カテゴリー「器楽曲」の記事

2015年8月 8日 (土)

19世紀アメリカ・ピアノ作品集 越山沙璃

Tokyotower_1

暮れどきの東京タワー。

この暑い時期の夕暮れは、淡くて、くっきりとした冬の夕焼けとも違って、とても美しいのです。

Sari_koshiyama

ゴットシャルク、マクダウェル、スーザ 19世紀アメリカ・ピアノ作品集

         ピアノ:越山 沙璃


  ゴットシャルク  「バンジョー」
             「プエルト・リコの思い出」

  スーザ       「ワシントン・ポスト」
             「海を越えた握手」

  マクダウェル    『2つの幻想的小品』
                「物語」、「魔女の踊り」

  ゴットシャルク  「アンダルシアの思い出」
             「バナナの木」

  マクダウェル    『忘れられたおとぎ話』
                 「王子の戸外での歌」、「仕立屋と熊」
                 「薔薇の園の美女」、「妖精の国」

  スーザ       「忠誠」
             「星条旗よ永遠なれ」

  マクダウェル    『森のスケッチ』
                 「野ばらに寄す」、「鬼火」、「昔ひそかに会った所で」
                 「秋に」、「インディアンの小屋から」、「睡蓮に寄す」
                 「リーマスおじさんの話から」、「荒れ果てた農園」
                 「草原の小川のほとり」、「日暮れの語らい」

  ゴットシャルク   「ユニオン~国民歌による演奏会用パラフレーズ」

                    (2015.6.15 @岸和田 むくの木ホール)


いつもお世話になってますEINSÄTZ RECORDSさんの、APPLAUDIRレーベル新録音第2弾、アメリカのピアノ音楽を聴きました。

第1弾は、金田仁美さんによるビゼーのピアノ作品集でした。
そして、今回は、19世紀のアメリカのピアノ音楽という、極めてユニークな1枚です。
これには、唸りましたね。
しかも、ピアノを弾いてるのが、関西を中心に活躍するピアニスト、そして、モデルでもある越山沙璃(こしやまさり)さん。

彼女の経歴を、CDからお借りして簡単にご紹介しますと、幼少期をロサンゼルスで過ごしたあと、15歳で、さらに渡米し、カリフォルニア州立大学音楽部にて学び、帰国後は、神戸山手女学院大学音楽部にて、さらなる研鑽を積み、演奏活動とモデル活動の両輪でがんばってます。
CDのジャケットも音楽とマッチングしたお洒落な1枚だし、リブレットには、モデルとしての彼女のお写真も、多数掲載されてますよ。

 さて、一般に、アメリカのクラシック音楽というと、ガーシュインに始まるジャズとの融合や、コーポランドのような土着音楽を取り入れたものなど、ヨーロッパにない、いわゆる「アメリカ音楽」を思い描きますね。
それ以降の、ユニークなアイヴズや、ロマンティシズムに傾いたバーバーやハンソン、そしてシリアス系のシューマンやピストン、バーンスタイン・・・・という系譜が思い浮かびます。
あとは、ミニマルとか、アフリカっぽいものなどが、後続するわけですが。

 しかし、これら20世紀以降に確立した、「アメリカ音楽」としてのカラーリングですが、その前、ヨーロッパそのものの音楽しかなかった18世紀とに、挟まれた19世紀に、脱ヨーロッパの「アメリカ音楽」の創世記に活躍した作曲家も多数いました。
 その時代の代表的な3人が、このCDに収録されている、ゴットシャルク(1829~1869)、スーザ(1854~1932)、マクダウェル(1860~1908)です。

ゴットシャルクは、ニューオーリンズ生まれ、ヨーロッパに渡り、名ピアニストとして名を馳せたあと、帰国後は、中南米から北米にかけて楽旅して、その風物に則した、ピアノ作品を主とした作品を残しました。
カリブの風を思わせる爽やかさや、快活さ、そして、ちょっとアンニュイな、ヨーロピアンな雰囲気、たとえばショパンの顔もちらほらするような、そんなユニークな作品たちでした。
南国風の交響曲や、オーケストラ作品もあるので、いずれ聴いてみたいです。
 この越山さんのCDでは、冒頭と中間と最後がゴットシャルクで締められてます。
その1曲目、「バンジョー」からして、いきなり耳と身体が惹き付けられちゃいました。
技巧的な作品だけれど、バンジョーという陽気な楽器をいかにも思わせる楽しさを感じ、ノリノリですよ。
越山さんの、技量も舌を巻きます。よくぞこんなに指が廻るもんだと♪
だんだんと、クレッシェンドして熱くなってゆく「プエルトリコの思い出」も楽しくも、物悲しいし、南国のショパン風の「アンダルシア」もいい感じです。
こんな多様なゴットシャルクの作風を、越山さんは鮮明に弾きだしてました。
 ちなみに、ゴットシャルクさんは、齢40にて早世してます。

スーザは、いうまでもなく、「マーチ王」として、行進曲ばっかりのイメージが強烈です。
もちろん、「星条旗・・・」は、アメリカの第二国家のような存在になってますが、それらを、作曲者自身の編曲でピアノ作品として、ここに聴くのも、面白いものでした。
元気一杯すぎる、吹奏楽やオケバージョンと違って、弾むリズムが、心地よいスタッカートで引き立ち、気分よろしく、越山さんのはぎれのいい演奏が、実にオツなものなんです。
 スーザは、ワシントン生まれ、ヨーロッパ人の血を持ちながら、アメリカに完全特化した人ですが、行進曲以外にも、オペラレッタも多数あるものの、その音源はまったくありません。。

マクダウェルは、かつて、2曲あるピアノ協奏曲をこちらでとりあげました(→)
 

ニューヨーク生まれで、アイルランドとスコットランドにルーツを持ち、フランスとドイツに学び、このCDの3人のなかでは、一番、ヨーロピアンな雰囲気を持つ人です。
ラフやリストに接し、ヨーロッパ本流の流儀を身に付けたマクダウェルは、帰国後、母国の民謡の採取や研究に勤しみました。
 その結実が、このCDにたくさん収録されている小品たちです。
個々にコメントをすることはできませんが、それらのタイトルを読んだだけで、その作品の持つ、詩的で、ロマンティックな雰囲気を読みとっていただけると思います。
 陽気なスーザのあとに、こちらのマクダウェルを聴くと、そのしっとりとした温和で柔らかな世界に心が和みます。
一転、越山さんのピアノも、女性的で、優しいタッチも美しいです。
親しみにあふれた「忘れられたおとぎ話」、草原や、野辺、河原など、ナチュラルな風景をも心に浮かんでくるような「森のスケッチ」。
 いずれも、ステキで愛らしい作品ばかりで、ピアノを聴く喜びも感じさせてくれる越山さんの演奏です。
 これらの曲を聴いていて、グリーグの抒情組曲や、小品集を思い起こしましたし、イギリスの作曲家、アイアランドのピアノ作品にも相通じる優しい世界を感じました。

このマクダウェルさんも、早世で、馬車にはねられてしまったことが要因で、48歳で亡くなってしまいます。
前にも書きましたが、この方が、もう少し活躍できたら、ハリウッドが迎えたコルンゴルトらの亡命作曲家たちが造り上げた、保守的な後期ロマン派の系統ともつながった可能性があったかもしれません・・・・。

 CD最後におさめられたのが、ラストを飾るゴットシャルクの大曲ですが、アメリカ国歌も扱われ、愛国の志しと、静かな情熱、そして華麗さとが相混ざった桂曲でありました。
1枚のCDで、一夜のコンサートを楽しんだような気分になる、そんな一貫した流れも感じさせるプログラムの妙と、越山さんのアメリカ音楽にかける思いを感じさせる演奏にございます。

まだまだ若い、越山沙璃さん、これらの曲をますます極めて、これからもアメリカ音楽の楽しさをどんどん発信して欲しいと思いましたし、シューマンやショパン、グリーグも聴いてみたいものです。

今年、6月の出来たてホヤホヤの演奏を楽しませていただきました。
雰囲気あふれる録音と、CDの装丁も素敵なものでした。
大阪発のEINSÄTZ RECORDSさんのAPPLAUDIRレーベル、今後の展開が楽しみです。

是非、聴いてみてください

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2014年11月30日 (日)

バッハ ゴールドベルク変奏曲 シュタットフェルト

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神宮外苑のいちょう並木。

連日晴れていたのに、土曜の午前は、よりによって厚い雲に覆われる曇天でした。

それでも、地面に降り積もった黄色い葉と、曇り空でも、上からは黄色い光が舞い降りてきて、目にも優しく、歩道の散策も楽しいものでしたね。

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  バッハ   ゴールドベルク変奏曲

     Pf:マルティン・シュタットフェルト

             (2003.10 @カイザースラウテルン)


最近、よく眠れない。

夢ばかり見て、寝た気がしないうえ、朝、やたらと早く起きてしまう。

酒を飲んだ晩も、飲まない晩も、みんなおんなじ。

だから、電車に乗って座ったら即寝。
昼食べたら、パソコンのまえで、うつらうつら。
いかん悪循環。

そんないまの自分に、ぴったしの音楽が、なんといっても「ゴールドベルク」。

ただ、ワタクシは、この曲の作曲を依頼したカイザーリンク伯爵のように不眠ではありませんよ。
ちゃんと寝てるけど、目ざめが早すぎなだけ。

この曲、もう何度か取り上げてるし、いつもその内容は、同じようなことを書いてます。

あらためて、バッハのこの作品の緻密さと、全体が網の目のように、互いに結びつけあっているという完璧な統一感、それらを実によく解らせてくれる演奏で。

10年前の録音ですし、もう、多くの方がお聴きかもしれません。
わたくしは、ビジュアル的にも、売り出し方が気にいらず、どこぞの若造・・・・的な、偏向反応で、遠ざけておりましたが、彼のCDをいくつか入手したのは今年に入ってのことでした。

その彼の名は、マルティン・シュタットフェルト。

1980年、ドイツ、ゴブレンツの生まれ。
録音時23歳、現在は34歳の若手。

97年、ルービンシュタイン・ピアノコンクール優勝
01年、ブゾーニ国際ピアノコンクール入賞
02年、バッハ・コンクール優勝
そして、03年の、この録音。

若さに似合わぬほどの巧みな語り口と、全体を見通した考え抜かれた表現力。
でも、一方で感じさせる、奔放なまでの若さの爆発という眩さ。
才気走ったところを感じさせずに、強い説得力を鮮やかな手口でもって披歴。

テンポや、表情は、ときに動きますが、それが、グールドのような感性的、突発的なものでなく、知的に考え抜かれたものと感じます。

最初と最後におかれたアリアが、それぞれに、異なる味付けでもって、嫌味なく滔々と奏されます。
楚々と展開するカノンのあと、変奏の中央に位置する16番目の序曲をきっぱりと弾いたあとの後半。
この前半と、後半の鮮やかな対比は、バッハの意図を見事に表出しているかと思います。

わたくしには、ひとつひとつの変奏を個々に楽しめる個性的な演奏だし、全体を見渡して作品の緻密さに感じ入ることもできる、いわばマルチな演奏でもありました。

今のところ、ドイツ系の音楽ばかりのシュタットフェルト氏ですが、ショパンやフランスものなんかどうでしょう。

これからも注目の若手ですね。

 過去記事

「マレイ・ペライア盤」

「ピーター・ゼルキン盤」

「レオンハルト盤」

「リヒター盤」

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2014年11月17日 (月)

ロマンティックチェロ 迫本章子チェロリサイタル2014

Myougadani

色づく秋も、もうじきおしまい。

こんな彫像がある公園を抜けて、去りゆく秋に相応しいチェロの調べを聴いてまいりました。

Sakomoto

 神奈川フィルのチェロ奏者であります、迫本章子さんの、今回で11回目となります、ロマンティック・チェロと題されたコンサートです。

茗荷谷の駅を降りて、さきの写真のとおりの場所を抜けて、閑静な場所にある親密感あふれる素敵なホールへは、これで3度目。

響きもよくて、奥の中庭に四季おりおりの光景を臨めます。

  リスト                 忘れられたロマンス

   〃                   ニンネヴェルスの部屋

  ショパン                ノクターン ハ短調 op48-1 (ピアノ)

  メンデルスゾーン     無言歌 op109

  シューマン         幻想小曲集 op73

  -----------------

  パラディス         シシリアーノ

  サン=サーンス      アレグロ・アパッショナート

  ルービンシュタイン  ヘ調のメロディ

  ラフマニノフ       ヴォカリーズ

  ショパン         序奏と華麗なるポロネーズ

    〃           子犬のワルツ(ピアノ)~アンコール

  サティ           ジュ・トゥ・ヴ       ~アンコール

          チェロ:迫本 章子

          ピアノ:西畑 久美子

                (2014.11.16 @ラリール)


今回のプログラムのテーマは、作曲家であり、ピアニストであった人たちの作品。

おぉ、なるほどです。

しかも、チェロ作品なのですから、珍しさも手伝って、興味深々

いつも静かに、そして、おおらかに、神奈川フィルのチェロセクションで弾いていらっしゃる迫本さん。
ソロでは、そうした面とともに、もっと強い音と、思わぬ大胆さも弾き出してまして、前回も感じたバリバリ系。
ですが、今回は、女性ならではのしっとり感も随所に感じました。

曲ごとに、丁寧な解説をいただきました。

 珍しいリスト作品。いずれも、歌曲から、自身で編み出した作品ですが、やはりピアノが、まともにリスト。
超絶じゃなくて、抒情の人、リストの方です。
そんな素敵なピアノにのって、チェロはロマンティックなフレーズが満載。
ワーグナーの義親だったリストが、夢見ごこちに、ローエングリンを指揮してるような、そんな光景を思ったのですよ。
リストは、リスト、そんな感じ。
 迫本さん、最初だから、ちょっと緊張してたかな。

ついで、長くペアを組んでらっしゃる西畑さんのソロで、ショパン。

これは、深かった。
そして、心動かされました。
音楽の容を借りて、表出する、自身の心情の大いなる吐露。
これを聴いて、涙する方も何人もいらっしゃいました。
わたくしも、だめでした・・・。
入魂の演奏。

迫本さんと、西畑さんの、暖かな結びつきも、ここに感じて、涙腺やぶけちゃいましたよ。

 さて、音楽は、一転ムードを替えて、明るいメンデルスゾーンで、歌心を満喫。
そして、たしかに、シューマン。
シューマンのロマンティシズムと、メンデルスゾーンやリストとも違った歌を聴きとり、楽しめました。
 緊張からも解放され、このあたりから、聴き手も、演奏者もリラックスムードでした。

お外で、空気を吸って、さて、後半。

パラディスのシシリアーノ、知らない人かと思ったら、帰宅してCDみたら、迫本さんのソロCDに収録されてました。
失礼をばいたしました。
モーツァルト時代の、盲目の女流音楽家とのお話でしたが、シンプルで、優しいメロディが麗しかったです。
でも、作曲の真偽も、いまでは不確かともいわれているそうで・・・

快活さと、奔放さを併せ持つサン=サーンス作品は、もっと爆発してもよかったかもしれませんが、フランスの作曲家を意識させる展開もあり、おもしろかったです。

そして、お話を聴いて、いろんなルービンシュテインの名前が、ぐるぐる頭をこだましましたが、その音楽を聴いて、懐かしさを覚えたのは、わたくしばかりではないでしょう。
ノスタルジー誘う、優しいメロディを、迫本さんと、西畑さんは、実に美しく演奏してくれました。
そして、これは、NHKFMの、音楽番組のテーマ曲でした。
いいなぁ~

そして、「ロマンティック・チェロ」の名が、まさに相応しい、ラフマニノフのヴォカリーズ。
ソプラノの冷凛たるアカペラで聴くのもクールでいいですが、こうして、むしろ、より人の声に近いチェロの調べで聴くのも、暖かくて、柔らかくていいものでした。
艶のある響きもいいですね。
まぎれもなく、彼女のチェロから、神奈川フィルの音色が流れだしてます。
オケの一員の方の演奏を聴いて、昨日聴いた、そのオケの音色を思うという、この贅沢な喜び。
 神奈川フィルの応援団として、とってもうれしかったです。
これまで、何人もの、ソロや室内演奏を聴いてきましたが、その点は、どなたも、まぎれもない共通の音色をもってらっしゃるように思います。
 ただ、女性は、より男前で、男性は、より繊細で・・・(怒られちゃうかな)

最後は、チェロもピアノも、まさにショパンを感じさせる曲。
大人しめのチェロパートを、世紀末チェリスト兼作曲のポッパーが補筆して、ゴージャスに仕上げたバージョンとのこと。
いはやは、華やかかつ、見応え、聴き応えがありましたね。
譜面台を横にどけて、迫本さんは、曲に夢中になって、素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
おふたりの、息のあった競演ぶりも、実に楽しかったです。

おっきな拍手が巻き起こりました!

おしゃれな、ふたつのアンコールも、とっても洒落ていて、巧みな2曲の選択ではなかってでしょうか。
サティの曲には、思わず、鼻歌が出そうに・・・・

欲を言えば、あのサティの曲を聴きながら、終演後、みなさまに振る舞われた白ワインを(ジュースとお茶も)嗜みたかったものです(笑)。

Lalyre

 今回も、いつもの神奈川フィル応援の仲間と、席を並べて、とても楽しく拝聴することができました、

おふたり、ありがとうございました。
それと、ご主人の巧みなサポートにも拍手を!

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2014年6月20日 (金)

ビゼー ピアノ作品集 金田仁美

Rose

とりどりのバラの花。

お花屋さんで、パチリ。

バラの花には、色によって、きめ細かく花ことばが据えられていて、へたに贈ると、えらい目に会うかもですよ。

ちなみに、この花束の色をそれぞれ調べてみたら・・・。

 赤  :情熱

 黒赤:永遠の愛

 ピンク:美しい少女、気品

 イエロー:友情

 
 薄オレンジ:さわやか


というようなことになりました。

よって、この花束は、彼女や奥さまに差し上げるのがよろしいかと

わたくしには、もう無縁のことにございますがね。

Bizet_hitomi_kanata

      ビゼー  ピアノ作品集

   1.夜想曲 ニ長調

   2.「カルメン」組曲

   3.「海洋画」

   4.演奏会用半音階的変奏曲

   5.3つの音楽的素描

      ~「トルコ風ロンド」「セレナード」「カプリッチョ」~

   6.「アルルの女」第1組曲

   7.「アルルの女」第2組曲

      ピアノ:金田 仁美

            (2014.4.24 @大阪、吹田メイシアター)


3夜続けてのビゼー。

そして、今回は、ビゼーのピアノ曲ですよ。

え?ってお思いの方もたくさんおいででしょう。

ビゼーのことを書いたものを、ちょっと調べれば必ず出てくる逸話に、リストを、そのピアノの超絶技巧と音の確かさで持って驚かせたオハナシ。

音楽教師を父に、ピアニストを母に、そんな家庭に生まれたビゼーは当然のことながら、愛する母と同じく、ピアノを弾き親しんで育ちました。
音楽学校では、ピアノとオルガンと作曲を学び、その作曲の師のひとり、ジャック・アレヴィの娘、ジュヌヴィエーヌを愛するようになり、結婚もすることとなります。

ちなみに、このアレヴィーは、オペラ作曲家でして、「ユダヤの女」のみが有名ですが、「さまよえるユダヤ人」という作品もあって、前から気になっているんです。

そんな師に恵まれたこともあり、さらに至宝のような存在のグノーの教えも受けたこともあって、ビゼーの作曲の主体はオペラ中心となりました。
未完成のものも含めて30作超。
 その合間合間に、残されたピアノ作品は、大作はありませんが、15作超。

それらのうちの4曲と、ビゼー自身の編曲による、「カルメン」と「アルルの女」が収められた1枚を聴きました。
 もちろん、4曲は、初に聴きます。
そして、それらが、とっても素敵な曲だったんです。

Hitomi_kanata


何度も、何度も繰り返し聴いてます。
深刻な要素は、まったくないから、気安く聴けますし、ビゼーのビゼーたる由縁、豊富なメロディに綾どられた旋律たちが、聴く耳にすんなりと、馴染むようにして入ってまいります。

こんなビゼーの世界を、まったく素晴らしく演奏しているのが、金田仁美(かねたひとみ)さんです。

解説書にある、彼女の略歴を。
「大阪生まれ、パリ・エコールノルマル音楽院ディプロム取得、吹田音楽コンクール1位、イル・ド・フランス国際ピアノコンクール第3位、ガブリエル・フォーレ国際ピアノコンクール1位」といった輝かしい経歴をお持ちのほか、名ピアニスト、ブルーノ・リグット氏にも師事されてます。

これで、おわかりのとおり、フランス系の音楽がお得意のようですね。

ビゼーもフランス音楽として捉えることができますが、いわゆるお洒落で、洗練されたおフランスイメージとは違って、もっと旋律的だし、劇的であります。
それは、ピアノ版の「カルメン」と「アルルの女」を聴けば、あたりまえですが、一目(耳)瞭然。

金田さんのピアノは、ビゼーの劇性をしっかりと捉え、曖昧さのない明快な演奏でもって、聴きなれた名曲ふたつを、まったく新鮮な感覚で味わわせてくれます。
 それぞれの管弦楽作品とオペラでもって、2日間、耳に馴染ませてきたビゼーです。
ですから、よけいに、このピアノ版「カルメン」と「アルルの女」は鮮烈でした。

「カルメン」の歌にあふれた間奏曲。
「アルルの女」で、わたくしの大好きなメヌエット(第1)とカリヨンが実にチャーミングでございましたね。
同じく「アルルの女」の間奏曲(第2)は、まさにオペラアリアのような歌心を感じさせる演奏に、わたくしは、これをバックに歌いたくなりましたね。

これらの名曲以上に、楽しめたのが、4曲のピアノ作品でした。

1858年、ビゼー20歳の作品である「3つの素描」。
ビゼーの個性的な味わいは、ここからすでに発揮されてまして、その異なる3つの様相を、金田さん、鮮やかに弾きわけてます。

さきに、記した師の娘、ジュヌヴィエーヌとの恋愛と苦心の結婚の時期にあたったという「夜想曲」。
1868年、30歳のビゼー。
ロマンティックなこの曲、実は一番気にいりました。
いちばん、おフランス系の曲かも。
流れるような曲調に、ビゼーらしい親しみやすいメロディが絡みあいます。
夜、眠る前に、聴いたりする、いわゆるナイトキャップ向きの曲としてキープです。
美しいタッチの仁美さんのピアノで映えます。

同じ年の「海洋画」は、海を行く舟、でもどこか寂しい曲調で、ひっかかるものがあります。
なんだろ、この感覚。
ビゼーは、ようやく結婚して、新生活をスタートさせたものの、その残された人生はあと6年ちょっとだったのですね。
最晩年の「カルメン」の根底に流れる、「宿命」というモティーフは、威勢のよさや、名旋律の影に隠れた、ビゼーの表わしたかったものだと思いますが、なにか、天才ゆえの、複雑な内面を垣間見るような音楽が、このいっけん、麗しい「海洋画」だと思うのですが、いかに。

同年の作品「半音階的変奏曲」は、さらにシリアスで本格的な作品です。
この曲も、完成度は高く、このCDの中で一番の作品に思いますし、かつてグレン・グールドも演奏したそうです。
多種変転しながら進む冒頭の深刻な旋律、そこには常に技巧を尽した奏法がつきまといますが、聴いていてそれが鼻につかないのが、ビゼーの音楽のよさと、キレのよい金田さんのピアノのよさ。
圧倒されるような曲に演奏でした。
コンサートで弾いても、この曲は受けるでしょうね。

ということで、金田仁美さんの、意欲あふれるビゼー作品集。
大いに堪能しました。

そして、このCDは、お馴染み、「EINSATZ RECORDS」企画の記念すべき初セッションレコーディングなのでありました。
もうだいぶになりますが、カウンターを挟んで、お酒を飲みながら、音楽を聴きまくり語りまくったマスターさまのプロデュース作品です。

Einsatz

懐かしい~、この扉の向こうには、いつも酒と音楽がありました。

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2014年6月 7日 (土)

ドビュッシー 「版画」 フランソワ

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雨です。

梅雨とはいえ、よく降ります。

こちらは、2年前に行った天草。

ちょうど今頃の季節で、仕事の日は晴天で、翌日フリーにした一日は、雨でした。

港の対岸がら見た、津崎教会。

偶然ですが、雨にピントがあったようで、遠景は滲んだようにして映りました。

今日聴く、音楽にもぴったりのような気がして、昔の写真をひっぱりだしてきました。

Debussy_francois

   ドビュッシー  「版画」

      ピアノ:サンソン・フランソワ

               (1968.7 )


ドビュッシーの数あるピアノ作品には、練習曲とほか数曲をのぞいて、いずれも、詩的で幻想的なタイトルのついた曲ばかり。

それらは、当然ながら写実的なものでなく、あくまで、曲の雰囲気に寄り添うような、少しばかり曖昧なタイトル表現ばかりといっていい。

初期のものは、まだまだフランス・ロマン主義的な、ざーます系のお洒落音楽に身をまとっていますが、世紀の変わり目あたりから、ドビュッシー特有の印象派としての響きの音楽へと変容していきました。

「版画」は、1903年の作品で、交響詩「海」に取り掛かった頃。

 「塔(パゴダ)」 「グラナダの夕べ」 「雨の庭」

この3つからなります。

エキゾテックな様相の「塔」は、パリ万博で聴いたジャワやシナの音楽にインスパイアされたとされ、ガムランの響きを聴きとることもできます。
ただ、あくまで、それは、ドビュッシーその人の印象の反映というにすぎず、塔そのものを描いたものでないことが、それまでの音楽の在り方と異なる点。

ハバネラ舞曲のリズムにのっとった「グラナダの夕べ」は、同じエキゾテックでも、スペインの下町の物憂い雰囲気。
後年の「イベリア」にも通じるものがありますね。

そして、「雨の庭」というタイトルは、予想に反して、アップテンポのちょっと元気のいい曲で、われわれ、日本人のしっとりと、雨に濡れた庭というイメージからすると、かなり違うような気がする。
フランスの古い童謡などがモティーフとされ、子供時代の自宅の庭に降りしきる雨を思いつつ書いたとされますから、少し浮き立つような子供心をも思わせるところが、元気よく聴こえるんでしょう。

雨のイメージは、お国によって、それぞれさまざまですな。

わたくしは、やはり、そぼ降る雨に、緑がしっとり濡れた、小さな和庭園を思いたいですね。
そして、そんな庭を、障子を少し開いて、見つめながら、ドビュッシーのピアノ曲をひねもす聴いてみたい。

最近の、どしゃどしゃ降る雨なんざ、情緒もへったくれもありゃしない。

サンソン・フランソワ。
このお名前を、鼻から息を抜くようにして、発声してみてください。
それだけで、この方のドビュッシーの演奏が、そのまま想像できますよ。

ステキ。

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2014年5月 8日 (木)

アイアランド 「聖なる少年」 D・ライト

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今日ももう1枚、吾妻山のツツジから。

日の当たる斜面に、ふんだんに咲くツツジですが、年々、だんだんと花の数が少なくなってきた気がします。

それでも、ごらんのとおり、青い空に、新緑の緑、そして、鮮やかな花の色合いが、美しすぎるくらいに、眩しいんです。

実際に、この場にいくと、ほんと、素敵なものですが、花の命の儚さにも、ちょっと哀しい気分にもなったりします。
桜は、ぱっと咲いて、ぱっと散ってしまうから、潔いけれど、ツツジの花は、色が枯れたように朽ちてきて、老いさらばえてしまうから・・・・・

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  アイアランド 前奏曲「The Holly Boy」~「聖なる少年」

       ピアノ:デスモンド・ライト

                 (1994.10 @ベルン)


ジョン・アイアランド(1879~1962)は、マンチェスター近郊のバウデン生まれの英国作曲家。

アイランドは、かねてより大好きで、このブログでも何度か取り上げてきましたが、そのメインとも呼ぶべき、ピアノ作品を取り上げるのは初めて。

ジャッキーと呼ばれて可愛がれた少年のアイランドは、8歳頃から、ピアノを母に学び、やがて、13歳にロンドンに出向き、ロイヤル・カレッジを受験し、14歳からそこで、ピアノとオルガンを学び、すぐさま作曲にも興味を示し、音楽造りも始める。

16歳で、弦楽四重奏曲を書いて、それが、大御所スタンフォードの目にとまり、ドイツの古典・ロマンの音楽を叩きこまれる。
それでも、彼の本来の嗜好は、印象主義的なものであったり、ケルト文化に根差した民族主義的なもへの傾倒が強いです。
 ですから、交響曲へは目もくれなかったのです。

英国作曲家の多くは、エルガーやRVW、ウォルトンを除くと、交響曲をあまり残しておりませんので、日本ではあまり脚光を浴びないのでしょうかね。

アイアランドのピアノ作品は、ほぼ、そのすべてが小品たちの集まりです。
若書きのものから、円熟期にいたるまで、万遍なく作曲してます。

そのほとんどが、シェイクスピアを始めとする文学や、自然の風光、街の情景、さりげない日常や人々の愛などをモティーフにした優しい柔和な音楽たちなんです。

抒情派アイアランドらしい、この数々のピアノ曲は、強烈な個性や音楽が強く語ることもない代わりに、あくまでも静かで、自然な語り口で、淡々とした佇まいです。
ときに、ドビュッシーやフォーレ、場合によってはキース・ジャレットみたいにも聴こえたりもします。

前奏曲は4篇からなっていて、

 1.「低い音」~The Undertone

 2.「妄想」~Obsession

 3.「聖なる少年」~The Holly Boy

 4.「春の炎」~Fire of Spring


もっとも有名な、「聖なる少年」は、1913年のクリスマスに書かれた、クリスマス・キャロルです。
みどり子誕生のその日を、しずかな感動を持って歌うパストラーレであります。
楚々とした美しさが、胸を打ちます。
この曲は、のちに、合唱曲と、室内バージョンにへと、作者自身により編曲されておりまして、本ブログでは、ヒコックス盤を取り上げております。

5年後に追加された3曲も、それぞれに素敵です。
印象派風の「低い音」は、たゆまぬ静かな繰り返しに、耳を澄ましてしまいます。
捉えどころのない、無窮の動きを感じる「妄想」、これもまたドビュッシー風。
やってきた明るい春にも、決して浮かれることなく、慎ましいアイアランドの描く「春の炎」。

どうでしょうか、それ以外にも、素敵な曲がたくさん。

わたしは、たまに仕事しながらでも、これらの曲を静かに流したりしてますよ。

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2014年1月 9日 (木)

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」 ルービンシュタイン

Wako

すらりとした駿馬。

銀座の和光のショーウィンドウ。

午の年、鮮やかに快走したいものでありますが、気が付くと、引くもの、負うものたくさんですよ(笑)。

まぁ、そんな「悲愴」感にとらわれず、2013年には、「告別」を送り、夜の「月光」の中でも、どんなときでも、「葬送」行進のようにならずに、緑鮮やかな「田園」の中をさっそうと走り抜ける「熱情」を持ちましょう。

ベートーヴェンの曲のタイトルって、どうしてこんなに、眉間にシワ寄せたような雰囲気のものが多いんでしょ。

Rubinstein_beetohoven


 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調「悲愴」

        ピアノ:アルトゥーロ・ルービンシュタイン

                       (1962.4 )


ベートーヴェンのピアノ・ソナタは、有名どころを中学生のときに、それ以外も広範に聴きだしたのは、高校から大学。
全曲盤を手に入れたのは、社会人1年目。

そんな感じで、ステップアップしていきました。

その後はマーラーの興隆にともない、ワーグナーから後期ロマン派の作品へと、嗜好が変わっていったものだから、あれだけ聴いたベートーヴェンのソナタからは、ちょっと遠ざかることとなってしまいました。

そんな日々の中に、かつて懐かしいソナタの数々を、たまに聴いたりすると、やたらと新鮮で、苦虫噛んだようなベートーヴェンの中にある、抒情や青春の息吹きを感じとったりして、あらためて、ほんとうに、いい曲なんだな、と痛感します。

「悲愴」ソナタは、1798年頃、ベートーヴェン27~8歳の時の初期に属する作品。

普段、曲にあまり命名しないベートーヴェンが、自らスコアに「パセティック大ソナタ」と書きいれた。
よほどに、悲劇的な側面を、タイトルにも入れて強調したかったのでしょうか。
いま聴くわれわれは、後のベートーヴェンのもっと深刻なる音楽を知っているので、ここでいう、ピアノソナタの「悲愴」の具合は、さほどでもなく聴くことができます。

交響曲第1番よりも、以前の作品とは思えないロマンの表出。
そこには、若さならではの情熱もあります。
楽章を3つに絞ったのも革新的だし、両端楽章が、厳しい短調に支配され、その間に抒情的な歌謡性を持つアダージョ・カンタービレの2楽章。

両端楽章の張り詰めたような、劇的で緊張感ある音楽に、胸を焦がした中学生時代。
2楽章のロマンに目覚めるのは、もっとあとのこと。

そして、いい歳こいた今、やはり2楽章の、あまりにも有名で、優しい抒情にあふれたメロディを聴くと、ほっとします。
今夜は、雪もちらつき、寒いです。
暖房の赤い色を、ぼんやり眺めながら聴く、この楽章。
とても癒され、懐かしい気持ちに満たされました。

ルービンシュタインのベートーヴェンは、そんなベートーヴェンの優しさを見事に引き出すとともに、男らしいきっぱり感も、感じさせる演奏です。
前にも書きましたが、「月光」はルービンシュタインのみずみずしい演奏が、中学生時代からの刷り込み。
「悲愴」や「熱情」は、もう少しあとから聴きましたが、少しばかりの華麗さも感じる、磨き抜かれた演奏に思いました。

名曲名演。

そして、わたしにとって、ベートーヴェンのピアノソナタ全集といえば、古めの人間ですからして、バックハウスということになります。

名曲シリーズは続く。

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2013年12月 3日 (火)

レハール ピアノ・ソナタ

Bay_quwater

横浜ベイクォーターのツリーです。

向こう側が、新田間川の入江と、ゼロックスやニッサン。

毎年、ここは、いい感じですよ。

Lehar_piano_sonata

  レハール ピアノ・ソナタ ヘ長調、ニ短調

     ピアノ:ヴォルフ・ハルデン


                  (1999 @シュトットガルト)

オペレッタ作曲家、フランツ・レハール(1870~1948)のピアノ作品です。

オーストリア治下のハンガリー生まれ、軍楽隊長だった父は、職業柄、帝国内を転々としつつ、息子フランツをヴァイオリンストにしたくて、その特訓をし、勉学はプラハの芸術学院にて行わせた。
 少年時代より、フランツは、作曲の才も持ちつつ、勉学中に、師であるドヴォルザークに自作のヴァイオリンのためのソナチネを自らのヴァイオリンで聴かせた。
ところが、これを聴いたドヴォルザークは、ヴァイオリンでなく、作曲の道を進むように指示。
フィビヒに学びつつも、頑固な親父はヴァイオリニストへの夢を押しつけ、そのためレハールは独学の作曲家とされました。
 そんな頃、すなわち17~18歳、1887年頃に作られた、ピアノソナタがこれらのものです。

ちなみに、レハールの他のピアノ作品には、25歳(1895年)のときの、ピアノとオーケストラのための交響詩「Guado」や、1909年の、ピアノ・ソロのための12のサロン音楽、などがあるようです。

レハールが、「メリー・ウィドウ」でウィーンで大ブレークするのは、そののち、35歳、1905年のことです。

ある分野の専門家みたいに思われてる作曲家にも、若書きには、いろんな作品があるものですね。

この2曲のソナタ、最初のヘ長調は、4つの楽章で22分。
コンパクトでスリムにまとめられた簡潔で、古典的な様相も感じる生真面目な音楽です。
シューベルトやシューマンを思わせる、古典とロマンの中間点的な、当時を思えば保守的なサウンド。
悪くないけど、決め手に欠ける。
でも、ちょっと背伸びして、ロマンティックな雰囲気を、青年ながらに出してみました的な緩徐楽章たる2楽章が妙に愛らしいです。
スケルツォは、なんとグリーグっぽいときました。

一方の短調のソナタは、全曲なんと40分。
こちらは、その堂々たる構えがブラームスを思わせます。
忍従感ある冒頭から、ただならぬ雰囲気を与えますが、そこは後年のあのメロディアスなレハール。すぐさま親しみやすい旋律が滔々で出てきます。
どうしても、誰それの亜流的な捉え方・聴き方しかできないのですが、ときおり、やはり、レハールならでは甘いフレーズがチラチラっと顔をだします。
ごくほんのちょっとですが、そんな瞬間を聴き分けるために、この長大なソナタを聴くのも悪くはないかもです・・・。
解説にも書いてあるのですが、長すぎて、構成感が崩壊しているとの指摘もあります。

「メリー・ウィドウ」か「金と銀」、「微笑みの国」「ジュディッタ」ぐらいしか主に聴くことができないレハールの、一面をこうして知ることも、「ヴィリアの歌」や「君こそわがすべて」などの名品を愛することに深みを与えてくれる思いがしました。

微笑ましい、レハールのピアノ作品でした。
ヴォルフ・ハルデンというピアニストの演奏です。

レハールのオペレッタ以外の作品。また聴いてみます。

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2013年10月13日 (日)

ロマンティックチェロ 迫本章子チェロリサイタル

Sakomoto

コンサート開始前の厳かな佇まい。

チェロとピアノ、神奈川フィルのチェロ奏者、迫本章子さんと、神奈川フィルの前副指揮者、伊藤翔さんとのコンサートに行ってきました。

Sakomotoitou

 ロマンティックチェロ Vol 10.

 ボッケリーニ    チェロ・ソナタ イ長調

 ベートーヴェン   チェロ・ソナタ第3番 イ長調

 フォーレ       「 シチリアーノ」

 オッフェンバック  「海辺で夢見る人」

 ブルッフ       「コル・ニドライ」

 ポッパー       「タランテラ」

  〃          「セレナーデ」 ~ アンコール

 サン=サーンス   「白鳥」     ~    〃

         チェロ: 迫本 章子

         ピアノ: 伊藤 翔

                     (2013.10.12 @ラリール 文京区)


気ごころのしれたどうしの演奏者と、ソロや室内楽に最適の響きのいいホール。
そこに集まったのも、迫本さんの親しい方々と、神奈川フィルを通じておなじみの人びと。
家族的な雰囲気が醸し出された素敵なコンサートでした。

秋に聴くチェロの調べ。
ということとで、会場の下調べをしたら、地下鉄丸ノ内線茗荷谷駅を降りて、筑波大や区の施設のある公園を抜けていく行程。
ところがこのとんでもない暑さ。
ひと汗かきましたが、気持ちいい緑を見ながら到着した親密感溢れるホールと、暑さをねぎらう迫本さんのお言葉と、冒頭の爽やかなボッケリーニの音楽に、すぐさま気分はほぐれ、暑さも忘れ解放されました。

そのあとの本格的な音楽としてのベートーヴェン。
チェロもピアノも、やはり本日随一、音楽の強さ・太さ・内包力の豊かさなどをヒシヒシと感じます。
聴きなじんだ名曲ですが、最前列でチェロの松脂が飛ぶぐらい、ピアノのキーへの指タッチがカチカチと聴こえるくらい、そんなリアルな臨場感も存分に楽しめるなんて、お家でCDをい聴くのと大違いでした。
生真面目だけど、ベートーヴェンの大らかな一面もよく感じさせてくれた、そんな迫本さんのソロ。
音楽の力というか意欲が強過ぎて、疲れてしまう中期のベートーヴェンなのですが、3楽章冒頭の短い静かな序奏では、ほっと一息。
このあたりの機微がとてもよかったです。
伊藤さんのピアノも、サポート力抜群、導く指揮者としての立場から、しっかり支える。
お二人の意外なほどの力強いベートーヴェンでした。

後半は、バラエティ豊かな演目。
編曲ものでなく、今回は、すべてがチェロオリジナルの曲を選びました、とのお話もいただきました。
フォーレの「シチリアーノ」もチェロオリジナルとは知らなかった。
逆に、フルートで聴きなれてしまった耳には、まさに目からウロコの新鮮さでしたね。

フランス風の柔らかなな響きは、次のオッフェンバックの未知曲、「海辺で夢見る人」に引き継がれました。
迫本さんの解説では、チェロ奏者だったオッフェンバック(私もチェロ協奏曲をこのブログで取り上げました)のこの曲は、楽譜はあるけど音源もなく情報もない、邦題もご自身でこのような感じということで訳した、とのことでした。
じつは、この日一番のお気に入りの曲と演奏。
確かに、地中海を思わせるような明るさと、柔らかな寄せて帰る波を思わせるピアノの背景にのって、さながらオペラのアリアのように好ましく歌いあげるチェロは、その邦題にぴったりのものでした。
わたし好みの素敵な曲をご紹介いただきました。
オペラのひとふしを感じさせるオッフェンバックの音楽、とても気にいりました。

そのあとに、ドイツへ飛んで、後期ロマンティックなブルッフ。
オーケストラ盤は聴いていたが、ピアノ伴奏版はあまり聴いたことがなかったけれど、甘さも感じる大らかな歌は、ピアノ伴奏の方が、チェロの良さが引き立つ気がします。
ユダヤの聖歌が、ことのほか暖かく、旋律の魅力を引きな出すような美しい演奏でした。
ピアノの中間部のアルペッジョも煌めくように美しかった。

チェロ作品をたくさん残したポッパーさん。
暗譜で、それこそ音楽に没頭したかのように弾いてらした迫本さん。
タランテラの無窮動的、リズミカルな音楽をしっかりモノにされていて、会場はついにその華やかなチェロの爆発に、雰囲気は最高潮となり、掛け声も飛んでました。
聴くひとの心を押し上げ、気分を高めてしまう舞曲ならではの効能もたっぷりの演奏でした。

アンコールは、ちょっと哀愁を帯びた同じポッパーのセレナーデと、美演だった白鳥。

これだけバラエティ豊かなプログラムをまとめるのは、ソロもピアノも大変だと実感しました。
指揮者とオケの関係と、ソリストと判奏者の関係。
その両方をあれこれ思いながら聴いたコンサート。
そして、聴いてる私は、神奈川フィルを愛する応援団。

神奈川フィルをキーにして、こうしてコアたる楽員さんたちの演奏にも親しむ。
器楽・室内楽も合わせて楽しめることとなり、音楽を受容する幅も広がります。

迫本さんの女性的でありながら、思わぬ情熱とバリバリの技巧。
サポートに徹しつつも、リードもおこたらず、細やかなピアノの伊藤翔クン。

終演後、飲み物がふるまわれ、迷わず、さわやかな白ワインを頂戴しました。

演奏されたお二人にご挨拶して、緑の公園を抜けて気分よく駅まで歩きました。

楽しかった!

追)伊藤翔さん、お髭もたくわえて、たくましくシャープな雰囲気に変貌。
でも、お話すると、いつもの柔和な翔クンでした!
今後の活躍も、応援しますよ!

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2013年10月 3日 (木)

ショパン バラード第3番 ポリーニ

Higanbana

毎年、9月の半ばには必ずあらわれる彼岸花。

そして必ず群生してます。

川の土手や、田畑の畦に集まるこの赤い花は、日本の初秋の風景のひとこまです。

またの名を「曼珠沙華」。

以前にも書いてますが、ユリ科なので地中に球根状で繁殖しますが、それが少しの有毒性があり、それがわかっていた日本人は、お墓や田畑が地中動物たちに荒らされないように、地境にこれを植えたとあります。

そんな過去を知ると、この禍々しい姿と赤が妙に怪しく見えてくるんです。

Chopin_ballades_pollini_2

   ショパン  バラード第3番 変イ長調 op47

        Pf:マウリツィオ・ポリーニ

                (1999.4 @ヘラクレスザール、ミュンヘン)


ショパン、なぜにあなたは、ショパンで、ショピンでないの?

Choinをショパンと読んで、Chopanでない件。

フランス語なのか、ポーリッシュなのか?

それはともかく、なんだかなんだでショパンは大好きですよ。

ロマン派の時代、ベートーヴェンより40歳若いだけ(1810~1849)。

外観上の形式はきっちりと守られているけれど、こんなにフリーダムに内面を綴った作曲家という意味で後年のマーラーみたい。

4曲からなるバラードは、同じく4曲からなるスケルツォとともに、ショパンの音楽の骨格をなす作品群だと思います。
それぞれに、作曲時期は異なりますが、スケルツォはベートーヴェン以来あった、ある意味伝統的な形式。
でもバラードという形式は歌曲の分野以外は、具体的にはほかにないのでは。
そしてショパンはこのバラードに自由な楽想をそれぞれに封じこめました。
4つとも全部違う。
そして、物語を語るうえで3拍子というのは必定で、4曲ともに3拍子。
それぞれに、物語的な背景を持っていて、無題ながら標題音楽という隠れた側面もあり。
それらを踏まえて聴く、ショパンの技巧性に富み、抒情と激情があいまみえる音楽に、ピアノの枠を超えたオペラティックな世界に通じるものを、わたくしは感じるのでありました。

今宵は3番変イ長調を。

1841年31歳の作。ポーランドの詩人ミツキエヴィチの詩「水の精」によるもの。

「美しい少女に恋した騎士。でも心変わりをしてしまい、あるとき湖の底に飲まれる」

水の精に恋した騎士の物語。

ショパンの抒情的な、そしてバルカローレ(舟歌)のようなリズムが心地よく、哀しくも美しい音楽です。

ときおり唸るようにして歌いまくるポリーニのショパンは、きっちりと完璧な一方で、歌謡性が高く、わたくしには絶品という言葉しか浮かびません。

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