ホルスト 「惑星」 マリナー指揮
ある日の西の空の三日月。
実家に移動して来て、窓の外は毎日空が見渡せます。
徒歩7分の海に出れば相模湾で、シーズンオフには人っ子ひとりいない静かな海を独占できる。
移転して1年も経たないうちに、都会の空は遠い存在となってしまった。
コンサートなんておっくうで、帰りのことを考えると嫌になっちゃう。
ホルスト 「惑星」
サー・ネヴィル・マリナー指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(1977. 6.22~24 @コンセルトヘボウ)
懐かしい1枚を。
みんな物故してしまった私の好きな指揮者4人衆のひとり、マリナー卿。
92歳、現役真っ最中で亡くなって、もう6年。
ただでさえ膨大な数のマリナーのレコーディング、まだまだ聴いていない録音もたくさんありますし、愛聴盤でも当ブログで取り上げていない録音もいくつもあります。
聴いていない代表は、ハイドンのネイムズシンフォニーとモーツァルトの交響曲、セレナーデ集など。
あと、愛聴盤の代表が、この「惑星」でした。
大学時代に発売されて聴きたくてしょうがなかったけれど、学生時代ギリギリに、なんとエルガーのエニグマと2枚組で限定発売された。
それこそ、飛びつくように大学の生協で購入し、評判だったその録音の良さに、若き自分は狂喜乱舞した。
ハイティンクですっかり馴染んでいたコンセルトヘボウのオーケストラの音色と、コンセルトヘボウのホールの響きが、フィリップスの超優秀な録音でもって、しかも大好きな「惑星」が月夜が窓から見渡せる部屋の自分の安い装置から、素晴らしい音で鳴り響いたのでありました。
いつも書いていることですが、アナログ時代最盛期の70年代後半のフィリップス録音はすべてが素晴らしいと思う。
コンセルトヘボウ、ボストン、ロンドン、ロッテルダム、スイス、いずれの録音会場でもクオリティの高い録音がなされていた時期。
レコード発売時のレコ芸の若林駿介さんの録音評をいまでも覚えてます。
打楽器の音が強すぎるが残響が豊かで音に艶がある・・・的な内容だったと記憶します。
CD化されたこのアナログ録音ですが、まさにそうで、加えて刺激的な強音を感じさせないで、オケの音のダイナミックな強さを体感させてくれる、いまでも素晴らしい録音だと思います。
マリナーの指揮、相変わらず丁寧で不器用なまでに指揮棒を振り分けているのがわかる丁寧な指揮。
作品が実によく書けているから、フルオーケストラ演目を指揮し始めたころのマリナーの素っ気なさもかえって新鮮に感じるし、むしろ演出過多の演奏よりずっと客観的な惑星っぽい。
イギリスのオケでも聴いてみたかったけど、ここでのコンセルトヘボとの驚きの組み合わせは成功としかいいようがないです。
分厚い響きに暖かな音色は、当時、金管に木管に名手ぞろいの奏者たちの巧みな演奏も加わり、誠に心地よく素晴らしいものです。
マリナーの「惑星」は1976年に東京フィルに来演したおりに、NHKFMで放送され体験済みでした。
日本のオケに初登場の50代になったばかりのマリナーさん。
この当時は、マリナーといえばアカデミーという具合に自身が創設した室内オーケストラでの活動をメインにしつつ、ロンドンのフルオーケストラなどへの客演を初めていた時期で、東フィルもいいところに目を付けたなと思ったものです。
その後のマリナーのフルオーケストラへの進出と躍進ぶりは、もうここに記すまでもないでしょうあ。
いま思えば、ベルリンフィルとウィーンフィルからは呼ばれなかった(はず)。
これもまたマリナーたるゆえん。
マリアーの清涼感あふれる上品で美しい「惑星」。
秋の日に、懐かしい思いとともに聴きました。
失敗した皆既月食の写真。
おまけ
「惑星」ジャケット選手権
わたくしの偏見でもって選んだ惑星のナイスなジャケット。
左上から時計回りに、①プレヴィンLSO、②メータLAPO、③ショルティLPO、④バーンスタインNYPO、⑤マリナーACO、⑥ハイティンクLPO、⑦小沢BSO、⑧ノリントンSRSO、⑨プレヴィンRPO、⑩ラトルPO
レコードだと大判なので、音楽を聴くとき、スピーカーのうえに立てて聴くと、雰囲気もとてもあがりました。
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コメント
ご無沙汰しております。約半世紀前、級友が「これ、面白いぜ」と見せびらかしてくれたメータ盤が最初の「惑星」でした。同じ盤を買うのもコシャクなのでしばし待つうちにバーンスタイン盤が出たのですが、外盤のソフトフォーカス天使像と違う当時のサイケ調ジャケットにはいささか抵抗があったものの飛びつきました。後年、録音と同時期に収録された「ヤングピープルズコンサート」でNYフィルと即興演奏の「冥王星」をやらかしたのを観て、これも一緒ならと考えましたが。まあ準惑星に降格されてしまったことですからラトルの演奏したマシューズ作同様なくもがなかと。マリナー盤も発売直ちに輸入盤を入手しました。最近たまたまスタインバーグ盤(DG)を聴き、オケの上手さと録音の優秀さに持って回ったところのないストレートな表現に感服しました。
先年たまたま出逢った女性がその少し前にサントリーホールにて女声合唱の一員で唄ったと。少人数ですが舞台裏ですから副指揮者がいても合わせるのは一苦労だったと。大編成で特殊楽器も必要ですから実演が少ないのもやむ無しでしょうか。
一昨年の入院以来、丸ニ年以上停酒しておりましたが、二ヶ月ほど前に山頭火の
「なかなか死ねない彼岸花咲く」の一句に出会い再びグラスに手を伸ばす羽目に。入院時に正直に酒量を申告したら連日精神科医の来訪を受け閉口しましたが今はささやかなもので。ただし足腰の衰えが半端でなく、その点からも深酒は禁物と自分自身に言い聞かせてはおりますが。
大川端の17階から隣地建築中でろくに日の差さない2階に転居し、惑星はおろか皆既月食も無縁で。またまた酒量に影響は必至かと?
投稿: Edipo Re | 2022年11月13日 (日) 23時51分
クラヲタさま、みなさま、おはこんばんにちは。
「惑星」で最初に聴いたのは、冨田勲のシンセ盤で、そこから原曲も聴いてみようと、レコード屋のご主人のオススメでバーンスタイン/NPOを購入。「火星」の何とも攻撃的なサウンドに驚き、シンセでも耳に残った「木星」のあのメロディーが、LPのB面にならないと出てこないのにヤキモキさせられた思い出が。
その後、カラヤン/BPOやC.デイヴィス/BPOなどを経て、今はレヴァイン/CSOを愛聴しております。発売当時はショルティがLPOで録音したので、その代替え盤などとも言われてましたが、レヴァインならではのややグラマラスでゴージャスな響きと、音場感の有る優秀録音を堪能しております。ある意味、マリナー盤とは正反対の演奏かもしれません。
余談ですが、亡き母も「海王星」の女性コーラスのお誘いを受けたそうで、結局参加せず、回り回ってその演奏会をワタシと客席で聴くことに相成りましたとさ。
投稿: アキロンの大王 | 2022年11月16日 (水) 08時36分
Edipo Reさん、こんにちは。
わたしも同じようなエピソードを持ってます。
すでに愛好家だった私は、メータ盤を買い、友人たちに聴かせて自慢しました。
ふだんクラシックなんて聴かない連中が、やはり火星に魅せられたようで、俺も買う、ということになり、わたしは同じではつまらないので、バーンスタイン盤を買わせました(笑)
ちょっと乱暴な演奏でしたがバーンスタイン盤も好きです。
ご指摘のスタインバーグもいいですね。
小澤盤がスマートすぎに聴こえるほどボストンの威力を味わえますね。
実演で聴いたときは、P席に女性合唱を据えてましたので、神秘感は弱めでしたが、ばっちり合ってました。
お酒はやめられませんね・・・
私も同じくですが、いつ体が破綻するかちょっと心配しながら、ほぼ毎日グラスを煽ったり、傾けたりしてます。
ともかく、体第一、気をつけて嗜みましょう。
しかし、サロメのような強烈な音楽を聴いてしまったものですから、酒がうまくてしょうがありません・・・・
投稿: yokochan | 2022年11月20日 (日) 17時17分
アキロンの大王 さん、こんにちは。
やはり、バーンスタイン盤とご縁がおありなのですね。
70年代の惑星は、メータかバーンスタイン、やや遅れてショルティでした。
冨田勲の一連のシンセサーザー演奏は、どうも斜に構えてしまい、FMで聴くのみでした。
いい装置でゴージャスに鳴らしてみたい気がしますが、でも「月の光」は録音してよく聞きました、懐かしいです。
レヴァイン盤は、実は未聴でして、シカゴで聴いてみたいといつも思ってますが、いつも手にしても買わずじまい。
ハルサイとともに、シカゴで聞きたい曲のナンバーワンだと思います。
ご母堂との逸話、いいお話しですね。
我が母は、クラシックには縁遠いうえに、超高齢となりましたので、音楽会などはまずは不可能です。
高校時代にアマチュアオケにちょろっと出演したときに、聴きにきてくれたことぐらいです。
投稿: yokochan | 2022年11月20日 (日) 17時28分