリタン出演が禁止されてしまいました。
文化面でのポリコレ的な動き、これもまた悲しいことばかりです。
投稿: yokochan | 2022年3月 4日 (金) 08時41分
Edipo Reさん、こんにちは。
アバドにはもうひとつ、ピリスとの共演もあり、シューマンの協奏曲は4回も録音してます。
いちばんすきなのは、こちらのブレンデル盤です。
Gさんは、友人のごとき存在だったからやむなしですが、ネトレプコなどは、政治と音楽家は違うとして、コメントを控えますと言いつつ、反戦は一貫しているのに、非難しないからということで、メットなどで締め出しをくらいました。
このままだと、チャイコフスキーもムソルグスキーもプロコフィエフ、ショスタコもダメってなってしまいかねないのでしょうか。。。
G氏は、コスモポリタンなロシア人だけに、Pさんから早く距離を置いていれば、こんなことにはならなかったでしょう。
テミルカーノフ、キタエンコ、シモノフ、フェドセーエフなどの大物が今後どうなりますか。
また経済制裁も効いて、ロシアのオケ、オペラハウス、バレエなども、存続危機が訪れるかもしれません。
つくづく、罪なP氏ですね。
ウルトラセブンやサンダーバードに心躍らせていた街に帰ります。
都会との別れも辛いです・・・・
投稿: yokochan | 2022年3月 4日 (金) 08時53分