カテゴリー「バックス」の記事

2023年4月22日 (土)

バックス 「ファンドの園」 バルビローリ指揮

Hadano-01

ネモフィラと富士山。

秦野市の弘法山の中腹にある広場にて。

この日は黄砂の影響で、富士がやや霞んでしまったのが残念だけど、まるで楽園のような美しいブルー。

初夏のような日が連続して、桜も一気に咲き終わってしまいましたが、次々にいろんな花がはじけるように咲き誇り、忙しいです。

Hadano-03

わずかに残っていた牡丹桜とネモフィラ。

Barbirolli-halle-delius-bax-butterworth

  バックス 交響詩「ファンドの園」

   サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団

         (1956.6.10 @マンチェスター)

久々に取り出したバルビローリの懐かしの1枚。
英国パイレーベル原盤をテイチクがレコード時代には廉価盤で発売し、CD時代初期にも数枚がCD化された希少な国内盤。
今では外盤、ダットンレーベルあたりで出ているでしょうかね。

この1枚の白眉は、ディーリアスの悲しいぐらいに美しい「田園詩曲」で、もう15年も前に記事にしてました。
ほかの収録曲は、ディーリアスでは「かっこう」「楽園への道」「イルメリン」「フェニモアとゲルダ」などの定番。
あとこれまたステキな、バターワースの「シュロプシャーの若者」が入ってます。
そして私の好きなバックスも。

三浦淳史さんのCD解説をもとに。
サガ(北欧伝説)に基づくもので、祖国を守った英雄「ベール族のアキレス」が、大洋の支配者の娘「ファンド」の誘惑に負けてしまい、これまでの英雄的な行動を忘れてしまう、というもの。
 この伝説をバックス流に、「ファンドの園」を「海」にたとえ、ファンドの魔法の島にうちあげられた船の乗組員たちが遭遇する饗宴の様子、そのあと高波がおこって、島全体が飲み込まれてしまうことになる・・・、やがて海は静まり、ファンドの園も消えてしまう。
 こんな風にイメージされた、一服のバックス独特のケルト臭あふれる清涼かつ神秘的な音楽。
1916年の作品。

この曲、ブライデン・トムソンの指揮のバックス交響詩集で、これもまた15年前に記事にしてました。
アルスター管弦楽団という北アイルランドの本場オケと、シャープでダイナミックなブライデンの指揮が、録音の良さもあって抜群な演奏だった。
B・トムソンの録音は1984年のデジタル録音で、いまから40年近く前。
それより遡ること1956年、ぎりぎりステレオごく初期の頃の録音がバルビローリとハレ管のもので、分離のいまいちさ、音の混濁、音の遠いイメージなどから、いまの最新の録音からも聴きおとりのするトムソン盤よりも、はるかに昔の音に聴こえる。
でも、それが実はいい。
古風な、もしかしたらたどってきた道を振り返るような、郷愁をさえ感じさせる、そのいにしえ感は遠い世界のレジェンドにも通じるもの。
多少のもこもこした雰囲気は、バルビローリの情熱と共感をともなった熱い指揮でもって、なおさらに愛おしく感じます。

そこそこに歳を経て暮らす、若き日々を育った場所での生活。
地域を周り巡るたびに見つけ出す新鮮さ。

愛好してきた英国音楽に通じる郷愁の音楽が、いまこそ身に染み入るようになってきました。

Hadano-02

ちょっと場所を変えて、眼下に見入る秦野の街。

ブルーの海のような幻想の世界。

| | コメント (0)

2021年10月10日 (日)

バックス 交響的変奏曲 フィンガーハット

Radian-01_20211009205801

賞味期限切れたけど、今年の彼岸花

9月20日のものですが、その1週間前には影もかたちもなかった。

突然、ぐわーっと咲いて、すぐに枯れてしまうのも彼岸花、またの名を曼殊沙華。

Radian-02_20211009205801

美しいけど、怪しいね、彼岸花。

イギリスにもあるのかな?

アーノルド・バックス(1883~1953)の協奏曲的作品を。

少しの暑さも感じる初秋にふさわしい音楽。

Bax-symphonic-variation

  バックス ピアノとオーケストラのための交響的変奏曲

      Pf:マーガレット・フィンガーハット

   ブライデン・トムソン指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

    (1987.1.7,8 @オール・セインツ教会、トゥーティング、ロンドン)

バックス中期の名作。
心臓の病持ちであったバックスは、第1次大戦に召集されず、その間、多くの交響詩やヴァイオリンやヴィオラのソナタなどを作曲。
こうした作曲活動のなか、バックスの人生に大きな転換期を告げる、出会いがあった。
妻と子がありながら、ピアニストのハリエット・コーエンと恋に落ち、彼女との関係は生涯続くこととなる。
最初は、いわゆる浮気、やがてその関係が強い友情となり、やがて切り離せない音楽パートナーとなる二人の関係。
バックスのピアノとオーケストラのための作品は5曲あり、いずれもコーエンを念頭に書かれてます。
1948年には、グラスで怪我をしてしまい、右手でピアノが弾けなくなった彼女のために、バックスは左手のための協奏曲を残してます。
 ちなみに、イケメン、バックス、1920年代半ば、コーエンとの関係のほかに、もうひとり、若いメアリー・グリーブスという愛人もできて、彼女はバックスが亡くなるまで尽くしたという。

こんな恋多き、ロマンス多しバックスの交響的変奏曲は、コーエンとの愛の産物のような存在なのですが、その夢幻かつ神秘的な雰囲気からは、甘味な恋愛感情のようなものは感じられない。
1916年より作曲を開始、ピアノ版は1917年に完成、1919年にオーケストレーションを済ませ、1920年に、コーエンのピアノ、ヘンリー・ウッドの指揮により初演。
しかし、スコアは刊行されず、第2次大戦で損傷を負ったりもして、1962年にスコアは復元されされ蘇演。
1970年に、ハットーのピアノとハンドレーの指揮で録音され、これがしばらく唯一の録音だった。
シャンドスのバックス・シリーズを担ったB・トムソンの指揮による1枚が今宵のCD。

ふたつの部分からなり、6つの変奏と1つの間奏曲からなる50分の大曲。

  第1部
   ①テーマ
   ②変奏曲Ⅰ 若者
   ③変奏曲Ⅱ 夜想曲
   ④変奏曲Ⅲ 闘争
  第2部
   ①変奏曲Ⅳ 寺院
   ②変奏曲Ⅴ 遊戯
   ③間奏曲  魔法
   ④変奏曲Ⅵ 勝利

それぞれの変奏曲にはタイトルがついているけど、それと音楽の曲調とマッチングさせて聴く必要もないように思う。
朗々として、そしてかつミステリアス、ケルト臭ただよう、スモーキーフレーバーのようないつものバックスサウンドに身をゆだねて聴くに限る。
バックス研究家は、この作品が、ケルトから北欧へのバックスの志向のターニングポイントになっているとします。

冒頭の主題からして、郷愁さそうバックスサウンド。
オケが懐かしそうなテーマを奏でると、そのあとから、詩的なピアノがアルペッジョで入ってくる。
この雰囲気ゆたかな出だしを聴いただけで、この作品のエッセンスは味わえるものと思う。

1910年に書かれた第1番のヴァイオリン・ソナタから引用も変奏曲のなかにはあります。
このソナタもメロディアスで懐かしい雰囲気なのですが、ピアノと響きあふれるオーケストラで聴くと極めてステキな様相を呈します。
ソナタの冒頭には、イェーツの詩の一部が書かれている。
「A pity beyond all telling is
       Hid in the heart of love」
それと、1916年に書かれた歌曲「別れ」からの引用もあるようで、そちらの曲は、まだ聴いたことがありません。

年代を考えると、古風なバックスの音楽スタイルですが、ともかく美しく、懐かしい。
フィンガーハットの詩情あふれるピアノと、バックスの伝道師、シャープな音楽造りのブライデン・トムソンの指揮が素晴らしい。

バックスの7つの交響曲は、この作品のあとから作曲が始まります。
オペラ以外のジャンルにすべてその作品を残したバックス。
シャンドスレーベルのシリーズは、だいたい揃えました。
DGやEMIなどのメジャーや、メジャー演奏家が決して取り上げない、そんなバックスが好きであります。

Radian-04_20211010145301

暑さ寒さも彼岸まで、なんてのは今年に限りあてはまらない。

| | コメント (0)

2019年11月12日 (火)

バックス 伝説 コレッティ(ヴィオラ)

Tokyo-tower-a

2019年11月9日の晩、翌日に、ご即位の奉祝パレードを控えた東京タワーも、記念のライトアップ。

自分と同期生の東京タワーも、ご覧のように美しく輝き、東にスカイツリーができても、まだまだ東京の顔として現役。
この日も、世界各国の方々も多くいらっしゃいました。

天皇陛下とは1歳違い、皇太子さまの時代より、ずっと親しく感じていたお方です。
昭和天皇は遠くの存在、平成天皇は父のような存在、そしてご即位された令和の時代の新天皇は、より親しみを持てる身近な存在。

陛下は、オックスフォード大学ご修学のご経歴と、そして自らヴィオラを弾かれます。

本日は、英国のヴィオラ作品を聴いて、あらためまして御奉祝の祝意を捧げたいと存じます。

English-viola

  アーノルド・バックス Legend ~伝説

    ヴィオラ:ポール・コレッティ

    ピアノ :レスリー・ハワード

        (1993.09.23 @ピーターズハム、ロンドン)

こちらのCDは、英国作曲家のヴィオラ室内楽作品を集めたもので、ブリテン、V・ウィリアムス、グレインジャー、ブリッジ、レベッカ・クラーク、そしてバックスの曲が収められてます。

これらの中では、女流のクラークさん(1886~1979)の3楽章形式のソナタという大作もあって、これがなかなかに抒情的かつモダーンな一品なのですが、それはまたいずれの機会に。

本日は、日ごろ、その作風や音色が耳になじんだ作曲家、バックスの10分あまりの幻想的な作品に絞りました。

バックスは大好きな英国作曲家で、もういくつも記事にしてますが、その素敵な、ワンパターンともいえる3楽章形式の7つの交響曲を中心に、オペラ以外に残した多彩なジャンルの作品たちを、愛してやみません。
 ロンドンっ子でありながら、ケルト文化に感化され、その音楽をたどり、収集し、自らの音楽に反映させました。
この「Legend」も、そうした雰囲気が満載の作品で、交響曲でいえば、3番とあのケルト臭満載の4番とのあいだに書かれました。
1928年、バックス45歳の作品です。

ためらいがちなヴィオラの音色に、感覚的なピアノが寄り添い、ミステリアスでありつつも、抒情と幻想の入り混じる、わたくしには、えもい合わぬ、バックス・ワールドを堪能できる佳品です。
それにしても、ヴァイオリンのように、突き抜けたサウンドもなく、チェロのように、人を包み込むような深い音空間を築きあげるでもない。
縁の下の力持ちのような、普段は、言葉少ないヴィオラの音色。
それこそ、多弁でなく、静かな物言いは、どんなに言葉や音を尽くすよりも、人の耳や心に緩やかに入ってきて、安心感をもたらします。

ヴィオラを嗜む天皇陛下の、その人となり、その御声、そのもののような気がいたします。
こんな風ないい方は不遜かもしれませんが、それこそ、国民や日本のことを、いつも祈っておられる皇室の存在が、わたくしたちに与えてくださる、安堵と安寧の安心感なのかもしれません。

ちなみに、ほかの収録曲、クラークのソナタ以外も、V・ウィリアムズ節が堪能できる「ロマンス」、グレインジャーの「サセックスの母のクリスマス・キャロル」など、べらぼうに美しく、そしてハートウォームな曲が聴けて、秋の夜にもぴったりです。

スコットランド出身、メニューイン門下のコレッティの艶のあるヴィオラは気持ちいい音色をふんだんに奏でてます。
彼も、期せずして、天皇陛下と同じ年でした。

Tokyo-tower-c

きれいなものは、きれい。
尊いものは、尊い。

それでいいじゃないですか。

2000年も続いた、日本国の皇統と、われわれ日本人の想いは、これからも弥栄にあれと心より思います。

パレードを体感しようと出かけましたが、思いもしなかった手荷物検査の長蛇の列は、一向に進まず長時間並んで終了でした。

上空のヘリコプターと、はるか遠くに見える、観覧できた方々の振る日の丸を眺めつつ、その雰囲気を堪能いたしました。

Tokyo-tower-b

| | コメント (0)

2019年4月29日 (月)

バックス 交響曲「春の炎」 マーク・エルダー指揮

05_1

春は、初夏の日差しを伴って、一挙に訪れる。

自然の織りなす色彩は、目にも鮮やかでなかには、人の手で変化し生まれた色合いもあるかもしれないが、「色」を作り出した神の差配に感謝です。

Elder

  バックス 交響曲「春の炎」~Spring Fire~

 サー・マーク・エルダー指揮 ハレ管弦楽団

   (2010.3.18 @ブリッジウォーターホール、マンチェスター)

アーノルド・バックス(1883~1953)は、英国音楽好きのわたくしにとって大切な作曲家のひとり。
オペラ以外のジャンルの残された数々の作品、シャンドスレーベルのおかげで、そのほとんどを集めることができました。
生粋のロンドンっ子でありながら、ケルト文化を愛し、イギリス各地を旅して、自らの音楽の作風に反映させていった。

イギリスの作曲家ならではの抒情性と、神秘感あふれるミステリアスな雰囲気、そしてダイナミックな響き、自然の厳しさ、寂しさなども満載のその音楽。
前にも書きましたが、シャープでスモーキーなアイラ・モルトウイスキーを愛でるに等しい、そんなバックスの音楽です。

「春の炎」は、もう11年も前に、このブログで記事にしてますが、そのときの演奏は、ヴァーノン・ハンドリーとロイヤルフィルの演奏のもの。
今回は、英国音楽から、イタリアオペラやワーグナーまで、広範なレパートリーを持つエルダーの指揮によるもので。

7曲ある純粋交響曲の前、1913年のバックスの初期作品のひとつ。
5つの表題のついた楽章からなる、「森」を主人公にした交響詩のようなもの。

1.「夜明け前の森にて」
2.「夜明けと日の出」
3.「一日」
4.「森の国の愛」(ロマンス)
5.「メナド(maenads)」

1.夜明け前、雨が降り注ぐ森。雨の雫を感じさせるような美しく、夢見るような雰囲気。
2.印象派風の曖昧な幻想的な雰囲気から、徐々に音たちが立ち上がってくる日の出の生き生きとした様相。
3.ついにお日様も全開!春、爆発的に来りて、森は陽気な雰囲気に満たされて、あらゆる妖精たちが活動開始。
4.春の森は、愛の森でもある。まさにロマンス、ソロ・ヴァイオリンの甘い音色と、ソフトフォーカスなオーケストラの背景が美しい。
5.ギリシャ神話のディオニュソスを称える女性の取り巻きメナド。神話の中では、狂喜乱舞するという女性たちだが、超自然的な存在の象徴ともとられ、ここではダイナミックなオーケストレーションが駆使され、まるでR・シュトラウス的な眩さがあり、森は眩しくも賑やかな雰囲気につつまれる。

全曲33分、連続して演奏されます。
日本の、緩やかで、ほのぼのとした春とは大違いに、バックスの描いた春は、かくもミステリアスでかつ、ダイナミックなものでありました。

ハレ管のライブ録音である当盤。
ロンドンのオケともちょっと違う、少しばかりローカルな印象も、ケント・ナガノ以来、バリっとした現代的なオーケストラに変貌した。
でも、こうした英国音楽をハレ管で聴くと、いわゆる本場ものという思いを強くする。
音楽への共感の度合いが、指揮者とともに、やはり違うのであろう。
美しくも明るい演奏で、録音の生々しさも手伝って「春」の爆発力を感じます。

06  

このCDには、あと、ディーリアスの「春への牧歌」「北国のスケッチ」から「春の行進」。
そして、ブリッジの「春の訪れ」が収められてます。

いずれも素敵な曲であり、すてきな演奏です。

07

青空も花々も、タワーもまぶしい~

4月最後の、そしてどうやら平成最後のブログ記事となりそうです。

過去記事

「ハンドリー指揮 ロイヤルフィル」

| | コメント (2)

2015年10月24日 (土)

バックス チェロ協奏曲 ウォールフィッシュ

Cosmos_radian

秋まっさかり。

コスモスはエリアによっては、もうおしまいなんてところもありますが、紅葉の前を飾る淡い色どりは、去った夏を懐かしんだりで、ちょっと切ないですね。

このところ、なにかと忙しいのと、精神的にもまいっているので、音楽も聴いてなかった。

朝やたらと早く目覚めたので、大好きな英国音楽のひとつを聴きつつPCに向かいました。

Bax

   バックス   チェロ協奏曲

       チェロ:ラファエル・ウォールフィッシュ

    ブライデン・トムソン指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

                      (1986 @ロンドン、オールセインツ教会)


アーノルド・バックス(1883~1953)の音楽は、シャンドスレーベルのおかげで、かなりの録音がなされ、レコード時代にはその名前すらあまり聴かれることがなかったのに、いまでは体系的にその作品のほとんどを聴くことができるようになりました。

7つの交響曲や、数々の交響詩や管弦楽作品に、協奏的な作品。
室内楽、器楽、声楽曲などなど、オペラを除いてすべてのジャンルにその作品を残しました。
生粋のロンドンっ子でありながら、ケルト文化を愛し、イングランド北部・スコットランド・アイルランドの地をこよなく愛した作曲家。

そして、ロマンティストで、ちょっとナイーブなイケメンで、女性にももてた。
ハリエット・コーエンというピアニストとは、バックスは妻子がありながら、ロンドンでも、公然の仲になっていたし、彼女を伴って、アイルランドの地を旅したりもしたが、彼女はバックスの晩年まで付き添い、献身的にその作曲活動を支えた。

バックスの音楽の魅力は、イギリス音楽ならではの、気品と抒情を持ちつつも、シャープでダイナミックな自然描写にすぐれているところで、そこにはさらに豊富なファンタジーとミステリアスな様相も込められているところ。
 その独特なメロディラインには、どの曲にもバックスならではのパターン的な特徴があって、それにハマると、もう抜け出せなくなってしまいます。

そのバックスのチェロ協奏曲は、長く埋もれていましたが、今日聴いたウォールフィッシュによって甦演された桂品です。

1931年秋、ハリエット・コーエンは、スペインのチェリスト・作曲家のガスパール・カサドとコンサート・ツアーを行い、そして彼をバックスに紹介しました。
そのカサドの勧めもあり、翌32年に、生まれたのがこの協奏曲。
当然にカサドに捧げられ、演奏もされたものの、その後数十年、忘れられた作品となり、ベアトリス・ハリソンによって再演。
その後もまた埋もれ、そしてウォールフィッシュによる演奏が86年。
録音としては、そのあとは、2014年に新録音が行われている様子で、ぼちぼち世に出てくるのかしら・・・・。

この曲が生まれる経緯となったスペインの大チェリスト、カサドの名を冠したコンクールで、ウォールフィッシュは優勝しているのも因縁かもしれませんが、なにより、カサドの妻が、日本人ピアニストの原智恵子であることにも驚きを感じます。
原智恵子は、2001年に亡くなってますが、日本よりは、ヨーロッパでは名ピアニストとして知られた存在だったようで、その音源も聴くことができます。
 こうして、曲ひとつから、いろんな関係や結びつきを紐解いて、あれこれ想像することも楽しいものですし、ネット社会だから情報がすぐさま手に入る恩恵ですね。

さて、この作品、全体で3楽章、33分という大作ですが、オーケストラは小編成で、金管はトランペットが両端楽章にあらわれるのみで、弦楽に木管、ハープとティンパニという構成であります。

シャープな第1主題、そしていつものバックスのパターンのとおりに、懐かしく抒情にあふれた第2主題を持つ第1楽章。
チェロはさほどの名技性を発揮してませんが、ふたつの異なるムードの主題を変転しつつも弾き分けると言う点で、なかなか難易度が高いのかもしれません。

ノクターンと題された第2楽章が、極めて素敵なところが、この曲の白眉です。
チェロのロマンティックな独白に、オーケストラの各楽器が、しっとりと、優しく応じ、絡み合います。
その夢幻的な世界に、いつまでも浸っていたくなります・・・・。
ケルトの神秘的な森に、帳が降りて、木々が、露でしっとりと覆われるような、そんなイメージを目を閉じながら聴くといだくことでしょう。

早いパッセージが上下するモルト・ヴィヴァーチェ、第3楽章。
一番短い楽章となってますが、軽い疾走感が短調ということもあり、少し切迫した印象を与えます。
しかし、徐々に大らかな様相となり、チェロは懐古的な語り口となり、ヴィオラソロとの競演もどこかとても懐かしく感じます。
そのまま、曲は明るい色調を維持しつつ、エンディングのイメージを築き上げていって終結となります。

 ウォールフィッシュの明るく艶のあるチェロは、このレーベルに多くあるほかの英国作品同様に、すてきなものです。
そして、響きを多く取り入れた録音は、ブライデンとLPOというバックスに最適のコンビの音色を、とても雰囲気豊かにおさえております。

早朝は、曇り空だったけれど、この時間、空はすっかり秋晴れとなって高く広がりました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年4月17日 (木)

神奈川フィル定期 予行演習 アバド指揮

Azeria_shibaura

桜のあとは、つつじがやってきますな。

連休のイメージもあり、汗ばむ陽気も思い起こすことができます。

四季の巡りも、年々早く感じるようになりましたよ。

神奈川フィルの新シーズンは、新体制でフレッシュ・スタートです。

  バックス    交響詩「ティンタジェル」

  シューマン  ピアノ協奏曲 イ短調

             Pf:伊藤 恵 

  ブラームス  交響曲第1番 ハ短調

    川瀬 賢太郎 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

            2014年4月18日 (金) みなとみらいホール


Barbirolli_english

  バックス  交響詩「ティンタジェル」

バックスは、かねてより大好きな作曲家で、何度も書きますが、その独特のケルト臭は、わたくしには、まるで、ピート臭満載のアイラモルトウイスキーを口に含むがごとく感興を引き起こすものです。

1917年に、バックスのピアノ作品のほとんどにインスピレーションを与えた女流ピアニスト、ハリエット・コーエンとともに訪れたイングランド南西部のコーンウォール半島にあるティンタジェルの街。
大西洋を望む、その地の、夏の風のない昼間、崖から見る絶景。  
さらに、そこに位置するティンタジェル城は、遠くローマの時代に端を発するもので、のちにケルト、アーサー王の伝説もある場所です。 絶海の様子や、潮風や潮の匂いすら感じることのできる、魅力的な音楽であるとともに、その城の由来のイメージを音楽に織り込ませています。  

コーンウォールといえば、ワーグナー好きならば、「トリスタン」の故郷として思い浮かびます。
メロートの剣に倒れ、忠臣クルヴェナールによって運ばれた里が、コーンウォール。 海の見える朽ちた城で、トリスタンは海を遠く眺め、イゾルデの到着を恋い焦がれるのです。
 この「トリスタン」のことも、思い浮かべつつ、さらにバックスは、トリスタンの様々な動機と関連づけられる旋律も、この交響詩に織り込んでます。

ですから、この作品は、ティンタジェルの自然、その城の背景にあるアーサー王、そしてトリスタンというふたつのケルトにまつわる要素がからみあった、描写的かつ心象的な交響詩なのです。

手元には、バルビローリ、ダウンズ、トムソン、エルダーのCDがあります。
それぞれに、特徴があって、どれも大好きな演奏。
ゆったりと、コーンウォールの風情を愛でるような演奏のバルビローリは、その歌い口が優しく、少しばかりの憂愁も含んでおります。
 ですが、演奏時間でいうと、バルビローリが約15分なのに、最長はエルダーで17分。
丹念に緻密に描いたそのエルダー盤も、最近、超好き。
あと、男の海、みたいなダイナミックさあふれる、ブライデン・トムソン。
ライブならではの、盛り上がりのよさと、スマート感あるのは最速14分のダウンズ盤。

さて、神奈川フィルはその美音で、わたくしを痺らせてくれるでしょうか!

このコンサートで、一番楽しみな演目なんです。

 (一部、ファンサイトで書いた記事を引用してます)

Schumann_pcon

シューマンのピアノ協奏曲を、アバドは、4回録音してます。

その聴き比べは、かつての こちら→

ブレンデル、ポリーニ、ペライア、ピリスと4人の奏者。
アルゲリッチもアバドで録音して欲しかった。
これほどに、奏者たちからも愛されたアバド。

この4種の中では、ブレンデル盤が一番好きです。

ブレンデルのまろやかなピアノに、アバドとロンドン響が醸し出すヨーロピアンな落ち着きのあるウォームトーン。
ロマン派の音楽っていうイメージ通りの素敵な演奏です。

もちろん、ほかの盤もみんな素晴らしいのですよ。
でも大学時代の思い出とかも加味して、ブレンデル盤には、格別な思い入れがあるのです。

伊藤恵さんを、ソリストに迎えることの、この贅沢シューマン。
神奈川フィルのシューマンには、いろんな思い出がありますね。

Abbado_brahms_1

ブラームスの交響曲第1番は、2度録音。
全集自体を2回。
4つの交響曲で、アバドは2番が一番得意だったし、その音楽性にもあってました。
ついで、4番かな。

1番のイメージは、アバドにはそぐわないかも。

ベルリンフィルの演奏では、重厚さと壮麗なカラヤンにくらべて、輝かしさと自然な流れのよさが際立ち、あの威容あふれるブラ1も、軽やかなのです。
でも、やはりウィーンフィルのものが、この曲への扉を開いてくれたこともあって、懐かしくも、いまだに新鮮な演奏。
70年代初頭のウィーンフィルの美質が満載で、それと一緒になって、嬉々として指揮をしているアバドの姿が思い浮かびます。
明るく、前向きな気分にさせてくれるブラ1。
さんざん聴き尽したブラ1だけど、このユニークな演奏に帰ってきます。

この曲に限らず、神奈川フィルのブラームスにはたくさんお世話になりました。
シュナイト師で聴けた全4曲や、ドイツレクイエム、協奏曲、合唱曲。
ずっとずっと胸に秘めておきたい大切な思い出です。

若い演奏家が果敢にいどむ、ブラ1。
思いきり、輝いて欲しいです。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2013年11月25日 (月)

11月は、なにかと誕生月、バックス 交響詩「ティンタジェル」 トムソン指揮

Ninomiya_sea_1

相模湾の夕暮れ。

相次ぐ台風や低気圧の持ち込む大波で、砂浜はどんどん浸食され、海水浴場は壊滅しつつあります。
もっと西にある三保の松原も、かつてのものとは違ってきていると思います。

湘南から西湘にかけての、白砂青松は、徐々に昔のものとなりつつあります・・・・。

自然に手を早々にいれることもあたわず、難しい問題です。

それは、さておき、わたくしのブログ、「さまよえるクラヲタ人」は、静かに、わたくしの誕生日とともに、生誕の月を迎えていたのでした。

ブログの方は、8年になりました。

最初の記事は、2005年、二期会の「さまよえるオランダ人」上演で、エド・デ・ワールトの指揮でした。
以来、書きました、記事数今日まで2,116本。
われながら、よく書いたものですが、同じこと何度も書いてる気もします。
PCアクセスは、カウンター表示のとおりですが、携帯からのアクセスをカウントすると207万ということになりました。

ここであらためまして、御礼を申し上げます。

ブログというツールから生まれた繋がりや仲間もたくさん。
中には実際にお会いして、コンサートをご一緒したり、盃を酌み交わしたりする方々も生まれました。

自分では、より真剣に音楽を聴くようになり、音楽以外の背景もいろいろと調べるようになったしで、もろもろ、ブログの効能をたっぷりと堪能しているのです。

8年たって、わたしの音楽嗜好は不変でありつつも、当ブログの方向性を、あらためましてここに整理しておきたいと思います。
食と酒は、いまは手抜中の別館に以降してます。

 ・神奈川フィル・・・・・経済的にも、時間的にも、もうあまりコンサート通いは
              しなくなった。
              そのかわり、ブログを通じて神奈川フィルを聴くようになり、
               今では、わたしには欠かせない大切な存在となりました。
                   心底楽しんでます。そして心から応援してます。

 

  ・アバド・・・・・・・・・・もう40年のお付き合いです。
              わたしにとってお兄さんのようなにこやかな存在。
              ずっと聴いてきました。

 ・ワーグナー・・・・・・こちらは、40年超のお付き合い。
             人柄はアレだけど、その音楽と総合芸術的な存在は圧倒的。
              聖地バイロイト詣への思いは、昨今のヘンテコぶりで
             揺らぎつつあり。

 ・英国音楽・・・・・・・その全般を愛す。
              ディーリアス、エルガー、RVW、ブリテン、フィンジ、バックス、
              ハゥエルス、ホルスト、アイアランド、ブリッジ、ブリスetc

 ・世紀末系・・・・・・・こちらもほぼ全般
             マーラーは食傷気味だけど、新ウィーン楽派、ツェムリンスキー
             シュレーカー、コルンゴルト、退廃系各所

 ・オペラ・・・・・・・・・・なんたって好きです
              ワーグナー、R・シュトラウス、プッチーニ、ヴェルディ
             モーツァルトもうなんでもOK

 ・ハイティンク・プレヴィン・マリナー・・・・好きですね。
             
 ・ベイスターズ・・・・・こちらも長いお付き合い。もう38年。
              甲子園で優勝に立ち会って、15年。

 ・ねこ・・・・・・・・・・・・存在が好きです。いぬも負けずに好きです。

 ・バッハも、モーツァルトも、ベートーヴェン、シューベルト、ベルリオーズ、
  ブラームス、チャイコフスキー、ブルックナー、ドビュッシー、ラヴェル、
  あぁなんでも好き

 ・音楽、音楽がないと生きてけない。

音楽禁止令が布告されたら、人間やめます。

ブログ、自分の道を好きなようにまいります。

これからも、よろしくお願いします!
              
                              

Bax_2

  バックス   交響詩「ティンタジェル」

    ブライデン・トムソン指揮 アルスター管弦楽団

              (1983.4 @アルスターホール、ベルファスト)


アーノルド・バックス(1883~1953)は、本ブログでも何度も登場している英国作曲家。
生粋のロンドンっ子なのに、ケルト文化を愛し、イングランド北部・スコットランド・アイルランドの地をこよなく愛した作曲家。

その音楽も、ノーブルさや慎ましさよりは、シャープでシビア、でも抒情にも富んた様相に包まれていて、そのいずれもが、イギリスの海岸地方の厳しい自然を思わせるものです。

交響曲は7曲、交響詩は多数、協奏作品、室内楽、器楽、声楽と、オペラ以外に広範囲の曲を残してます。

神奈川フィルの新シーズン1発目、4月の次期常任指揮者、川瀬賢太郎さんの就任披露コンサートの第1曲めが、この曲です。
バックスの音楽を愛するものとしては、愛する神奈川フィルで、この曲が聴けるという、このうえないスタート演目なんです。

1917年に、バックスのピアノ作品のほとんどにインスピレーションを与えたピアニスト、ハリエット・コーエンとともに訪れたイングランド南西部のコーンウォールにあるティンタジェルの街。
そこのティンタジェル城は、遠くローマの時代に端を発するもので、のちにケルト、アーサー王の伝説もある場所です。
その城や、その下にある絶海をイメージした、海の潮風や潮の匂いすら感じることのできる、魅力的な音楽です。

英国は、日本と同じ島国です。
内陸部と海岸地帯では、その文化や風物はまるで異なります。
海にまつわる英国の音楽は、そのいずれも、わたしたち日本人の心にも響くものばかり。
ことにバックスの音楽は、そうした風景も背景にあることから、一度なじむと、すっかりはまることになります。

コーンウォールといえば、ワーグナー好きならば、「トリスタン」の故郷として思い浮かびます。
メロートの剣に倒れ、忠臣クルヴェナールによって運ばれた里が、コーンウォール。
海の見える朽ちた城で、トリスタンは海を遠く眺め、イゾルデの到着を恋い焦がれるのです。
そんな音楽も、じつはこのバックスの曲の中に響くのであります。

また、来年の定期の前に、この曲は、ほかの手持ちの音源を比較しながら取り上げてみたいと思います。

ブライデンとアルスターの演奏は理想的なものですね。

Tintagel1

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2012年12月27日 (木)

バックス クリスマス・イブ トムソン指揮

Times_1

まだクリスマスしてますよ、わたくしは。

日本の商業主義的には、25日が過ぎると何事もなかったかのように街は変わってしまいますが。

こちらは、シーズン中の新宿の高島屋前のツリーです。

ふわふわのレースのような生地につつまれた色の変幻するツリーでした。

Thomson_bax1

  バックス  「クリスマス・イヴ」

    ブライデン・トムソン指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
        
                       (1986.3 @ロンドン トゥーティング)


サー・アーノルド・バックス(1883~1953)。
ロンドン生まれながら、ケルトに大いに感化され、さながらイングランドから北の作曲家のような存在であり続けたバックス。

当時のイケメンかつ、浮名を流すような優男だったりしたバックスさま。

バックスの音楽は、だいたいにおいてパターンがあるし、特徴もややこしくないので、耳になじみやすいものです。

タイトルのクリスマス・イヴがあるような表題的な音楽ではなくて、バックスが憧れ、好んで訪れたアイルランドのダブリンの夜の輝く星を見てインスパイアされたものとされます。
海に面したGleann na smol howthあたりではないかと思われます。

茫洋たる雰囲気のもとに始まる18分くらいの音楽ですが、やがて懐かしい気配が漂ってきてとても旋律的でいい感じになります。
このあたりのバックスのしみじみ系の要素は、彼の音楽のすべてに共通しておりますから、一度それらを味わってしまうと、シャープなイメージのバックスも、とても親しく感じられ好きになってしまうのです。
トランペットの優しいソロに、それを引き継ぐ涼やかな木管、そしてヴィブラフォンの音色も夜のしじまに輝く星々を思わせます。

そして注目すべきは、グレゴリオ聖歌の「クレド(われ信じる)」の旋律が引用されていること。
後半には重厚ながら暖かみあふれうオルガンが入ってきて、輝かしくも神々しい様相となり光彩陸離たる眩しさを放ち、感動的に終了します。
いい曲です。

1912年に作曲され、その1年以上あとに初演。
ところがバックス生前は、一度も演奏されることがなかった。
そのリバイバルは、1979年にケンジントン交響楽団が行っていると解説にありました。

ブライデン・トムソンの男気あふれるバックスの一連の演奏には、どこか大自然、それも潮の香りさえ感じさせるローカルなよさがあふれております。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年7月27日 (金)

バックス 「夏の音楽」 トムソン指揮

Sapporo_3

去年の夏の札幌の公園にて。

北海道と長野は、その緑が北国のそれであるように思います。

白樺や針葉樹が多いのもそうだし。

冬季オリンピッックを開催したのも両地。

英国音楽や北欧の音楽を聴くときに、日本で思い起こす景色も北海道に長野。

Bax_tone_poems

  バックス 交響詩「夏の音楽」

   ブライデン・トムソン指揮 アルスター管弦楽団

                    (1982.6 @ベルファスト)


アーノルド・バックス(1883〜1953)は、英国作曲家のなかでも大好きなひとり。

生粋のロンドンっ子にありながら、ケルトの文化に魅せられ、アイルランドやスコットランド、北イングランドの地を愛し、まさにアイルランドに没している。

7つの交響曲、いくつもの交響詩や管弦楽作品、ピアノと管弦楽の作品、室内楽、器楽、声楽曲など、広範に作曲しているが、その音楽は幻想的で、ロマンティックでかつ、ミステリアスな雰囲気にあふれていて、最初はとっつきが悪いものの、ひとたびハマれば、そのどれもが北国の風物の魅力を感じさせるようで、愛せずにはいられなくなるんです。

同時代のV・ウィリアムズよりは保守的て、その少し曖昧なタッチは、ディーリアスにも近くて、一方でダイナミックなシャープさも持ち合わせていて、ブリッジやバントックのようでもあります。

今回のCDを取り上げるのは2回目ではありますが、4曲収められた素敵な音詩のなかから、今聴くに相応しい「夏の音楽」をピックアップしてみました。

10分あまりの小さな作品で、オーケストラの規模もそんなに大きくありません。

出だしからホルンの詩的な歌と、それに続くコールアングレの音色を受けて弦が、どこか懐かしい雰囲気で曲は始まり、金管はトランペットだけという、大きな音をたてないオーケストラによって静かに音楽は進みます。

暑く風のない6月の南イングランドの木々茂る場所の情景。

一服の音による絵画のようであります。

前の記事でも書きましたが、ディーリアスの「夏の庭園にて」と対をなすようなバックスの音詩にございました。
1920年、ビーチャムに捧げられた作品です。

バックスのスペシャリストともいってよかった、B・トムソンのダンディな指揮で。

過去記事→バックス 交響詩集1

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2011年8月 9日 (火)

「English Landscapes」 マーク・エルダー指揮

Narita

稲、真っ盛り。

畦道は、稲の香りでむせかえるようです。

所用で行った成田の某所。
暑くて、タオルハンカチが何枚もないとだめ。
館山では、早場米が刈り入れられたけれど、東・南関東の米はいったいどうなるんでしょう。

こうした日本の田園風景も危機なのか。
へたすりゃ、ここに太陽光パネルや風車が立ち並ぶ、ぶち壊しの風景になってしまうのか。

そんなの許せないし、見たくない。
でも、場所によってはそうなってしまうのでしょう。
新たな自然破壊と生態系への影響負荷となるのでしょう。
人間中心に考えるとそうなるのだし、飽和してしまって、行き詰ったいまの人間社会の行き着く果てでありましょうか。

同じ島国、英国の風景も緑に溢れて劇的で美しいものです。

Eng03

そのロンドンで暴動がおこり、周辺都市に広がっている。
ニュースで知り、英都でまさかそんなことが、と思った。
事の発端は、黒人男性を警察官が射殺したことで、その追悼集会から暴発したらしい。
ヨーロッパの老舗大国は、マイノリティや格差民族が厳然といるので、あのあたりからの不満の噴出によるもの。
それらが連鎖して、経済格差や政策への不満として広がっていった。
特定の場所を襲撃してゆくという組織的な活動にもなりつつあるようだ・・・・。

これらはいったい・・・。

先進も後進も社会主義国もまったくありまえん。
世界同時苦境(不況)の大連鎖に陥ったのでしょうか。

これって、マジやばいことだと思います。
アメリカの大沈没に中国の相変わらずの隠蔽体質とメッキ主義。
政治不信と震災・人災から立ち上がれない日本。
不安な中東にアフリカ・中南米。
消去法で、残る安全地帯はどこにもありません。

少し酩酊状態で書き散らす記事。

とんでもない8月になるような気がします。

役人や大企業の方々も、安閑としてはいられなくなります。
中小企業はこれ以上ないくらいに厳しいです。
わたしのまわりでも破綻する人や、少し前には命を絶つ人も出てきてます。

身を軽くして、持つ人生から持たない人生に、ダウンサイズしながら捨て去り人生も必要なのかもしれないと思いつつあります。
もうなにもかも充分に満ちたりでるのですから、これ以上の便利や、かっこいい人生はいらないかもです・・・・。

なんか、爺さんの心境になってきました。

English_landscapes_elder

本題の音楽にやっとたどりつきました。

英国の風景、と題する1枚。

英国音楽好きにとって、心から愛する作曲家と、その詩的で素敵過ぎる作品が1枚に収められたもの。
しかも、オーケストラは英国の良心ともいうべきハレ管弦楽団に、マーク・エルダーの指揮。

 バックス    「ティンタジェル」

 ヴォーン・ウィリアムズ 「揚げひばり」

 フィンジ    「散りゆく葉」~オーケストラのためのエレジー

 ヴォーン・ウィリアムズ 「ノフォーク・ラプソディ」

 ディーリアス  「川の上の夏の夜」

          「春はじめてのかっこうを聴いて」

 エルガー    「夏の激流のように」

 アイアランド  「丘」」

   マーク・エルダー 指揮 ハレ管弦楽団/合唱団
        ヴァイオリン:リン・フレッチャー
                       (2005.11@マンチェスター)


ハレ管の自主制作CD。
マーク・エルダーは、2000年来、歴史あるハレ管の常任指揮者をつとめており、ハレ管も、久方ぶりの英国指揮者のもと、かつてのバルビローリ時代の復興を思わせる、自国音楽の再生に取り組んでいる。
バルビローリのあと、ロッホラン、スクロヴァチェスキ、K・ナガノと続いたのちのエルダー。

エルダーは当初、オペラ指揮者の印象が強く、イングリッシュ・ナショナル・オペラの指揮者として少しばかり先鋭なイメージを抱いていた。
バイロイトにいきなり登場して、ウォルフガンク・ワーグナーの新演出の「マイスタージンガー」を81年に34歳にて指揮をしたが、劇場の特性を読み込めず1年で、ベテラン、シュタインと交代。
そんな経験も経て、オペラでジワジワ実力をつけ、いまや英国楽壇の雄のひとりです。

どちらの曲もしみじみと、味わい深く、自国ものを慈しみながら丁寧に演奏していることが聴いてとれます。

シャープで絶海の古城を思わせるような名品ティンタジェル。
バルビローリやB・トムソンの超名演と並び立つ素晴らしい演奏。

有名すぎる「揚げひばり」は淡々としたつつましい仕上げ。
フィンジの「落ち葉」は、真夏に聴くと、先取りの秋の悲しさが満載。
早く秋がこないかな・・・・。
どうように、メロディアスなRVWのラプソディには嘆息してしまい、ディーリアスの高名な小品では、ここにこそ、日本の季節の風物とオーヴァーラップする親しみと忘れられた日常を脳裏に思い描くのだ。
エルガーとアイアランドのふたつの無伴奏合唱作品。
実に爽やかで気品に溢れてます。英語の美しい語感も本場のものに感じちゃいます。

以上、素敵すぎる英オムニバスCDでございました。

大好きな英国。

頼むから暴動なんかやめてちょーだい。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

いぬ ねこ アイアランド アバド アメリカオケ アメリカ音楽 イギリス音楽 イタリアオペラ イタリア音楽 ウェーベルン エッシェンバッハ エルガー オペラ カラヤン クラシック音楽以外 クリスマス クレー コルンゴルト コンサート シェーンベルク シベリウス シマノフスキ シュナイト シュレーカー シューベルト シューマン ショスタコーヴィチ ショパン スクリャービン スーク チャイコフスキー チャイ5 ツェムリンスキー テノール ディーリアス ディーヴァ トリスタンとイゾルデ ドビュッシー ドヴォルザーク ハイティンク ハウェルズ バス・バリトン バックス バッハ バルビローリ バレンボイム バーンスタイン ヒコックス ビートルズ ピアノ フィンジ フォーレ フランス音楽 ブラームス ブリテン ブルックナー プッチーニ プティボン プレヴィン プロコフィエフ ヘンデル ベイスターズ ベネデッティ ベルク ベルリオーズ ベートーヴェン ベーム ホルスト ポップ マリナー マーラー ミンコフスキ ムソルグスキー メータ モーツァルト ヤナーチェク ヤンソンス ラフマニノフ ランキング ラヴェル ルイージ レクイエム レスピーギ ロシア系音楽 ロッシーニ ローエングリン ワーグナー ヴェルディ ヴォーン・ウィリアムズ 北欧系音楽 古楽全般 器楽曲 小澤征爾 尾高忠明 幻想交響曲 料理 新ウィーン楽派とその周辺 旅行・地域 日本の音楽 日記・コラム・つぶやき 映画 書籍・雑誌 東欧系音楽 歌入り交響曲 現田茂夫 神奈川フィル 第5番 若杉 弘 趣味 音楽 飯守泰次郎 R・シュトラウス