カテゴリー「ハウェルズ」の記事

2014年10月 9日 (木)

ハウェルズ エレジー ヒコックス指揮

Hagi_higan

もう季節は巡って、過ぎてしまいましたが、彼岸の頃の野辺の様子。

初秋を、彩る、萩と彼岸花でした。

これらの草花に、似合うのが、夜の月や、秋の虫の音色。

月といえば、昨夜(8日)は、月食でした。

雲に覆われながらも、後半を見ることができました。

古来、月食は不吉なものとされますが、大昔の方々からしたら、月がみるみる欠けてしまう、しかも、赤く光るなんて、そりゃ、なにかよくない印と思えたことでしょうね。

それでも、なにごともなく、穏便に日々が過ぎることを祈るばかりです。

次の月食は、来年、2015年4月4日だそうです。
春の月ですよ。

Howells_strings

   ハゥエルズ  エレジー

       
       ~ヴィオラ、弦楽四重奏と弦楽オーケストラのための~

    サー・リチャード・ヒコックス指揮 シティ・オブ・ロンドン・シンフォニエッタ

                    (1992.10 @ロンドン 聖ユダ教会)


今日は、心静かに耳を傾け、ちょっと泣ける音楽を。

ハーバート・ハゥエルズ(1892~1953)は、わたくしの大好きな英国作曲家のひとりです。
シンフォニックな作品や、大規模な作品は、残してませんが、美しい管弦楽作品、声楽曲、器楽曲などに、心に沁みとおるような味わいあふれる音楽を書いた、英国抒情派のひとりです。

その時代を生きた芸術家と同じく、ふたつの大戦を経験し、多くの死にも接して、そして、その死への思いが、彼の音楽の根底に、ときに悲しく、ときに優しく刻まれてているのです。

さらに、40代にして、最愛の息子を今度は病気で亡くしてしまい、ハゥエルズの音楽は、さらにシリアスに、そして宗教的な祈りの要素も加えながら深みを増してゆきます。
傑作「楽園讃歌」は、その代表です。

そのハゥエルズも、若き日々は、英国の田園風景の機微にてらした、緩やかな音楽をしばしば書いておりました。

今日の「エレジー」も、その流れの中にありながらも、友の死を悼んだ作品でもあります。

1917年の作。
遡ること、1910年、ヴォーン・ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」を聴いて、大いに感銘を受けました。
そして、ロイヤル・カレッジ時代の、パーセル・ウァーレンという友が、第1次大戦で亡くなってしまう。
ヴィオラを専攻したその友のことを想って書かれたのが、この「エレジー」です。

10分くらいの作品ですが、全曲にわたって、ヴィオラが、まさに「哀歌」とよぶに相応しい、哀しくも、儚い楚々たるメロディーを奏でます。
そのムードは、さきに感銘を受けた。RVWのタリス幻想曲の古風な佇まいにも似て、静謐でありながら、悲しみをたたえた独特の雰囲気があります。

あまりに動きが少なく、静かに、静かに、音楽が過ぎゆくものですから、最初は何も感じることがなく終わってしまいますが、何度も繰り返し聴くことで、心の中に、哀しみと、癒しの気持ちが芽生えてくるのを感じます。

ハゥエルズの音楽を、多く残してくれた、亡き名匠、ヒコックスの指揮で。

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2013年7月 9日 (火)

ハウェルズ ピアノ協奏曲第2番 ストット&ハンドレー

Narita_park

成田山の一隅にあった花壇。

こんな風に、たくさんの花を密集させることも美しい。

でもその一輪一輪を個々に眺めると、もっと美しいのです。

全体は美しいが、個は全体に勝るのであります。

Hawells_pianoconcert2

  ハウェルズ ピアノ協奏曲第2番 ハ短調

     Pf:キャスリン・ストット

  ヴァーノン・ハンドレー指揮 ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック

                      (1992.3.31@リヴァプール)


英国音楽を愛するわたくし。
そんな中でも、ハウェルズはもっとも大切な作曲家のなかのひとり。

過去に何度も書いたハウェルズのプロフィール。

>「ハーバート・ハウェルズ(1892~1983)」は抒情派で、エルガーやRVWの流れをくむやや保守的存在。
この人が大好きで、ショップでは必ずチェックする作曲家。
かなり早熟型の人で田園情緒に溢れた名作を書いたが、40代半ばにして、最愛の息子マイケルが9歳にして早世してしまう(1935)。
天使のような顔を持ち、音楽とスポーツが大好きだったというマイケル。
家族でハウェルズの愛する故郷グロースターシャーで夏の休日を楽しんだ。
しかし、息子がポリオに冒されていたことが発覚しロンドンに帰らざるをえなくなった。
しかしマイケルは、その気遣いも空しく亡くなってしまう。

愛する息子の死により、ハウェルズの音楽は宗教的な深みを増し、息子を偲ぶかのような音楽を書き続けるようになる。
子を持つ、同じ世代の人間として、心が張り裂けそうになるくらいに同情できる!<

ハウェルズの音楽を聴き、ブログに残そうとするたびに、こんな風にいつも書いています。

彼の音楽をいくつも聴いてきて、想うことは、こうした陰りをおびた透明感ある哀感のサウンドと、モダンなキレのいい現代風な作風との同居ぐあい。
同世代のブリスや、ブリッジのような切れ味のよさと、バックスやバントック、アイアランドのようなケルテックなミステリアスな雰囲気、そこに、親しいものを失ったことによる神への問いかけと帰依。
初期のものは、明快でこだわりない英国自然讃歌を謳歌しているが、息子を失ったことを契機にその作風をシリアスなものに変換していった。

こんな風に書いておきながら、今日ご紹介するピアノ協奏曲第2番は、息子マイケルが生まれる頃の、自身も生き生きと活動していた時期の作品であります。
しかしながら、ハウェルズは、自分の作風の立ち位置に悩んでいた時期ででもあり、先にあげたような、モダーンな気性と、ロマンテックな懐古調との中間にあるような音楽造りにあったのです。
これはこれで、わたくしには、とても魅力的で、シャープでダイナミックな出だしの第1楽章なのだけれども、音楽は鄙びた英国ムードにも欠けていなくて、第2楽章などは、あまりに抒情的で、英国を旅すれば誰しも感じる、緑の丘となだらかな稜線、そして緩やかに流れる河と小川の中間ぐらいの静かな流れ。
そんな風物を思い起こさせるような、ムーディな音楽。
ふたつの楽章をミックスしたような、快活かつ、ジャジーでもある終楽章。

こうした音楽は、コンサートで聴くような曲でもないし、みんなで、あれこれ言いつつ聴くような曲でも絶対にありません。
多くの英国音楽がそうであるように、ひとり静かに、自分のお気に入りの環境で、誰にも邪魔されないようななかで、そっと聴く類いの音楽です。

2番の協奏曲だけれど、1番は知りません。
音源もわたしの知る限りないと思います。

シャンドスやハイペリオンレーベルの英国ものや、コルンゴルトなどでもお世話になってます、女流ピアニスト、ストットさん。
ほんと、タッチの美しいピアノです。

Stott_2

ストットさんの画像を見つけましたのでこちらに。

亡きハンドレーの指揮も素敵なもので、カップリングには、

わたしの溺愛する「ヴァイオリンとオーケストラのための3つの舞曲」も収録されております。

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2013年3月22日 (金)

ハウェルズ レクイエム フィンジ・シンガーズ

Hirayamayakushi_3

しだれ桜の太い幹の下から。

日曜の画像ですので、いまはきっと7分咲きくらいに。

毎年、ちゃんと開花する自然の営みの素晴らしさ。

私たちには、いろんなことが起きて、桜を愛でる気持ちも毎年違うものがあります。

Hirayamayakushi_4

寒かったこの冬は、親しかった親類が何人か他界しました。

もうそんなことに会いたくはないけれど、こればかりは天命もありますし、やむなしですが、いつか来るとわかっていても、やはり悲しいものです。

その面影は薄い記憶となっていっても、その声は永遠に耳に残るものです。

人間の耳からの認識による声の記憶は、とんでもなく確かなものだと思います。

肉親は当然ながら、テレビや映画で聴いた声も絶対に忘れることはありません。

不思議なものだと思います。

Howells_rekuiem

   ハウェルズ  レクイエム

      ポール・スパイサー指揮
  
           ザ・フィンジ・シンガーズ
            
              (1990.9.26,7 @ロンドン、聖オルヴァン教会)

ハーバート・ハウェルズ(1892~1983)は、80年代まで生きたグロースターシャー出身の英国作曲家。
寡作ではありましたが、いずれも心に染み入る美しく儚い音楽を残した。
英国音楽を愛好するわたくしにとって、ハウェルズは、最大級に大切な作曲家です。
その音楽のいくつかは、今際の際に、是非とも流して、聴かせて欲しいと思っております。
まだまだ、取り上げていない作品がたくさん。
音源のない作品もまだまだあります。

田園風の大らかなハウェルズの音楽が、求心的な音楽に激変したのが、最愛の息子の死。
1935年の出来事でした。
以来、ハウェルズの作風は、宗教性を増し、愛する息子を偲ぶかのような悲しみと愛情に満ちた深いものに変わりました。
38年の「楽園讃歌~Hymnus Paradisi」は、亡き息子への哀感と神への感謝と帰依にあふれた名作であります。

その姉妹作のような存在の無伴奏合唱のためのレクイエム。
「楽園讃歌」から、「Requiem aeternam」と、「I
heard a voice from heaven」を引用しておりまして、それらを曲の中枢と最後に持ってきて、6つの章からなる20分あまりの合唱レクイエムといたしました。
個人的な思いにすぎるとして、その演奏を躊躇したハウェルズ。
1950年にグロースターシャーの合唱フェスティバルにて、ボールトの勧めに応じて、ようやく「楽園讃歌」は演奏されましたが、レクイエムの方は、さらにその30年後になってようやく出版されました。

作者がそれほどまでに、深い思いを込めた作品。

それはもう、どこまでも透明で、無垢で、あまりにも美しい彼岸の作品なのです。

 1.サルヴァトール・ムンディ

 2.讃美歌23

 3.レクイエム

 4 讃美歌121

 5.レクイエム

 6.天よりの声を聴き

ラテンの伝統的な典礼文と、イギリス国教の讃美歌をもとにしております。

なんといっても、ふたつのレクイエムが素晴らしいのと、最後の、「I heard a voice from heaven」。

「彼らは労苦を解かれて、安らぎを得る。その行いが報われるからである・・・・」その結びの言葉はヨハネによる福音書のものです。

宗教的な観念を無視しても、この音楽の持つ独特の美しさは筆舌に尽くしがたいものです。
人間の声の持つ美しさを誰しも感じていただけると思います。

フィンジ・シンガーズに、4人のソロが少しだけ絡み合います。
ここでは、いまが旬のスーザン・グリットンがステキすぎました。

S_alban_1_

この演奏が行われた録音会場。

あまりに響きがきれいで清冽なものですから調べてみました。

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2012年2月 3日 (金)

ハウェルズ ヴァイオリンとオーケストラのための舞曲 ヒコックス指揮

Sapporo_2

今日は季節外れ、夏の終わりの英国風庭園の画像を。

昨年の晩夏の札幌の公園にて。

英国音楽の心象風景のひとつは、このような緑あふれる水辺の庭園。

少しワイルドなところが決め手だし、流れるような柳も。

Howells

愛する英国音楽の作曲家のなかでも、最愛のひとり、ハーバート・ハウェルズ(1892~1983)。

わたしが、そのハウェルズを好きになったきっかけの曲を。

本ブログ再度の登場となりますが、久しぶりに聴いてみて、感動して涙が出てしまった。

繊細で抒情的な作風のハウェルズ。

ハウェルズのことに関しては、わたくしの記事のハウェルズのタグをクリックしてご覧ください。
手に入る全作品目指してます。

熱心なイギリス教会の信者であり、オルガン奏者でもあったハウェルズ。

43歳にして、最愛の息子を亡くしてしまい、心に大きな痛手を負い、それを契機に、痛切ながらも極めて美しい声楽作品をいくつも残したハウェルズ。

そのエモーショナルな出来事以前も、基本は抒情派として、心やさしい美しくも情緒あふれる音楽を書いていた。

そんななかの一曲、「ヴァイオリンとオーケストラのための3つの舞曲」。

1915年、第一次大戦のさなかに書かれたとは思えない、快活かつ美しい音楽。
しかも、23歳の青年時代の作品。
ロイヤル・カレッジ時代に、後輩のヴァイオリン専攻ウィットカーという人物のために書かれたもので、その初演以来、すっかり埋れていたものを、1989年にウィーン生まれの英国ヴァイオリニスト、エーリヒ・グリューエンベルクによってBBC放送で蘇演された。
グリューエンブルグは、LSOやRPOのコンマスを勤めていたので、シェラザードなどのソロとしてその名前がいくつかクレジットされてます。

3つの舞曲のうち、1曲目と3曲目は、いかにも英国カントリーを思わせる、のどかでかつ屈託のない明るい野辺で踊るかのような音楽。

そして第2曲のレント楽章が、初めて聴いて以来、わたしの心を捉え、ハウェルズ好きにしてしまった絶美の音楽
3部15分の中の、ハイライトはこの真ん中の心優しい、癒し効果抜群の最高の場面。

この天国的な音楽をなんと表現できましょう。

それは同時に、田園風であり牧歌風でもあります。

ヴァイオリン独奏をともなうこの曲の美しさは、もしかしたら、V・ウィリアムズの「揚げひばり」以上かもしれません。

ハウェルズを知ってもう長いけれど、この曲を指標として、彼の英国抒情派としての立ち位置を認識したうえで聴く、後年の息子消失の悲しみの上に築かれた深い音楽を、同感と同情のうえで味わうことの素晴らしさは、フィンジにも似た悲しみの先にある優しさなのです。

       Vn:リディア・モルドコヴィチ

    リチャード・ヒコックス指揮 ロンドン交響楽団


ヒコックスの早すぎる死は、ハウェルズの録音を体系的に残しつつあった途上だけに、痛恨でありました。

この音源が、youtubeにもUPされているのを発見しましたので、皆さま是非お聴きください。
第2曲は、5分30秒後あたりからです。
これは、フランスの若い方が作成したみたいで、コメントはまだ少ないですが、みなさん絶賛してます。
誰の心にも、優しく響く音楽です。

悪夢のような日々が続くわたくし、ハウェルズ、ディーリアス、フィンジ、バックス、RVW、エルガー、バントック・・・、素晴らしき英国作曲家たちの音楽が、日々慰めてくれます。

 過去記事

「ヒコックス&ロンドンSO ハウェルズ オーケストラ作品集」

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2011年3月18日 (金)

ハウェルズ 「楽園讃歌」 ハント指揮

Tokyotower20110318_2

震災から1週間。
今日、3月18日の午後4時半くらいの東京タワーです。
きれいに晴れたけれど、冬を思わせる肌寒さ。
ゆえに、空がとても澄んできれいでして、薄雲もしっかり見えるところが、停電の影響下にある稼働半ばの首都の空を思わせます。

ともかく人が少ない。
朝のラッシュは本数が少ないから、混雑としては変わらないけれど、帰宅は分散し、明日からの連休もあって、早めの帰宅が多いみたい。

でも、この連休。
子供たちの春休みもからんで、脱出組が東京駅や羽田は混雑しそうだ。
お父さんを置いて、プチ疎開であります。
 仕事仲間が、どうしても中国に飛ぶ用事があるというのに、フライトは高いチケットがかろうじて残っているのみという。
財なした方々が大挙して帰国。
お隣韓国も同じ状況。

時節柄、よせばいいのに、わたしも誘われましたが断りました。
歌舞伎町へ飲みに行きましたそうな。
ところが、韓国系のお店は、ほとんどお休み。
脱出であります。
それほどまでに揺らいだ安全神話。
東北・関東はデンジャラスなのでありましょうか。


Tokyotower20110318_3

東京タワーの先っぽ。
曲がっちゃいました。
同期のわたくしもいち早く、いろいろと曲がってます・・・・。

大きな企業や組織の大系のなかには、それぞれの役回りがあって、そうした体系のもと、その冠たる企業ネームが、一体として保たれている。
全部とはいえませぬが、大企業に籍を置く方々に、組織上関係ないのは末端の現場。

大元の組織からは、直系の関係会社がまずあって、その下に、その関係会社の子会社、さらに、その子会社から委託された実務を請け負う会社。

その最後の会社=人が、現場を張る人々。

大企業中心の日本のシステムは、そうなっているものと思います。

東電とて同じこと。
連絡や意思のストレートな疎通が、もしかしたらそこなわれていたのでななかったのでしょうか。表面的にしか見てなくて、こんなこと書いて、事実でなければ申し訳ないと思います。
 
 しかし、この1週間、日本のシステムそのものが、どうみてもそうなってるとしか思えません。
表に出てくるのは、冠をかぶった方々。
死を決して、ロシアンルーレットのような立場に追い込まれているのが現場の方々。
会見に出てらっしゃる方々も、本心で必死に仕事をされていると思いますが、現場感覚はないと思う。

現場から組織のトップまでの曲折を、きっと日本は、今後、町や村の感覚でもって、この教訓をもとに解決・前進させてゆくことになり、また強くなっていくのか、と期待します。

Howells_hymnus_paradisi_hunnt_2

イギリスの作曲家、ハウェルズ(1892~1983)の、「楽園讃歌」。
第二次大戦を、その生涯にはさんだ人で、戦火もさることながら、1935年最愛の息子をポリオで43才にして亡くしてしまい、心の傷を得てしまった人である。

そんな辛い思いを神への思いへと昇華させ、1938年に完成させたのが「楽園讃歌」で、6部からなるレクイエムなのだ。
ところが、この作品は、自身の「秘なるドキュメント」として公開を拒むハウェルズによって封印され、1950年、RV・ウィリアムズの勧めでもって、ようやく初演された作品なのであす。

英語もときおり交えたラテン語の聖句によるレクイエム。

心に突き刺さるくらいに切実な音楽は、ハウェルズの音楽をずっと聴いてると、共通のものがある。
かなりシビアで真面目な感じだけれども、そこには抒情とモダンな和声とのせめぎ合いが感じられ、傷ついた人の心の襞をひたひたと、そして静やかに埋めてくれるような優しさがあるのでありました。

ハウェルズは、かの悲劇があってから、どちらかというと宗教の人というイメージが強いが、本日、かくなる日本の状況を踏まえて聴くと、悲劇を受け止め、その先の何かを求める短調のハーモニーの中ながら、強いメッセージを発信する作曲家と聴くことができた。

英国合唱音楽の司祭のようなハントとロイヤルフィル、そしてロンドン近郊の3つの合唱団のコーラスに独唱者。
つつましくも、すばらしく力強い演奏でした。

この作品がまったく大好きなわたくし。
ヒコックスの演奏が、だれがなんといおうと素晴らしすぎる。
この系統の音楽ジャンルのなかでも、トップクラスで好きなハウェルズの作品なのでした。

 「ヒコックスの楽園讃歌」

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2010年3月18日 (木)

ハウェルズ スターバト・マーテル ロジェストヴェンスキー指揮

Tsuruoka_church_maria
雪降りしきるマリア像。
山形県鶴岡市のカトリック教会。
奥は幼稚園ですよ。可愛い園児たちが、あのオジサン雪降ってるのに写真なんか撮ってる、って感じで見てましたよ。

「岸壁の母」の二葉百合子さんが引退を発表しましたね。
昭和47年、札幌オリンピックの年に大ヒット。私は中学生。
よく覚えてます。
あの頃はさっぱりわからなかった母親の気持ち、そして親の子を思う気持ちが、いまになっていやというほどわかるようになりました。
私の老母とほぼ同じ歳の二葉さん、元気なうちに幕を引きたいと語ってましたね。

マリア様の悲しみは、世の母親の悲しみとおんなじ。
いくつになっても母親は神様のように思える。

Howells_stabat_mater_rozhdestvensky
英国音楽を愛する「さまよえるクラヲタ人」。
その中にあって好きな作曲家のひとり、ハーバート・ハウェルズ(1892~1983)。
長命であり、つい最近まで存命した作曲家だが、英国抒情派とわたしは勝手に名付けているけど、ナイーブで旋律的、そして深淵なる宗教観に根差した音楽を書いた人。

以前の記事にも何度も書いているけど、40台にして9歳の最愛の息子を亡くしてしまう。
その直後に書かれた「楽園讃歌~Hymnus Paradisは、涙なくしては聴けない名曲で、私の最大級のフェイヴァリット曲なのだ。

そしてこの「スター
バト・マーテル」。
1959年頃から構想され、1965年に完成・初演された大作は、ハウェルズ最後の宗教的な合唱作品である。
英国音楽が好きになり、ハウェルズも好きになって、この10年くらい、ずっと聴いてきた曲。
息子の死からもう四半世紀が経っていたが、いまだにその思いを残存し、その悲しみを「スターバト・マーテル(悲しみの聖母)」という音楽スタイルに託した。
初演は、D・ウィルコックスの指揮。独唱はR・ティアーだった。

そう、テノール独唱と合唱、オーケストラによるユニークな編成。
7部からなる50分の大曲は、終始、深刻で悲しみと哀切に満ちていて、テノール独唱は常に痛切に歌いこんでくる。
全編にわたり短調が支配し、こんな悲しい音楽はないだろうと思われるが、そこは抒情派ハウェルズ、悲しいけれど、優しい。
悲しみの色調なのに、いつの間にか癒しの暖かな手にゆだねられ、心に一陣の風が吹いてゆくのを感じる。

息子イエスを失ったマリアの悲しみと、癒しの対象としての優しいマリア。
ハウェルズの音楽の本質的なものを、この音楽のスタイルに見出し、そして決して声高に叫ぶことのない楚々とした音楽に同化してゆく自分を感じる。

       T:ニール・アーチャー

    ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮
    
      ロンドン交響楽団/合唱団
                 (1994.4 @ロンドン)

以外なロジェストヴェンスキーのレパートリー。
BBC響の音楽監督時代、あらゆる英国音楽を指揮したロジェヴェンさん。
ディーリアスまで録音している。
ハウェルズではあと、ミサ・サブリネンシスも録音していて、われわれが従来もっているロジェヴェンさんの解放的なイメージとはまったく異なる、神妙で静謐な音楽造りを見せている。
ロンドン響と合唱団が自分たちの音楽として、指揮者の集中力に奉仕していて、この演奏は極めて密度が濃い。
アーチャーのテノールも、英国テノールの典型にして、知情意のバランスがよく適度なクール感がよい。

多くの方にお勧めできる曲ではありませんが、英国合唱音楽をお好きな方、フィンジ系の英国音楽をお好きな方などにはお薦め。

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2009年1月28日 (水)

ハウェルズ 「ヴァイオリン・ソナタ」 バリット

15 タンポポ咲いてました。

「ダンデライオン」といえば、松任谷由美。
そのサブタイトルは、「遅咲きのたんぽぽ」
でも、こちらは早咲きのたんぽぽ。
この花の生命力はすごいもんだ。
気がつくと1年中、どっかで咲いている。
私は、花びらがライオンのたてがみに似ているから、こんな英名が付いているのかと思っていたら、そのギザギザ葉っぱが、牙にたとえられたそうな。
ふぅ~ん、って感じだけど、ユーミンの歌は懐かしいですな。
ここで聴いてみてくださいまし。
かつていた会社の後輩の女性がなぜか、ユーミンを知っていて、電話で話したりしていて、その声や話しぶりをちょいと聴いたことがる。
一本、筋の通った凛々しさをその声に感じた記憶があります。
OLさまの心を鷲づかみにしたユーミンは、男のあたしでも憧れですねぇ。

Howells_vln_sonata ハウェルズ(1892~1983)は、私のフェイヴァリット英国作曲家。
つい最近まで、存命だったとは思えない保守的な作曲家だが、V・ウィリアムズやフィンジの流れをくむ抒情派で、かつエルガーにも心酔し、教会音楽にも特化した英国紳士である。

ちなみに、Howells、私のようにハウェルズとするか、ハウエルズとするか、はたまたハゥエルズと読むか。難しいものである。

先にこの人は、抒情派と書いたが、その音楽はほんと、どこまでも旋律的で、歌心に溢れたものである。だが、そのメロディは常に哀愁をおびていて、はかなげで、かつ寂しげ。
そう、フィンジとまさに同じ香りがする。
 二人に共通するのは、肉親の死が重くのしかかっていること。
父と兄弟、音楽の師を失ったフィンジ。
ハウェルズは、最愛の息子を失ってしまった。
同時に、父親の破産で、故郷を去らなくてはならなかったゆえに周囲に過敏になってしまった。
このふたつの大きな出来事が、ハウェルズを深淵な宗教作品に向かわせた。
楽園讃歌、スターバトマテル、ミサ、レクイエム、オルガン曲など。
それまでは、器楽曲やオーケストラ作品をたくさん書いていたのに。

今回の3曲あるヴァイオリン・ソナタや小品は、先にあげた事件前の作品である。
いずれも、のびやかで田園的な桂曲で、とても親しみある旋律が溢れている。
でも、やはりハウェルズの音楽は、どこか寂しげで、メロディアスな場面でも急に立ち止まってしまい、思索に耽ってしまう。
常に儚さと懐かしさが支配する、わたしにとって「ふるさと」のような音楽なのだ。

後年の、事件後の作品は、その悲劇の度合がきわめて強く、聴いていて心が張り裂けそうな局面がある。でもその根底には、前期作品における特徴がしっかりと受け次がれているから、どこか田園情緒に満ちた懐かしさがあるのである。

こんなハウェルズを、疲れ切った晩にひとり静かに聴くとき、いつ知れず、優しい気分に満たされ、人にも優しくありたいと思うようになる。
いい音楽であります。

 ヴァイオリン・ソナタ第1番(1917~19)
    〃       第2番(1917)
    〃       第3番(1923)
 「揺りかごの歌」
 3つの小品

    ヴァイオリン:ポール・バリット
    ピアノ     :カスリーン・エドヮルズ

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2008年11月25日 (火)

追悼 リチャード・ヒコックス ディーリアス レクイエム

Hickox 何たることでしょう!!
訃報を見たとき、私は思わず落涙してしまった。
リチャード・ヒコックスが、11月23日、滞在中のカーディフのホテルで、心臓発作を起こし亡くなってしまった。享年60歳の若さで・・・・。
ブライデン・トムソン、ヴァーノン・ハンドリーに続き、これで英国音楽演奏の巨星がまた一人去ってしまった。あまりのことに、茫然としてしまう。
今後、英国音楽を担う指揮者はいったいどうなるのか・・・・・・。
この知らせを知った夕刻から、私は抜けがらのようになってしまった。

ヒコックスは、シティ・オブ・ロンドン・シンフォニアを設立し、そのキャリアをスタートさせていて、彼が終生メインレーベルとしたシャンドスから、そのコンビの演奏はたくさん出ている。そして彼は、合唱指揮での神様的な存在でもあった。
ロンドン交響合唱団の指揮者を長くつとめ、同団をイギリス第一級に育てあげた。
プレヴィンやアバドの合唱作品のCDを見ると、ヒコックスの名前がクレジットされている。

A_mass_of_life そして忘れてならない功績は、大系的に録音した英国音楽の数々。
私には、ヒコックスの指揮で知って、その裾野を広げていった作曲家や作品がたくさんある。先にあげた物故した二人とあわせて、英国音楽好きにしてくれた大恩人なのだ!

ヒコックスを追悼して、ディーリアスレクイエムを聴こう。
このレクイエムは、異端のレクイエムである。
無神論者のディーリアスは、通常のレクイエムのラテン語の典礼文に曲を付けるはずもなく、テキストは、旧約聖書やシェイクスピアに、ニーチェである。
普通でないところが、ディーリアスたる由縁だが、このレクイエムは第一次世界大戦で散った若い芸術家たちに捧げられているところもまた、心優しいディーリアスたるところ。
 ハレルヤとアッラーが交錯する合唱でびっくりするが、対立する宗教の無意味さを表したものだろうか。肝心なのは、すべての存在を超えた汎神論的な存在というのが、ディーリアスの心の根底にあったもの。
最後は長い冬のあとに来る春を歌い、たゆまず廻りくる自然への讃美で、曲はとても美しい余韻を残しながら終わる。

宗教感とは遠く離れたディーリアスのレクイエム。
ヒコックスの死を音楽で悼むにはとても相応しい・・・・・。

ヒコックスの実演は唯一体験ができた。
過去の記事でも書いたことがあるが、忘れもしない1999年の5月のこと。
ヒコックスとプレヴィンがそれぞれ同じ演目をもって来演した。
オーチャードホールで、新日フィルを指揮して、エルガーの序奏とアレグロ、ディーリアスのブリッグの定期市、ブリテンの春の交響曲が演目。
快活で明快な指揮ぶりに、オケも合唱も独唱も、大いに反応して素晴らしい演奏会だった。CDでは、緻密さや繊細さも充分に兼ね備えているけれど、ヒコックスは思いのほかダイナミックな音楽作りをすることもわかった。
Howells_hymnus_paradisi あれから10年もせずに亡くなってしまうなんて。
ヒコックスの最愛のCDをふたつ。
まずは、ハウェルズの「楽園讃歌」。
あらゆる声楽作品のなかでも、私にとって大事な音楽。
悲しすぎるほどに美しい音楽。愛するものを悼む純粋な心を反映した音楽に涙は欠かせない・・・・・。

Alwyn_lyra_angelica あともう1枚は、アルウィンの「リラ・アンジェリカ」(天使の歌)。
この絶美の音楽は、ヒコックスの録音あってこそ広まったし、フィギアスケートでも日の目を見たものだ。
ハープと弦楽オーケストラによる協奏曲。
そのイメージ通りに、天女がエレガントに舞う様を見るような音楽。
本当に美しい音楽。言葉を尽くしても語りきれない美しさ。
そして今晩は、その美しさとはかなさに、涙を堪えることができそうにない。

私の英国音楽の師がまた一人、天に召されてしまった・・・・・・。

リチャード・ヒコックスさんの死を悼むとともに、謹んでご冥福をお祈りします。
悲しい~。

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2007年5月21日 (月)

ハウェルズ 「楽園賛歌」 ヒコックス指揮

Ninnomiya_sikenjyou2しろつめ草」、いわゆるクローバー。この時期、道ばたや野辺にさりげなく咲いていたり、公園などでは群れなして咲いていて、妙にきれいだ。

その儚さがいい。
子供達が、首飾りにしたり、リースを編んだりしている休日の風景。

Howells_hymnus_paradisi 英国作曲家「ハーバート・ハウェルズ(1892~1983)」は抒情派で、エルガーやRVWの流れをくむやや保守的存在。
この人が大好きで、ショップでは必ずチェックする作曲家。
かなり早熟型の人で田園情緒に溢れた名作を書いたが、40代半ばにして、最愛の息子マイケルが9歳にして早世してしまう。
天使のよう顔を持ち、音楽とスポーツが大好きだったというマイケル。
家族でハウェルズの愛する故郷グロースターシャーで夏の休日を楽しんだ。
しかし、息子がポリオに冒されていたことが発覚しロンドンに帰らざるをえなくなった。しかしマイケルは空しく亡くなってしまう。

愛する息子の死により、ハウェルズの音楽は宗教的な深みを増し、息子を偲ぶかのような音楽を書き続けるようになる。
子を持つ、同じ世代の人間として、心が張り裂けそうになるくらいに同情できる!

そんな気持ちを持ちながら、ハウェルズが息子の死後1938年に書いた「楽園賛歌~Hymnus Paradisi」を聴くと思わず涙が出てくる。
これは、45分あまりの、独唱と合唱による6章からなる、神への感謝と死を悼むレクイエムなのだ。
切実なオーケストラによる序奏からして胸に響くものがある。
英語による歌唱は、ときおりラテン語による聖歌もまじえながら、希望・慰め・怒り・法悦といった要素を絡めながら、やさしくも劇的に進められる。
終章では、ハレルヤと独唱が極めて印象的に美しく繰り返し、静かな感動的な集結を迎える。なんて素晴らしい音楽なのだろう。
癒しの音楽なんて薬にしたくもない、人間の心情に溢れた、切実なる真実の音楽がここにあると思う。

     S:ジョアン・ロジャース    T:アンソニー・ロルフ・ジョンソン
     Br:アラン・オウピ  
       リチャード・ヒコックス指揮 BBC交響楽団/合唱団

ヒコックスの指揮に、素晴らしい独唱陣・合唱、何もいうことありません。
このヒコックス盤のほか、ハント盤を聴いている。
ハンドレーやウィルコックスも聴いてみたい。

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2006年4月29日 (土)

ハウェルズ 管弦楽作品集

Howells_1_1_1 イングランド中央部グロースターシャー付近で生まれた「ハーバート・ハウェルズ」(1892~1983)を知る人は英国音楽ファン以外にはあまりいないかもしれない。活躍した年代としては、保守的な作風であるが、それもそのはず、先達の「エルガー」や「V・ウィリアムズ」を尊敬し続けかなりの影響を受けている。

管弦楽作品・室内楽・宗教曲・オルガン曲といったところに名作を築きあげけたが、最愛の息子を幼くして亡くし、このことが彼の音楽に大きな影響を落とし、陰りに満ちた深みを与えることとなった。

Howells2_1 今日の2枚は、管弦楽作品集の2枚で、「ヒコックスとロンドン響」によるもの。ハウェルズ入門としては最適で、私もここから入り、彼の音楽にはまっていった。話はそれるが、息子の死を悼んで書いた「楽園賛歌」などは目頭の熱くなるような名作だし、かのロジェストヴェンスキーが録音している「悲しみの聖母」やヴァイオリン・ソナタなど、挙げだしたらきりがない。

この2枚に収められた作品を並べてみる。
       1 「王の使者」
       2 「楽園の舞曲」
       3 「チェロとオーケストラのための幻想曲」
       4 「チェロとオーケストラのための挽歌」
       5 「田園狂詩曲」
       6 「行列」
       7 「B’s組曲」
       8 「ヴァイオリンとオーケストラのための組曲」
       9 「緑の道にて・・」

題名だけでも、詩的な雰囲気が想像されようが、5の田園狂詩曲は、V・ウィリアムズを思わせるような雰囲気で、故郷の丘を思い描いたような作品。対をなすチェロのふたつの作品は、協奏曲のような性格ながら、ここにも子供の死が影を落としている。
 私が特に好きなのは、8の3曲からなる組曲の2曲目の「レント」である。ヴァイオリンの楚々とした郷愁を誘う旋律には涙がでてしまう。心に染み込むような美しさである。

こうした英国作曲家に知り合えるのは、「シャンドス」レーベルの最大の功績だ。そして、トムソン、ハンドリー、ヒコックスといった指揮者達があってこそ。

これらのCDジャケットは、南アフリカからイングランドに渡った猫を愛する「Derold Page」なる人の作品。
Churchcatlopt
センスよい絵は、ハウェルズの音楽にぴったり。

    

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