バックス 交響曲「春の炎」 ハンドリー指揮
一気に初夏の陽気に。
ツツジもあわてて一斉に開き初め、甘い香りが漂っている。
普段にも増して、ぼぉーっとしてしまいそうな日々がこれから続く。
寒い時とか、酒を飲んでるときは、シャンとしているのだが、春から夏はどうもイカン。
苦手な季節。暑いのイカン。
ビール飲み過ぎちゃうし、お腹ぽっこりになっちゃうし、厚着でごまかせないし、頭が日に焼けちゃうし??
まあ、いずれにしても、年中飲んでいるのだな、これが。
酒と言えば、ワタシらが酒を飲みだした頃は、今のようなカクテルや酎ハイといった小洒落た飲物はなかった。かといってビールも高かったし、発泡酒なんてものもなかったから、いきなり日本酒か、ウイスキーだったんだ。
ともかく飲んだ。でもウイスキーは、貧乏ながら一応選んで飲んでいて、たいていは「ホワイト」。
「レッド」は次の日、死ぬということを本能的に感じとっていた。「オールド」なんてめったに飲めなかったし、「リザーブ」なんぞ、拝むことすらできなかった。
ところが今はどーだ。
国産酒には見向きもせず、ジョニ黒・赤なんぞも、ありきたりの酒となって、量販店にごろごろ転がっている。
体のいらんところに肉も付き、嗜好も贅沢になってしまった・・・。
そんな、ワタクシのお気に入りのウイスキーは、アイリッシュモルト。
ブッシュミルズ、ボウモア、タラモアデュー、タリスカー、ジェムソン・・・、醸造元の街の名前で、いろいろな種類のボトルがあるが、あまりこだわらない。
ピートの燻した香りが味に染み込み、ヨード臭の強いものがとりわけ好きだ。
いわゆる、ヨードチンキですよ。
おねーちゃんもいない、ちゃらちゃらした雰囲気の一切ないバーのカウンターに腰掛けて、2~3杯ロックで飲む。
そんな時、きまって頭の中に流れる音楽が、アーノルド・バックス(1883~1953)の音楽。
ロンドンっ子ながら、アイルランドを生涯愛したバックスの音楽には、ケルトの香り、海の潮の香りがぷんぷんだ!
とらえどころがないところも、ニンフのようでもあり、夢の中の音楽のようでもある。
単なる自然の描写だけでなく、そこに感じるマジックやファンタジーが伴なっているものだから、ミステリアスな雰囲気がいつもある。
7曲ある交響曲は、いずれも番号だけの純粋交響曲だが、すべてが3つの楽章で、先にあげたようなムードに満ちているので、どの番号を聴いても、みんな同じに聴こえてしまう。
そこがバックスの面白いところで、何度も何度も聴いてゆくうちに、すっかりその虜となってしまう。
今日の「春の炎」は、バックス初期の作品で、5つの表題を与えられた楽章からなっている。
Ⅰ「夜明け前の森にて」、Ⅱ「夜明けと日の出」、Ⅲ「一日」、Ⅳ「森の愛」、Ⅴ「manads」。
一気呵成にやってくる北国の春の様子が、幻想的かつダイナミックに描かれている。
ソフトで夢見るような森の国の夜明け、冬の眠りから醒めた大胆で陽気な森、あまりにも美しいロマンスのような情景、爆発的な妖精の踊り。
作曲後、第一次大戦の勃発や、その後も演奏の困難さなどで、演奏がなかなかされず、楽譜も消失したりした、なかなか恵まれない作品だったようだ。
ここでは、そんな経緯はともかく、ヴァーノン・ハンドリーとロイヤル・フィルの詩情溢れる演奏で、とことんバックス・ワールドに浸ることができる。
一度ウイスキー片手に、バックスの音楽を楽しんでみてはいかが?
お酒がダメな方は、ヨードチンキ片手に弧高の海を思い浮かべながら、どうぞお聴きください。
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