ブルックナー ミサ曲第3番 バレンボイム指揮
新年を寿ぐ言葉も申しあげることなく、年が明けて1週間が経過しました。
それでも個人的には海外の配信を中心に音楽はたくさん聴いております。
第9はあえて聴かないと決めたへそ曲がりは、ラフマニノフとプロコフィエフ、フンパーディング三昧で年を越し、年初はショックと暴飲暴食三昧で日々茫然としつつも、ティーレマンのニューイヤーをネット配信で聴き、悪くないと感心。
ジルヴェスターでは、ペトレンコのワルキューレ1幕で、ベルリンフィルというオーケストラの超高性能ぶりに唖然としつつ、こんな緊張感の高い演奏ばかりしていて大丈夫かな、血管とか切れないかな、とかあらぬ心配をしたりもした。
あとスカラ座のオープニングのドン・カルロではネトレプコとガランチャに酔い、ピッツバーグのアーカイブ放送からマゼールのブルックナー8番も堪能。
あとネットオペラ放送では、プロヴァンスでのマリオッテイ指揮のオテロ、ベルリンでのユロフスキ指揮のR・コルサコフのクリスマス・イヴも聴いた。
コルサコフのオペラは、いずれも幻想味があってとても美しい~
そんななかでも、仕事もちょいちょいしているし、親と孫のお世話もしてるので、ともかく忙しい。
こんな年末年始を過ごしましたよ。
あ、ちなみに写真は12月に巡った富士五湖のなかから、本栖湖。
この日は終日、雲ひとつない晴天で5つの湖すべてで富士山を望めました。
2024年のアニバーサリー作曲家の目玉のひとつは、ブルックナー(1824~1896)でしょう。
ブルックナー ミサ曲第3番 へ短調 (ノヴァーク版)
S:ヘザー・ハーパー Ms:アンナ・レイノルズ
T:ロバート・ティア Bs:マリウス・リンツラー
ダニエル・バレンボイム指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
ニュー・フィルハーモニア合唱団
合唱指揮:ウィルヘルム・ピッツ
(1971 @ロンドン)
交響曲作家としてのブルックナーには、本来は宗教音楽作曲家としての側面もあり、そちらが音楽のスタートラインだったと思う。
父親と同じく、オルガニストとして活動したブルックナー。
交響曲第1番を完成させたのは42歳になってからで、その前に習作的な交響曲はあるものの、自信をもって番号を付したのは1番から。
0番は1番のあと。
40歳以前の作品は、その自信のなさから破棄されてしまったというので、ほんともったいない。
そしてミサ曲は、番号付きの3つの作品以外に初期に4作あり、全部で7つのミサ曲とレクイエムがひとつある。
あとは秀逸なモテットやテ・デウム。
ミサ曲の1番は40歳、2番は交響曲第1番とともに42歳(1866)。
そしてミサ曲第3番は、第1交響曲の初演にこぎつけた1868年、44歳のときの作曲。
こんな時系列を頭にいれてブルックナーの初期、といっても立派なオジサン年齢ですが。。。初期と呼ぶ作品群を聞くと興味深いですね。
キリエ、グロリア、クレド、サンクトゥス、ベネディクトゥス、アニュス・デイの通常のミサの形式からなり1時間の大作。
宗教作品らしく音階の大胆な展開は少なく、全般に穏やかかつ平穏な雰囲気。
そしてなによりも美しい。
ブルックナーの緩徐楽章を愛する人ならば、このミサ曲のそこかしこに、ブルックナーの交響曲の2楽章にある自然を愛で賛美するような清らかな音楽が好きになるに違いない。
またソロヴァイオリンを伴って、テノールが熱く歌うシーンなどは、テ・デウムと同じくだし、やはり篤い宗教心や祈りの気持ちが陶酔感を伴うように熱を帯びているのも篤信あふれるブルックナーの音楽ならでは。
しかし、何度も何度も聴いても美しいという印象は受けるものの、聴き終わって、全体のディティールや旋律などが明確に自分のなかに出来上がらないし、残らない。
そんなところが、このミサ曲の魅力なのか・・・
2008年、いまから16年も前に、神奈川フィルの音楽監督だったマルティン・シュナイトの指揮で、このミサ曲だけの演奏会を聴いた。
バレンボイムの58分の演奏時間に対し、そのときのタイムは70分あまりもかかった。
しかし、初めて本格的に聴いたそのシュナイトのブルックナーのミサは、神奈川フィルの美音も手伝い、祈りと感謝に満ちた、まるで教会で音楽に立ち会うかのような荘厳な演奏だった。
そのときのブログから
>アルプスの山々を見渡す野辺に咲く花々を思い起すかのような音楽に、私は陶然としてしまった。
2番への引用もなされたこの章の、神奈川フィルの弦と、フルートの素晴らしさといったらなかった。
そして誠実極まりない合唱も掛け値なしに見事。
それに続く、アニュスデイも天上の音楽のように響きわたり、ホールが教会であるかのような安らぎに満ちた空間になってしまった。
合唱が歌い終え、最後に弦とオーボエが残り静かに曲を閉じた時、シュナイトさんは両手を胸の前に併せて、祈るようなポーズをとって静止した<
南ドイツでバッハを極めたシュナイトさんと、駆け出し指揮者だったバレンボイムとを比べるのも酷だが、ここでのバレンボイムの指揮は神妙で、優しい手触りでもって丁寧に仕上げた。
克明で言葉も明瞭な合唱は、かのピットの指揮。
ぎりぎり存命だったクレンペラーの君臨したニュー・フィルハーモニアのしなやかな弦も美しいし、管もブリリアント。
この時期のフィルハーモニア管はよかった。
60~70年代の声楽作品のイギリス録音では、ハーパー、レイノルズ、ティアーは常に定番で、あとはシャーリー・クヮークでしょうか。
ここでのリンツラーの独語の明快さと美声、もちろんほかの定番3人も素晴らしい。
このミサ曲3番、このバレンボイム盤以外は持ってません。
エアチェックとしては、ヤノフスキ、ヤンソンスなどのライブも聴きましたが、バレンボイム盤が一番美しい。
ヨッフムも聴かなくちゃいけませんね。
今年はほかに新録音なども出るのでしょうか。
湖畔道路に降りて、ちょっとアングルを変えて。
こんな風にひとりカヌーを楽しむ方も。
気持ちいいだろ~な
さらに近づいて、水辺の様子を。
コバルトブルーの美しさ。
幾多の災害を経ても復活する日本の自然のピュアな美しさ、ぜったいに守らなくてはいけません。
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