プッチーニ 「トスカ」 メータ指揮
きれいな夕暮れが撮れました。
三田の丘のうえにある綱町三井倶楽部。
庶民には関係ない、一流の会社に所属している方が利用できるシステムとのこと。
わたくしは、外からみるだけ。
でも、100年の歴史のある洋館は、自分には、オペラのいろんなシーンを思い起こさせてくれる。
プッチーニ 歌劇「トスカ」
トスカ:レオンタイン・プライス カヴァラドッシ:プラシド・ドミンゴ
スカルピア:シェリル・ミルンズ アンジェロッティ:クリフォード・グラント
堂守:ポール・プリシュカ スポレッタ:フランシス・エガートン
シャルローネ:ジョン・ギブス 看守:ミカエル・リッポン
羊飼い:デイヴィット・パール
ズビン・メータ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
ジョン・オールディス合唱団
(1972.8 ワルサムストウ・アセンブリー・ホール)
久しぶりに「トスカ」。
こんな名曲になると、逆に、めったやたらと聴かないもの。
すべての音と歌が完全に脳裏に刻み込まれてます。
大好きなプッチーニだけど、その作品のなかでも、一番聴きこんでるオペラかも。
話は変わりますが、かつて、ある地方都市で、飲んだあと、飲み屋街をふらふら歩いていたら、目に飛び込んできた「トスカ」の看板。
スナックですよ。
ほうほう、飲みながら音楽談義とか、オペラが流れてるとか、どんな歌姫に会えるんだろうか、と期待をふくらませながら入店。
いらっしゃいませ~、あ、チーン・・・でした。
しょうがないから、腰をおろしてウィスキーを飲んだけど、音楽はクラシックじゃないし、店名の由来聞いたら、オペラのことなんか知らないし・・で、さらにちーんでした。
まあ、よくある話ではありますが。。。
さて、本日の「トスカ」は、メータの最初の録音のもの。
1973年のNHKホールこけら落としの一環のイタリアオペラ公演のテレビ放送が、わたくしの初トスカ。
もう、すぐに夢中になりましたよ。
で、レコードを購入しようという段になって、その候補のひとつにあがったのが、こちらのメータ盤。
日本盤ジャケットは、NHKホール公演のラストシーン。
撃たれたカヴァラドッシが動かないのに気付いて駆け寄るトスカの、サンタンジェロ城のシーン。鮮やかなブルーの朝の空が印象的だった。
でも、結局、レコード店で手にしたのは、カラスのプレートル盤でした。
レコ芸に、メータ盤の視聴記が出ていて、詳細は覚えていないけれど、ライターは、クレージーキャッツの桜井センリさん。
ローマで迎えた朝露が落ちる美しい光景を書かれていて、とても素敵な文章でした。
そのイメージをずっと抱えつつ、メータ盤を聴いたのはCD時代になってから。
シュトラウスやハルサイなどで、大ヒットを飛ばしていた当時のメータ。
ここでもプッチーニの見事なオーケストレーションの妙を、オーケストラから鮮やかに引き出し、ダイナミックかつ壮麗なサウンドを聴かせてくれる。
オペラティックというよりも、シンフォニックですらあるが、ずっと後年の手際のよさだけが目立つようになったメータの演奏よりも、ずっとずっとイキがよく、鮮度が高いと思う。
オーケストラがロスフィルで、録音もデッカだったら、と思わなくもないが、まだクレンペラーのいたニュー・フィルハーモニアのクリーンな音色はとても美しく感じる。
桜井センリさんの書かれた、3幕の冒頭の夜明けのシーンと、実際にボーイソプラノを起用した場面はとても爽やかで、その後の劇的な場面との対比がとてもよろしい。
歌手では、分別くさい後年のものより、ずっとずっと熱い男、ドミンゴのカヴァラドッシが素晴らしいし、なによりも、役柄に完璧に同化してしまっているミルンズのスカルピアが素敵すぎる。
バッドガイの概念そのもののスカルピアを、美声でいやらしく歌う。
テ・デウムの壮麗さ、2幕にあるふたつのアリア、ともにわたくしを魅惑してやまないミルンズの歌声です。死に際のうめきもいけてます!
でも、この盤の少々残念なところは、ピーク時を過ぎてしまったプライスの声。
トウがたって、かえってドスが聴き過ぎた歌声は、おっかないトスカとはなっているけれど。
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70年代前半は、巨匠の時代を継ぐ次世代指揮者として、メータ、アバド、小澤が、若手三羽ガラスと呼ばれ、大いに注目を浴びたものです。
当時は、メータが頭ひとつ抜きんでていたと評価されていたように記憶します。
その後の3人の活躍ぶりは、もういうまでもないことですが、いま現在にいたるまで、エネルギッシュに活躍しているのもメータひとり。
メータとアバドは、ウィーン修行時代のスワロフスキー教授のもとの同門で、仲良しでした。
ふたりは、ワルターやベーム、カラヤンなどの大指揮者の非公開リハーサルに、例えば合唱団として参加して忍び込んで、よくよく観察していたといいいます。
小澤さんもそうですが、若い頃の大胆な行動は、音楽をすることへの熱い思いが衝動となって現れているようで、いまの恵まれた環境にある若手指揮者の時代背景とは大違いで、いずれも伝説級のお話しになってしまいました。
若きメータの「トスカ」でした。
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