2008年11月 2日 (日)

松村英臣 ピアノリサイタル

Hideomi_matsumura 浪花の隠れたる名ピアニスト、関東に登場。
松村英臣さんが、その人。
神奈川フィルの演奏会などを通じ、いつもお世話になっております、Scweizer Music先生のご友人で、先生が応援されている松村さん。
その劇的ともいえるチャイコフスキーコンクールでのエピソードは、こちらでご覧下さい。
90年、ベレゾフスキー優勝時のチャイコフスキーコンクールで、ニコラーエワ女史が松村氏落選に激怒し、「ベスト・バッハ賞」という賞を創出して称えたという。
以来、関西を中心に活躍されたので、関東では、その名声があまり聞かれなかった。

今回、東京で初リサイタルを行なうにあたり、Sweizer Musics先生にご案内いただき、聴いてきた次第。

    バッハ          フランス組曲第2番
    モーツァルト      デュボールのメヌエットによる9つの変奏曲
    バッハ(ブゾーニ編)  シャコンヌ
    ムソルグスキー    「展覧会の絵」
       (アンコール)
    チャイコフスキー    「四季」より 4月
    ヒナステラ        「優雅な乙女の踊り」
    シベリウス        「樅の木」
   
         ピアノ:松村 英臣
                  (11.2 浜離宮朝日ホール)

バッハのフランス組曲、音の輪郭がはっきりと明確ながら、その音色の美しさに思わず引き込まれる。瑞々しくも、すごくきれいな音。
思えば、バッハがキレイでどこがいけないだろうか!
年代的に、峻厳なバッハを是としてしまう傾向がある。
曲が曲だったからかもしれないが、松村さんのピアノには、そんな思いを払拭させてしまう微笑むバッハがあった。
 続くモーツァルトは一転、優しく愛らしい調べと9つの多彩な変奏の豊かな味わいに心和ますことができた。ほっと一息、暖かいお茶でも飲んだような気分といえようか。
 そして驚きは、ブゾーニ編のシャコンヌ。
申すまでもなく、無伴奏ヴァイオリンパルティータのピアノ編曲版であるが、これがまた別物といえるくらいに巨大な作品となって聴こえた。
ヴィルトーソ的な要素は原曲でも充分あるが、4本の弦で奏でられ、上下する幅広い音域をそのままピアノに持ち込むわけだから、それを弾きこなす技巧たるやすさまじいものがある。打鍵の強靭さに驚きつつも、繊細さも充分あって聴き応え充分。
シャコンヌって、こんなすごい曲だっけ!
モーツァルトは、お茶の似合うサロンのムードを感じたが、このシャコンヌは教会の大伽藍を思い浮かべてしまった。

後半のムソルグスキーは、華やかなオケ版にない泥くささと、この作曲者特有の死をイメージさせる暗さを表出するのではと予想したが・・・。
以外や、各曲を微細に弾きわけるというよりは、キエフの大門にピークを持っていったスピード感あふれる鮮やかな演奏に感じた。
この曲のオケ版が実は苦手で、若い頃は好んで聴いたものの、ラヴェルの完璧さがムソルグスキーの素顔を覆ってしまったようで、もってまわった曲に聴こえてしまうようになった。
久方ぶりに聴くオリジナルは、これだけズバズバと弾かれると気持ちがいい。
関西のノリなのだろうか、「こないですぅ、門は大きおまんねん」というような、明るく快活なムソルグスキーに、快感を覚えた次第。
それにしてもスゴイ技巧と強靭なフォルテ。

満場の拍手に、松村さんの楽しいトークを挟んでアンコール3曲。
チャイコフスキーの抒情と、シベリウスの有名な円舞曲を思わせるような冴えた響き。
どちらも素晴らしく、このあたりに松村さんの本領を見た思い。ともかく美しい。
そして、曲も含めて、大いに気に入ってしまったのがヒナステラの曲。
初めて聴くこの音楽。私はラフマニノフ風の感情の高まりに甘味なものを感じた。
ヒナステラ、調べたらあらゆるジャンルに曲を残してるじゃないの。
少し探求してみる価値ありそう。

松村さんのピアノ、これは本物と感じた今日のリサイタル。
日本各地より馳せ参じた聴衆もいらっしゃるということで、これはまた注目のピアニストあらわる、ですぞ!
来年も、東京での演奏会を予告されています。各地の皆さんも是非

コンサートのあとは、アフター神奈川フィルじゃないけれど、とてもおいしいタイ料理とビールに大満足でありました。ご紹介ありがとうございました。皆さんお世話になりました。
そのムード満点のお店は、弊ブログ別館にて近日ご案内いたします。

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2008年8月 9日 (土)

「国歌ファンタジー」 ヘルツォーク・エリカ

China 北京オリンピックが始まりましたな。
天邪鬼のわたしは、開会式も見なかった。今朝のニュースでちょろ見しただけ。
それにしてもゴージャスなもの。
国家の威信をかけ、その繁栄の本物ぶりを世界に発信するまたとない機会と捉えているのだろう。
スポーツの本質が二の次にならなくてはよいが・・・・。
 考えてみたら、64年の東京オリンピックは日本国民が一団となって沸いた。就学前だった私もよく覚えている。外国に対する興味が増し、国旗や地図を必死に覚えたもんだ。

 中国の方々が自国愛と世界から注目を浴びているという自負に酔って当然。
そして、このオリンピックを機に、もっと外国のことや民族のこと、その生活ぶりにも大いに関心を向けて欲しい。

 日本は人々の生活や心はズタズタだ。自然災害や人災が茶飯事。
政治や生活への不満は、オリンピックやワールドカップのお祭騒ぎに一喜一憂して忘れ去ってしまう。これもどうかと思う。
選手の皆さんも気負わず、メダルへの悲壮感やプレッシャーもなく、虚心に頑張ってほしい。

な~んてこと言いながら、ワタクシは食い気。
世界の食べ物でやってみようと思ったけど、手持ちの中華料理の画像で編集してみました。よく見るとチープなものしか食べてないね。

National_anthems_erika

音楽で聴く世界巡りは、ヘルツォーク・エリカさんの「国歌ファンタジー」を楽しもう。

ピアノのエリカさんについては、1枚目のアルバム3枚目のアルバムの記事をご覧下さい。
オーソドックスなデビューアルバム以降は、ユニークなCDが出来上がった。
ことに、欧米作曲家の日本の印象を曲にした「日本の思ひ出」は、エリカさんの心を映し出した1枚で、とても気にいっている。
そしてその2枚目は、世界各国の国家を扱った作曲家たちの国歌アンソロジー集だった。
ジャケットも、お馴染みのエリカさんの下に万国旗が並ぶインターナショナルな雰囲気が横溢。
エリカさんをプロデュースして行くうえで、まずは時期的にも最善の2枚目。

かつてカラヤンが1972年にヨーロッパ讃歌というLPを録音し、世界の国家を本気で演奏した。本気かよ!という当時の思いとともに、天下のベルリンフィルを指揮してここまでやるんだ・・・という思いだった。
それは、普通に国家を大オーケストラで演奏したものと記憶する。そして、オケによる国家ということで言えば、このCDの解説で思い出したのだけれど、かつて外来オケの初日は「君が代」とその国の国家が二つ演奏されることが恒例だった。
カラヤンも例外でないし、ベームとウィーンフィルの実況放送でも、素晴らしい「君が代」が演奏されたもんだ。

そんな思いでこのCDを手にとるとかなり違う。
全19カ国の国歌を、有名無名の作曲家たちが編曲したりアレンジしたりしたものがたっぷりと収められ、さらに「オリンピック讃歌」とカラヤン編の「ヨーロッパ讃歌」まで収録の、まさにピアノによる「国歌ファンタジー」となっている。
エリカさんは、機を衒わず、しっかりと音楽的なピアノを聴かせてます。

National_anthems_erika2 ショパンのマズルカ風「ポーランド国歌」や、ベートーヴェンの「ゴッド・セイブ・ザ・キング」変奏曲、リストの「ラ・マルセイエーズ」、ラフマニノフの「星条旗」など、大作曲家たちによる、彼らのテイストが漂う曲や、あまり知られていない作曲家の手によるもの、さらに私には懐かしい「ウルトラセブン」の冬木氏による、中国と日本の国歌の幻想曲など・・・、とてもバラエティにとんでいる。
個人的に大好きなツェムリンスキーの「抒情交響曲」のエロイくらいの詩人タゴールによるインド国歌による少し怪しい雰囲気のインド国歌編もおもしろい。

多才なエリカさんならではの、楽しい1枚。
オリンピックはともかくとして、「日本の思ひ出」とともに、是非聴いて欲しい1枚でした。

Erica_herzog_2 「ためいき」

Memoire_of_japan_erika 「日本の思ひ出」

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2008年7月26日 (土)

「日本の思ひ出」 エリカ・ヘルツォーク

Yuri_2子供のころの夏の思い出は、匂いの記憶がついてまわる。
 海と山に囲まれていたから、潮の香りと、カブト虫たちが集まる樹液の匂い、そして山に咲く山ユリの濃厚な香り。
実家の周りも開発されてしまったから、そんな夏の香りも遠い記憶の中。
でもヒグラシの鳴き声を聴いたりすると、ひとっ風呂浴びて、冷えたビールに枝豆だい。
 日本人でよかった。

Memoire_of_japan_erika まるで、演歌を思わせるようなジャケット。
彼女は、エリカ・ヘルツォークさんという生粋のクラシック系のピアニスト。

昨年、当ブログでもそのデビューアルバムをご紹介済みで、しっかりした演奏が大いに気にいった。
 私の知り合いが、ある会で一緒に食事をして、とても美しい人ですよぅ、とその彼に教えられたことから、彼女のHPから直接アルバムを購入した。
何度かメールのやり取りなどもしたが、とても気配りの細やかな優しい方であります。
そして、堪能な語学も活かして、外来有名音楽家の通訳やアテンドなどでも活躍中。

彼女の経歴を、前回の記事からそのまま転用します。
「外交官のドイツ人を父、音楽家・俳人の日本人を母として、日本に生まれピアノを学ぶ。
10歳で、父の転勤で渡欧。ルクセンブルク、ドイツ(ヴァイマール)、オーストリア(ザルツブルク)などで学び、2001年に帰国。」
ルクセンブルクの音楽院では最年少主席卒業だし、F・リスト音楽院でも主席卒業。
さらに彼女の音楽の幅を豊かにしていると思われるのは、ザルツブルクのモーツァルテウム音楽大学で、ハルトムート・ヘルと白井光子夫妻から、歌曲伴奏をみっちりと学んでいること。

1作目「ためいき」では、有名曲のオンパレードだったが、2作目のメジャーレーベル本格デビュー盤は、クラシック作曲家たちによる世界の国家のピアノ曲版を集めたもの。
こちらも、オリンピック企画として次月紹介予定。
そして、3作目が日本の音楽にインスパイアされた欧米作曲家たちの作品集。
エリカさんも、花魁姿でジャケットを飾る大胆かつユニークな1枚が出来上がった!

Memoire_of_japan_erika2

収録された曲は、右のジャケットのとおり。
欧米のジャポニズムの到来は、開国後から明治維新あたりからの波だが、その頃からほぼ現在にいたるまでの欧米作曲家による日本由来のピアノ作品が13作品収められている。

日本に滞在した経験を持ったか、日本にやたら魅せられてしまった、いずれも日本を愛した人たちである。
初めて聞く名前の作曲家もいるが、解説を読むと日本の各地にしっかり根付いた方々もいて、とても親近感を感じる。

日本を題材にした音楽といえば、喋々夫人に代表されるオペラがいくつかあって、そちらの方が世界的なスタンダートになっているが、それらはよくも悪くも、日本風なだけであって、妙な演出を施された場合、滑稽なくらいにマヌケな舞台に成り果ててしまう・・・・。

日本の四季や風物を描くのであれば、ピアノに代表される器楽の方がほんわかとして、かつ繊細、機知に富んだ音楽が表出されていいのではないかしら。
あくまで、イメージの世界だが、ここに登場する作曲家たちは、ドビュッシーのように日本への憧れだけで、思い描いたのでなく、実際に日本を感じて、もしかしたら日本人以上に日本している音楽を書いた。

これらの中で気にいったのは、アメリカ人ラブハムの「虫の歌」。
われわれ日本人が好む「赤蜻蛉」「蛍」「鈴虫」「蝉」などを日本的な感じ方で音楽にした。
そこに付けられた詩もまた心に響いてくる。
「赤蜻蛉」~「紅色の薄い羽が窓辺を飛び、遠い湖と水田の眺めを運んでくる」
「蝉」~「人生は儚い。気ままに歌い、そして楽しい歌で夜を忘れよう・・・・」

それとロシアのヴィノグラドフの「六段」。この人も日本に定住した人らしいが、六段の調べとスクリャービンの神秘和音のコラボレーション音楽は、私の心にピピッとくる!

Yosinobu2 大指揮者ワインガルトナーも日本を愛し、先般ご紹介した静岡の慶喜公の屋敷にかかる橋を渡る女性を見て作曲したという・・・。
その画像はこちら。
クリックしてご覧あれ。
 若きキーシンの即興的な「浜辺の歌」がトリで演奏されてます。

エリカさんの鮮やかなピアノで、はじめて日の目をみたこれらの曲が実に新鮮に蘇える。
打鍵が素晴らしく明確で、その完璧な技巧に裏打ちされた音楽への熱い共感。
購入以来、何度も聴いているが飽きがこない。
夜静かに、ヘッドホンで緑茶割りなどを飲みながらしみじみと聴いている。

Erika 日本人の心を持った作曲家たちに、同じく日本人の心をもった素適なピアニスト。
そして、聴くわれわれは「日本の思い出」をそれぞれの胸に持った日本人。

前回記事で、「きっと、ユニークな地位を確保し大成する、素適なピアニストに思う。」な~んて予測したとうり、彼女は流行にぶれない、しっかりした歩みをし始めているようだ。
エリカさん、今度は、お得意のシュヴァーンの音楽を聴かせてください。

 前回記事
  ヘルツォーク エリカ 「ためいき」

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