カテゴリー「ディーヴァ」の記事

2018年2月25日 (日)

モーツァルト 「ラウラに寄せる夕べの想い」 マティス

Kokyo

ある晩の皇居周辺の夕べの様子。

ビルの間から東京タワーが見えました。

Mozart_mathis

     モーツァルト 歌曲「ラウラに寄せる夕べの想い」 K.523

       ソプラノ:エデット・マティス

       ピアノ :ベルンハルト・クレー

                                    (1972)


スイス、ルツェルン生まれのソプラノ歌手、エデット・マティス。

この2月に80歳の誕生日を迎えたそうです。

わたくしにとってスザンヌを代表とする永遠のモーツァルト歌いのひとり。

リリカルなその声質は、とても清潔で、無垢。
可愛いらしいその風貌とともに、そのチャーミングな歌声は、いつも聴いていたい歌手。
まだまだ健在で、ルツェルン音楽祭で、歌ではなく、「詩人の恋」のバリトンリサイタルで、詩の朗読を歌の合間に合わせるというコンサートに出演するみたいです。

バッハからマーラーまで、オペラからリートまで、たくさんあるマティスの音源をこれからも大切に聴いていきたいものです。

 さて、モーツァルトの数ある歌曲から、一番好きな作品を。
自身がそう記したことから、「夕べの想い」とも略されるけれど、一番スケールが大きく、深みのある一品。
1787年の作。
原詩の作者は不詳ですが、夕暮れと人生の黄昏時を重ね合わせた彼岸の淵にあるような内容に、モーツァルトは優しく、穏やかななかに、深い悲しみも織り込んだ素晴らしい音楽をつけた。

5分ぐらいの作品だけど、夜、床に就く前のささやかな心のなぐさめに最適の歌曲です。

マティスの優しく、少し生真面目だけど暖かい歌声と、ご主人のクレーのクリーンなピアノは素敵です。
いろんな歌手で聴いているモーツァルトの歌曲だけれど、レコード時代、初めて聴いたこのマティス盤が一番好きです。

   夕暮れだ、太陽は沈み
   月が銀の輝きを放っている
   こうして人生の素晴らしいときが消えてゆく
   輪舞の列のように通り過ぎてゆくのだ!


  ~第1節目 : 石井不二雄訳~

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2018年2月12日 (月)

「Oh,Boy!」 マリアンヌ・クレバッサ

Shiba

梅もほころび、立春も過ぎて、春への歩みも一歩一歩と。

と、思いきや、先だっては日本海側で大雪、わたしのいる関東も雪もちらつき寒波も。

この写真は、まだ雪が残っていたときに撮ったものですので、いまはもっと開いて、梅の香りもただよわせていることでしょう。

休日に、美しいメゾの歌声を。

Crebassa

     
   「Oh,Boy! マリアンヌ・クレバッサ

 1.グルック(ベルリオーズ編) 「オルフェとユリディス」から
 2.モーツァルト 「ルーチョ・シッラ」~いとしい瞳よ
 3.マイアーベア 「ユグノー教徒」~高貴な殿方
 4.オッフェンバック 「ホフマン物語」~見たまえ、わななく弓の下で
 5.モーツァルト 「ルーチョ・シッラ」~あふれる愛の報いの
 6.モーツァルト 「フィガロの結婚」~恋とはどんなものかしら
 7.トマ      「プシケ」~眠りのロマンス
 8.グノー     「ロメオとジュリエット」~昨日からご主人はどこへ
 9.マスネ     「サンドリヨン」~行け、僕をひとりにさせる・・・
10.オッフェンバック 「ファンタジオ」~ごらん、黄昏時の
11.グノー     「ファウスト」~君の哀しみを僕の魂にそそいで
12.モーツァルト 「偽の女庭師」
                          ~あなたが私を見捨てても私の心は変わらない
13.シュブリエ   「エトワール」~運命を司どる小さな星よ
14.モーツァルト 「フィガロの結婚」~自分で自分がわからない
15.アーン    「モーツァルト」~それでは、行く
16.モーツァルト 「皇帝ティトゥスの仁慈」
            ~私は行く、でもいとしいあなたよ

        Ms:マリアンヌ・クレバッサ

  マルク・ミンコフスキ指揮 ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団

                (2016.1.4~8 @ザルツブルク)


いまブレイク中のメゾ、クレバッサ。
昨年のプロムスのネット放送で聴いたのが初。
サロネンとフィルハーモニア菅のコンサートで、ラヴェルのシェヘラザード。
フランス語の美しさは、当たり前ながらにして、そのクリアーボイスは、精緻なラヴェルの音楽にぴったりだった。
そしてなによりも、BBCのサイトに載っていたポートレート写真のキュートさ。

Crebassa_1

86年、南フランス、モンペリエの西、ベジェの生まれ。
モンペリエ音楽院で学んで、同地のオペラ団でデビュー、パリ・オペラ座をへて、2012年にザルツブルク音楽祭へ、ヘンデルのオペラ「タメルラーノ」でデビュー。
以降、ザルツブルクの常連となり、欧米各地のハウスへの出演続出中。
昨年のザルツブルクでは、クルレンツィウスの指揮で「ティトゥスの仁慈」に登場し、大成功。

そのレパートリーは、バロックオペラから、モーツァルトを中心とする古典オペラ、そしてフランスもの全般というところに懸命にも絞り込んでいるようで、イタリアベルカント系やドイツ物にはいまのところ慎重にうかがえる。

そして、その歌声は、ヴィブラートの少ないまっすぐのクリアボイスで、高域もきれいに聴かせてくれるほか、一方の低域も嫌味のないほどにきれいに伸びる美しさ。
一発でお気に入りのメゾになりました。
デビューしたての頃の、フォン・シュターデを思い起こしました。

その彼女の1枚目のソロアルバムが、「Oh,Boy!」。
そう、オペラのなかから、ズボン役だけを抜き出したユニークな1枚。

フィガロのケルビーノを中心に、モーツァルトの初役、オッフェンバック、グノーらのフランスものなど。
オーケストラは、モーツァルトを歌うのに申し分のないバック、モーツァルテウム管に、古楽とフランスものの手練れ、ミンコフスキ。
最初にオーケストラを誉めちゃうと、ヴィブラートを排した清潔で生き生きとしたモーツァルトから、透明感あふれるフランスものまで、実に素敵でかつ、オペラティックな感興あふれたものだ。

そこに乗って歌うクレバッサも気持ちよさそう。
ベルリオーズ編曲で、フレンチテイストが加味されたグルックに始まり、意外や、私的にめったに聴くことのないマイヤーベアのアリアがとても気に入った。

2曲あるケルビーノは、早めのテンポで、淡々と、むしろ感情を殺したように歌うところが無垢な青年を歌いだしていてよかった。歌い過ぎないところがいい。
あと全体の流れのなかで、モーツァルトに挟まれたようにあるフランスオペラのいくつか。
ことに、トマ、マスネ、シャブリエ、アーンが、それぞれ煌めくようで、言葉の美感も含めて、実に美しい。
なかでも、初めて聴いた、アーンの音楽劇「モーツァルト」は、極めて美しく切ない音楽で、ここだけ、もう何度聴いたかわからない。
パリ滞在時代のモーツァルトが、浮名を流し、そしてパリを去るときに後ろ髪をひかれつつ歌うラストシーンの一節のアリア。
モーツァルトの役柄がメゾである。
フランス語の美しさもこのクレバッサの歌唱では堪能できる。

クレバッサのクリスタルボイスは、こうした近世フランスものに活きるように思う。
繰り返しだが、プロムスでのラヴェルは絶品だった(録音して何度も聴いてます)。

そして、最後におさめられたのは、アーンのモーツァルトに対比したかのような、ティトスの中から最も有名なアリア。
クラリネットのソロとともに、凛としたクレバッサのセストは素敵です。

クレバッサの2枚目のソロCDは、ファジル・サイと組んだ、フランス歌曲集。
そう、ラヴェルも入ってます。
聴かなくちゃ。

Shiodome

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2017年9月16日 (土)

ザビーヌ・ドゥヴィエル モーツァルト・歌曲アリア集 「ウエーバー三姉妹」

Shiba_tokyo

秋の気配の増す東京。

台風が冷たい風を送ってくる。

夕暮れの空も不穏だが、雲の流れは美しいものだ。

Devieilhe_mozart

    モーツァルト 「ウェーバー姉妹のための歌曲・アリア集」

        ザビーヌ・ドゥヴィエル

   ラファエル・ピション指揮 アンサンブル・ピグマリオン
     
        ピアノ:アルノー・ディ・パスカル

         (2015.1.12~18 パリ、ノートルダム・デュ・リバン教会)


1777年、21歳のモーツァルトは、マンハイムに向かい、かの地で劇場主・バス歌手・教育者・写譜家のウェーバーに会い、父が教育した4人の姉妹歌手、ヨゼーファ、アロイジア、コンスタンツェ、ゾフィーとも出会うこととなる。

モーツァルトは、アロイジアに恋をしてしまい、彼女のために多くのアリアを作ることとなるが、その恋はあたわず、職を求めて母と共にパリに向かい、あげくには、職もなく、母も失ってしまうモーツァルト。

そんなウェーバー家の娘、三人に係わる作品を集めた1枚。

【プロローグ】

①バレエ音楽「レ・プティ・リアン」序曲
②「ああ、お母さん聞いて」
③「寂しい森のなかで」K.388
④「パントマイム「アルカンドロよ、私は告白しよう」K.294
【アロイジア】

⑤アリア「ああ、できるならあなた様にお教えしたいものです」K.418
⑥レシタティーボとアリア
  「テッサリアの民よ、‥私は求めはしません、不滅の神よ永遠なる神よ」K.316
⑦アリア「わが感謝をうけたまえ、やさしい保護者よ」K.383

【ヨゼーファ】

⑧アダージョK.410
⑨アリア「すでにやさしき春は微笑み」
⑩「魔笛」~「復讐の炎は地獄のようにわが心に燃え」
⑪英雄劇「エジプトの王タモス」間奏曲

【コンスタンツェ】

⑫「魔笛」~僧たちの行進
⑬ソルフェージョ K.393 第2番
⑭ミサ曲 ハ短調 K.427~精霊によりて

まさに、序の快活に始まるプロローグ部分。
パリを目指す途中で立ち寄ったマンハイムでの作品たち。
パリに着いたのち、「きらきら星変奏曲」となる「ああ、お母さん聞いて」は、透き通るようなドゥヴィエルの声が、聴く者の耳をとらえて離さない。

3人への作品のなかでは、おそらく歌い手としての才能と実力、そしてその力量にもモーツァルトは惚れていたアロイジアへのものが一番充実している。
ベルカントの歌い口を、モーツァルトは、彼女をオペラ歌手に仕立てるために教え、見事なコロラトゥーラとなった。

コロラトゥーラといえば、技術的にさらに高度なものがったのが、ヨゼーファ。
なんたって、夜の女王を歌ったのだから。
でも、モーツァルトは、ヨゼーファが苦手だったらしい。

そして、アロイジアに結婚されてしまい、残ったのがコンスタンツェ。
伝えられるものは、常に悪妻として名前が知られるが、実際はどうだったのだろうか。
歌い手としての力量は、姉ふたりからは、かなり劣るとされ、事実、彼女を想定してかかれた大ミサ曲のソプラノパートの1曲は、平易なもの。
しかし、そのシンプルながら、メロディアスな美しさは、モーツァルトの愛情のこもった愛らしさをたっぷり感じるし、その原曲ともなっている、ソルフェージュも美しい。
 こんな曲と、ドゥヴィエルの素敵な歌声を聴いていると、コンスタンツェは、モーツァルトにとって、可愛い妻だったのでは、と想えてきました。
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フランスの美人なソプラノ、ザビーヌ・ドゥヴィエル。

まだデビュー、5~6年ながら、ヨーロッパでは大活躍の彼女。
チェロと音楽学を学んで、同時に歌手も目指した。
フランスの同系統のソプラノ歌手としては、ナタリー・デセイとパトリシア・プティボンのあとを継ぐタイプです。

ちなみに、プティボンの新譜がこのところ途絶えていて、毎年出ていたコンピレーションアルバムももう何年も出てないし、日本では発売もされなかったものもある。
そのアルバムも渋い内容になって、レパートリーも本格化したゆえにだろうか・・・
DGから、ソニーへの移籍もこの前発表されてたし・・・・

それはともかく、ドゥヴィエルのレパートリーも、先輩のそれをしっかり歩みつつあり、ともの、夜の女王を歌っても、その復讐に燃えるアリアは、ちっともおっかいないところはなく、先鋭さはあるものの、ピュアな歌声で押したようなユニークなものだ。

そして、彼女の声の美しさを堪能できるのが、きらきら星の曲と、K.316のアリア。
透明感あふれる歌声と、感性の豊かさを、そのまま歌に乗せることができる、そんなしなやかさと、歌い口のうまさにもあふれてる。
技巧の凄さも目をみはるものがあるが、それはごく自然な雰囲気なところもいい。
 この歌声に、ずっとひたっていたいと思わせる素敵なザビーヌさまなのでありました。

ネット上で、たくさん彼女の歌が聴けますよ。

あと、指揮をとるピションとピグマリオン・アンサンブルの先鋭ながらも、躍動するような生き生きとした演奏が思わぬ聴きものだ。
ピションはカウンターテノールであり、指揮者でもあり、学究者でもあって、ネットで調べたら、実に新鮮で清冽なバッハの演奏を聴くことが出来た。
この人にも注目をしたいところ。

若い演奏家がどんどん出てきますね。

それでは最後に、ザビーヌさまの「キャンディード」を。

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2014年12月23日 (火)

La Belle Excentrique~パトリシア・プティボン~フランス歌曲集

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この冬も始まってます。

六本木けやき坂のイルミネーション。

シルバーにブルーが少し入って、とてもクールできれいです。

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そして、今年は、レッドにも切り替え。

知らずにいたものですから、急に消えて暗くなったと思ったら、すぐさま赤の世界に。

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反対側の坂の向こう。

こちらも美しいですな。

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そして反対側の赤。

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 La Belle Excentrique ~ 風変わりな美女

   フランス歌曲集

      ソプラノ:パトリシア・プティボン

      ピアノ :スーザン・マノフ

       〃  :デイヴィット・レヴィ(3,14)   ヴォーカル:オリヴィエ・ピィ

      チェロ :クリスチャン=ピエール・ラ・マルカ

      ヴァイオリン:ネマーニャ・ラドゥロヴィチ 

     アコーディオン:デヴィッド・ヴェニトゥチ

      パーカッション:フランソワ・ヴァレリー

                 (2013.9 @ベルリン テルデックススタジオ)


 1.サティ 「競馬」         2.フェレ:ジョリ・モーム

 2.サティ 「風変わりな女」より「大リトルネッロ」 ピアノ連弾のための

 3.プーランク 「祭りに出かける若者たちは」 「パリへの旅」 「昨日」

 4.ロザンタール 「夢」 「月を釣る者」

 5.サティ   「ブロンズの銅像」    6.プーランク 「ルネ少年の悲しい物語」

 7.サティ   「スポーツと気晴らし」より「ピクニック」 

          「そうしようショショット(Allons-y Chochotte)」

          「ジェ・トゥ・ヴ(Je te veux)」 「風変わりな女」より「カンカン踊り」

 8.フェレ   「愛するとき」       9.サティ 「快い絶望」

10.フォーレ  「憂鬱」          11.アーン 「フォロエ」 「クロリスに」

12.フォーレ  「ひそやかに」      13.プーランク 「バ、ベ、ビ、ボ、ビュ」

14.ロザンタール 「パリ植物園のゾウ」「フィドフィド」「動物園の年寄りサラダ」

15.プーランク 「オルクニーズの歌」 「白衣の天使様」 「ホテル」

16.フランシーヌ・コッケンポット 「原野のクロッカス」

17.フォーレ  「ゆりかご」


     ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「風変わりな美女」って・・・・、この邦題なんとかならないかな、って思って、「La Belle Excentrique」をフランス語翻訳マシンにのせてみた。

そうしたら、「素敵な変人」とか、「美しいエキセントリック」とか出てきちゃって、さらに奇妙なことになってしまいました。

もともとは、サティのピアノ連弾ないしは、オーケストラ作品の組曲のタイトルだそうで、そちらを調べたら、邦題は、「風変わりな女」となっておりました。
このCDの中に、2曲そちらからピアノ連弾曲として演奏されておりまして、そちらをイメージしたのでありましょう。

ですから、この際、わたくしの大好きなパトリシア・プティボンさまということで、「美女」ということにしておきましょう。

長い序文でしたね。

プティボン2年ぶりのソロアルバムなんです。

その間、パリ管とのプーランクは出てますが、毎年コンスタントに、ユニークで考え抜かれたプログラムで、その都度テーマを定めて凝ったCDを出してきたプティボンでしたから、結構渇望していたんですよ。

プティボンのタグをクリックして、過去記事をご参照いただきたいのですが、大ブレイクしたのに、来日はずっとないし、国内盤もずっと出てなくて、ユニバーサルは、アイドル路線が引けない本格派歌手なので、国内発売にビビってるんじゃないかと推察してるんですよ。

でも、昨年の録音ではありますが、ここに鮮度バツグンのイキイキとしたパトリーの声が相変わらず健在なのを確認できて、とても嬉しいです。

今回のテーマは、自国もの、近代フレンチ・ソング集です。
ちなみに、これまでのアルバム・テーマは、「恋人たち」「イタリア・バロック」「メランコリー」「新世界」、、こんな風になってました。

全部で29曲。

そのうち5曲は、サティのピアノ作品で、伴奏とともに、プティボンの長くの相棒、スーザン・マノフ女史が極めて雰囲気豊かに、そして明るく楽しく弾いておりますよ。
先にあげたサティの「風変わりな女」から2曲と、「ピクニック」、冒頭の短い序のような「競馬」。それぞれ、元気で楽しい曲に、「快い絶望」は、ちょっとムードが変わって、アンニュイムードたっぷりで、これはステキな曲。

 さて、プティボンです。
千変万化、多彩な歌への適応力と、その表情の豊かさは、まいど聴いてきて舌を巻いてしまう彼女の本領でありましょう。
大きく分けて、元気で快活、はっちゃけてるのが前半で、後半は、しっとりとした女らしさと、憂愁の横顔を垣間見せてくれる。

 前半・後半のターニングポイント的な曲が、有名なサティの「ジュ・デ・ヴ」です。
チェロとピアノに伴われて、ゆったりと、そして色気も含みながら、しなやかに歌われる「ジュ・デ・ヴ」に、わたくしはとろけてしまいそうになりました。
チェロとピアノの伴奏もお洒落すぎていけませんよ、まったく。
この曲、1曲で、お酒が何倍も飲めちゃうじゃないの。

個々の曲について書こうと思えば書けちゃうくらいになってますが、そこは、みなさま、実際にお聴きになって、パトリーちゃんの歌声に感じちゃってくさだい。
あれこれ、言葉は不要、彼女の個性と、はじける才能を、とくと拝聴してくださいませ。

途中何回か、歌なしで、間奏曲のように、さらりと挿入されるインターバルの一瞬のフレーズは、「風変わりな女」や「競馬」の曲をもじってまして、この音盤の大きな流れに寄与してます。

そう、これ一枚が、一夜のコンサートのように仕立てあげられているように思います。

このあたりが、プティボンのクレバーなところで、彼女ばかりか、きっと、マノフ女史も、ほかのスタッフも含めて、いいチームが出来上がっているんだと実感します。

彼女のライブコンサートは、ほんとに楽しくて、エンターテイメント満載です。
その雰囲気が、このCDからも伝わってくるところが、毎度素晴らしいです。
 これまで、3回、その来日公演を聴きましたが、そこで歌われた曲もいくつか。
コンサートでは、自ら、小道具みたいに、楽器をさらっと奏でて歌いましたが、そんな曲も、あの時の歌声そのままにおさめられてます。

ときに、効果音的な声を出して、ニンマリさせたり、ふくろうの声だしたり、おきゃんな娘声になったり、シャウトしてみたりで、ともかくいろんなお顔を見せてくれます。

でも、クリスティーと共演してた頃の、古楽の軽やかなイメージから、いまは、声も重くなり、色合いも濃厚さも出すことが出来るようになりました。
 ですから、全体のイメージでは、ちょっと味わいが深くなり、その分、声が重たくなったような気もしなくもないです。
もともと声量もたっぷりで、技巧派でもある彼女ですから、「ルル」を歌うことで、声質が少し変化したのかもしれません。

ともかく、ステキな1枚。

パトリシア・プティボン、最高ざます、最高に好きheart02

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2014年12月 2日 (火)

グィネス・ジョーンズ オペラ・リサイタル

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12月になりました。

街は、集中しすぎの感はありますが、都会を中心に明るく着飾っております。

そして、昭和はますます遠ざかる思いをいだかせる著名人たちの訃報。
一方で、選挙も始まり、かまびすしく、流行語大賞も、レコードアカデミー賞もはやくも決まり、なんだかんだで、慌ただしいのであります。

そんななかで、暗くなると、そわそわしてきて、街を徘徊するオジサンひとり。

そうです、ワタクシ、イルミネーション大好きおじさんです。
そんなルミ男がワクワクしながら訪れたのは、恵比寿のガーデンプレイス。

ここは素晴らしい。

いまのところ、今年のイルミ大賞候補ですわ。

バカラのシャンデリアをいくつか組み合わせた、超ゴージャスなもの。
そして、ここへのアプローチは、イルミ並木に、ツリーが。

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 グィネス・ジョーンズ オペラティック・リサイタル

   ベートーヴェン 「フィデリオ」

      〃      コンサート・アリア「ああ、不実な人よ」

    ケルビーニ   「メディア」

   ワーグナー   「さまよえるオランダ人」

    ヴェルディ    「イル・トロヴァトーレ」

      〃     「運命の力」

      ソプラノ:デイム・グィネス・ジョーンズ

    アルジョ・クアドリ 指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団

                       (1966.11@ウィーン)


ウェールズ生まれの名歌手、グィネス・ジョーンズ、30歳のときの録音。

一般に、ギネス・ジョーンズと呼んでますが、Gwyneth Jonesなので、グゥィネスとか読んだ方が正しい。
ビールのギネスは、Guinnessで、こちらも微妙。
ジョーンズさん本人も、若い頃は、ギネスと呼ばれるので、その都度、「グゥイネス」と、正していたそうな。

70~80年代を代表するワーグナー歌手で、そのレパートリーは、ワーグナーにとどまらず広大で、R・シュトラウス、ヴェルディ、プッチーニまで。
そう、ビルギット・ニルソンに近い存在です。

でも、デイム・グィネスのその声は、人によっては賛否両論。
高音が強いので、耳にきつく響きます。
そのあたりが時として、声の威力に頼って、大味な印象にも結び付くからでしょうね。

しかし、わたくしは、昔から好きですよ彼女の声。

なんどか書いてますが、そのキンキンの高音と裏腹に、彼女の低音のグローリアスなまでの美しさは、極めて魅力的なんです。
だから、声のレンジが広い役柄が、もっとも素敵。
ブリュンヒルデ、ゼンタ、クンドリー、マルシャリン、バラクの妻、エジプトのヘレナ、トゥーランドットなどです。

わたくしは、彼女のイゾルデ、バラクの妻で、その舞台に接してますが、圧倒的なその声は、豊かな声量もさることながら、細やかでかつ体当たり的な迫真の演技とともに、いまでも忘れえぬ経験として、この身に刻まれております。
さすがは演劇の国、彼女の演技がまた素晴らしいのでした。
いくつも残された、DVDでそのあたりは確認できると思います。

そんな充実期の体験なのですが、この音盤は、まだ彼女が売りだしの頃で、コヴェントガーデンを中心に活躍し、ウィーンやベルリンでも歌いはじめたころ。
またバイロイトへの登場も、この年で、いきなりジークリンデでデビューしてます。
 ちなみに、翌67年には、NHKのイタリア・オペラ団の一員として来日して、「ドン・カルロ」でもって、日本デビューしてます。

 輝き始めのこちらの、彼女の声は、その魅惑の中低音域は、この頃からその片鱗がうかがえます。
静かな場面での、その歌声は、やはり、とても素敵なものでした。
しかし、強い箇所では、その強音が絶叫のように感じられ、まだそのあまりある声とパワーをコントロールできていないように感じます。
でも、30歳のビンビンの声は、それはそれで魅力で、ピチピチしてますよ。
ことに、ヴェルディがことのほか素晴らしかったです。
それと歌いなれた、フィデリオの迫真性と優しさ。
ゼンタのいっちゃってる感も素敵。

 それとこの音盤の魅力は、ウィーンのオケと、それを指揮する懐かしい名前、クアドリさん。
日本によくオペラを振りに来てましたね。
東京フィルにも再三登場。
雰囲気豊かなオーケストラは、やはり、オケピットの響きがしますし、この頃のデッカの強力録音陣は、豪華な音がします。
そう、エリック・スミスとゴードン・パリーの名前がクレジットされてますよ。
ショルティのリングの頃ですからね。

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         (バイロイトでのエヴァ:1968)

デイム・グィネス・ジョーンズの声に、若い力をいただいたような思いです。
78歳を迎える彼女、いつまでも元気でいて欲しいです!

最後に、ゴージャス恵比寿を1枚。

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2014年5月 1日 (木)

プッチーニ 「わたしのお父さん」 ネトレプコ&アバド

Tsubaki

雨にぬれた、椿の花。

先週のことですが、まだ頑張って、咲いてました。

この花が、ぼとん、と落ちてしまうのも、儚いですな。

「椿姫」を思うのは、オペラ好き、クラシック好きなわけですが、何度も書きますが、そもそも、「椿姫」なんて名前は日本だけ。
そうした方が、通名のようになっているから、いいのだけれども。

原題の「ラ・トラヴィアータ」という意味は、「道を踏み外した女」ということで、まさに、イタイ女、ということになって、日本語にすると、ちょっと議論を呼んでしまうことになる訳で、わたくしは、「椿姫」でなく、その意も不明にさせる語感の良さがある、「トラヴィアータ」と呼ぶようにしてますよ。

イタイ女性が、純なる愛に目覚め、幸福をつかむけれど、しかし、愛するがゆえに、自ら身を引いて、やがて病魔に倒れる・・・・。

そんな儚く、けなげな女性の物語なのだから、「椿姫」でよかったのかもしれないのに、原題が痛々しすぎる・・・。

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  プッチーニ 「ジャンニ・スキッキ」~わたしのお父さん

      ラウレッタ:アンナ・ネトレプコ

   クラウディオ・アバド指揮 マーラー・チェンバー・オーケストラ

                         (2004.2・3 @フェラーラ)


こちらは、イタイ女性じゃなくて、恋人も大好き、お父さんも大好きの可愛い娘。

トラヴィアータのヴィオレッタは、もっと大人で、気配りも豊か、超おバカな義父の説得を配慮して自らが、埃をかぶった。

ジャンニ・スキッキのひとり娘、ラウレッタは、もっと娘々していて、思いきり、お父さんに甘えて、甘えまくって、恋人を公認させてしまう。

もう恋人世代じゃ、とっくになくなったワタクシは、どっちの父親にもなりうる存在であり、立場となりました。

父親は、トラヴィアータのジェルモンにも、ジャンニ・スキッキにも、なりうる、そんな単純な存在なんです。
母親の、絶対性には、父は常になれないものなのですな・・・。

前置き長すぎの、本日のこの愛らしいプッチーニのアリアは、ほんの3分くらいの曲ですが、シンプルでかつ、この短いなかに、思いきり娘の思いが詰まっていて、いつでも泣かせてくれます。

そして、本日のこの演奏は、クラウディオ・アバドが正規に残した、唯一のプッチーニなのです。
パヴァロッティと「トスカ」の一節をライブで演奏した記録がありますし、わたくしもその音源は持ってますが、DGのちゃんとした録音はこれが唯一かもです。(たぶん)

ネトレプコの声は、ちょっとおネイサン入りすぎで、カワユサや、蠱惑感は薄目。
でも生真面目ななかの一図さが、とてもよろしくて、アバドのかっちりした指揮にも合ってます。

アバドが、ヴェルディはさかんに指揮したけれど、プッチーニだけは、指揮しようとしなかった。
インタビュー記事で読んだことがあるエピソードですが、「マノン・レスコー」を指揮する寸前にまでなったことがあると。
 その時は、同時に「ペレアスとメリザンド」が、舞いこんできて、そちらを優先させたとのこと。
ヴェルディは、きっと、イタリア人として血のたぎるところがあったけれど、プッチーニには、マーラーに共感はできても、コスモポリタンとしての、イタリアの魂に火を着けてくれる存在ではなかったのでありましょう。

いいんです、マエストロ・クラウディオ。
ワタクシが、その分、プッチーニが大好きで、そのすべてを聴き倒してますから。
この、「私のお父さん」だけでも、残してくれたことに、感謝です。

娘が、数年のうちに結婚することがあれば、わたくしは、自ら、この演奏を流したいと思います。
きっと、泣いちゃうんだろな。

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過去記事

 「アンナ・ネトレプコ アリア集 アバド指揮」

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2013年12月26日 (木)

スウェーデン歌曲集 フォン・オッター

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日本のクリスマスは、終わってしまいましたが、わたしの中では、新年を迎えるまでは、その気分。
あんなに街をキラキラと飾ったツリーも、昨日の夜中から朝ににかけて、みんな撤去。
電飾屋さんや、装飾屋さんは、さぞかし大変であったことでしょう。

せっかくなのに、もったいない。

ツリーはともかく、冬の間中だけでも飾って欲しいな。

新宿のこちらは、まだしばらく見れますよ。

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 「Wings in the Night」 ~スウェーデン歌曲集

         Ms:アンネ・ゾフィー・オッター

         Pf:ベンクト・フォシュベリ

                (1995.9 @ストックホルム)


 
 スウェーデンの西欧でいうところの、後期ロマン派から世紀末にあたる頃の、作曲家たちの歌曲。

  
 ショグレン        (1953~1918)

 
 
 ペッタション=ペリエル(1867~1942)

 ステンハンマル     (1871~1927)

  アルヴェーン      (1872~1960)

 コック           (1879~1919)

 ラングストレム     (1884~1947)


ちょうど、マーラーの晩年、シェーンベルクやR・シュトラウス、プッチーニたちの時代。

スウェーデンには、メジャーな大物作曲家はおりませんが、かの国は歌の国でもあります。

優秀な合唱団があるし、大歌手たちもたくさん輩出、ビョルリンク、スヴァンホルム、ゲッタ、ニルソン、リゲンツァ、シュティメ等々。
なんといっても、ドラマティック・ソプラノを輩出。

あと、歌でいえば、アバですね!

そして、いま、最も充実している、スェーデン出身の歌手といえば、アンネ・ゾフィー・オッター。
ストックホルム生まれのメゾソプラノです。

1980年頃から、ずっと第一線で活躍。オペラもリートも、古楽から現代音楽まで、その活躍の場もレパートリーも広大です。

柔軟で、クセのない歌声は、常に嫌味がなく、クリアにすぎる場面もあって、さらりとしすぎた淡泊感じも与えることがかつてはあったように思う。
いまは、声に艶と深みが出てきて、昨年のアバドとの「大地の歌」では、情のこもった、とても味わい深い名唱となっておりました。
これからの彼女、バッハを多く歌って欲しいものです。

95年に地元で録音された、このスウェーデン歌曲集では、まさにすっきりと、おいしい天然水のような、穢れない純白の歌唱を数々聴かせてくれます。

加えて、これら31曲のリートたちが、いずれも北欧らしい、しっくりと爽やかな歌ばかりなので、オッターのクリアボイスがよけいに引き立ちます。

いずれも、いい曲、素敵な歌ばかりなのですが、6人の歌の中から、自分的に気に入った曲は、ペッタション=ペリエルの「天の星のように」~静かに淡々と夜空の星を歌う美しい音楽、同じペリエルの楽しい「ボリエビー=ワルツ」、ラングストレムの神秘的な「パーン神」、美しい「夜への祈り」。
初聴きの名前の作曲家コックの「春宵の雨」はピアノがまるでドビュッシーのようでした。
メロディスト、アルヴェーンの「森は眠る」は、かなりロマンティック。
いかにも北欧のムード漂う、ショグレンの「谷や丘の上を飛んでみたい」。

厳しい冬を終え、束の間の春や夏を思う詩が多いのも、北欧の国、スウェーデンならでは。

スウェーデンといえば、家具の世界チェーン、IKEAだけど、北欧家具ということでお洒落なわけだけど、工場は中国だもんね。
あとは、H&Mもそう。
こうした世界チェーンを造り上げるのも、スウェーデンはお得意。
IKEAとは、ちょっとお付き合いがあるけれど、本国の指示が厳しくて、なかなか頑固なものです。日本流に染まろうとしないところが逆に魅力なのかも。
昔、日本上陸して失敗して撤退。
2度目の正直は、いまのところ成功のようですね。
レストラン部門の売上がなんでも日本は他国に比べて高いらしいですよ。

今年もあと5日。
都心は、心なしか、人が少なくなってきた感じです。

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こちらも新宿で発見。

まさに北欧の歌姫みたいでしょ。

 

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2013年3月 9日 (土)

R・シュトラウス 歌曲集 サヴァリッシュ

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横浜元町でみつけた花のツリー。

もうセールも終わり、この花のイルミはなくなってしまったかもしれません。

ウォルフガンク・サヴァリッシュの追悼と、あの震災から2年という節目への思いを込めて。

ピアノの名手でもあったサヴァリッシュは、室内楽にリートに、演奏会でも録音でも、精力的に活動しておりました。
オペラハウスの総監督をしていて、勉強も含めて、どうしてそんな時間が作れたか。
これはもう、われわれ凡人の及ぶところではありませんね。

いずれも、サヴァリッシュがピアノ伴奏をしたR・シュトラウスを聴きます。

ずっと以前からの愛聴盤。気がついたらみんなサヴァリッシュがピアノを弾いていた。

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  R・シュトラウス    歌曲集

      ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ

              (1981.10 @ミュンヘン、83.9@ベルリン)


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  R・シュトラウス    歌曲集

       ヘルマン・プライ

              (1972.11 @ミュンヘン)


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   R・シュトラウス    歌曲集

       ルチア・ポップ

              (1984.9 @kloster seeon)


3枚のCDに共通する曲は、作品番号10の、「なにも」と「夜」。

シュトラウス18歳の若い作品の「なにも」は、女性賛美の朗らかな歌。
同じ時期の「夜」では、夜と森。ドイツならではのしじまを感じるロマンティッシュな作品。

明るい明晰な声と、言葉の意味合いの歌いだしの素晴らしさがフィッシャー=ディースカウ。

同じ明るい声でも、言葉への思い入れがもっと伸びやかで、近くにいつもいるお兄さん的な安心感のあるプライ。

蠱惑的なまでに、魅惑の声のポップは、微細な揺れ具合が抜群に愛おしい。
この方の声も、隣に住む気の置けないお姉さん声だった。

これら、わたしたちにとって、お馴染みで、いまや懐かしい歌声たちのピアノ伴奏を、名手サヴァリッシュは、その声を100パーセント理解したうえで、つかず離れず、巧みな在り方でもって、歌を引き立て、そしてシュトラウスならではの地中海的なクリアーさでもってもりたてています。

ほかの曲では、二人に共通して収録される曲で、あとこっちがあれば・・というような思いを抱く名唱・名曲があります。

FDとポップによる「帰郷」は、恋と故郷という懐かしい思いを感じさせてくれます。

シュトラウスの歌曲の中でも、もっとも好きな「明日には」~「Morgen」。
ここでは、プライとFDのふたりの素敵なバリトンで聴くことができます。

  そして、明日には太陽は再び輝き出るだろう

  そして僕の歩んでいく道すがら

  太陽は再びあの人に会わせ、幸せにしてくれるだろう

  日の光りを一杯に浴びている、この大地で

  そして、広々とした青い波の打ち寄せる岸辺に

  ぼくたちは静かに、ゆっくりと近づいてゆくだろう

  そして僕たちは黙って、目を見交わし合うだろう

  そのとき沈黙の密やかな幸せがぼくたちを包んでくれる・・・・。

               (ジョン・ヘンリー・マッケイ)


ここでも、耽美的なまでのピアノには、ほとほと参ってしまいます。
シュトラウスが描く世界は、ピアノ1台でも、極めて甘味でして、オペラの世界に通じるものです。
プライとFD、どちらも青春の切ないひとこまの、その一瞬を見事にとらえております。
切ないまでの美しさです。
願わくは、ポップの歌声でも聴きたかった。

同じく、ピアノのアルペッジョが魅惑的な「セレナーデ」は、これもFDとプライ。

有名な「献呈」は、わたしも歌いたいくらいの素敵な歌曲。
シューマンと並んで、大好きな歌曲を、ここでは真摯なプライと可愛いポップの歌で聴けます。サヴァリッシュのピアノは、ドラマティックかつ、オペラの一節のようです。

ほかにも、「万霊節」、「君を愛す」、「子守唄」、「ひどい嵐」などなど、伸びやかで屈託のない明るいR・シュトラウスの歌曲の魅力が味わえる名唱がそれぞれに味わえる3枚のCDなのでした。

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2013年1月16日 (水)

カーティア・リッチャレッリ アリア集

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お正月の時分の菜の花。

雪とその後の寒さでもって満開には足踏みでしょうが、2月の半ばくらいまで楽しめます

願わくは、ここにずっととどまって、一日の変化、季節の変化を楽しんでみたい。

そう、住んじゃいたい。

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  カーティア・リッチャレッリ in recital

         ベルリーニ 「カプレーティとモンテッキ」

    ドニゼッティ 「アンナ・ボレーナ」

            「ルクレツィア・ボルジア」

    ヴェルディ  「海賊」

             「運命の力」

    プッチーニ  「トスカ」

             「蝶々夫人」

    カタラーニ  「ラ・ワリー」

    チレーア   「アドリアーナ・ルクヴルール」

        ソプラノ:カーティア・リッチャレッリ

     ブルーノ・アマドゥッチ指揮 スイス・イタリア語放送管弦楽団

                     (1979,80 @ルガーノ)


リッチャレッリは、イタリアの生粋のソプラノで、1946年生まれ。

このところ名前は聴きませんが、まだ活躍中でしょうか。

声域はリリコ・スピント。スコットやフレーニがリリコからスタートして、徐々に声に力を加えていってスピントとなったのと違い、彼女は20代でデビューしたときからその実力を嘱望され、ドラマティックなロールもこなす逸材だったと記憶します。
デビューは、これも記憶の中ですが、「修道女アンジェリカ」とドミンゴと共演した二重唱、そしてガヴァッツェーニ指揮によるアリア集。
若くて美人で、まずはビジュアルからして、当時、重量系が多かったオペラ界に新風と嫉妬を巻き起こしたものです。
73年頃でしたでしょうか。
同時にデビューした、マリア・キアーラもビジュアルと歌の実力でも負けていなかったのに、ちょっと出遅れてしまったのも、レコード会社の戦略のせいだったと思ってる。

ともかくRCAが力を入れたリッチャレッリは、アバド、カラヤン、マゼール、デイヴィスら、そうそうたる指揮者に起用され、メジャーレーベルに次々に登場していった。
その多くは、ドラマティックな役柄だったけれど、でも彼女の本領は先輩と同じくリリコであったのではないでしょうか。
アバドやカラヤンはあえて、そうした歌手の選択をして、内面重視のオペラ造りをしたので、彼女も映えたし、その声が生きました。
でも、トゥーランドットはキツイなぁ・・・・

リッチャレッリを唯一聴けたのは、1976年のNHKのイタリアオペラの「シモン・ボッカネグラ」のマリア。
「シモン」が大好きなので、何度もその時のことは書いてます→「シモン」

ぽっちゃり度を少し加えつつあった彼女は、当時カレーラスとうわさもあって、一番輝いていたときだったかもしれない。

今日の音源は、79と80年のルガーノの春の演奏会からのライブで、録音状態もとびきりよく、リッチャレッリの全盛期の歌声を存分に楽しめました。
耳をくすぐるあざとさまで感じる歌い回しでもあるが、たぐいまれな美声と、低音にかけての振い付きたくなるような魅力と、対極にある艶のある鮮やか高音。
わたしの嗜好ゆえかもしれませんが、プッチーニ以降の作品での心惑わせる歌い口に、思わずホロリとされました。
イタリア語の語感も、とくにヴェルディにおいては美しく流麗で、耳が、そして心も洗われるような感銘を受けました。

こうしてつくづく聴いていると、人の声、歌手はいいです。
オケや楽器でも、その楽団や人、固有の音色があるのですが、歌手の声は歴然と判別できて、こうして往年の歌声を聴くと、自分が聴いて日々過ごしてきた過去が、その声でもって呼びさまされる思いがするのですよ。
最近の歌手たちは、いいと思って聴いていながら、実は名前も覚えられなくて、頭のなかで右から左。
自分の受容範囲も狭まってしまい、焦燥の念を抱きます。
でも、かつて聴き、親しんだ歌声を聴くとホッとして、そんな思いも救われた気がします。
明日はまた、どう思うかわかりませんが・・・・。

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2013年1月 2日 (水)

ヴェルディ 「ラ・トラヴィアータ」 ああ、そはかの人か デセイ

Bvlgari_4

銀座7丁目あたりのブルガリ。

まぁなんてゴージャスなんでしょう。

ことしの干支がビルを這ってますよ。

暮れに撮影しましたが、この交差点ではたくさんの人が撮影しておりました。

Dessay


 
  ヴェルディ 「ラ・トラヴィアータ」~ヴィオレッタのアリア
 

       「ああ、そはかのひとか~花から花へ」


        ヴィオレッタ:ナタリー・デセイ

        アルフレート:ローベルト・アラーニャ

    エヴェリーノ・ピド指揮 コンチェルト・ケルン

                      (2007.9 @ケルン)


ドイツのワーグナーと並ぶ、イタリアのオペラの大家ヴェルディ(1813~1901)。

今年生誕200年です。

オペラ作曲家として、その劇作品は26。

その作風と素材選びは年代とともに変化し、初期・中期・後期と大別できるヴェルディの創作スタイルを際立たせております。

そのあたりは、過去の記事でも何度もふれておりますが、アニバーサリーの今年、その記事も多くなるでしょうから大局的に触れていきたいとおもってます。

「ラ・トラヴィアータ」とは、「道を踏み外した女」の意で、オペラの原作、デュマの「椿姫」のタイトルとはまったく異なる意味であり、日本だけがずっとこの「椿姫」と呼んで夢見るような幻影をこのオペラに抱いてきたような気がする。
われわれ日本人にとって、花や草木の風物は思い入れ久しいものゆえ、「椿姫」という、いかにも儚いタイトルは、オペラのイメージとして定着しやすいものであったがゆえでしょうか。
もちろん、「椿姫」のタイトルのもと、これからも上演されることに異はありませんが、「トラヴィアータ」という言葉の持つ背景を理解したうえで接することも、このヴェルディのオペラの在り方を理解する大事なことにつながるでしょう。
オペラ演出もこのあたりを強めた、これまでの無難な演出から大きく踏み出した解釈がいまの主流になってきました。

ヴェルディが愛した女性が、父親の異なる子供を宿し、育てていた。
カトリック界では、もしかしたらあってしまうかもしれない。
妻泣きヴェルデイが愛した女性、その自分への戒めもあって、選んだこの「トラヴィアータ」の素材。

パリの高級娼婦が、純真熱情の青年との愛に目覚め、やがて身を引き、病で死んでゆく物語。
おバカなお金持ちの息子がまぶしい。
そして、権威をかさに着たその親父が鬱陶しい。
儚いヴィオレッタが愛おしい。

映画のようなドラマに、ヴェルディは、とてつもなく美しい旋律をつけました。

デセイの言葉の機微を完璧に歌い尽くしつつ、いたわしいほどの感情移入をみせる歌唱。
でも繊細で透明な歌声は、白痴美的な美しさを醸し出す。
この無意識かつ意識的な女優的な歌唱は、憎らしくも愛らしいのです。

あとここは、贅沢にも、ほんのチョイ役で、輝けるアラーニャ様ですよ。

ワーグナーに続き宣誓sign01

今年は、ヴェルディの全オペラを制覇します。・・・(?)

音源が確保できる前提で。

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