カテゴリー「トリスタンとイゾルデ」の記事

2018年12月23日 (日)

ワーグナー 「トリスタンとイゾルデ」 ベーム指揮  ウィーン国立歌劇場

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東京タワーの周辺もクリスマス。

幻想的な雰囲気に撮れました。

クリスマスに対する憧憬の想いは子供もころから変わらない。

そして、その憧憬の想いは、この作品に対しても、ずっと変わらない。

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ワーグナー  楽劇「トリスタンとイゾルデ」

 トリスタン:ジェス・トーマス      イゾルデ:ビルギット・ニルソン
 マルケ王:マルッティ・タルヴェラ    ブランゲーネ:ルート・ヘッセ
 クルヴェナール:オットー・ヴィーナー メロート:ライト・ブンガー
 牧童 :ペーター・クライン      舵取り:ハラルト・プレーグルホフ
 若い水夫:アントン・デルモータ

  カール・ベーム指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団
               ウィーン国立歌劇場合唱団

            演出:アウグスト・エヴァーデインク

              (1967.12.17 ウィーン国立歌劇場)

こんな希少なトリスタンを聴きました。
ニルソンのイゾルデは、たくさん聴けるけれども、J・トーマスのトリスタンなんて、どこにも残されていなくて、ただでさえ正規なオペラ全曲録音の少ないトーマスの録音だからよけいにそうです。

これは、11月に買ってしまった31枚組の「ニルソン・グレイト・ライブ・レコーディングス」のなかのひとつ。

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ニルソン財団の協力を受けて、各放送局に残るバイロイト、バイエルン、ウィーン、メット、ローマなどの上演ライブ放送をリマスターして正規音源化したものなんです。

このなかには、「トリスタン」は3種あり、サヴァリッシュのバイロイト(57年)、ベームのウィーン(当盤67年)、ベームのオーランジュ音楽祭(73年)がそれぞれ収録。
サヴァリッシュ盤は非正規のものを持ってるけど、音質が向上。
オーランジュ盤は、映像が有名だけれど、ステレオでちゃんとした音源では初。
そして、まったく初のお目見えが、ウィーン国立歌劇場盤だ。

ついでに、このボックスの収録内容は。
バルトーク「青ひげ公の城」 フリッチャイ指揮
ワーグナー「ローエングリン」 ヨッフム指揮バイロイト
ワーグナー「ワルキューレ」 カラヤン指揮 メット
ワーグナー「ジークフリート」3幕2場 スウィトナー指揮バイロイト
ワーグナー「神々の黄昏」自己犠牲 マッケラス指揮 シドニー
ベートーヴェン「フィデリオ」 バーンスタイン指揮 ローマ
プッチーニ「トゥーランドット」 ストコフスキー指揮 メット
R・シュトラウス「サロメ」 ベーム指揮 メット
R・シュトラウス「エレクトラ」 ベーム指揮ウィーン国立歌劇場、メット
R・シュトラウス「影のない女」 サヴァリッシュ指揮 バイエルン国立歌劇場

こんな感じで、不世出の大歌手ビルギット・ニルソンの主要なレパートリーを、これまで世に出ることがなかったものや、非正規盤であったものなどをしっかり網羅した大アンソロジーなのであります。
少年時代から、ニルソンのワーグナーにおける声を聴いてきた自分としては、まさに垂涎の一組となりました。

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ウィーン国立歌劇場のベームのトリスタン、67年のプリミエの初日の模様で、音源はモノラル。よく耳を澄ませば、若干のテープヒスも聞こえるが、鮮明な録音で、この作品の視聴にはまったく問題ないが、3幕の一部に欠落があるように思う。
あと2幕の長大な二重唱に、因習的なカットがあって、2幕は66分と短くなっている。
面白いのは、1幕の終わりの方、ステレオのように聴こえること。

 それはともかくとして、オーケストラが完全にウィーンフィルのそれであること。
60年代のよきウィーンフィルの音色であり、しかもベームの指揮であることがうれしい。
ひなびた感じの管の響きは、郷愁と憧れを抱かせるのに十分だし、ベームに大いに煽られて切羽つまった音を出すのもウィーンならではの雰囲気である。
 で、そのベームの指揮。
この当時、62年から始まったヴィーラント演出のバイロイトでの上演が70年までずっと続いていて、ニルソンとヴィントガッセンの二人を主役に据えた、文字通り鉄板的な上演だった。7年間のなかで、65年と、67年はバイロイトでの上演はなかったが、DGの名盤66年盤の翌年のウィーンの記録という意味でも貴重なものだ。
 DG盤と同じく、早めのテンポで、凝縮した響きを求めて過度な感情表現はないものの、歌手と舞台とピットが、ベームの指揮の元に一体化していることを強く感じる。
オペラの中心が指揮者であること。
昨今の演出過剰の舞台での小粒になったオペラ指揮者たちにはない、強力な存在感を、このような録音からも聴き取れるのが、昔の音源の楽しさでもあります。
1幕のマルケ王のもとへの到着、2幕の二重唱、3幕のトリスタンの夢想など、いずれもライブならではの高揚感を味わえ、劇場に居合わせた聴衆はさぞかし興奮したであろうと思います。
録音のせいかもしれませんが、ティンパニの強打もそこかしこで、素晴らしくって、DG盤とはまた違ったピットないの音の魅力を感じる。

そして、最初から最後まで、安定していて、冷たくも凛とした神々しさをたたえるニルソンのイゾルデは、自分にとっては、相変わらず無二の存在を裏付けるものでありました。
イゾルデのあらゆるシーンと歌声は、自分にはすべてニルソンなのです。

 で、この音源の大きな目玉が、J・トーマスのトリスタンにあったわけであります。
2幕に省略があったとはいえ、トーマスのトリスタンを、自分としては初に聴けたのだ。
ワーグナーかシュトラウスか、第九ぐらいしか音源がなかったところに、このトリスタンはまったくの朗報。
知的で気品のあるトーマスの歌声だが、凛々しいトリスタンが媚薬にのって愛の男に転じるさま、そして2幕の美しい二重唱での艶っぽさ。
そして、3幕では、驚きのやぶれっかぶれっぷり!
こんなトーマス聴いたことなかった。
古い時代の肉太のヘルデンとは一線を画すスマートな歌唱でありながら、こうした爆発を聴かせるトーマス。まったくもって素晴らしいトリスタンとなりました。
カラヤンのトリスタンが、ヴィッカースになったのは、これを聴いちゃうと、ほんとに残念だけど、カラヤンはトーマスをジークフリートとして使ったけれど、カラヤンのトリスタンのイメージにはならなかったのだろうか。

バイロイトと同じ、タルヴェラのマルケ王のマイルドな美声は、ここでも聴けます。
あつ、ちょっと古風なヴィーナーと、名わき役のR・ヘッセの歌声も懐かしい喜びでした。

この演奏に名を連ねている歌手も指揮者も演出家も、R・ヘッセを除いては、みんな物故してしまった。
いまの新しい録音による、新しい歌手たちの演奏もいいけれど、わたくしは、こうした過去の演奏の方が落ち着くし、好きだな。
 もちろん、昨今の歌手たちは、べらぼうに巧くなったし、演技もうまいし、ビジュアルもいいんだけれども・・・。

このニルソン大全、喜びを感じつつ、ちょっとづつ聴き進めてますので、また記事にすることもあろうかと思います。
とくに、「影のない女」は素晴らしいし、ちゃんとしたステレオ。
あと、ベームと振り分けたスウィトナーのジークフリートの一部が、これもステレオで聴けます!

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今年もあと1週間。

天皇陛下として最後のお誕生日のお言葉を拝見しました。

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2010年1月17日 (日)

神奈川フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会  金聖響指揮

1 今年、初コンサートは神奈川フィルハーモニーの定期演奏会。
Kana_phll_201001 ベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」一本。
金聖響さん、昨年暮の第9の流れの中で、是非にも取り上げたかった演目でありましょう。
第9は無味乾燥の思いしか抱けなかったし、音楽監督就任時のエロイカも同様。でもその後の、トリスタンとドビュッシーはすっきりとしてて悪くなかった。
だから、ご本人が著作をものにしたり、全曲録音を果たしたりと、注力中のベートーヴェンには私的には、警戒の念を抱かざるを得ず、曲への期待と演奏への不安の相半ばする気持ちでありました。

聴いた結果から先に述べると、悪くなかったぞ、いや、大変よくできましたなのだ。

金さん慣れしてないワタクシ、知らねば語れぬとばかり、プレトークでも登場の玉木正之氏との共著の2冊(ベートーヴェンの交響曲、ロマン派の交響曲)を購入して、ベートーヴェンの途中まで読んだところ。第9の項目でミサ・ソレムニスのこともかなりふれていて、晩年の作曲者が過ごし活動した家を訪れたくだりや、献堂式序曲を挟んで連続してかかれた、このふたつの大作が「悟り」の境地にあり、ともに広い意味での宗教感のもとにあることなどが書かれてあります。ほかの交響曲も、ピリオド奏法のことも、いろんなことを書いていらっしゃるわけだけど、私には言わずもがなの言葉の洪水のように感じられるのも事実。
しかし、こうしたい、ああしたいという、強烈な意欲と熱意は充分伝わってまいります。

いまのところ、こうした表現意欲が実際に音としてともなってきていないのが、正直なところと思う。
それは、まだ日の浅いオーケストラとのコンビネーションにも要因があるとも思われる。前任の指揮者団に培われてきたことと全く違うことをやろうとしているわけだし。
その点が、神奈フィルサウンドを愛する聴き手(わたしも会員であります「勝手に神奈川フィルを応援する会」~笑)の反発も呼んでいるわけでありますね。
もちろん、私たち聴衆は演奏方法はひとつの手段であり、その音楽が強い説得力を持って心に迫ってくれば、万事御の字なのであって、神奈川フィルの応援のしがいもあるというもの。

「心よりいでて、心へ」
ベートーヴェンがミサ・ソレムニスに託した思い。
この日のコンサートは、この言葉をともなって、心に迫って来ましたよ
ことに、後半、「サンクトゥス」の神妙な低弦から耳をそばだて、歓喜のホザンナを受け、きたるベネディクトゥスを待つ。この橋渡し的なチェロ、ヴィオラの場面は私的にはいつも注目しているところで、最近ピリオド聴きで練習したノリントン盤よりも、ずっと美しかった。
こういうちょっとしたところに、ノンヴィブラート奏法でも血が通ったようになるのが神奈フィルなのかも。
そして、来ましたよ、この日のハイライト。
聴く前から間違いなく素晴らしいであろう石田コンマスのベネディクトゥス。
良い意味で線の細い、そして繊細極まりないソロは、ベートーヴェンの書いた最高に美しい音楽を余すところなく弾ききっていたように思う。
これまでの長い3章で、少し弛緩していたホールの空気が、ここへきてピリリと締まったわけで、少しお休みの方々も背筋を伸ばして聴き入っておりました。
ともかく久々の至福の時を味わうことができ、ソロに、涼やかな木管、そして素晴らしい独唱にと、わたしは涙が滲む思いであったことをここに記しておきます。

 最終章、「アニュスデイ」もよかった。

 

ミゼレーレの悲歌的ムードから、一転テンポがあがるが、このあたりのメリハリも性急感は少なめで、自然な感じ。合唱の素晴らしいフーガに、複雑にからむオーケストラ。
ピリオド奏法もこうした場面では、あまり気にならないし、むしろ普通だった。
終結部は、往年の壮麗な演奏になれた耳には、あっさりしすぎだと思ったけど、ノリントンよりはだいぶマシ。

 

 
冒頭に戻って。
出だしの「キリエ」を聴いたときに、いやな予感も走ったが、だんだんあったまってきた感あり、グロリアでは得意のティンパニの応酬とスピード感あふれる場面が続出。このあたりが、面白いという効果だけに終始してしまうので、今後いかに練ってゆくかでありましょうか。
独唱が活躍する「グロリア」、4人の中では、テノールの吉田さんの輝きと、澤畑さんの清潔であたたかな歌声がずばぬけていた。
お馴染みの押見さんと、新国でハーゲンを観ていらいファンである長谷川さん、いずれも安定感ありました。
一方、合唱の活躍する「クレード」、神奈フィル合唱団、力強く輝かしい。

全曲を通じ、聖響さん、オーケストラをかなり抑えていたのでしょうか。
シンフォニックでありながら、室内楽的な響きを目指していたような感じ。
曲が素晴らしく出来ているから、語らずとも音楽がすべてを言いつくしてしまう訳ではありますが、多くを語らぬ方が、そして肩の力を抜いた方が、金さん、よいのではないでしょうか・・・・・。
そんな風に思ったミサ・ソレの一夜である。

一夜明けて、ノリントン73分と、ベーム87分、ハイティンク79分を聴いております。
聖響さんは77分くらいだった。
こうして聴くと、ベームは歌はあるも遅すぎ。
遅い中にも剛毅なクレンペラーを買い直さなくては。
ベネディクトゥスの美しさは、聖響&神奈川フィルが随一かも

 

 

 

 

 

2  コンサート終了後、年初の乾杯式がございまして、理事の皆様のお話に、金聖響さん、ソリスト、オケの皆さん、それぞれご挨拶がありました。

「次期シーズンのマーラーよろしく!」の聖響さん。

 

 

 

 

 

4 ロビーには、昨年の神奈川フィルの活躍の模様がパネル展示してありました。
それらの中から、あの忘れられないシュナイトさんの最後の神奈川フィル。
壮絶なるシューマンの4番の最後のシーンでしょうか。

 

思っただけでも、涙がこみ上げてしまう。

こうしてひとつ終わり、また始まったわけであります。

アフターコンサートは、「勝手に神奈川フィルを応援する会」幹事長さまのお取り計らいで、首席ソロチェリストの山本裕康さんをお迎えして、楽しく有意義な音楽談義。
ミサソレ・フェチとおっしゃる山本さんは、演奏会で滋味あふれるチェロを弾き、束ねてらっしゃいました。
懇談でも、その優しさと気配りのお心あふれるお人柄に接し、ますますファンになりましたた。そして同時に、神奈川フィルをますます応援して行こう、若い金さんも見守って行こう、という気持ちになりました。
お疲れのところ本当にありがとうございました。
そして皆さん、毎度お世話になりました。

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