カテゴリー「バックス」の記事

2015年10月24日 (土)

バックス チェロ協奏曲 ウォールフィッシュ

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秋まっさかり。

コスモスはエリアによっては、もうおしまいなんてところもありますが、紅葉の前を飾る淡い色どりは、去った夏を懐かしんだりで、ちょっと切ないですね。

このところ、なにかと忙しいのと、精神的にもまいっているので、音楽も聴いてなかった。

朝やたらと早く目覚めたので、大好きな英国音楽のひとつを聴きつつPCに向かいました。

Bax

   バックス   チェロ協奏曲

       チェロ:ラファエル・ウォールフィッシュ

    ブライデン・トムソン指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

                      (1986 @ロンドン、オールセインツ教会)


アーノルド・バックス(1883~1953)の音楽は、シャンドスレーベルのおかげで、かなりの録音がなされ、レコード時代にはその名前すらあまり聴かれることがなかったのに、いまでは体系的にその作品のほとんどを聴くことができるようになりました。

7つの交響曲や、数々の交響詩や管弦楽作品に、協奏的な作品。
室内楽、器楽、声楽曲などなど、オペラを除いてすべてのジャンルにその作品を残しました。
生粋のロンドンっ子でありながら、ケルト文化を愛し、イングランド北部・スコットランド・アイルランドの地をこよなく愛した作曲家。

そして、ロマンティストで、ちょっとナイーブなイケメンで、女性にももてた。
ハリエット・コーエンというピアニストとは、バックスは妻子がありながら、ロンドンでも、公然の仲になっていたし、彼女を伴って、アイルランドの地を旅したりもしたが、彼女はバックスの晩年まで付き添い、献身的にその作曲活動を支えた。

バックスの音楽の魅力は、イギリス音楽ならではの、気品と抒情を持ちつつも、シャープでダイナミックな自然描写にすぐれているところで、そこにはさらに豊富なファンタジーとミステリアスな様相も込められているところ。
 その独特なメロディラインには、どの曲にもバックスならではのパターン的な特徴があって、それにハマると、もう抜け出せなくなってしまいます。

そのバックスのチェロ協奏曲は、長く埋もれていましたが、今日聴いたウォールフィッシュによって甦演された桂品です。

1931年秋、ハリエット・コーエンは、スペインのチェリスト・作曲家のガスパール・カサドとコンサート・ツアーを行い、そして彼をバックスに紹介しました。
そのカサドの勧めもあり、翌32年に、生まれたのがこの協奏曲。
当然にカサドに捧げられ、演奏もされたものの、その後数十年、忘れられた作品となり、ベアトリス・ハリソンによって再演。
その後もまた埋もれ、そしてウォールフィッシュによる演奏が86年。
録音としては、そのあとは、2014年に新録音が行われている様子で、ぼちぼち世に出てくるのかしら・・・・。

この曲が生まれる経緯となったスペインの大チェリスト、カサドの名を冠したコンクールで、ウォールフィッシュは優勝しているのも因縁かもしれませんが、なにより、カサドの妻が、日本人ピアニストの原智恵子であることにも驚きを感じます。
原智恵子は、2001年に亡くなってますが、日本よりは、ヨーロッパでは名ピアニストとして知られた存在だったようで、その音源も聴くことができます。
 こうして、曲ひとつから、いろんな関係や結びつきを紐解いて、あれこれ想像することも楽しいものですし、ネット社会だから情報がすぐさま手に入る恩恵ですね。

さて、この作品、全体で3楽章、33分という大作ですが、オーケストラは小編成で、金管はトランペットが両端楽章にあらわれるのみで、弦楽に木管、ハープとティンパニという構成であります。

シャープな第1主題、そしていつものバックスのパターンのとおりに、懐かしく抒情にあふれた第2主題を持つ第1楽章。
チェロはさほどの名技性を発揮してませんが、ふたつの異なるムードの主題を変転しつつも弾き分けると言う点で、なかなか難易度が高いのかもしれません。

ノクターンと題された第2楽章が、極めて素敵なところが、この曲の白眉です。
チェロのロマンティックな独白に、オーケストラの各楽器が、しっとりと、優しく応じ、絡み合います。
その夢幻的な世界に、いつまでも浸っていたくなります・・・・。
ケルトの神秘的な森に、帳が降りて、木々が、露でしっとりと覆われるような、そんなイメージを目を閉じながら聴くといだくことでしょう。

早いパッセージが上下するモルト・ヴィヴァーチェ、第3楽章。
一番短い楽章となってますが、軽い疾走感が短調ということもあり、少し切迫した印象を与えます。
しかし、徐々に大らかな様相となり、チェロは懐古的な語り口となり、ヴィオラソロとの競演もどこかとても懐かしく感じます。
そのまま、曲は明るい色調を維持しつつ、エンディングのイメージを築き上げていって終結となります。

 ウォールフィッシュの明るく艶のあるチェロは、このレーベルに多くあるほかの英国作品同様に、すてきなものです。
そして、響きを多く取り入れた録音は、ブライデンとLPOというバックスに最適のコンビの音色を、とても雰囲気豊かにおさえております。

早朝は、曇り空だったけれど、この時間、空はすっかり秋晴れとなって高く広がりました。

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2014年4月17日 (木)

神奈川フィル定期 予行演習 アバド指揮

Azeria_shibaura

桜のあとは、つつじがやってきますな。

連休のイメージもあり、汗ばむ陽気も思い起こすことができます。

四季の巡りも、年々早く感じるようになりましたよ。

神奈川フィルの新シーズンは、新体制でフレッシュ・スタートです。

  バックス    交響詩「ティンタジェル」

  シューマン  ピアノ協奏曲 イ短調

             Pf:伊藤 恵 

  ブラームス  交響曲第1番 ハ短調

    川瀬 賢太郎 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

            2014年4月18日 (金) みなとみらいホール


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  バックス  交響詩「ティンタジェル」

バックスは、かねてより大好きな作曲家で、何度も書きますが、その独特のケルト臭は、わたくしには、まるで、ピート臭満載のアイラモルトウイスキーを口に含むがごとく感興を引き起こすものです。

1917年に、バックスのピアノ作品のほとんどにインスピレーションを与えた女流ピアニスト、ハリエット・コーエンとともに訪れたイングランド南西部のコーンウォール半島にあるティンタジェルの街。
大西洋を望む、その地の、夏の風のない昼間、崖から見る絶景。  
さらに、そこに位置するティンタジェル城は、遠くローマの時代に端を発するもので、のちにケルト、アーサー王の伝説もある場所です。 絶海の様子や、潮風や潮の匂いすら感じることのできる、魅力的な音楽であるとともに、その城の由来のイメージを音楽に織り込ませています。  

コーンウォールといえば、ワーグナー好きならば、「トリスタン」の故郷として思い浮かびます。
メロートの剣に倒れ、忠臣クルヴェナールによって運ばれた里が、コーンウォール。 海の見える朽ちた城で、トリスタンは海を遠く眺め、イゾルデの到着を恋い焦がれるのです。
 この「トリスタン」のことも、思い浮かべつつ、さらにバックスは、トリスタンの様々な動機と関連づけられる旋律も、この交響詩に織り込んでます。

ですから、この作品は、ティンタジェルの自然、その城の背景にあるアーサー王、そしてトリスタンというふたつのケルトにまつわる要素がからみあった、描写的かつ心象的な交響詩なのです。

手元には、バルビローリ、ダウンズ、トムソン、エルダーのCDがあります。
それぞれに、特徴があって、どれも大好きな演奏。
ゆったりと、コーンウォールの風情を愛でるような演奏のバルビローリは、その歌い口が優しく、少しばかりの憂愁も含んでおります。
 ですが、演奏時間でいうと、バルビローリが約15分なのに、最長はエルダーで17分。
丹念に緻密に描いたそのエルダー盤も、最近、超好き。
あと、男の海、みたいなダイナミックさあふれる、ブライデン・トムソン。
ライブならではの、盛り上がりのよさと、スマート感あるのは最速14分のダウンズ盤。

さて、神奈川フィルはその美音で、わたくしを痺らせてくれるでしょうか!

このコンサートで、一番楽しみな演目なんです。

 (一部、ファンサイトで書いた記事を引用してます)

Schumann_pcon

シューマンのピアノ協奏曲を、アバドは、4回録音してます。

その聴き比べは、かつての こちら→

ブレンデル、ポリーニ、ペライア、ピリスと4人の奏者。
アルゲリッチもアバドで録音して欲しかった。
これほどに、奏者たちからも愛されたアバド。

この4種の中では、ブレンデル盤が一番好きです。

ブレンデルのまろやかなピアノに、アバドとロンドン響が醸し出すヨーロピアンな落ち着きのあるウォームトーン。
ロマン派の音楽っていうイメージ通りの素敵な演奏です。

もちろん、ほかの盤もみんな素晴らしいのですよ。
でも大学時代の思い出とかも加味して、ブレンデル盤には、格別な思い入れがあるのです。

伊藤恵さんを、ソリストに迎えることの、この贅沢シューマン。
神奈川フィルのシューマンには、いろんな思い出がありますね。

Abbado_brahms_1

ブラームスの交響曲第1番は、2度録音。
全集自体を2回。
4つの交響曲で、アバドは2番が一番得意だったし、その音楽性にもあってました。
ついで、4番かな。

1番のイメージは、アバドにはそぐわないかも。

ベルリンフィルの演奏では、重厚さと壮麗なカラヤンにくらべて、輝かしさと自然な流れのよさが際立ち、あの威容あふれるブラ1も、軽やかなのです。
でも、やはりウィーンフィルのものが、この曲への扉を開いてくれたこともあって、懐かしくも、いまだに新鮮な演奏。
70年代初頭のウィーンフィルの美質が満載で、それと一緒になって、嬉々として指揮をしているアバドの姿が思い浮かびます。
明るく、前向きな気分にさせてくれるブラ1。
さんざん聴き尽したブラ1だけど、このユニークな演奏に帰ってきます。

この曲に限らず、神奈川フィルのブラームスにはたくさんお世話になりました。
シュナイト師で聴けた全4曲や、ドイツレクイエム、協奏曲、合唱曲。
ずっとずっと胸に秘めておきたい大切な思い出です。

若い演奏家が果敢にいどむ、ブラ1。
思いきり、輝いて欲しいです。

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2013年11月25日 (月)

11月は、なにかと誕生月、バックス 交響詩「ティンタジェル」 トムソン指揮

Ninomiya_sea_1

相模湾の夕暮れ。

相次ぐ台風や低気圧の持ち込む大波で、砂浜はどんどん浸食され、海水浴場は壊滅しつつあります。
もっと西にある三保の松原も、かつてのものとは違ってきていると思います。

湘南から西湘にかけての、白砂青松は、徐々に昔のものとなりつつあります・・・・。

自然に手を早々にいれることもあたわず、難しい問題です。

それは、さておき、わたくしのブログ、「さまよえるクラヲタ人」は、静かに、わたくしの誕生日とともに、生誕の月を迎えていたのでした。

ブログの方は、8年になりました。

最初の記事は、2005年、二期会の「さまよえるオランダ人」上演で、エド・デ・ワールトの指揮でした。
以来、書きました、記事数今日まで2,116本。
われながら、よく書いたものですが、同じこと何度も書いてる気もします。
PCアクセスは、カウンター表示のとおりですが、携帯からのアクセスをカウントすると207万ということになりました。

ここであらためまして、御礼を申し上げます。

ブログというツールから生まれた繋がりや仲間もたくさん。
中には実際にお会いして、コンサートをご一緒したり、盃を酌み交わしたりする方々も生まれました。

自分では、より真剣に音楽を聴くようになり、音楽以外の背景もいろいろと調べるようになったしで、もろもろ、ブログの効能をたっぷりと堪能しているのです。

8年たって、わたしの音楽嗜好は不変でありつつも、当ブログの方向性を、あらためましてここに整理しておきたいと思います。
食と酒は、いまは手抜中の別館に以降してます。

 ・神奈川フィル・・・・・経済的にも、時間的にも、もうあまりコンサート通いは
              しなくなった。
              そのかわり、ブログを通じて神奈川フィルを聴くようになり、
               今では、わたしには欠かせない大切な存在となりました。
                   心底楽しんでます。そして心から応援してます。

  ・アバド・・・・・・・・・・もう40年のお付き合いです。
              わたしにとってお兄さんのようなにこやかな存在。
              ずっと聴いてきました。

 ・ワーグナー・・・・・・こちらは、40年超のお付き合い。
             人柄はアレだけど、その音楽と総合芸術的な存在は圧倒的。
              聖地バイロイト詣への思いは、昨今のヘンテコぶりで
             揺らぎつつあり。

 ・英国音楽・・・・・・・その全般を愛す。
              ディーリアス、エルガー、RVW、ブリテン、フィンジ、バックス、
              ハゥエルス、ホルスト、アイアランド、ブリッジ、ブリスetc

 ・世紀末系・・・・・・・こちらもほぼ全般
             マーラーは食傷気味だけど、新ウィーン楽派、ツェムリンスキー
             シュレーカー、コルンゴルト、退廃系各所

 ・オペラ・・・・・・・・・・なんたって好きです
              ワーグナー、R・シュトラウス、プッチーニ、ヴェルディ
             モーツァルトもうなんでもOK

 ・ハイティンク・プレヴィン・マリナー・・・・好きですね。

 ・佐村河内守・・・・・突然現れた作曲家。あれこれ言葉はいらない、黙って聴け。

             
 ・ベイスターズ・・・・・こちらも長いお付き合い。もう38年。
              甲子園で優勝に立ち会って、15年。

 ・ねこ・・・・・・・・・・・・存在が好きです。いぬも負けずに好きです。

 ・バッハも、モーツァルトも、ベートーヴェン、シューベルト、ベルリオーズ、
  ブラームス、チャイコフスキー、ブルックナー、ドビュッシー、ラヴェル、
  あぁなんでも好き

 ・音楽、音楽がないと生きてけない。

音楽禁止令が布告されたら、人間やめます。

ブログ、自分の道を好きなようにまいります。

これからも、よろしくお願いします!
              
                              

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  バックス   交響詩「ティンタジェル」

    ブライデン・トムソン指揮 アルスター管弦楽団

              (1983.4 @アルスターホール、ベルファスト)


アーノルド・バックス(1883~1953)は、本ブログでも何度も登場している英国作曲家。
生粋のロンドンっ子なのに、ケルト文化を愛し、イングランド北部・スコットランド・アイルランドの地をこよなく愛した作曲家。

その音楽も、ノーブルさや慎ましさよりは、シャープでシビア、でも抒情にも富んた様相に包まれていて、そのいずれもが、イギリスの海岸地方の厳しい自然を思わせるものです。

交響曲は7曲、交響詩は多数、協奏作品、室内楽、器楽、声楽と、オペラ以外に広範囲の曲を残してます。

神奈川フィルの新シーズン1発目、4月の次期常任指揮者、川瀬賢太郎さんの就任披露コンサートの第1曲めが、この曲です。
バックスの音楽を愛するものとしては、愛する神奈川フィルで、この曲が聴けるという、このうえないスタート演目なんです。

1917年に、バックスのピアノ作品のほとんどにインスピレーションを与えたピアニスト、ハリエット・コーエンとともに訪れたイングランド南西部のコーンウォールにあるティンタジェルの街。
そこのティンタジェル城は、遠くローマの時代に端を発するもので、のちにケルト、アーサー王の伝説もある場所です。
その城や、その下にある絶海をイメージした、海の潮風や潮の匂いすら感じることのできる、魅力的な音楽です。

英国は、日本と同じ島国です。
内陸部と海岸地帯では、その文化や風物はまるで異なります。
海にまつわる英国の音楽は、そのいずれも、わたしたち日本人の心にも響くものばかり。
ことにバックスの音楽は、そうした風景も背景にあることから、一度なじむと、すっかりはまることになります。

コーンウォールといえば、ワーグナー好きならば、「トリスタン」の故郷として思い浮かびます。
メロートの剣に倒れ、忠臣クルヴェナールによって運ばれた里が、コーンウォール。
海の見える朽ちた城で、トリスタンは海を遠く眺め、イゾルデの到着を恋い焦がれるのです。
そんな音楽も、じつはこのバックスの曲の中に響くのであります。

また、来年の定期の前に、この曲は、ほかの手持ちの音源を比較しながら取り上げてみたいと思います。

ブライデンとアルスターの演奏は理想的なものですね。

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2012年12月27日 (木)

バックス クリスマス・イブ トムソン指揮

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まだクリスマスしてますよ、わたくしは。

日本の商業主義的には、25日が過ぎると何事もなかったかのように街は変わってしまいますが。

こちらは、シーズン中の新宿の高島屋前のツリーです。

ふわふわのレースのような生地につつまれた色の変幻するツリーでした。

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  バックス  「クリスマス・イヴ」

    ブライデン・トムソン指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
        
                       (1986.3 @ロンドン トゥーティング)


サー・アーノルド・バックス(1883~1953)。
ロンドン生まれながら、ケルトに大いに感化され、さながらイングランドから北の作曲家のような存在であり続けたバックス。

当時のイケメンかつ、浮名を流すような優男だったりしたバックスさま。

バックスの音楽は、だいたいにおいてパターンがあるし、特徴もややこしくないので、耳になじみやすいものです。

タイトルのクリスマス・イヴがあるような表題的な音楽ではなくて、バックスが憧れ、好んで訪れたアイルランドのダブリンの夜の輝く星を見てインスパイアされたものとされます。
海に面したGleann na smol howthあたりではないかと思われます。

茫洋たる雰囲気のもとに始まる18分くらいの音楽ですが、やがて懐かしい気配が漂ってきてとても旋律的でいい感じになります。
このあたりのバックスのしみじみ系の要素は、彼の音楽のすべてに共通しておりますから、一度それらを味わってしまうと、シャープなイメージのバックスも、とても親しく感じられ好きになってしまうのです。
トランペットの優しいソロに、それを引き継ぐ涼やかな木管、そしてヴィブラフォンの音色も夜のしじまに輝く星々を思わせます。

そして注目すべきは、グレゴリオ聖歌の「クレド(われ信じる)」の旋律が引用されていること。
後半には重厚ながら暖かみあふれうオルガンが入ってきて、輝かしくも神々しい様相となり光彩陸離たる眩しさを放ち、感動的に終了します。
いい曲です。

1912年に作曲され、その1年以上あとに初演。
ところがバックス生前は、一度も演奏されることがなかった。
そのリバイバルは、1979年にケンジントン交響楽団が行っていると解説にありました。

ブライデン・トムソンの男気あふれるバックスの一連の演奏には、どこか大自然、それも潮の香りさえ感じさせるローカルなよさがあふれております。

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2012年7月27日 (金)

バックス 「夏の音楽」 トムソン指揮

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去年の夏の札幌の公園にて。

北海道と長野は、その緑が北国のそれであるように思います。

白樺や針葉樹が多いのもそうだし。

冬季オリンピッックを開催したのも両地。

英国音楽や北欧の音楽を聴くときに、日本で思い起こす景色も北海道に長野。

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  バックス 交響詩「夏の音楽」

   ブライデン・トムソン指揮 アルスター管弦楽団

                    (1982.6 @ベルファスト)


アーノルド・バックス(1883〜1953)は、英国作曲家のなかでも大好きなひとり。

生粋のロンドンっ子にありながら、ケルトの文化に魅せられ、アイルランドやスコットランド、北イングランドの地を愛し、まさにアイルランドに没している。

7つの交響曲、いくつもの交響詩や管弦楽作品、ピアノと管弦楽の作品、室内楽、器楽、声楽曲など、広範に作曲しているが、その音楽は幻想的で、ロマンティックでかつ、ミステリアスな雰囲気にあふれていて、最初はとっつきが悪いものの、ひとたびハマれば、そのどれもが北国の風物の魅力を感じさせるようで、愛せずにはいられなくなるんです。

同時代のV・ウィリアムズよりは保守的て、その少し曖昧なタッチは、ディーリアスにも近くて、一方でダイナミックなシャープさも持ち合わせていて、ブリッジやバントックのようでもあります。

今回のCDを取り上げるのは2回目ではありますが、4曲収められた素敵な音詩のなかから、今聴くに相応しい「夏の音楽」をピックアップしてみました。

10分あまりの小さな作品で、オーケストラの規模もそんなに大きくありません。

出だしからホルンの詩的な歌と、それに続くコールアングレの音色を受けて弦が、どこか懐かしい雰囲気で曲は始まり、金管はトランペットだけという、大きな音をたてないオーケストラによって静かに音楽は進みます。

暑く風のない6月の南イングランドの木々茂る場所の情景。

一服の音による絵画のようであります。

前の記事でも書きましたが、ディーリアスの「夏の庭園にて」と対をなすようなバックスの音詩にございました。
1920年、ビーチャムに捧げられた作品です。

バックスのスペシャリストともいってよかった、B・トムソンのダンディな指揮で。

過去記事→バックス 交響詩集1

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2011年8月 9日 (火)

「English Landscapes」 マーク・エルダー指揮

Narita

稲、真っ盛り。

畦道は、稲の香りでむせかえるようです。

所用で行った成田の某所。
暑くて、タオルハンカチが何枚もないとだめ。
館山では、早場米が刈り入れられたけれど、東・南関東の米はいったいどうなるんでしょう。

こうした日本の田園風景も危機なのか。
へたすりゃ、ここに太陽光パネルや風車が立ち並ぶ、ぶち壊しの風景になってしまうのか。

そんなの許せないし、見たくない。
でも、場所によってはそうなってしまうのでしょう。
新たな自然破壊と生態系への影響負荷となるのでしょう。
人間中心に考えるとそうなるのだし、飽和してしまって、行き詰ったいまの人間社会の行き着く果てでありましょうか。

同じ島国、英国の風景も緑に溢れて劇的で美しいものです。

Eng03

そのロンドンで暴動がおこり、周辺都市に広がっている。
ニュースで知り、英都でまさかそんなことが、と思った。
事の発端は、黒人男性を警察官が射殺したことで、その追悼集会から暴発したらしい。
ヨーロッパの老舗大国は、マイノリティや格差民族が厳然といるので、あのあたりからの不満の噴出によるもの。
それらが連鎖して、経済格差や政策への不満として広がっていった。
特定の場所を襲撃してゆくという組織的な活動にもなりつつあるようだ・・・・。

これらはいったい・・・。

先進も後進も社会主義国もまったくありまえん。
世界同時苦境(不況)の大連鎖に陥ったのでしょうか。

これって、マジやばいことだと思います。
アメリカの大沈没に中国の相変わらずの隠蔽体質とメッキ主義。
政治不信と震災・人災から立ち上がれない日本。
不安な中東にアフリカ・中南米。
消去法で、残る安全地帯はどこにもありません。

少し酩酊状態で書き散らす記事。

とんでもない8月になるような気がします。

役人や大企業の方々も、安閑としてはいられなくなります。
中小企業はこれ以上ないくらいに厳しいです。
わたしのまわりでも破綻する人や、少し前には命を絶つ人も出てきてます。

身を軽くして、持つ人生から持たない人生に、ダウンサイズしながら捨て去り人生も必要なのかもしれないと思いつつあります。
もうなにもかも充分に満ちたりでるのですから、これ以上の便利や、かっこいい人生はいらないかもです・・・・。

なんか、爺さんの心境になってきました。

English_landscapes_elder

本題の音楽にやっとたどりつきました。

英国の風景、と題する1枚。

英国音楽好きにとって、心から愛する作曲家と、その詩的で素敵過ぎる作品が1枚に収められたもの。
しかも、オーケストラは英国の良心ともいうべきハレ管弦楽団に、マーク・エルダーの指揮。

 バックス    「ティンタジェル」

 ヴォーン・ウィリアムズ 「揚げひばり」

 フィンジ    「散りゆく葉」~オーケストラのためのエレジー

 ヴォーン・ウィリアムズ 「ノフォーク・ラプソディ」

 ディーリアス  「川の上の夏の夜」

          「春はじめてのかっこうを聴いて」

 エルガー    「夏の激流のように」

 アイアランド  「丘」」

   マーク・エルダー 指揮 ハレ管弦楽団/合唱団
        ヴァイオリン:リン・フレッチャー
                       (2005.11@マンチェスター)


ハレ管の自主制作CD。
マーク・エルダーは、2000年来、歴史あるハレ管の常任指揮者をつとめており、ハレ管も、久方ぶりの英国指揮者のもと、かつてのバルビローリ時代の復興を思わせる、自国音楽の再生に取り組んでいる。
バルビローリのあと、ロッホラン、スクロヴァチェスキ、K・ナガノと続いたのちのエルダー。

エルダーは当初、オペラ指揮者の印象が強く、イングリッシュ・ナショナル・オペラの指揮者として少しばかり先鋭なイメージを抱いていた。
バイロイトにいきなり登場して、ウォルフガンク・ワーグナーの新演出の「マイスタージンガー」を81年に34歳にて指揮をしたが、劇場の特性を読み込めず1年で、ベテラン、シュタインと交代。
そんな経験も経て、オペラでジワジワ実力をつけ、いまや英国楽壇の雄のひとりです。

どちらの曲もしみじみと、味わい深く、自国ものを慈しみながら丁寧に演奏していることが聴いてとれます。

シャープで絶海の古城を思わせるような名品ティンタジェル。
バルビローリやB・トムソンの超名演と並び立つ素晴らしい演奏。

有名すぎる「揚げひばり」は淡々としたつつましい仕上げ。
フィンジの「落ち葉」は、真夏に聴くと、先取りの秋の悲しさが満載。
早く秋がこないかな・・・・。
どうように、メロディアスなRVWのラプソディには嘆息してしまい、ディーリアスの高名な小品では、ここにこそ、日本の季節の風物とオーヴァーラップする親しみと忘れられた日常を脳裏に思い描くのだ。
エルガーとアイアランドのふたつの無伴奏合唱作品。
実に爽やかで気品に溢れてます。英語の美しい語感も本場のものに感じちゃいます。

以上、素敵すぎる英オムニバスCDでございました。

大好きな英国。

頼むから暴動なんかやめてちょーだい。
 

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2009年10月16日 (金)

バックス ピアノ三重奏曲 ボロディン・トリオ

Byoubugaura4 イギリスのドーバーの断崖を思わせるような岩壁。

こちらは、千葉県です。
飯岡から銚子にかけての屏風ヶ浦。

もう少し飯岡よりに行くと、岩ガキがとれる。
大きな身の濃厚なカキ。
日本じゃないみたい。

Bax_bridge_piano_trio

アーノルド・バックス(1883~1953)は、私の好きな英国作曲家のひとり。

ロンドンっ子でありながら、ケルトに魅せられ、生涯スコットランドやアイルランドを愛し、ロンドンに拠点を置きながらも始終かの地へ赴き、亡くなったときもアイルランドにあった。

オペラやオラトリオを除く、あらゆるジャンルに作品を残している。
いずれも3楽章形式の7曲の交響曲を軸に、幻想的ないくつもの交響詩や、映画音楽(オリバーツイストまで!)、室内楽曲、ピアノ曲、合唱曲など、どれも最初はとっつきが悪いが、聴きこむほどに味わいの増す、そしてその語り口を覚えてしまうと、たまらなく好きになってしまうのがバックスの音楽なのだ。

室内楽曲においても、さまざまなスタイルの作品があるバックス。
珍しいところでは、ハープやホルンを使った曲や木管のための作品もある。
オーソドックスなものでは、ヴァイオリン・ソナタや弦楽四重奏や五重奏、そしてピアノ五重奏に、こちらのピアノ三重奏曲

この曲は、室内楽作品としては、もっとも最後に書かれていて、1945年頃の円熟期のもの。友人のピアニスト、ハリー・イサックスに捧げられている。
バックスが、王道スタイルのピアノ三重奏をなかなか作らなかったのは、ドヴォルザークの「ドゥムキー」のような名作を書けないと思っていたようだ。
しかし、ここに聴くバックスのトリオは、バックスらしいムードがばっちりあふれていて、立派に存在を誇れる作品だと思う。
3楽章形式で、1楽章はスコッチ・スナップというリズムを多様したり、美しくも幻想的かつ詩情味豊かな緩除楽章を挟んで、妖精たちが踊るようなバックス独特の弾むような3楽章で完結する桂品であります。

ボロディン・トリオの芯のしっかりした響きはとてもいい。

バックスもディーリアスと同じように、ひっそりと楽しむ類の音楽で、あんまり有名になってほしくない。
だめな人にはダメな音楽で、晦渋さもあるものだから、人を寄せ付けないところもあるのだ。それはそれでいいのかもしれない。
 ちなみに、カップリングされたブリッジの作品は、さらにミステリアスな雰囲気の音楽。

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2009年6月26日 (金)

「パストラル」 エマ・ジョンソン 英国クラリネット作品集

Ajisai_1 いまや咲き誇る「あじさい」たち。

紫陽花」という漢字もほんと趣きがありますな。

よく言われるように日本は火山灰を含んだ地質で酸性だから青い花が多く、土壌改良をしてアルカリにすると赤系の色になるという。

そうでもないという説もあるが、梅雨の季節にしっかりと咲いてくれる紫陽花だから、日本の風土にしっかり根ざした説であってこそ、まさに趣きがあるというもの。
そぼ降る雨の日に、濡れたブルー系の「あじさい」を眺めつつ嘆息する、そんな情感がとてもいい。

Emma_johnson_pastoral 今日は、私の愛聴盤のひとつ、英国のクラリネット奏者、「エマ・ジョンソン」の英国作品集。

若いころ、そうまるで少女のような彼女が本格デビューしたのが84年。
あれからもう25年も経過し、彼女は大人の女性としてコクのあるクラリネットの音色を奏でるようになった。
DGやナクソスに最近の録音があるようだが、まだ聴く機会をもっていない。

このCDは、94年の録音で、つやつやとした音色に、しっとりとした木質感漂う、素敵なクラリネットで、英国音楽特有の憂いと抒情を難なく表出している1枚なのだ。

 アイアランド    「幻想ソナタ」
 RV・ウィリアムズ イギリス民謡による6つの練習曲
 バックス      クラリネット・ソナタ
 RV・ウィリアムズ 3つのヴォカリーズ
 ブリス        「パストラル」
 スタンフォード   クラリネット・ソナタ
 ブリス        2つの童謡

    クラリネット:エマ・ジョンソン
    ピアノ   :マルコム・マルティニュー
    ソプラノ  :ジュディス・ハワーズ

このCDの解説で、エマ自身が語っていること。
それは、これらの英国作曲家たちが、2つの世界大戦と切ってもきれない関係にあること、そして肉親や親しい人を亡くしたことに大きな痛手を受けたこと。
一番古い人が、スタンフォード(1852~1924)、次いでヴォーン・ウィリアムズ(1872~1958)、アイアランド(1879~1962)、ブリス(1891~1975)、バックス(1883~1953)。こんな生没年、ふたつの大戦がしっかりとその活躍期に収まっているのがわかる。
ひとり、スタンフォードは古く、エルガー以前、パリーと並ぶ英国作曲家でシンフォニストなのだが作風も含めドイツロマン派の流れを踏襲している。

アイアランドの幻想ソナタは、1943年の作品。
切れ目なく続く15分ほどの作品ながら4つのセクションに曲想は分かれている。
アイアランドは、好きな作曲家で、抒情派でメロディアスな作風にケルト風のミステリアスなムードも併せ持っている人。このクラリネットのソナタもまさにそんな雰囲気に満たされていて、静かな第1部から、ジワジワとクラリネットが亡郷にも似た歌を歌い込めてゆくさまがとても美しく、私を陶然とさせる。最後のノリのいいリズムは、彼の素敵なピアノ協奏曲を思わせる素晴らしいもの。

RVWの英国民謡の練習曲は、RVWが各地を巡って集めた民謡をまさにモティーフとした6つの作品。1927年の作品で、それこそ歌謡性にあふれた懐かしい民謡ならではの世界が6曲つぎつぎに歌われる。
クラリネットの持つ憂愁と親しみやすい音色が、いいようもなく郷愁を誘う。
そして、RVWは30年後、死の前年、これらの中から3曲を選んでヴォカリーズとして編みなおした。
ソプラノのヴォカリーズを伴う雰囲気豊かな作品となり、そう、交響曲第3番「田園」のいかにも英国の緑の丘を思わせるような、あまりにすてきなクラリネットを伴う声楽作品。

これまた、私のフェイバリット作曲家、アーノルド・バックスのソナタは、1934年の作品。二つの楽章からなりそれこそ、こちらも「幻想ソナタ」と言ってもいいくらいの即興性とほの暗い幻想味にあふれている。バックスも生粋のロンドンっ子でありながら、ケルトに魅せられた人だけにそのフェアリーなムードはなかなかのもの。

ブリスのパストラルは1916年、戦下のフランスで書かれた平和を希求するほのぼのしたムードの音楽。ブリスはロンドンっ子ながら、やはりケルテックなムードも持っていて、ミステリアスかつ現代的なムードを併せ持った、とても素晴らしい作曲家なんだけれど、当時はなかなか評価されず、映画音楽などで活躍せざるを得なかった人。
戦争にまつわる音楽としては、大曲の「朝の英雄たち」(モーニング・ヒーロー)などは感動の一作。「色彩交響曲」ばかりでないブリス!
の作品は21年のもので、フランス時代の子供たちのイメージがあるあらしい。

スタンフォードのソナタは、これはもう、ブラームス。
ブラームスが海を渡って英国へ行き、ロンドンも飛び越えて、内地へ向かい、英国を極めてしまったような音楽。スタンフォードの交響曲と同じくする雰囲気だけど、妙に寂しげで儚いムード。ウィスキーでも飲みながら聴きと、その苦味と甘さがぴったりと寄り添ってくる、そんな音楽なんだ。

Portraitgeo986pg2p9_2   エマ・ジョンソンのふくよかで、歌声のような、美しい詩情あふえるクラリネットに、だれも気持ちを解放されてしまうことだろう!
笑顔もかわいいエマでありました。

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2009年1月22日 (木)

バックス 2台のピアノのためのソナタ ブラウン&タニェール

13 冬の空。
月も浮かんでます。

私の住む関東の太平洋側は、冬はずっと晴天が続く。
この晴れと乾燥が当たり前になってしまうから、雨がとても新鮮だったりする。

毎日、曇天だったり雪が降ったりする地域の方々には申し訳ないくらいの青空。
駅に降り立ったりしたとき、空を眺めて、その青さに感激したりする。
そんな気持ちのゆとりも大事だなぁ。

Bax_piano_duos 生粋のロンドンっ子でありながら、ケルトを愛し、アイルランドや北部イングランドをこよなく好んだアーノルド・バックス(1883~1953)。
英国音楽でも、その独特のファンタジーに富んだ作風は、一聴、とらえどころがないけれど、何度も繰り返し聴き、いったん妖精が飛び交うような幻想ムードにはまってしまうと、もうバックス・ワールドから離れられなくなってしまう。

ディーリアスに始まった、私の英国音楽の旅は、バックスを知ることによって、ケルトに魅せられた他の作曲家たちもすぐさま視野に入ってきて、とても幅が広がった。
具体的な描写音楽ではないけれど、その音楽はほとんどが、四季の移り変わりや、アイルランドやスコットランド、北欧の大自然を元にして得た心象風景を元にしている。
ディーリアスを好きな方なら、きっと気にいっていただけるバックス・ワールド。

それと大事なことは、私にとってなくてはならないツールとして、アイリッシュやアイラ系のモルトウィスキーとの相性。
燻したピートを含有したウィスキーのシャープでほろ苦く、かつ甘みのある味。
それが、バックスの音楽にぴったりなんだ。

シンフォニストとしてのバックスを聴くのもいいが、ピアノの名手であったバックス。
ソロ作品に加え、学生時代からピアノデュオも組んだりして、オペラの伴奏や編曲などをかなり行っていたという。
 そして、作曲家として自立後は、ロバートソン&バートレット夫妻のピアノチームのためにいくつかの作品を残し、それらがまた、なかなかの桂曲なのである。

 1.2台のピアノのためのソナタ
 2.「Red Autumn」
  3.「ハルダンゲル」
 4.「毒を入れられた噴水」
 5.「聖アンソニーを誘った悪魔」
 6.「Moy Mell~アイリッシュ・トーン・ポエム~幸せな平野」

    ピアノ:ジェリー・ブラウン&セータ・タニェール


3楽章形式、22分あまりのソナタは、1929年の作品。
第3交響曲や、荒涼としたロマンあふれる「ウィンター・レジェンド」と同じころ。
後者は、ピアニストのハリエット・コーエンのために書かれた曲で、不倫ながらも二人の仲は公然の事項だったという。そんな時期だから、このソナタは何か春の息吹を感じさせる芳香に溢れているよう。
春の物憂いくらいの日の中、もやもやとした雰囲気と爆発的にはじける自然。
ケルト的な妖精ムードに綾どられた静的な様相も、夢想的でとてもいい雰囲気。
実に、いい曲である。

そのまま訳すと「赤い秋」。それよりも、red autumnの方が詩的だな。
オーケストレーションも施そうとしたらしく自然の機微を感じとった、極めて詩的な音楽。
これぞ、バックスなのかもしれない。
このそこはかとない、何を主張するでもない感覚的な音楽は、ディーリアスにも相通じるもので、聴き手はただ音楽に身を委ねて、ぼぅ~っと聴いていればいいと思う。
日本の枯淡の秋の紅葉と違って、鮮やかな赤が静物画のようにとどまっている雰囲気。

一番、耳に馴染みやすく楽しいのが「ハルダンゲル」。
ノルウェーの風光明媚な一地方の名前であると同時に、そのノルウェーの伝統楽器のヴァイオリンの一種。弾むリズムがとても楽しい。
そう、グリーグに思いを馳せて書いた作品なのである。舞曲のような一品。

次の3つの作品は、まるで表題付きの交響詩のよう。
しかし、あまり曲の云われやデータがない。
とても静かで神秘的な「毒入りの噴水」、画家マティスの描いた場面「聖アンソニーを誘惑する悪魔」は、スクリャービン的であるともされる。
この二つは、わたしにはちょっと、インスピレーション不足に思われたが。
 最後のMoy Mellは、かなりいい。
これは1916年頃、アイルランドの印象を取り込んだ初期の作品で、それが極めて素直に表れていて、明るくも美しい。そしてとても旋律的で、2台のピアノの使い分けが効果的で、このCDで初めて、あらピアノ2台なのね、と感じ入る曲であった。

以上、いずれも、オーケストレーションがなされれば、立派にバックスの交響詩として通用する、まさにバックスワールド大展開の素敵な音楽。
英国男女のペアによるこの演奏、とてもいいのではないでしょうかnote
そして、燃えるような紅葉のジャケット、とてもいいです。

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2008年4月30日 (水)

バックス 交響曲「春の炎」 ハンドリー指揮

Azeria 一気に初夏の陽気に。
ツツジもあわてて一斉に開き初め、甘い香りが漂っている。

普段にも増して、ぼぉーっとしてしまいそうな日々がこれから続く。
寒い時とか、酒を飲んでるときは、シャンとしているのだが、春から夏はどうもイカン。
苦手な季節。暑いのイカン。
ビール飲み過ぎちゃうし、お腹ぽっこりになっちゃうし、厚着でごまかせないし、頭が日に焼けちゃうし??

まあ、いずれにしても、年中飲んでいるのだな、これが。

Greenwood 酒と言えば、ワタシらが酒を飲みだした頃は、今のようなカクテルや酎ハイといった小洒落た飲物はなかった。かといってビールも高かったし、発泡酒なんてものもなかったから、いきなり日本酒か、ウイスキーだったんだ。
 ともかく飲んだ。でもウイスキーは、貧乏ながら一応選んで飲んでいて、たいていは「ホワイト」。
「レッド」は次の日、死ぬということを本能的に感じとっていた。「オールド」なんてめったに飲めなかったし、「リザーブ」なんぞ、拝むことすらできなかった。

ところが今はどーだ。
国産酒には見向きもせず、ジョニ黒・赤なんぞも、ありきたりの酒となって、量販店にごろごろ転がっている。

体のいらんところに肉も付き、嗜好も贅沢になってしまった・・・。
そんな、ワタクシのお気に入りのウイスキーは、アイリッシュモルト。
ブッシュミルズ、ボウモア、タラモアデュー、タリスカー、ジェムソン・・・、醸造元の街の名前で、いろいろな種類のボトルがあるが、あまりこだわらない。
ピートの燻した香りが味に染み込み、ヨード臭の強いものがとりわけ好きだ。
いわゆる、ヨードチンキですよ。
おねーちゃんもいない、ちゃらちゃらした雰囲気の一切ないバーのカウンターに腰掛けて、2~3杯ロックで飲む。

Bax_spring_fire_2 そんな時、きまって頭の中に流れる音楽が、アーノルド・バックス(1883~1953)の音楽。
ロンドンっ子ながら、アイルランドを生涯愛したバックスの音楽には、ケルトの香り、海の潮の香りがぷんぷんだ!

とらえどころがないところも、ニンフのようでもあり、夢の中の音楽のようでもある。
単なる自然の描写だけでなく、そこに感じるマジックやファンタジーが伴なっているものだから、ミステリアスな雰囲気がいつもある。

7曲ある交響曲は、いずれも番号だけの純粋交響曲だが、すべてが3つの楽章で、先にあげたようなムードに満ちているので、どの番号を聴いても、みんな同じに聴こえてしまう。
そこがバックスの面白いところで、何度も何度も聴いてゆくうちに、すっかりその虜となってしまう。

 今日の「春の炎」は、バックス初期の作品で、5つの表題を与えられた楽章からなっている。
Ⅰ「夜明け前の森にて」、Ⅱ「夜明けと日の出」、Ⅲ「一日」、Ⅳ「森の愛」、Ⅴ「manads」。
一気呵成にやってくる北国の春の様子が、幻想的かつダイナミックに描かれている。
ソフトで夢見るような森の国の夜明け、冬の眠りから醒めた大胆で陽気な森、あまりにも美しいロマンスのような情景、爆発的な妖精の踊り。
作曲後、第一次大戦の勃発や、その後も演奏の困難さなどで、演奏がなかなかされず、楽譜も消失したりした、なかなか恵まれない作品だったようだ。

ここでは、そんな経緯はともかく、ヴァーノン・ハンドリーロイヤル・フィルの詩情溢れる演奏で、とことんバックス・ワールドに浸ることができる。

一度ウイスキー片手に、バックスの音楽を楽しんでみてはいかが?
お酒がダメな方は、ヨードチンキ片手に弧高の海を思い浮かべながら、どうぞお聴きください。

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