2008年7月21日 (月)

ブリテン 「オーウェン・ウィングレイヴ」 ブリテン指揮

Yoshinobu静岡市にある、慶喜公の館。
自慢の池のほとりに一流料亭の「浮月楼」がある。
一度こうしたところで、懐石などをいただいてみたいもの。
たいていは、この向かいにある老舗居酒屋で満足なわたしです。
慶喜公は、長命で77歳まで生きた。写真や自転車に興味を示して、静岡の町を楽しんだという。

Owen_wingrave

17作品あるブリテンのオペラ関連作品。
オーウェン・ウィングレイヴ」は、最後から2番目のオペラで、1970年の作品。
最後は「ヴェニスに死す」で1973年。
ブリテンの早すぎる死は、1976年で、享年63歳。

そのオペラの大半は、1950年代に作られていて、60年代は、日本やアジアの訪問で影響を受けた教会寓話シリーズに集中した。

そのオペラには、多様なスタイルや題材があるが、大きい分類で仕分けすることは可能だ。
編成で考えれると、大オーケストラによるものと、室内オーケストラ、さらには、器楽のみによるものなどで分けられる。
題材で考えると、文学作品が大半ながら、宗教的なもの、歴史劇的なもの、少年愛またはオホモチックなもの、反戦的なもの、ミステリアスなもの・・・、などに分類できようか。
内容によっては、思わず引いてしまう聴き手もいようが、私はブリテンのつくり出す音楽のカッコよさと弧高の人間心理との鮮やかな対比が好きで、多少の怖さは飲み込んで聴いている次第。

本作は、「ねじの回転」と同じ、ヘンリー・ジェイムズの小説に基づいてかかれたテレビ用のオペラで、反戦思想とミステリーが一緒に題材になっている。

第1幕
 軍事塾の教師コイルと、その教え子レッチミアとオーウェン・ウィングレイヴが話しあっている。
戦争を賛美するレッチミアに対し、オーウェンは戦争が嫌いだから軍人になるつもりはないと発言し、先生を困らせる。
オーウェンの能力を高く評価するコイル先生は、気がすすまないまでも、ウィングレイヴ家を取り仕切る老ウィングレイヴ嬢に話をせざるをえない。
ウィングレイヴ家は、代々軍人を生んできた名家なのである。
オーウェンは、戦争を呪って一人独白する「戦争は政治家の遊び、聖職者の喜び、法律家のいたずら・・・」
コイルは、オーウェンに田舎の実家パラモア館に行き、そこに存命する祖父フィリップ・ウシングレヴ卿に説明をするように諭す。優しいコイル夫人は心配する。
 そして、オーウェンは、パラモア館で、その住人フィリップ卿と娘ウィングレイヴ嬢、その老嬢の戦士した許婚の妹ジュリアン夫人とその娘ケイトらの冷たい応対を受ける。
コイル夫妻とレッチミアも駆けつけるが、晩餐会ではいや~な雰囲気になる。卿は怒り、オーウェンと決裂する。
それぞれが独白めいた歌を歌ったり、重唱となったり、会話をしたりと、ブリテンの作風は冴えに冴えている。

第2幕
 語り手によって、ウィングレイヴ家の悲しい過去が語られる。
軍人となるはずの少年が、子供同士の喧嘩で逃げたのを咎めた父親。父は息子を殴り死なせてしまう。そして父親も何故か倒れて死んでしまった。
以来、その部屋にはその親子の幽霊が出るという・・・・。
 夜、卿に呼ばれたオーウェンは、廃嫡される。
悲しい一方、すっきりしたオーウェンは、コイル夫妻に慰められる。
一人になり、一族の肖像を前に決裂を告げ、一方で平和を賛美する。そこへ、幽霊が現れ横切るが、オーウェンは、「気の毒な子だ、君にかわって、みんなに代わって、私はやり遂げた、君の父親の力ももうなくなった。僕は勝利した」・・・と歌う。ここは感動的なシーンだ。
 そこへ、幼馴染みで許婚だったケイトがやってくるが、彼女も軍人賛美の一人なのだ。
オーウェンに向かって、臆病者と挑発し、そうでないことの証明に幽霊の部屋で一晩寝ろという。オーウェンも、この世の怒りが込められているあの部屋で一人で立ち向かわなくては・・・と部屋に入る。ケイトは外から鍵を閉ざしてしまう、怖い女。
 その様子をみていたレッチミアは、怖くなってコイル夫妻を呼びに行き皆で駆けつけ、館の全員も集まるが、部屋の中には死んで床に横たわっているオーウェンの姿がある

 オーウェン・ウィングレイヴ:ベンジャミン・ラクソン
 コイル: ジョン・シャーリー=カーク コイル夫人:ヘザー・ハーパー
 レッチミア:ナイジェル・ダグラス ウィングレイヴ嬢:シルヴィア・フィッシャー
 ケイト:ジャネット・ベイカー    フィリップ卿:ピーター・ピアーズ

   ベンジャミン・ブリテン指揮 イギリス室内管弦楽団
                    ワンズワース・スクール合唱団
                       (70年録音)

一族の宿命を一身に背負ってしまったオーウェンを、美声のラクソンが、迫真の歌唱を聞かせる。この人を始め、ブリテン作品の常連さんたちによる共感に満ちた歌は、しばらく現れそうもないこのオペラの永遠のスタンダートとなりうるものであろう。
エキゾテックでミステリアスなムードの音楽は、ちょっと薄めの響きや独特のリズムが、何度か聴くと癖になってしまう。フォルテの場面は全曲でわずかしかなく、終始静かに進行する音楽で、十二音の技法も駆使した複雑な要素もある。
まだ全貌を掴みきってはいないが、何度も聴いて見えてくるブリテンの音楽。
ブリテン全オペラを制覇するまで、繰返し聴いて確認するのも楽しみ。

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2008年7月19日 (土)

プロムス2007  ビエロフラーヴェク指揮

2_2 3_2 英国の大手スーパー、「TESCO」(テスコ)は、世界の小売流通業者の中でも第3位(だと記憶)。
ウォルマート、カルフール、テスコ、メトロ・・・・。
米・仏・英・独の上位4社はいずれも本邦上陸を果たしていて、ストレートにそのまんま来たけど、おフランステイストを期待した日本人を裏切る普通ぶりで出足で失敗したカルフールはイオンが引き受けて撤退した。
ほかの3社は、ウォルマートが西友を傘下に納め苦戦中、メトロは業務用に徹して頑張っているが日本のハードルの高い出店条件に苦戦中。
残る「テスコ」は、なんと「つるかめランド」を傘下にして小規模店舗で日本の消費者の勉強中。他と違ってとても慎重なのだ。
私は、数年前イギリスに出張したときに、本場のテスコを数ヶ所視察したが、それはそれはデカイ。いわゆるハイパーマートというやつで、食品からガソリンまで、あらゆるものを売っている。他国でも似た展開のようだから、世界一難しい日本の消費者を相当に意識していると見える。
1_2 最近ようやく、テスコブランドを掲げコンビニ規模のミニスーパーを出店し始めた。
横浜のみなとみらい店に行ってみた。
狙いは、英国テイストのテスコのPB商品があるかどうか! そして、行ってみるとあまりの普通の街のスーパーぶりにガッカリ。
唯一、「ベイクド・ビーンズ」の缶詰があった。
欧米人は豆料理が好きだ。私も辛いチリコンカンが好きだけど、この英国の家庭の味と書いてあるビーンズは、甘いくてイカン!
トーストと一緒に食べてみたけど、う~むの味。さすが英国、されど英国料理。
こんなはずじゃないのに。現地で食べた「ギドニーパイ」なんてとてもおいしかったし、日本でも馴染みのある「フィッシュ&チップス」にビネガーをつけて食べたら最高。
 ちなみに最近は、フィッシュのタラの高騰でお値段的に庶民の味じゃなくなってきているそうな・・・・・。

Proms2007_a 英国のスーパーや食について長く書きすぎました。
英国音楽を愛するがゆえに、もっといろんなことを知りたいからであります。

ロンドンの夏の風物詩といえば、ロイヤルアルバートホールで開催される大音楽祭「プロムス」。
今年もスタートした。
7月18日から、9月13日まで、英国の各地のオケを中心にベルリンフィルやシカゴ、パリ管などが賑やかに登場する。
尾高さんも常連で、今年は「悲愴」を指揮する。
昨日の演奏を早速ネットで聴いてみた。
BBCのシェフ、ビエロフラーヴェクの指揮で、シュトラウスやベートーヴェン、スクリャービン。渋い演目で開幕だ。「最後の4つの歌」(ブリューワーのソプラノ)では、歌ごとに拍手が起きてしまう呑気な雰囲気。ブラボーも盛大で、大らかな雰囲気が漂いっぱなし。
ラストナイト、今年はなんと、ノリントンの名前がエントリーされている!
さぞかし、愉快だろーな。

 ビエロフラーヴェクは、完全に一皮むけた巨匠となりつつある。
そんな思いを、先般はグライドボーンの「トリスタン」で感じた。
DGから出た昨年のプロムスのハイライト集でも、それを強く感じる。

 1.ウォルトン 序曲「ポーツマス・ポイント」
 2.エルガー  チェロ協奏曲  Vc:P・ワトキンス!
 3.ブリテン  「ピーターグライムズ」 4つの海の間奏曲
     指揮:イルジー・ビエロフラーヴェク
 4.ディーリアス 「夏の歌」
     指揮:アンドリュー・デイヴィス
 5.クヌッセン ヴァイオリン協奏曲 Vn:リラ・ジョセフォヴィッツ
     指揮:オリヴァー・クヌッセン
 6.ティペット トリプル協奏曲    Vn:ダニエル・ホープほか
     指揮;アンドリュー・デイヴィス
 7.ベネット  「トーマス・カンピオンの4つの詩」
     S・ジャクソン指揮 BBCシンフォニーコーラス

オーケストラがBBC響だから、巧まずして英国サウンドが得られるわけだが、真面目すぎて面白みの感じられなかったビエロフラーヴェクのイメージは、冒頭の楽しくもかっこいい、ウォルトンの音楽で見事に覆される。
ブリテンでも緩急を十二分につけて、オケを存分に鳴らして、海のない国からやってきた指揮者とは思えないくらいに切実な音楽が鳴り響いていて見事。
エルガーの協奏曲の独奏は、先般、都響でその第3交響曲を指揮した「ポール・ワトキン」だから驚き!もともとチェロ奏者を心ざしていたから、全然普通に素晴らしい。
根っからのエルガーリアンだったのだなぁ。泣きのチェロをしっかりオケが支えている。

2枚目は、アンドリューの指揮による私の最愛のディーリアスの曲のひとつ「夏の歌」で始まる。プロミスで1931年に初演された曰くがある。かなり生々しい演奏。
続いて聴きやすいクヌッセンの協奏曲をリーラ嬢の屈託のないヴァイオリンで。
ティペットの協奏曲も好きな曲。複雑だが、聴くほどに紐解けてきて味わいの増す音楽。
最後のベネットの合唱曲は、16世紀の詩人兼音楽家兼殺人者(!)のカンピオンの詩につけたもので、世界初演。普通に聴けるメロディアスな音楽だった。

さあ、梅雨も明けた。夏は長いぞ。

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2008年7月12日 (土)

ディーリアス 河の上の夏の夜 デル・マー指揮

Azumino 今日は暑かったですな。
昨日から、静岡に出張。思い切って車で行ってみた。
千葉から途中富士市によって静岡市まで、約3時間半。
静岡でおいしすぎる寿司をごちそうになって、おでんも食べて、ラーメンも食べて、朝からお腹一杯で、静岡をあとにした。
神奈川の実家によって、昼食をいただき、寒川・綾瀬・大和・座間・横浜と周って、雷雨を抜けて先ほど千葉に帰還。ふぅ~っ!
こんな暑い一日、疲れた体を癒してくれるのは、ディーリアスのそこはかとない優しい音楽がいい。
この写真は、以前行った安曇野。涼しげであります。でも中国人のツアーと出くわし、その賑やかなことといったら・・・・・。

Delius_del_mar

四季おりおりに、自然をいとおしむような美しい音楽を残したディーリアス。
人間の心理や悩み、葛藤を描き出すかのような深遠な音楽、構成のしっかりした論理的な音楽・・・、
それらとはまったく異次元の音楽がディーリアス。
人間よりは自然。
その自然から受けた感覚をそのままディーリアスの感性が音にしてしまった。
そんな音楽。

実業家の父の跡を継がず、酒とバラの日々を過ごし、晩年その報いを不自由な体となって受けてしまう。酸いも辛いも極め尽くした男が行き着いたノスタルジーに満ちた感覚の音楽の世界。
中学生の頃から聴くとはなしに聴いてきたディーリアスの音楽は、酒飲みの悪い大人となった今、本当に心に染みととおる・・・・・。
英国音楽愛好の道を開いてくれたのもディーリアス。
これからもずっと聴いてゆきたい。
もし、私の命が尽きることがあったら、ディーリアスの音楽をずっと流して欲しい・・・・。

河の上の夏の夜」、この詩的な名前の曲は1911年の作曲。
フランスのグレ・シュールロワンで、川遊びを好んだディーリアスは、そのイメージそのままの小品を書いた。
緩やかに流れる河に舟を浮かべ、水の流れる音や蛙の声に耳を澄ませる。
遠くは、ぼんやりと霞んで見える。
あくせくした時間は、ここでは止まってしまったかのよう・・・・。

ノーマン・デル・マーは、すでに物故してしまった英国の名指揮者だが、CDは廃盤が多く、その存在は忘れられてしまったようだ。
エルガーやRVWとともに、このディーリアス演奏は、貴重な音源だ。
チャイコの5番など、かなり熱演型の指揮者と聞くが、このディーリアスはかつてのビーチャムをも思わせるような作曲家への愛情に満ちた桂演である。
ボーンマス響のあっさりした響きも美しい。

デル・マーの息子は、ベートーヴェンの交響曲のベーレンライター版の校訂者でもあって音楽親子。

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2008年7月 7日 (月)

ホルスト 組曲「惑星」 ショルティ指揮

4 今日は、七夕。
関東は残念ながら曇り空。
先週末に、実家へ帰り、子供たちと平塚の七夕祭へ出掛けた。

久しぶりの七夕祭。
ものスゴイ人ごみと蒸し暑さで目が回りそうだった。
それでも、露天で味わうビールは格別。

1_3 2_2  子供の頃は、毎年通った平塚の七夕。
今のような華やかさはなかったけれど、綿菓子やヨーヨーが楽しみだった。
でも、戦地帰りの兵隊さんとかが路傍に座っていたりして、子供心に怖かった・・・・。
平塚は軍需工場が多かったため、空襲で焼け野原となった。
その復興祈願もあって七夕が始まった。
今は平和な祭にもそんな歴史がある。
 でも、最近の事件のこともあり、警備は厳重・・・
3_2 5 今年の旬のお題は、「オリンピック」に「篤姫」。
毎年、特賞を受賞するカバン屋さんは、「ぶんぶく茶釜」だった。

マイフォト見てちょーだい。

Planets_solti 七夕ということで、星にちなんだ音楽。
といえば、ギュスターフ・ホルスト(1874~1934)の組曲「惑星」。
今日、この曲をお聴きの方もたくさんいらっしゃるのでは?

中学生の頃、メータのゴージャスな演奏のレコードで、はじめて聴いた。
その時は、スペキュトラー音楽として受け止め、「火星」や「木星」ばかりを好んだもの。
長じて、英国音楽として、この曲をとらえるようになり、アメリカのオケではなく、英国のオケで聴くようになった。
「金星」や「土星」、「海王星」が心に響くようにもなった。
そして、ホルストは「惑星」だけじゃない! 洒落た管弦楽小品や合唱曲(特に涼やかなパートソング)などに素適な作品がたくさんあるから、こんご取り上げてゆきたい。

サー・ゲオルク・ショルティは、アナログ最後期の1978年に「惑星」を録音した。
当時、シカゴ響を使わずに、もう一方の手兵、ロンドン・フィルハーモニーを起用したことも話題となった。
日本盤は、横尾忠則のデザイン画がジャケットとなり、その近未来的かつシュールな趣きのジャケットはインテリアとしても使えそうな感じだった。
私はついに買いそびれ、あんまりおもしろくないCDジャケットでガマンしたが、ここにはレコ芸の広告の画像を使わせていただいた。
懐かしいでしょ!

まずは、ロンドンのキングスウェイホールの重厚かつ響きの良い音響をとらえた録音の素晴らしさに驚き。
フォルテやアレグロの曲では、いかにもショルティらしい、威勢のいい一筆書きのような演奏となっている一方、金・土・海王のしっとり系では、円熟の兆しにあったショルティがじっくりと腰を据えて音楽と向かい合ったような味わい。
ブリリアントな弦の響きを持つロンドンのオケを起用した訳がよくわかる。
実際に土星は、重ね行く年輪とともに、秋の気配がただよう桂演に思う。

火星や木星、天王星などの賑やかな部分では、ロンドンフィルの金管もいいが、シカゴだったらさぞや・・・と思わせる。
まぁ、私の好みの惑星ではなくなってしまったであろうが、シカゴとも録音があってもよかったかもしれない。
 このコンビ、エルガーも録音しているが、この惑星の元気な部分もそうだが、テンポが私には、ちょっと速すぎか・・・。

ホルスト過去記事

 「メータとロスフィルの惑星」
 「ロッホランと日本フィルの惑星」
 「ハンドレーとロイヤルフィルの惑星」
 「プレヴィンとロンドン響の惑星」
 

 「雲の使者」 ヒコックス指揮

 

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2008年6月17日 (火)

東京都交響楽団演奏会 ワトキンス指揮

Tmso イギリスの若手指揮者 ワトキンス指揮の東京都交響楽団の定期演奏会を聴く。
会員でもなんでもない私、都響は何年ぶりかのお久しぶり状態。

そう、狙いはエルガー(ペイン版)交響曲第3番
尾高さんの演奏を逃してしまったから、生で聴くのは当然初めて。


そして! 極めて素晴らしかった!
普段、この曲をCDで聴いているのと格段に違うライブな臨場感が溢れ、眼前で手に取るように展開されるオーケストラに目を奪われっぱなしだった。
P席での鑑賞だったためであるが、「ここでこんなことを」、とか「こんな風に弾いてるんだ・・」とかの思いで満たされていたわけ。

      シューマン         ピアノ協奏曲
                  
                 Pf:中野翔太

      エルガー(A・ペイン版) 交響曲第3番 

       ポール・ワトキンス指揮 東京都交響楽団
                       (6.17@サントリーホール)

このところ、シューマンとエルガーばかり。
期せずして、その二人の作品の組合せの一夜。
シューマンの独奏は、若い中野クン。
冒頭は、ピアノもオケも噛みあわず、この指揮者、大丈夫かな・・と思わせるくらい。
1楽章後半から、徐々に音楽が響き出し、3楽章は実にフレッシュで活き活きとした演奏となった。ところが、3楽章で、ピアノが完全に落っこちてしまった・・・。
気を取り直して、なんとか曲を閉じたが、ちょっと後味が悪いかな。
この指揮者の振り方が見ていて拍子の打点がわかりにくい。
でもS・オラモ似の写真と違って、正面から見ていると、ときおりMr.ビーンのような顔をする。そういえば、ビーン氏はローワン・アトキンソンと、紛らわしいお名前。
イギリス室内管の准指揮者らしく、実力派で、顔はともかく、今後活躍する予感。

でもエルガーでは、そんな指揮ぶりが全然問題なく、大きな枠組みを築きつつ、3番の交響曲が持つ壮大さをとてもよく引き出していたように思う。
1楽章は、早めでこだわりなく進む様子に、じっくり型の尾高さんの演奏との違いに戸惑いつつも、その流れのよさにすっかり乗せられてしまった。
その冒頭の第1主題は、前記事の「使徒たち」で書いたとおり、イエスの受難や復活を描いたオラトリオ3部作の、未完の「最後の審判」のモティーフだという。
 さすがに、その大作はペインさんも補完できないだろうなぁ。

2楽章の憂愁のスケルッオ、弱音器を着けたトランペットのソロがとても印象的。
打楽器が活躍するさまも、後ろから拝見していると、とても面白い。
都響のきめ細やかなアンサンブルが見事だった。
圧巻は続く二つの楽章。
「惑星」の「土星」を思わせる沈鬱かつ重々しい雰囲気を、エルガーの緩徐楽章らしい熱く高貴な抒情が打ち払う。ビオラにハープにオーボエにと、オケの動きに目が離せない。
ワトキンス氏の熱のこもった指揮は、オケをだんだんと熱くしていく。
そして、CDではとって付けたように感じる終楽章は、大交響曲の最後を飾る座りのいい音楽として鳴り響いた。
打楽器の大活躍は相変わらずであるが、全曲に渡って多用される、エルガーの特徴である上昇音型が見事に決まってゆく。
リズミカルで親しみやすい音楽に聴衆もついに引き込まれていくような雰囲気だった。
最後は急速に速度を落とし、ドラの音とともに静かに曲を閉じるわけであるが、もうひとつのエルガーの常套である、冒頭主要主題の回顧(ヴァイオリンでさりげなく現れる)を見事に決めてくれた。
 曲を閉じて、指揮棒を抱え込むようにしたワトキンス。
未知の曲の方もおられるであろうが、エンディングの余韻をじっくりと味わうことができた。

会心のワトキンス氏、かなりのブラボーも飛び、最後は、エルガー=ペインのスコアを高く掲げ歓声に応えた。

プログラム解説には、マーラー10番や、未完成、ルルやトゥーランドットといった補筆完成版のことが書かれていて、クック版マーラー10番が、たどった成功の道を、このエルガー=ペインもたどることができるであろうか・・・あなたの判断は? とある。
 私は、これまで、大好きなエルガーの交響曲がもう1曲増えたことを素直に喜んできたが、今回のライブ経験で、一歩踏み出し、札響・大フィルなど日本のオケが普通に名演をくりだすようになった、エルガーの名曲のひとつとして、認知いたします。はい。

11月には、尾高/札響が札幌定期で演奏したあと、恒例の東京公演でも演奏しますぞ!

  エルガー 交響曲第3番の過去記事

 コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団のCD
 尾高忠明指揮 札幌交響楽団のCD
 

   

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2008年6月15日 (日)

エルガー 「使徒たち」 ヒコックス指揮

Tomioka_church 小樽の富岡教会。
マリア像が楚々と立つ。

幼稚園も併設され、キリスト教の教えを日本ながらに子供たちに植え付けてきたであろう。
季節の花が飾られ、とても清潔で、心洗われる趣きに溢れていた。

極めて大昔のはなし。
私の幼稚園もカトリック系で、海辺にあって砂浜まですぐだった。
クリスマスには、宗教劇が行なわれた。児童が演劇するのだが、私はいつもイエスをあがめる乞食の役だった。くじ運が悪いのか何なのか・・・・。風呂敷をかぶり、東方の博士とともに、馬小屋に向かう役だった(と思う)。ゲームはもちろん、テレビはモノクロの時代。
子供の心を豊かに育む想像力や素朴な環境、純真な心情やに満ちていた時代・・・・・。

Elgar_aposteles

そんな思いとともに、今日はエルガーのオラトリオ「使徒たち」(アポステルズ)を。
エルガーが一躍人気作曲家になったのは、「エニグマ変奏曲」(1899年)からだが、それ以前にも、「生命の光」「オラフ王」「カラクタクス」「黒騎士」などの声楽作品があって、それらも徐々に聴き始めたところ。
これらの声楽作品を仕上げたあとは、活動を少しお休みしたりしたあとの、エニグマ、そして「ゲロンティウス」とくる。

1902年に、バイロイトに赴き、「リング」と「パルシファル」を観たことで、エルガーはオラトリオの3部作を作曲することを決心したらしい。
その第1作が「使徒たち」、第2がすでに取り上げた「神の国」、第3は「最後の審判」になる予定が作曲はされず、3部作構想は挫折してしまった・・・・。
その後、交響作品へ作曲の舵を大きく切り、解説によれば「最後の審判」のスケッチは、これまた未完の第3交響曲に見出すことができるとある・・・。
このところやたらと聴くこととなった、ペイン版第3交響曲もそうした思いで聴けばまた格別かもしれない。(6月17日都響予定)

この「使徒たち」で、エルガーは、イエスの受難をマグダラのマリア、弟子たちを交えて描いている。いわば、エルガーの受難曲。
全曲で2時間以上の大作は、1部と2部とに分かれている。
 
 第1部
  ①使徒たちを呼ぶわん
  ②路傍にて
  ③ガリラヤ湖にて
 第2部
  ①裏切り
  ②ゴルゴタ
  ③墓
  ④昇天

このようなタイトルに、宗教じみていてたじろぐ方もいるかもしれないが、マタイを中心とした聖書の記述を順に追ったドラマは、対訳なしに、詳細不明の英語の歌詞を見ながら聴いてもなかなかに楽しめるものだ。

 第1部では、イエスの奇蹟や言葉、マグダラのマリア悲しみとその救いを。
冒頭は、交響曲第1番のように、ティンパニと低弦で始まる。
「Spirit of the Lord」の主題が優しく高貴なムードで始まる。そして次の「悲しみの人々(man of sorrow)の主題。このふたつが全曲に繰返し出てくる。
いずれもエルガーらしい気品と感動に満ちた素晴らしい旋律。
次作「神の国」もそうだが、いくつかの主要旋律をしっかり覚えて聴けば、後の方になるとそうした旋律がいろいろに姿を変えてあわられるので、繰返し聴けばとても親しみのある大作になるのだ。そして、その音楽が自分に語り始める時がきっとくる。そのときの感動は例えようもなく大きいものになる。
エルガーの音楽は、そんな風に聴いている。

第2部は、まさにユダによる裏切り行為(対価である金貨を表わすかのキラキラした音楽まで鳴っている)とイエスの捕縛、ペテロの否認、ユダの後悔と逃亡。
十字架上のイエスでは、深遠な雰囲気で、イエスの言葉「エリ エリ レマ サバクタニ」はオケで重々しく表現される。
そして、最後の昇天では、使徒たちの前に再び現れ、伝道命令を行なうイエス。
「あらゆる国々に行って伝えなさい・・・・・、見よ、わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたとともにいます」
使徒とマリアたちは、アレルヤを繰り返す神秘の合唱とともに、イエスと神を称えつつ、盛りあがり、聴く私を最高の感動の頂きに導いてゆく。このところ、毎日泣いているが、ここでも涙が止まらない。そして、徐々に静かに波が引いてゆくかのように曲を閉じる。

 天使ガブリエル:アリソン・ハーガソン マグダラのマリア:アルフレーダ・ホジソン
 ヨハネ :デイヴィッド・レンドール    ペテロ  :ブリン・ターフェル
 イエス :ステファン・ロバーツ      ユダ   :ロバート・ロイド

    リチャード・ヒコックス指揮 ロンドン交響楽団/合唱団

若きターフェルは、後年のクセがなくすっきり。ロイドの深々としたバスに聴く苦渋。
無垢なハーガソンのソプラノに、ホジソンの素晴らしいアルトの深みある声。
イギリス系の明るいバリトンのイエスは、後光が差すかのような声だし、ややオペラがかったレンドールもいい。
実力派歌手たちに、合唱のすごいウマさ。
それを束ねるヒコックスの手腕には毎度脱帽で、まとまりのよさを活かしつつ、声高に叫ばず、じわじわと全曲のクライマックスへ盛上げてゆく。

あとひとつ、ボールトの神々しい演奏も忘れ難い。
大友さん、もう一回やってくれないものだろうかなぁ??

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2008年6月13日 (金)

アイアランド 「レジェンド」 パーキン&トムソン

Ajisai 紫陽花が盛りを迎えておりますな。

淡い色の数々、自然はこの雨の時期にほんとうにパステルの美しい花を作ってくれたものだと思う。
紫、ピンク、白、ブルーといろいろあるけれど、このラムネブルーが好きだな。

Ireland_piano_concerto_thomson ジョン・アイアランド(1879~1862)は、英国音楽の中でも抒情的でメロディアスかつモダンな作風をもった人。
交響曲とオペラ以外のジャンルにそこそこの数の作品を残していて、先日は、その素適な歌曲を横浜で聴いたばかり。

マンチェスターの出身だが、バックスと同じくケルトの文化に大いなる関心を抱き、さらに、海を愛したことでも同じだ。
ウェールズの作家アーサー・マッケンに触発されたことも大きいらしい。
マッケンはわたくし、未読だけれど、ケルト臭プンプンの幻想作家らしい。これは是非にも読まねばなるまいの。

レジェンド」は、マッケンに捧げられた音楽で、サセックス州あたりのHarrow Hillという場所に触発されて書かれたという。
そこには、有史以前の城郭の遺跡や鉱山があるらしい。
ピアノとオーケストラのための15分あまりのこの音楽は、幻想味豊かで、古代に思いを寄せるようなミステリアスな雰囲気や抒情的な歌に溢れたもの。
バックスのクールな荒涼感を思わせる壮絶な雰囲気もあって、短いながらにケルテックなアイアランドの音楽の特徴が凝縮されているように思う。

Maiden_castle_dorset もう1曲、この作品と兄弟のようなオーケストラ作品「Mai-Dun」。
メイデン城という、これもいにしえの遺跡にちなんだシンフォニック・ラプソディ。
リズミカルなメインテーマで始まるが、すぐに静謐なムードに支配され、コールアングレやホルンがとても美しい雰囲気を作り上げ、徐々に情熱的な歌となってゆく。
こうしたノスタルジックな要素や、妖精の舞うようなファンタジー溢れる音楽は、英国音楽を愛する私の最も好む場面。

このCDのメインは「ピアノ協奏曲」。以前取り上げたけれど、こちらの方が親しみやすい音楽かもしれない。その第2楽章の美しさはたとえようがありませぬ。

エリック・パーキンのピアノに、ブライデン・トムソン指揮するロンドン・フィル。
バックスでも素晴らしい演奏をたくさん残したこのコンビの演奏、悪かろうはずがない。
というか他が考えられない・・・。

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2008年6月11日 (水)

中村靖&金子裕美 「英国の薫り」

Nakumurakaneko バリトンの中村靖さんとソプラノの金子裕美さんのジョイントリサイタルを聴く。
ピアノは、柴田かんなん。
「英国の薫り」と題されたコンサート、フィンジやウォーロック、クィルター らの抒情と文学性豊かな、あまりにも素適な歌曲の数々。
同様のジョイントリサイタルは、これで3回目、中村さんのソロコンサートを入れると6回目の英国歌曲コンサートとなるらしい。
今まで、知らなかった自分が疎ましい。
ともあれ、初参戦のわたくし、今後は必ず押さえなくちゃならないシリーズであります。

みなとみらい小ホールで全席自由ながら、チケットは4500円と、ちとお高い。
土曜日聴いた、神奈川フィルが定期会員割引があったとはいえ3200円だったものだから・・・・。
平日の夜の横浜、英国音楽好きを自認する身としては、何をおいても駆けつけなくてはならない。

英国作曲家の歌曲は、デリケートで静かやな曲やミステリアスな雰囲気の曲が多いだけに、輝かしい声や雄弁な語り口、うますぎる歌手とは無縁の世界かもしれない。
今日のお二人は、そうした部類の歌手には属さない。真摯で暖か、ちょっと甘さも感じさせてくれる、伸びやかで、それは気持ちのいい歌声だった。

  ウォーロック 「結婚日和」、「乳搾りの娘たち」、「睡蓮(The Water Lilly)」
           「さくらんぼ釣り」、「思いてよ」
  ガーニー   「野は満ちて」、「柳の園で(The Sally Gardens)」
           「時がもし」、「春の願い」
  クィルター   「夢の谷」、「フクシアの樹」、「音楽は、優しき声絶えしとき・・」
  アイアランド   「歌曲聖俗集」
  
  フィンジィ   「ディエス・ナタリス(生誕の日)」
           歌曲集「歌人へ」

  ~アンコール~
  
  レーマン   「ここに一人の男とその恋人が」
  ブリテン   「柳の園で」

       金子裕美(ウォーロック・クィルター・生誕の日、レーマン)
       中村 靖 (ガーニー・アイアランド・歌人へ、ブリテン)
       ピアノ:柴田かんな
                       (6.11@みなとみらい小ホール)

彼岸にたどり着いてしまったかのような歌曲集「たいしゃくしぎ」の作曲家ウォーロック。
あの曲のイメージが強すぎたか、今日の5曲の歌は明るく楽しい牧歌調の音楽に驚き、かつ聞き惚れた。別名をもつ二面性の人ゆえか・・・。
 いかにも英国田園情緒満載のガーニーさんの歌。
リズミカルなヶ所が楽しく、明るく屈託ないクィルターの曲。他の曲もいろいろチェックしたくなる。
オーケストラ曲やピアノ曲を親しんでいるアイアランドの歌曲は、今回始めて聴く。
抒情とモダンな大胆さが交錯するアイアランドの歌曲。バーバーやジャズの雰囲気を感じてしまった。いい曲じゃないか!
 そして、本日のメインは後半のフィンジの2連作。
フィンジは寡作ながら、ナイーブで傷つきやすいデリケートな素晴らしい音楽ばかり残した。クラリネット協奏曲は、ワタクシ最愛の音楽のひとつ。
そして、ディエス・ナタリスも大好きな曲。本来のオーケストラ伴奏版はいくつか持っているが、今日のピアノ版は、オケよりもニュアンス豊かに感じ、極めて美しかった。
そう、この曲を始めとして、ピアノの柴田さん、あまりにも素晴らしい。慈しむようなピアノの音色に英国の緑の丘の風景が、ほのぼのと浮かびあがってくるようだ!
金子さんの、クリアーボイスで聴くフィンジ。
序奏の場面から、もう私は不覚にも涙をこぼしてしまった。
 同様に、中村さんの歌う「歌人へ」。これは初聴き。
なかなかに崇高かつ気品溢れる曲調で、哀感もたっぷり。
中村さんの真剣な歌い口は、とても共感が溢れていてよかった。

イェーツの「柳の園」に付けた曲が3つ。ガーニーに、アイアランドの歌曲集の中に、そしてアンコールのブリテン。いずれも青春の甘酸っぱさを感じる桂曲!
英国音楽を愛するお二人、とても素晴らしい。
ことに、金子さんの繊細で無垢の声はとても気に入りましたぞ。
私の郷里に近いところの方というのも、親しみがわくし。

なかなか満席とはいかない、渋いコンサートだったけれど、私の近くのご婦人など、フィンジの曲を聴いて「あぁ~、きれい」とおっしゃっていた。
こんな風に、英国音楽が静かに楚々と広まっていけばいいと思う。
ただ、曲のひとつひとつで拍手をするのはいかがなものかと。まして歌曲集ではちょっと・・・・。

Nakumurakaneko2

幸せのコンサートでありました。
また来年に。

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2008年5月19日 (月)

エルガー 交響曲第3番 尾高忠明指揮

Symphony3_odaka N響でのエルガー交響曲第1番の名演を聴いたばかりの尾高さん
発売されすぐ購入したものの、温存してきたアンソニー・ペイン版交響曲第3番を聴こう。
イギリスのレーベル、シグナムにどのような経緯で録音することとなったかわからないが、尾高&札幌交響楽団を起用し、お国物のエルガーを録音するなんて、しかも、第3交響曲なんだから、素晴らしいとしかいいようがない。
おまけに、ドヴォルザークの第8と第9交響曲も録音したときたもんだ。
このレーベル、英国の合唱音楽を中心に古楽などを中心にしていて、まだオケ曲は少ないようだ。
尾高さんの英国における実績ゆえに、こうしたコラボレーションが生まれたのであろう。
シグナムのオケレパートリーの核として、是非とも、後続が続くように熱望したい。
だから、皆さん聴いて下さいな。

BBCの委嘱で書き始めた3番目の交響曲、3楽章までのスケッチのみを残してエルガー(1857~1934)は、亡くなってしまう。
死期を悟った作曲者は、スケッチを破棄するように頼んだが、そのスケッチは大切に大英図書館に保管されたが、エルガーの娘カーリスをはじめととする遺族は故人の意思を尊重することで封印を望んだ。
1990年、BBCは交響曲の補完をアンソニー・ペインに依頼、同時に遺族の了解を得るべく交渉を重ね、1997年にまず録音が、翌98年には初演が、うずれもA・ディヴィスの指揮によって行なわれた。
一口に言えば、簡単な経緯だが、スケッチのみから60分の4楽章の大曲を作りあげることは、並大抵のものではなかったろう。
スケッチがあるといっても総譜はごく一部、スケッチを結び合わせて、かつエルガー・テイストを漂わせなくてはならない。さらに終楽章は、ほとんどがペインの創作となるため、エルガーの他の作品からの引用で補わなくてはならない。エンディングにエルガーの常套として、冒頭の旋律が回顧される、なるほどの場面もある。

以前にも記したが、最初はどうも聴く気がしなかったが、P・ダニエル盤を購入して、繰返し何度も聴いた。だんだんと、エルガーの第3の交響曲として新たなレパートリー誕生を素直に喜ぶようになった。

Sso_2  そんな折に、2004年日本初演のコンビ、尾高/札響のCDが登場。
音楽と真剣に向き合い、ゆっくり、じっくりと歩むような演奏はこの大らかな曲に相応しい。第1楽章のいかにもエルガーらしい第2主題の歌わせ方など胸にぐっとくるし、男性的な第1主題との対比も見事に効いている。上昇する音形が多用される場面もとても聴き映えがする。
交響曲の一部とは思えない、エルガーの小品のひとつのような2楽章は、札響のきれいな音色がとてもいい。北海道の初夏のような爽やかさ。
一転、憂愁につつまれる3楽章。曇天のロンドン=札幌か。ホルストの土星を思い起させるような、憂愁と優しさが交互におりなす音楽。
オケの精度をさらに求めたくなる場面もあるが、気持ちのこもった演奏ぶりに心惹かれる。
出来栄えに難ありとも言われる終楽章。行進曲のような威勢のよさは、この楽章、唯一残ったスケッチが冒頭のファンファーレだったことにもよるのかしらん。
消え入るように弦が冒頭主題を奏で、ドラの一音で静かに終わるとエルガーを聴いた気分と喜びに満たされる。
堂々とした札響のブラスが充分に聴けるし、スリムな札響の弦の美しさが響きの良い「キタラ」で行なわれた録音によく捉えられていると思う。
ブラインドで聴かされたら、日本のオケとは思えないだろうな。

このCD、さらなるオマケ以上に、「威風堂々」第6番が収録されている。
5番までしか完成しなかったが、この曲もスケッチが残されていて、同じくアンソニー・ペインの補完で2006年にやはりA・ディヴィスの指揮、プロムスにて初演された。
ネットラジオで聴いたが、その時の印象はいまひとつ。
昨年、大友さんが日本初演を行なった演奏会を聴いたが、この時は面白かった。
エキゾテックな雰囲気と打楽器の活躍がやたらに印象に残った。
そして、録音ではこちらの方が一足早かった尾高さんの演奏は、しごくまっとうで、落ち着いた演奏。でも交響曲に較べるとその魅力はもうひとつかな。

ペイン補完の2作品を収めた日本人によるエルガー演奏が、英国のレーベルから発売されたことの意義は大きい!
(2007.3@札幌コンサートホールKitara)

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2008年5月17日 (土)

NHK交響楽団演奏会 尾高忠明指揮

尾高忠明指揮のNHK交響楽団定期演奏会を聴く。
喧騒の渋谷を一生懸命歩いて坂を行くと汗が出る季節になった。
よいお天気で代々木公園の緑も濃くなり、お目当てのエルガーを聴くにふさわしく、初夏の陽気に気分が高まる。
若者のストリートミュージックに負けずに、早くも脳裡には、こんな緑や涼やかな水の流れのような第2楽章の中間部の爽快な旋律が鳴っていた。

  ベートーヴェン  ピアノ協奏曲第3番
        ピアノ:ブルーノ・レオナルド・ゲルバー

  
  エルガー     交響曲第1番
 

     尾高忠明 指揮 NHK交響楽団
                   (5月17日NHKホール)



Nhkso5_2 ベートーヴェンの3番の協奏曲をライブで聴くのは初めて。しかもえらく久しぶりに聴く。
だからということでもないが、ベートーヴェンの新鮮でみずみずしい音楽に、あらためて感動。万年青年のようなゲルバー。もう大変なベテランだが、まだまだ若々しい。
ロマンあふれる2楽章が、ともかく素晴らしかった。ふくよかで美しいゲルバーのピアノの音色、優しく包みこむかのような尾高さんの指揮。1番や2番の緩徐楽章とともに大好きな場面だな。
両端楽章も、もちろんよかった。ともかく、よく響き混じり気ないピアノ。
時折、唸り声も発するが、激したところの全然ない大人のベートーヴェンは、とても気にいった。
4番も聴いてみたいぞ。

それでもってお待ちかねのエルガーの交響曲第1番
この曲、以前の記事「クラヲタ生活40周年」の特集、マイフェヴァリット曲の交響曲部門の第1位を飾ったくらいに大好きなのだ。
これまで何度も尾高さんが取り上げてきたけれど、常に聴けなかった。
ついに念願かなって、尾高エルガーの真骨頂を間近に聴くことができた。

何が好きかって、全曲を支配するモットー(循環主題)がまず素晴らしい。
冒頭に、ティンパニの静かなトレモロに導かれて、中音域から始まる主題。
これが徐々に各楽器に広がり、やがてオーケストラによる全奏となる。
この間の盛上りで、もう私の涙腺は破られてしまう。
それから始まる主部の壮大さ、2楽章の滝の流れのような爽やかさ、3楽章の気品に満ちた情熱の歌とホルンが明滅する、そのエンディングの深淵さ。いくつもお楽しみはある。
そしてダイナミックな運びの中に、全曲を懐かしく振り返りつつ、最後に冒頭の主題が全オーケストラで現れる!
ここに至って、私は毎度、涙ちょちょぎれ状態となってしまい、崇高なエンディングを感銘のうちに迎えることとなるわけだ。

Otaka 尾高さん、渾身の指揮。
譜面台は置きながらも、暗譜で指揮。それも、隅々まで熟知し、この曲が好きでならないとた様子が、その指揮ぶりからも充分伺える。
尾高さんの指揮は、何度も観て聴いてきたけれど、こんなに熱く、気持ちのこもった指揮姿は見たことがないかも。
小柄な姿が、何倍にも大きく見えた。
私も、最初から最後まで、背筋を伸ばして音楽に飲み込まれ、酔いしれたし、涙も流した。
N響の金管の実力は、やはり他のオケと較べると段違いに素晴らしい。
3楽章の終わりのホルンはものの見事に決まっていたし、終楽章のグロリアスな響きも素晴らしい。尾高さんは、最初金管を押さえ気味におもったが、終楽章では全開。
席の関係(1階R)から低弦が響きすぎたかもしれないが、全体のバランスは耳のよい尾高さんならではで、まとまりのよいノーブルなエルガー。
ウェールズ響のCDと異なる点は、尾高さんがテンポを少し揺らしたり、楽器の出入りのメリハリも豊かになったり、そして何といっても自信と情熱を持った指揮棒から生まれる音楽の幅の豊かさ。そしてそこから生まれる音楽することの歓び!

これまで聴いたエルガーの1番で、最高の演奏のひとつだと断言できる。
涙ながらに、最初に、ブラボーの一声を、さりげなくかけたのはわたしだよ。

N響機関紙に、来シーズンプログラムの記載あり。
まずは、今シーズンの12月、J・コウトの指揮で「トリスタン」の前奏曲愛の死に2幕をエーベルツ、ワトソンのバイロイト組で。
12月、デュトワでエディプス王。2月、エリシュカで我が祖国。4月、デ・ワールトでリング抜粋やアルプス・シンフォニー、5月、尾高でエルガーのチェロ協と第2交響曲。
こんな按配なんです。早くも来年も金が・・・・・。

エルガーの交響曲の自己リンク

交響曲第1番

 
バルビローリ/フィルハーモニア管
 大友直人/京都市交響楽団 演奏会
 尾高忠明/BBCウェールズ響
 ノリントン/シュトットガルト放送響
 プリッチャード/BBC交響楽団

交響曲第2番

 尾高忠明/読売日本交響楽団
 大友直人/京都市交響楽団
 
大友直人/東京交響楽団 
 B・トムソン/ロンドン・フィルハーモニー

交響曲第3番

 K・デイヴィス/ロンドン交響楽団





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2008年5月13日 (火)

ブリテン バレエ「パゴダの王子」 ブリテン指揮

Ebisu このところ寒い関東。
おまけに今日は台風ときたもんだ。
中国は大地震だし。
どーなっとるんだ?

どーなっとる、といえば、わが、へっぽこベイスターズ」。
着実に負けを重ねていて、なんの期待もしなくなった矢先、金満虚珍に本日サヨナラ勝ちしてしまったヨ。
裏切り野郎のク○ーンを打ったし、虚珍に反抗せんとする仁志君の一振りで決めた。
あたしゃ、久しぶりにうれしいよ。
G党の方、すいませんね、たまにはお許しください。
まぁ、今日だけですから・・・・トホホ。

こちらは、恵比寿ガーデンプレイス。

The_prince_of_pagodas

今日は、ベンジャミン・ブリテン(1913~1976)のバレエ音楽「パゴダの王子」を。
未発表の作品も含めて多作家だったブリテン。
オペラ系統の作品は17も作ったのに、同じ舞台作品でもバレエは、この一作だけかもしれない。
やはり、ブリテンは声に対するこだわりが強かったし、ピアーズの存在が何といっても大きかったのだろう。

全3幕、100分の大作である。
こうした未知の曲の場合、国内盤の解説は実にありがたい。バレエの筋を知ったうえで、細分化されたトラックで確認しながら聴くと、ブリテンの音楽の素晴らしさがよく理解できる。地方のHMVで見つけて購入したが、もう廃盤かもしれない。

第1幕
古代王国の宮殿、イバラ姫とバラ姫が住み、王位継承者の姉イバラ姫のもとに、世界中から求婚者が現れる。東西南北の4人の王である。
尊大で性格の悪~いイバラ姫は、彼らに好意を示さない。
そこに心優しく美しいバラ姫が現れ、王たちも見とれる。これを見た、皇帝とイバラ姫は、怒りバラ姫をいびる。
そして、あらたな客人の訪問。なんと、4匹の蛙たち。蛙は箱を届に来て、これを空けることのできたバラ姫に、箱の中からバラの花が現れ、姫は受け取り、送り主の王子に会いにいくため黄金の網の中に入る。

第2幕
網が舞い上がり、空気・水・火の世界を旅するバラ姫。
やがてパゴダの王国に到着するが、その国の人々は身動きひとつしない。
姫が人々に触れると、回り出す。愛想よい人々の歓待を受けるが、目隠しをされる。
やがて、火トカゲが登場するが、そのトカゲの醜い皮を脱ぐと美男の王子で、ふたりは恋に落ち優美に踊る。
しかし、目隠しを取ると再び火トカゲに戻り、姫を追いまわす。

第3幕
かつての王国では、イバラ姫が王冠を手にして父王を追放し幽閉している。
裏切られた父は悔やんでいる。
そこへ、バラ姫とそれを追う火トカゲがやってくる。
イバラ姫は、そのふたりを命じて捕らえるが、バラ姫は火トカゲを助けてくれるように懇願し、抱きしめる。ここで、火トカゲは再び王子となり、王国は滅び去る。
 王子とバラ姫、皇帝とバラ姫をかつて助けた気のやさしい道化は、パゴダの国に赴き、民衆たちも自由を得る。ここで愛と自由をたたえて、数曲ディヴェルティスマンが登場人物たちにより踊られ、王子と姫は愛を誓い、明るいフィナーレを迎える。

   ベンジャミン・ブリテン指揮 コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
                                 (1957年録音)

以上、CDの解説を参考にさせていただき、超概略。

1956年の作曲で、ブリテン43歳。相変わらずの早熟ぶり。
チャイコフスキーのバレエ音楽を徹底的に研究したこともあり、堂々たるグランドバレエ様式になっていて、音楽はプロコフィエフのようでもあり、ストラヴィンスキーのようでもある。
だが、やはりそこはブリテン。新鮮な響きが満載である。
日本も含むアジア旅行を経て、各地の民族音楽や芸術に感銘を受けたブリテン。
ここでは、第2幕のパゴダの国の民衆の場面に、バリやインドネシアを思わせるガムランの音楽を見事に取り入れている。鐘やドラムがどんガラ鳴り、チェレスタがエキゾチックに響く。この場面は、誰が聴いても気に入ってしまうはず。思わず体が動く。
こうした特長的な場面はほんの一例ながら、ライトモティーフを採用した音楽は、ある意味わかりやすく、ドラマの理解の助けにもなっている。
 一部のオペラ作品は難解で、ちょっと着いていけない雰囲気もあるが、この「パゴダ」は、わかりやすく、ドラマテックで斬新かつ楽しい音楽なのだ。
最後の洒落たエンディングも心憎い。
このひと月、この曲を何度聴いたかわからない。
お気に入りのブリテンの曲になりそう。

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2008年5月 2日 (金)

ビートルズ 「ABBEY ROAD」