カテゴリー「ローエングリン」の記事

2019年5月25日 (土)

ワーグナー ニュルンベルクの「ローエングリン」 マルヴィッツ指揮

Reiwa

令和元年。

新元号を迎えて1か月。
すっかり馴染みました。

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  ワーグナー 「ローエングリン」

 ハインリヒ:カール・ハインツ・レヒナー ローエングリン:エリック・ラポルテ
 エルザ:エミリー・ニュートン      テルラムント:リー・サンミン
 オルトルート:マルティナ・ダイク    伝令:キム・デホ
 
  ヨアナ・マルヴィッツ指揮 ニュルンベルク州立フィルハーモニー
               ニュルンベルク州立劇場合唱団

        演出:ダヴィット・ヘルマン

              (2019.5.11 @ニュルンベルク州立劇場)

CDもあんまり出てないし、ほとんど聴くことのできない、ドイツの由緒ある歌劇場のひとつ、ニュルンベルク州立劇場のライブをバイエルン放送局のライブで聴くことができました。
ドイツの劇場は、画像の公開も積極的なので、その数々の写真から、毎度のことながら、観てもいないのに、あれこれ想像を巡らせながらその放送を聴くことができるのも、ネット時代のありがたみです。

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ニュルンベルクの劇場は、その起源は、17世紀に遡り、現在の姿は、1905年に築造されたもの。
隣にはシャウシュピールハウス(コンサートホール)が併設され、人口50万のバイエルン州第二の都市の音楽の中心なのです。
 そして、ニュルンベルクといえば、マイスタージンガーゆかりの地。

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旧市街地は、グーグルマップでみても、中世の雰囲気が色濃く残るさまが見て取れます。

劇場の歴代の音楽監督で、目に付く方を列挙すると、ティーレマン、P・オーギャン、ペリック、そしてボッシュと続き、2018年から、注目の女性オペラ指揮者、ヨアナ・マルヴィッツが就任してます。
ちなみに、オペラ部門の芸術監督は、2018年から、ヤン・フィリップ・グローガーで、バイロイトで、ダンボールと扇風機の「オランダ人」を演出した人です。

マルヴィッツは、ピアニストでありながら、カペルマイスター的なオペラハウス叩き上げの存在で、ドイツ各地のハウスで、すでにかなりの舞台を指揮しており、レパートリーもドイツ物中心にかなりの数を築き上げてます。

ニュルンベルク劇場のオケは、同時に、コンサートオケも兼ねており、ピットからあがるオーケストラの響きは、シンフォニックかつ、劇場ならではの雰囲気豊かなものでもあり、ワーグナーの音楽に不可欠な力強さと、豊かな響きの混ざり合いを聴くことができるのでした。
それを統率する、マルヴィッツの指揮は、とてもスタイリッシュで、重苦しさのない今風のもの。
速めのテンポは、ドラマの勘どころをしっかりと押さえつつ、聴き手を音楽とその舞台に引き込ませるに十分なもの。
無理のない音楽造りなので、歌手たちも歌いやすいのでは。

ちなみに、演奏タイム。
Ⅰ(58分) Ⅱ(79分)Ⅲ(60分)

エルザのアメリカ人ソプラノ、エミリー・ニュートン以外、わたくしには聴いたことのない歌手たち。
そのニュートンの感動さそう、渾身の歌唱もよかったが、ラポルテのローエングリンにちょっとびっくり。
似せているのかと思わせるくらいに、ルネ・コロ+フローリアン・フォークトの声なんだ。
カナダのケベック圏出身のリリックテノールで、甘さと気品のよさが、ちょうどよく両立しているが、耳あたりがよいだけとも言えなくはない。でも、いい声で、気持ちのいいテノールだ。

ほかの諸役も、劇場のアンサンブル的な意味合いでも、とてもよくそろってる。
ドイツの劇場を中心に、中国・韓国系の歌手の活躍が増えているのも昨今のトレンドだ。

というわけで、ドイツの地方オケやオペラの、もこもこした響きや録音、ヘタクソな歌唱という過去のイメージを完全払拭してしまう、鮮やかな演奏と録音でありました。

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しかし、同時に確認することのできる舞台画像や、評論を見ると、ちょっとがっかり。

もう普通じゃいけないんだろうな。

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ブラバントの後継者争いが焦点。
キリスト教徒的な王やエルザ、そして市民たちの半分。
北欧やフン族のような異教徒的な、テルラムント夫妻と、市民たちの半分。
これら異なる宗教のもとにある人々の信教の争いでもあるように見受けられる舞台。

ローエングリンは、絵本に出てくるような、森の番人みたいな、グリム童話的な姿。
しかし、極めつけは、3幕。

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前奏曲を聴いてると、男のうめき声のような、掛け声ともとれる声がする。
評論と画像からすると、二人のカップルの結婚式にあたって、「ウォータン」が胸を誇張したワルキューレたちと登場し、猪を生贄として屠る様子なのだ。
オルトルートたちの奉じる神々は、まさに北欧神話の神々たち。
だからって、出てくることはないでしょうに。

さらに、禁を破られ傷心のローエングリンを襲うテルラムントをアシストするのは、なんと「ウォータン」。
ついでに、こんどは、ローエングリンの父、「パルジファル」も登場してきて助太刀。
たしかに、ローエングリンの物語には、そうした背景はあるけれども、まさに、なんじゃこりゃ、なんです。

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そして、論評を読んでると、やられたはずのテルラムントは、「パルジファル」によって、生き返らされ、なんと、次の後継者として指名されるようだ。
ローエングリンは、待って!と、倒れこむエルザのまん前で、森の騎士たちに、引きづられるようにして舞台奥に引っ立てられていってしまう。
 こんな不条理な幕切れの様子。

当然に、ブーの応酬。
歌手と指揮者には、ブラボーが。
演出家が出てきたときには、盛大なブーイングが。

このクセ玉まじりの変化球のような読み替え演出に、やはり「過ぎたるは及びがたし」の思いが。
もちろん、実物や映像全体を見ずに断じるのは、よろしくはありませんが。

ニュルンベルク・オペラのyoutubeサイトには、数々のトレイラーが公開されてまして、コンパクトな舞台ながら、極めて内容の濃い、そして過激な上演の数々を確認することができます。

ドイツ各地にあるオペラハウスが、市民たちの日常生活とともにありながら、こうして常に新しいものを希求し続けることに、音楽芸術の根付く強靭さを強く感じます。

Mallwitz

しかし、マルヴィッツさんの、この美しき指揮姿に、豊かな音楽性。
オペラ指揮者としてのますますの活躍に期待であります。


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2017年7月 8日 (土)

ワーグナー 「ローエングリン」 ベーム指揮

Kanda

1874年創建、1928年再建の神田教会。

ロマネスク様式の壮麗なる堂内は、東京の喧騒のなかにいることを忘れさせてしまうほどに、静謐な雰囲気。

そして、こうした教会の神聖なるイメージと、その舞台が結びついてるワーグナー作品はというと、「ローエングリン」と「パルジファル」、あと、市民が主役の市井の楽劇「マイスタージンガー」でしょうか。

タイトルロールが、親子で、聖杯守護の騎士であることでの「ローエングリン」と「パルジファル」。
パルジファルでは、聖体拝領の儀が堂内で行われ、まさに堂内が現場となるが、ローエングリンでは、2幕での教会の外側での出来事が描かれる。
教会に向かう幸せな二人に、ちょっかいをかける闇の側の住人。
オルトルートは異教徒だから、教会には入れません。

ということで、「ローエングリン」を。

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 ワーグナー 「ローエングリン」

   ハインリヒ:マルティ・タルヴェラ   ローエングリン:ジェス・トーマス
   エルザ   :クレア・ワトソン       テルラムント :ワルター・ベリー
   オルトルート:クリスタ・ルートヴィヒ 伝令士 :エーベルハルト・ヴェヒター 
   4人の貴族:クルト・エクヴィルツ、フリッツ・シュペルバウアー
           ヘルベルト・ラクナー、リュボミール・パントチェフ

     カール・ベーム指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団
                   ウィーン国立歌劇場合唱団
                           演出:ヴィーラント・ワーグナー

                         (1965.5.16 @ウィーン国立歌劇場)


オルフェオが正規復刻してくれた「ベームのローエングリン」をようやく視聴。

音のあまりよくなかった放送音源からの板起こし盤と比べて、音の揺れも少なくなり、音にも芯が出て、明瞭なサウンドがモノラルながら楽しめるようになった。

バイロイトのように、正規録音スタッフがライブ収録してくれていたらと考えると、欲が沸いてくるが、それでもこの活気あふれる演奏が、ちゃんと聴けることを喜ばなくてはなるまい。

ベームは生前、ローエングリンなんてずっと4拍子で降ってりゃいいんだ、とのたまっていたが、まさに、そうしたシンプルなとらえ方をしつつ、ここでのベームの指揮は、音楽に抜群の生気を注ぎこんでいるように思う。
 ライブで燃えるベーム、ここでも本領発揮。
65年といえば、この夏、ベームは、バイロイトでヴィーラントのリング新演出を指揮。
その前、62年から、バイロイトでトリスタンやマイスタージンガーを指揮して、ヴィーラントと組んできた。
その延長上にあった、ウィーンでのローエングリンでもあった。

この時期に残されたベームのワーグナーのライブ録音と同じく、音楽は緊迫感を保ち、凝縮されたドラマ表現に寄与するように、大いに劇性に富んでいる。
それと、要所要所で見せる、たたみかけるような迫真の推進力をもっていて、1幕の後半と3幕の後半のドラマティックなシーンは、ほんとに素晴らしい。
ほかの指揮者では味わえない、熱いベームのワーグナーの醍醐味がここにある。

歌手たちも豪華。

60年代最高のローエングリン上演の布陣ではなかろうか。

気品あふれるトーマスのローエングリンは、数年前のケンペとの録音より、力強さが増した。
ルートヴィヒとベリーの暗黒面夫婦は、悪かろうはずがない。
実夫婦でもあるこの二人の共演は、数多くあるが、ちょっと弱気な旦那を、きつく締めあげるおっかないカミさんって感じで、「このハ〇ーー!」とか、「違うだろーーー」って聞こえてくるようだ・・・・・・ガクガク、ブルブル。。。。

タルヴェラのハインリヒも、いまとなっては懐かしい歌声で、とてもマイルドでいいし、ヴェヒターの伝令士のカッコよさは、のちのヴァイクルを思わせる。

クレア・ワトソンは美声で、ちょっとお人形さんだけど、この役は、これでいい。

1970年の大阪万博で来日したベルリン・ドイツ・オペラが、7つのオペラを持ってきたけれど、そのなかのひとつが、ヴィーラント演出の「ローエングリン」で、マゼールとヨッフムが交代で指揮をした。
私は、NHKが放送したものをテレビで見た記憶が、かすかにあって、指揮はマゼールだった。
とても神秘的で、きれいな音楽だなぁ~程度の印象で、暗闇で指揮をするマゼールを見つめていて、オペラ本編をそのあと観たかとうかは記憶にない・・・。
 しかし、この時の上演の写真を、数年後にワーグナー狂いとなって、見直して、ローエングリンという作品の視覚的な刷り込みが生じることとなったわけだ。

Lohemgrin_berlin

ウィーンでの、このライブ録音の舞台も、これと似た雰囲気のものではないかと推量し、このCDを聴くのも楽しいものだった。

そして、いまのウィーンでのローエングリンは、ホモキの演出で、指揮は、ネゼ=セガン、タイトルロールはフォークト。
劇場のサイトで、映像が少し見れるが、一瞬、魔弾の射手かと思ったし、建物内で行われる閉鎖空間が息苦しい・・・でも才人、ホモキのことだから、どんな仕掛けがあるのか!

あと、プラハの歌劇場で、カタリーナ・ワーグナーが、父ウォルフガンクが1967年にバイロイトで演出したローエングリンを、6月に、リヴァイバル上演したとの報を見つけた!!


Lohengrin
(プラハ放送局のサイトより)

詳しい情報は、こちらと こちら

ヴィーラントは、バイロイトでは、1度しかローエングリンを演出しておらず、マイスタージンガーとともに、バイロイトで好評だったのが、ウォルフガンクのローエングリン。

情報過多、読み込み過多の演出優位のオペラ上演界にあって、50年前の演出の復刻の試みは何を意味するのだろうか。
自身が、マイスタージンガーで風刺の効いた、当時少し過激な演出をしたカタリーナ。
次のトリスタンでは少し控えめとなり、そして、この復刻。
外部招聘の演出では、今年はポップなコスキーが登場して、大いに騒ぎとなりそう。

揺れ動く、バイロイトの当主だが、実験劇場たる存在で、古きも新しきも、おおいに玉石混合であって欲しい、というのが、いまのワタクシの思いだ。
本物の音楽さえ、保たれていればいい。
音楽の邪魔をしない演出ならいい。
こんな感じです。

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