マルサリス ヴァイオリン協奏曲 ニコラ・ベネデッティ
連日、天候がうらめしくなるほどに雨ばかりだった4月の桜シーズン。
久々の好天に桜見物に出かけました。
こちらは、秦野市。
秦野は県の中央にあって、神奈川県唯一の盆地。
寒暖差があり、名水にも恵まれ、自然豊かな里で、桜の名所が市内にたくさん。
6Kmにおよぶ「桜みち」は圧巻です。
この日は、丹沢から流れる水無川流域を散策
季節の変わり目、人生の変わり目に、日本の桜はぴったりですが、散るのも早く哀愁も感じますね。
ウィントン・マルサリス ヴァイオリン協奏曲
ニコラ・ベネデッティ
クリスティアン・マチェラル指揮 フィラデルフィア管弦楽団
(2017.11.2 @フィラデルフィア)
ウィントン・マルサリスといえば、ジャズのトランぺッターという認識が強く、80年代にジャズのスタンダードをあつめたアルバムを購入してよく聴いていたものだ。
そのあとは、レッパードと共演したハイドンのトランぺット協奏曲があったぐらいの記憶でした。
大好きなヴァイオリニスト、ニコラ・ベネデッティがマルサリスのヴァイオリン協奏曲を録音したので、一応全部の彼女の音盤は集めているので、すぐに購入して一度聴いてのみもう何年も過ぎてしまった。
しかし、今年の1月にBBCで、ベネデッティのヴァイオリン、ロウヴァりとフィルハーモニア管のライブを聴き、とても興奮し感銘も受けたのです。
ジャケットでは年齢を経てふくよかになったマルサリスが、かつての昔、小粋なスタンダードジャスを聴いたあのマルサリスと同一人物であることも、いまさらながらに認識。
ベネデッティのために書いたということ、マルサリスにはほかにもクラシック作品があり、交響曲などもあることもいまさらに認識。
いまいちど、CDを桜の季節に聴いてみた。
この曲は、今現在はベネデッティ(以下、親しみを込めてニッキーと呼びます)の独壇場で、ライブでの録音音源もほかに2種持ってますので、いずれも繰り返し聴いてます。
ジャズの聖地ニューオーリンズ生まれのマルサリスは、ジャズトランぺッターとしての存在を極めてのち、作曲をメインに転じました。
ジャズとクラシックの融合、当然にそのスタイルは相いれないものも多いが、それぞれの共通スタイルを見出すことを前提に作曲をしているという。
その共通項のひとつが、ヴァイオリンであり、フィドルです。
フィドルは、古くはアイルランドのケルト、スコットランド、北欧とくにノルゥエーなどの民族的な音楽、さらにはアメリカのカントリーやブルーグラス系にみられます。
スコットランド出身のニッキーは、ずっと祖国の音楽を好んで演奏してきてます。
そしてこの曲が、彼女のために書かれたこともわかります。
フィドル奏法は、ヴィブラートをかけず、開放弦を多用し、音の移動は巧みに装飾音で飾る、そんなイメージであります。
このCDにカップリングされた、やはりニッキーに書かれた「ソロ・ヴァイオリンのためのフィドルダンス組曲」の方にフィドルの技法はより強く出てます。
協奏曲は、4つの楽章からできてます。
「ラプソディ」「ロンド・ブルレスケ」「ブルース」「フーテナニー」の4つで、全曲で43分の大作です。
①「ラプソディ」
~悪夢となり、平和へと進み、先祖の記憶に溶けていく複雑な夢~とマルサリス自身がコメントしてます。
ニッキーのyoutube解説でも、この平和で美しい雰囲気とそのメロディをソロで弾いてます。
夢想的であり、平安と癒しの世界は、バーバーの音楽を思わせるが、フィドル時な要素を含みつつジャジーな傾きも見せるステキな音楽だ。
平安もつかのま、ポリスの警笛もなる中、喧騒も訪れる。
このあとの展開もふくめ、わたしは、マーラーを意識した世界観を感じたものだ。
あとディズニー的な理想郷をも感じさせるラストは、音楽として共感でき、単独楽章としてもいい作品だと思う。
②「ロンド・ブルレスケ」
ブルレスケ=バーレスク
マーラーの9番の3楽章がロンド・ブルレスケ
ブルレスケはカリカチュアや、比喩、こっけいな誇張などを意味することば。
オケのピチカートと楽員たちの足踏みに乗って、ヴァイオリンが高域をキューキュー言わせながら走り抜ける、そんな怪しい雰囲気。
デンジャラス感もあり、しつこいくらいにここでも喧騒なムードを繰り返すなか、ヴァイオリンは超絶技巧のパッケージを連発。
「ジャズ、カリオペ、サーカスのピエロ、アフリカのガンボ、マルディグラのパーティー」と作者は記している。
ジャズ系のパーカョンとともに、ソロヴァイオリンっが繰り広げるカデンツァは、ジャンルの垣根を超えたクロスオーバーの世界。
そのフリーな感覚はなんの論評も不要だろう。
③「ブルース」
前章の後半から続く、ジャズなムード主体のオール・ジャンルな雰囲気で、このまさにブルースは継続する。
泣きの音楽、まさにブルーグラス。
金管はビッグバンド的な様相を呈しつつも、巧みにヴァイオリンソロによりそい、ジャズコンチェルトみたい。
ユニークかつ、どこかで聴いたことあるような音楽は、とても懐かしくそれはまた、いま狂ってしまったアメリカの良き時代へのノスタルジーだ。
④「フーテナニー」
めちゃくちゃに盛り上がる前半。
オケ員が足を踏み鳴らし、手拍子でリズムをとり、ヴァイオリンソロは無窮動的に合いの手を入れつつ、ついにヴィルトゥオーソの極み、アメリカ版のフィドルが炸裂。
後半は徐々に全体がフェイドアウトしてゆき、フィドル奏者がファンキーな街をあとにして去っていくような、そんなムードとなり静かに終わる。
実演では、ニッキーはヴァイオリンを弾きながらステージを去ります。
ベートーヴェンやブラームス、エルガーの協奏曲と同じくらいの長さ。
そうしたクラシカルな協奏曲にもひけをとらない協奏曲だと思いますが、ヴァイオリンソロはニッキーのようにフィドルが身体に沁みついているようなルーツがないと、面白くないかもしれません。
ニッキーは欧米豪の各オーケストラで、この作品を弾いてますが、残念ながら日本には来ませんね。
録音したライブは、ガフィガンとスコットランド国立菅とのプロムスのものと、ロウヴァリとフィルハーモニーアとの2種を聴いてます。
ロウヴァリとフィルハーモニア管は来年に来日するので演目によっては飛びつきたい、そんな新鮮なコンビなんですがね・・がっかりさせてくれますわ、ベネデッティを連れてきて、この曲をやればいいのに。
今年のロンドンフィル(ティチアーティ指揮)も同じく。
日本人奏者ばかりとの共演で、すべての公演に有名協奏曲がついてる。
メインも有名曲ばかりで、せっかくの英国の名門オケなのに、若い注目指揮者なのに・・・・
ほんとに頭にきますよ、呼び屋さんの問題なんですかね。
話しはそれましたが、このCDで指揮してるマチェラルも、いま大活躍のルーマニア出身の指揮者。
ケルンWDR響とフランス国立菅のふたつのオケを率いていて、レパートリーも多彩だ。
4楽章のさわりを。
ガフィガン指揮するパリ管とのリハーサルです。
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