フェスタサマーミューザ ヴァイグレ&読響 「リング」
ベートーヴェンさんも、ヴァケーションを謳歌中。
にやり、としつつも、ほんとはあんまり嬉しくないのかも(笑)
真夏の音楽祭、フェスタサマーミューザのコンサートへ。
ベートーヴェン 交響曲第8番 ヘ長調
ワーグナー 楽劇「ニーベルングの指環」
~オーケストラル・アドヴェンチャー~
ヘンク・デ・フリーヘル編
セバスティアン・ヴァイグレ指揮 読売日本交響楽団
コンサートマスター:日下紗矢子
(2023.8.1 @ミューザ川崎シンフォニーホール)
いうまでもなく、聴衆のねらいは、「リング」。
フランクフルト歌劇場をながく率い、リングの録音もあるし、バイロイトでの経験もあるヴァイグレのワーグナーですから。
しかし、65分ぐらいのサイズは演奏会の後半向きで、前半になにをやるかが、プログラム作成上のおもしろさでしょう。
これまで2度のコンサート鑑賞歴がありますが、ペーター・シュナイダーと東京フィルでは、今回の同じベートーヴェンで4番。
デ・ワールトとN響のときは、シュトラウスの「4つの最後の歌」で、このとき歌ったスーザン・ブロックは、ブリュンヒルデとしても自己犠牲のシーンに登場するという本格ぶりでした。
あと、いけなかったけど、神奈川フィルではスコットランド系の指揮者で、前半はエルガーの「南国から」を演奏している。
そんな前半のベートーヴェン8番は、さわやかで、肩の力がぬけた桂演で、7番と対をなすリズムの交響曲であることも実感できました。
コンサート前、ヴァイグレさんが、プレトークに登場し、この8番のおもしろさを歌いながら語ってくれました。
ヴァイグレさん、いい声ですね、テノールの声域で口ずさむメロディも見事につきます。
日本語もほぼ理解されてるようで、心強い!
ワーグナーの解説では、ワーグナーというと身構える方も多いかもですが、ともかく聴いて、面白いと思ったら帰ったらネットで物語の内容を調べて、長大な音楽にチャレンジを!と語ってました。
低弦から始まる「ラインの黄金」の前奏からリアル・オケリングが眼前で楽しめました。
フリーヘルの編曲は、ヴァイグレさんも語ってましたが、いつのまにか他の場面に自然につながっていく巧みなもので、休止なく、ラストのブリュンヒルデンの自己犠牲に65分でたどり着く、まさにアドヴェンチャー体験です。
ヴァイグレの指揮は、流麗で早めのテンポ設定を崩さず、流れを重視したもので、聴き手は安心して身を任せて聴き入ることができます。
その分、ワーグナーのうねりや、コクの深さのようなものは感じられず、すっきりスマートな今風のワーグナーだと思いまろんした。
もちろんフリーヘルの編曲が、名場面とジークフリートの自然描写的な場面が重きをおいているので、そうしたワーグナーの要素を求めるのは無理かもしれませんが。
そんななかでも、葬送行進曲は、わたしにはサラサラと流れ過ぎて、クライマックスでいつも求める痺れるような感銘はなかったし、最後の大団円でも、あざといタメのようなものも求めたかった。
それでも、全体感と通しで聴きおおせたときの感動はかなり大きく、最後の和音が清らかに鳴り終わったあとも、ヴァイグレさんは指揮する両手を上に掲げつつ、しばし静止し、オーケストラも微動だにしない時間が続いた。
まんじりとしないホール内。
ゆっくりと腕を下ろして、しばし後に巻き起こるブラボーと盛大な拍手。
実によきエンディングでした。
昨今、無謀な早計な拍手やブラボーを非とするSNSなどの書き込みを拝見してますが、今宵はそんなのまったく信じがたい、実に心地よく感動的な大団円でした。
救済の動機を奏でるヴァイオリンの音色が、ハープに伴われてミューザの天井に舞い上がって行くのを耳と目でも実感してしまった。
涙がでるほど美しかった。
鳴りやまぬ拍手に、楽員が引いたあと、ヴァイグレさんは見事だったホルン首席を伴って登場し喝采を浴びてました。
来年からはワーグナーさんも混ぜてあげて・・・・
短すぎる65分と思う人々に、4楽章形式での「リング」交響曲を提案したい(笑)
Ⅰ「ラインの黄金」 序とかっこいい入城シーンをラストとする第1楽章
Ⅱ「ワルキューレ」 緩除楽章として兄妹の二重唱とウォータンの告別、勇ましい騎行はこの際なし
Ⅲ「ジークフリート」スケルツォ楽章、剣を鍛えるシーンに恐竜退治に森のシーン
Ⅳ「神々の黄昏」 夜明け→ラインの旅→ギービヒ家→裏切りとジークフリートの死→自己犠牲でフィナーレ
1時間45分、マーラーの3番、ブライアンのゴシックなどのサイズでいかがでしょうか。
あとフリーヘル編、存命だったら指揮して欲しかった指揮者はカラヤンですな。
帰宅してから乾杯。
ヴァイグレさん、アイスラーやるんだ。
歌手が豪華ですよ、さすがオペラの人のコネクション。
ガブラー、マーンケ、ヘンシェル、シュトゥルクルマン。
行こうと思うが平日なのが・・・・
フランクフルトオペラを引退したヴァイグレさんの後任は、注目の若手、グッガイス。
ヴァイグレさんは、どこかほかの劇場に行かないのかな、気になるところです。
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