カテゴリー「ベートーヴェン」の記事

2016年2月27日 (土)

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」 フルトヴェングラー指揮

Hatskooda_1

何年も前に行った八甲田山。

大学生のときに観た同名の映画は、史実に基づく、寒々しくも、でも忠義に尽す明治の軍人たちの物語だった。

Hatskooda_2

ここで立ちながらにして凍死した隊員たち。

前にテレビで観たけれど、夜になると行軍する霊たちがあらわれるという・・・・・・

Hatskooda_3

  ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調 「英雄」

    ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ウィーンフィルハーモニー

                               (1953)


またしても、鼓舞されそうな曲を選んで、しかも、大昔にクラシック道に導いてくれた従兄の家で、レコードで聴いた演奏で。

CDで全集を揃えてみたけれど、ほったらかし。

そして、聴いてみたよ、フルヴェンのエロイカ。

そしたら、なんだか、遠い世界の音楽に聴こえた。

まるで、過去から忽然とあらわれた武士のようで、一部は落ち武者のように感じた。

しかし、終楽章は実に素晴らしく自在だ。

レコードをパチパチいわせながら聴いたらまた違う印象かも。

CDでは、情感がのっぺりしすぎて聴こえてしまうのか。
自分の耳も、変化し、多様な演奏や演奏様式を聴けるようになった今、不遜にも、これは辛い演奏に感じた。
 おまけに、雄大さ、悠揚さが辛かった。
鼓舞されず、意欲は逡巡した。

ファンの方々、すいません。
5番も6番も辛かった。
第9は、聴く意欲がありません。

ワーグナーは無条件にOKなんだけど。

もしかしたら、ブラームスは。
ぶら4でも確認してみよっと。
またいずれ。

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2016年2月25日 (木)

ベートーヴェン 交響曲第5番 クライバー指揮

Tokyo_tower

久しぶりの東京タワーは、公園の足元灯が色とりどりになっていて、きれいでした。

そして、河津桜が満開。

Beethoven_5

  ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調

    カルロス・クライバー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

        
                       (1974.3 ウィーン)


自分を奮い立たせるために聴いた。

ピリオドもくそもない。

自分には、いつでも鮮度高いカルロスの第5。

「いまさらカルロスの第5、されど、カルロスの第5。」

以上、おわり。

ドラえも~ん、運命の扉をちょーーだ~いthunder

 当ブログ史上、一番短いヤツ書いてやった。

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2015年8月19日 (水)

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第4番 ミケランジェリ

Shikenjyo

実家近くの裏山の竹藪。

竹は、こうして見ていてとても美しく趣きがあるのですが、その成長と、他を圧する生存能力には脱帽です。

先だって、テレビでもやってましたが、放置された田畑が竹に浸食されて、おまけに地中でつながっているものだから、傾斜地では、表面の地表が地滑りを起こす危険性もあるといいます。
稚竹のうちに、どんどん収穫して食べてしまえばいいんでしょうけど、竹の有効活用を含め、数々あるそうですが、なかなか人手と経済性が伴わないらしいです。

難しいものです。

今夜は、若竹のように、新鮮で活きのいい音楽を。

Beethoven4

   ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 Op7

        アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ

                     (1971.7 @ミュンヘン)


ベートーヴェンのピアノソナタシリーズ。
作品2の1~3番に引き続き、第4番は、単独で、作品番号7。

作品2では、あとのものほど、規模と充実度を増し、ここ4番では、さらにスケールアップし、ベートーヴェンの意気込みも、大いに増していることを感じ取ることができます。
その大きさから、出版当初は、グランド・ソナタとの命名もされていたそうな。

作品2の翌年、1796~7年の作曲。
当時ベートーヴェンが住んでいた家のお向かいの貴族、ケーグレヴィッチ伯爵令嬢にピアノを教えていて、事実、彼女は、弟子としても優れたピアニストだったらしい。
 レッスンにやってくるときは、ときおり、ベットガウンにスリッパに、トンガリ帽子という奇異ないでたちで訪れたりしたらしく、そんなベートーヴェンが微笑ましく思えたりしますな。

その彼女に、このソナタは、捧げられ、この曲は、当時、「愛する女」と名付けられたとされますが、そのあたりの因果関係は今は不明であります。

曲は4つの楽章からなり、変ホ長調という調性から、大らかさと伸びやかさが支配し、後年の深刻さやヒロイックな様相は、まったくうかがえませんね。

1楽章は、アレグロ・モルト・エ・コン・ブリオですから、まいどお馴染み、ベートーヴェンの第1楽章って感じの表記です。
スケールの大きさは、最初から、しっかり発揮されていて、活力に富んでいながら、しなやかさも見せる魅力的な楽章です。

2楽章は、少しばかり瞑想的なラルゴ。
ベートーヴェンの緩徐楽章の抒情を充分に感じとれますね。

3楽章は、普通にアレグロで、3部形式ながら、スケルツォでもなし、メヌエットでもなし、とかつてより評されてますが、親しみあふれるフレーズが続出。

そして、終楽章は、ロンド形式。トリルの目立つ楽章で、終わりを飾るスケール感はないものの、緩急が豊かで、長調と短調のやりとりの面白さを感じます。
次の5番へのステッアップへの布石も。

地味ながら、青年ベートーヴェンの姿を味わうに相応しい桂曲だと思いました。

今回は、ミケランジェリの懐かしの名演で。
このレコードが出たときは、ミケランジェリのDGデビューのひとつではなかったでしょうか。

贅沢にも、これ1曲で、1枚のレコード。
演奏時間にして、31分。
ほかの演奏では、23~5分ぐらいなのに、この演奏時間。
そう、全体にゆったりめで、丹念に弾いている結果です。
しかし、造型は堅固で、一部の隙もなく、完璧な仕上がりながら、冷たさは一切なく、明晰さからくる明るいカラーが全体を支配してます。
 イタリアの音楽家らしい「明晰な美」への追及が際立った演奏ではないかと。
この演奏、CD時代になって、シューベルトのソナタや、ブラームスのバラードなんかもカップリングされて、さらにお安くなって、かねてとは隔世感を味わわせてくれたりもしてます。

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2015年7月 6日 (月)

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第1~3番 バックハウス

Zojyoji

出たり引っ込んだり、関東では、今年の梅雨も7月の上旬に、いよいよ本番。

紫陽花は、もう見ごろのピークを終えてしまいましたか・・・

いろんな色があるけれど、やっぱりブルーですかね。

そして、新鮮なブルーに似合うのが、ベートーヴェンの初期作品の清々しさ。

Beethoven_backhaus

  ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第1番 ヘ短調 op2-1

                ピアノ・ソナタ第2番 イ長調  op2-2

        
             ピアノ・ソナタ第3番 ハ長調 op2-3


        Pf:ウィルヘルム・バックハウス

                      (1963.10 1968.3 1969.4
                         @ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール)


ベートーヴェンは、1795年(25歳)、作品番号2の3曲のピアノ・ソナタを完成させ、師ハイドンの前で、演奏しました。
 その3曲の前にも、5曲ほど、ソナタないしはソナチネは書かれているが、番号付きとしては、これらの3つがスタートとなります。

ウィーンに出てきたばかりの頃のベートーヴェンは、当時のウィーンの大御所、ハイドンの門をくぐり、勉強をしたものの、血気あふれるベートーヴェンからすると、師のもとでの授業は、予想外に退屈なものだったらしい。
 
 むこうみずにも、別な先生のもとに走ったベートーヴェンは、さすがに、師ハイドンに対して気兼ねし、感情的な行き違いを、なんとか解消しようとして、師に捧げるべく、これらの3つのソナタを作曲したわけです。

ですから、この3曲は、意欲的な顔、師への感謝を込めた明朗な顔、そして、のちの大きなソナタへの先駆けのようなシンフォニックな顔、いずれも異なる気分が横溢している。

1番は、いきなり短調という悲劇色の濃い作品。
短いけれど、ベートーヴェンの野心がにじみ出たソナタです。
短調の両端楽章にはさまって、2楽章と3楽章は、軽やかで、装飾性も豊かで古典的。
終楽章は、のちの、熱情ソナタみたいですね。

2番は、1番とかわって、明るいイ長調。
短調のあとには、明朗快かいたる、長調がやってくる。
これも、後年のベートーヴェンの常かもです。
ちょっと掴みどころがないけど、流れるような優美さと、弾むリズムの対比がいい1楽章。
内省的な面持ちをもった2楽章は、これも後年、ベートーヴェンの美しい緩徐楽章の典型の走りと感じます。
低音で、ずっと続くスタッカートも印象的。
 そして、この曲で、はやくも、軽やかにスケルツォが登場。
さらに4楽章も流れがよく、明るく、のびのびした若々しさを感じます。
この2番のソナタは、結構好きですよ。

さて、一挙に規模を大きくした3番
ハ長調ならではの、壮麗さと、がっしりした印象をあたえる構成感。
よく演奏される曲だし、耳馴染みもいい。
 なんたって、1楽章は、アレグロ・コン・ブリオ。
いかにも、ベートーヴェンらしい。
アダージョ楽章は、ずいぶんとロマンティックで、古典派の枠をすでに超えた雰囲気もあり、なかなかに詩的であります。
この楽章は、好き。
 短めのスケルツォは、弾みがよろしく、続く華麗なフィナーレの前段として、交響曲の中の同じ存在のように聴ける。
ダイナミックで、技巧的でもある終楽章は、意欲に燃えるベートーヴェンらしく、元気はつらつ♪

 レコード時代、一気に全集で購入したバックハウスのソナタ全集。
当時は、ドイツものだったら、なんでもバックハウスとケンプだった。
そののちに、ブレンデルやアシュケナージ、ポリーニがやってきたのだったが、CD化された同じ全集を、あらためて、入手して、ことあるごとに聴いていますが、揺るぎない威厳と格調の高さが、こうした初期作でも感じるのは、バックハウスならでは。

最近の演奏家たちのような、鮮烈さや、タッチの冴え、考え抜かれた多彩な解釈などとは、一線を画するバックハウスの演奏ですが、やっぱり、わたくしには、別格の存在であります。
梅雨の長雨のなか、とても麗しい時間を過ごせた夜です。

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2015年5月28日 (木)

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第1番 ルービンシュタイン

Green_azumayama_1

眩しくも鮮やかな新緑。

緑は、いまが一番、空にも、街にも、映えますね。

もうじき梅雨を迎える、濃くなる前の、そんな前の緑が美しい。

若々しい、緑のような音楽を。

Green_azumayama_2

   ベートーヴェン  ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op15

        Pf:アルトゥーロ・ルービンシュタイン

   ダニエル・バレンボイム指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

                      (1975.4.9 ロンドン)


ベートーヴェンの5つのピアノ協奏曲のうち、何番がお好きですか?

そんな質問があったら、クラシック聴き始めの自分だったら、1番か5番。
そのあと、そこそこ、クラシックに馴染んだ自分だったら、4番。
そして、いま、普通もいいけど、それじゃすまない、多方面外交にうつつをぬかす自分だったら、1番か3番。

聴き始めのころの好印象の1番が、いまのヲタク聴き的な自分からしても、かなりのお気に入り位置にいることに、妙にうれしかったりします。

調和のとれたハ調、モーツァルトの協奏曲の延長上にありつつも、ベートーヴェンならではの、キリッとした表情と、青年の主張的な爽やかさと、たどたどしさ。
 1番には、そんな清潔な美感と、旋律の美感があふれているんです。

1794年、ベートーヴェン24歳のときの作品は、出版の関係から、2番の方があとになったが、実は、この1番の方が後年の作品。
1番・2番ともに、古典的でありますが、作曲家の思いを強くしみ込ませ、後の、ロマン主義の萌芽を、より見出すことのできるのは、1番の方。

うららかな歌と、抒情にあふれた3つの楽章を、晩春に聴くと、寂しさよりは、これから始まる自然の爆発を、より強く感じることができます。
 とりわけ、たおやかな第2楽章がステキです!

ルービンシュタインは、この録音時、すでに88歳。
生涯に3度のベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を残したルービンシュタイン。

56年に、クリップス&シンフォニー・オブ・ジ・エア~56歳
63年に、ラインスドルフ&ボストン響~76歳
75年に、バレンボイム&ロンドン・フィル~88歳

どうです、この履歴。
人間の生きざまの、可能性として、こんなに嬉しい年代の記録ってないです。

88歳の老人(失礼)が、かくしゃくと、寸分たがわず、明晰に弾くベートーヴェン。
そして、そここに、味わいのある、タメやフレーズの歌い回しが。

これはもう、なにをかいわんやの世界です。

ほかの番号も、同様に素晴らしいのですが、88歳の老齢の巨匠が、24歳の作曲家の曲を、いかにも、昨日今日出会ったかのような、新鮮なタッチでもって演奏する、そんな1番が、とっても美しく、鮮やかなんです。

指揮に、バレンボイムというのも斬新な70年代半ば。
バレンボイムは、アシュケナージとならんで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の、ピアノ弾き語りと、ピアノ独奏、オケ指揮という、文字通り多方面の顔を、CDに刻んだ、最初の超人であったと思います。

流れと、勢いにまかせて、今宵は、このコンビの演奏で、3番なんぞも、聴いてみようと思ってます!

しかし、歳を経て、年代と共に、アダージョなどの緩徐楽章にこそ、心奪われるようになってきました。
ちょっとの、ギャラントさも残す、1番の2楽章が、この演奏では、このうえなく、達人の演奏の域に思えるのでございました。。。。

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2015年1月18日 (日)

神奈川フィルハーモニー オーケストラ名曲への招待

Muza_1

昨年、10周年を迎えたミューザ川崎で神奈川フィル。

席によって音響がかなり違うミューザですが、今回は、海外オケなどでは、なかなか取れない1階センター席にて神奈川フィルを堪能。

ステージも近く、音も、リアルにそのまま耳に届く良席でした。

ことに、両翼対向配置をとったベートーヴェンでは、弦楽器たちの音の橋渡しが、ビジュアル的にも、もちろん音響的にも、手に取るように鮮やかに楽しめました。

Kanaphill_muza

  ワーグナー    舞台神聖祭典劇「パルシファル」 前奏曲

  コルンゴルト   チェロ協奏曲 ハ長調

  バッハ       無伴奏チェロ組曲第3番から サラバンド~アンコール

          チェロ:山本 裕康

  ベートーヴェン  交響曲第3番 変ホ長調 「英雄」

  J・シュトラウス  ポルカ「浮気心」 ~アンコール

     サッシャ・ゲッツェル指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

                 (2015.1.17 @ミューザ川崎シンフォニーホール)


ワーグナー好き、コルンゴルト好きを自認する自分にとって垂涎もののプログラム。
しかも、大好きな神奈川フィルなのですから。

さらに、次の定期も、コルンゴルトに、R・シュトラウスにブルックナーですよ。

こうした演目が多くプログラムにのるのも、昨今のオーケストラ界の風潮ではありますが、ともかくうれしく、喜ばしいことです。

 「パルシファル」前奏曲が演奏会で、単体取り上げられることは、珍しいと思います。
ほかのワーグナーの管弦楽作品に比べて、演奏効果をあげにくく、なんといっても地味で、かつ難解。しかも宗教性があるものですから・・・・。

しかし、わたくしは、「トリスタン」とともに、ワーグナーの革新性も含めた最高傑作だと思ってます。
舞台でも、何度も接してきましたし、映像・音源も多々。
 でも、そんななかでも、今回のゲッツェル指揮の演奏は、かなり上位に入るお気に入りのものとなりました。

清らかさと、崇高な荘厳さ。
これらを、音のにごりなく、透明感をもって描き出さなくてはならない。
その点で、明快な音楽造りのゲッツェルさんと、美しい音色を持つ神奈川フィルの演奏は、完全だと思いました。
ミューザの響きも、ワーグナーのこの作品を聴くに相応しいもの。
 ゆったりとしたテンポを維持しながら、音をしっかり長めに響かせるゲッツェルさんの指揮。
ワーグナーの呼吸を、完全に体得し、表現していたと思う。
オペラハウスでの活動も多いゲッツエルさん、ワーグナーもいくつかレパートリーに入れているようですが、今後さらに、取り上げ、ゆくゆくはバイロイト、なんてことも夢見てしまいたくなりました。
劇性の演出に長けた指揮者ですから、オペラは絶対にいい。
 パルシファルでの直立不動とも言える、静かな指揮ぶりは、その作品に相応しいものでした。

 そして、そして、この日の目玉。

プロによる、本格的な日本初演でありました、コルンゴルトのチェロ協奏曲

ヴァイオリン協奏曲は、このところ、極めて演奏頻度が高まり、協奏曲のレパートりーとして、完全に定着いたしました。
そのヴァイオリン協奏曲の日本初演者の方が、山本さんに働きかけ、楽団側も動き、コルンゴルトを広める皆さんの後押しなどもあって、この演奏が実現したと聞きます。

コルンゴルト・ファンとして、愛する神奈川フィルと、いつもお馴染みの山本さんのチェロでの演奏をここに聴くことができたことは、望外の喜びでありますとともに、わたくしの音楽ライフにおいても、大きなランドマークとなりました。

コルンゴルトのこと、この曲のことは、過去記事をご参照ください。
神奈川フィル応援の、フェイスブック記事にも、あらためて投稿いたしました。

12分の単一楽章ながら、原曲のロマンティック・サスペンスとも呼ぶべき映画、「愛憎の曲~Deception」の、三角関係と嫉妬と誤解が産みだす、まさに愛憎劇の内容を凝縮したかのようなドラマティックな音楽です。

ピアノ、チェレスタ、マリンバ、ヴィブラフォン、ハープといった楽器を要することは、毎度の近未来的な響きを醸し出す、コルンゴルトサウンドの重要アイテム。
 指揮台の背中のバーに、背をもたれながら、オケ全体、ソロの山本さんを俯瞰しつつ、微細にコントロールしながら、爛熟のウィーンを思わせる、あでやかなサウンドを作り上げたゲッツェルさん。

そして、あまりに素晴らしすぎた山本さんのチェロ。
昨年秋には、初見のこの曲に対する不安をお話されておりましたが、ほんの少しの間に、甘味なロマンティシズムと、シニカルなまでの哀感、そして、諧謔的な軽妙さ、これらのコルンゴルトの語り口を見事に体得されておられたことに、まったくもって舌を巻きました。
 つねに忙しく活動されているなか、プロの音楽家って、ほんとうにすごいと思いましたし、
なお、素敵なところは、そこに、いつもの山本さんらしい、優しさや、暖かな音色、繊細さも、この方の個性として、しっかりと織り込まれているところでした。
 音楽に夢中になって弾く真摯な没頭感も、裕康さんならでは。
第2エピソードとも呼ぶべき、ふたつめの抒情的な旋律が、静かに、まろやかに演奏されたとき、思わず、わたくしは涙が出てしまいました。
そして曲の後半、哀愁にとんだチェロもすんばらしい。
そこに絡んだ、山田さんのフルートも、やたらにステキだった。

急転直下のエンディングに、わたくしは、山本さんに、ゲッツェルさんに、オケに、そして、コルンゴルトに心をこめて、軽くブラボー一声献呈しました。
ほかの方の豪勢なブラボーにかき消されてしまいましたが・・・・・。

アンコールのバッハ。

多くの方が、ときに目を閉じて、心で感じるようにして聴きました。

阪神淡路から20年、サリン事件も同じく数日後。
あれからも、自然災害や事件はとどまりませんが、このバッハと、次のベートーヴェンの2楽章に、深い悲しみと、追悼の気持ちを、聴きながら深く思ったのでした。

Cine_2

コンサート終了後、とんでもなく気分がよくて、一軒目で、美味しいお魚を、やまほどいただき、最後は、ヨーロピアンなシネチッタ地区へ。

まさに、コルンゴルトのキラキラ感と、シネマのちょっと望郷の想いもよおすエリアです。

ウィーンっ子のゲッツエルさん。

親子で、ウィーンフィルのヴァイオリン奏者。

親父はベームの映像、息子は、クライバーやアバドの映像で、その演奏姿を発見することができます。
親子、そっくりなんですよ。

演奏者として、多くの指揮者のもとで、ヴァイオリンを弾いてきたゲッツェルさんは、もしかしたら、指揮者としては、カルロス・クライバーの劇的な自在さと、軽やかさを目標にしているのではないかと思いました。

2日前の県民ホールに続く「英雄」

あの日は、かなり細かい指示を出し、その動きも活発で、オーケストラやセクションを煽るようなしぐさも多々ありました。
今回は、1楽章では、その動きがかなり控えめで、流れるように、拍子は流線的に取りながら、切るような指揮ぶりは少なめ。
 オケから引き出された音楽も、明瞭で、快活なもので、ときに大きなしぐさから、切れ味いいパンチの効いた一撃も繰り出される。
 そして、前回と同じく、第2楽章は、豊かな歌と、深い悲しみをにじませたとても深い表現を聴かせていただきました。
クライマックスでの沈痛極まりない場面では、心が震えるほどでした。
ここでは、ゲッツェルさんは、両手を大きく高く振り上げ、最大限の音を引き出そうとしておりました。
 3楽章では、みかちゃんこと、豊田さんをはじめとするホルン3人がマイルドかつ爽快な演奏を聴かせ、少ない動きで、指揮者は弾力性ある音楽をしたてあげ、一気に終楽章へと流れ込む鮮やかさを見せつけてくれました。
 大きくなったり、小さくなったり、お尻ふりふり、右手左手交互に上下、いつものゲッツェル体操を見せてくれちゃいます。
一昨日は、左手をぶるんぶるん、かなり振りまわし、オケを煽ってましたが、ここでは、そこまではないかわりに、体操を披露。
 そうです、指揮者も乗ってきたし、神奈川フィルも、ゲッツェルの要求に見事に応えるようになって、こうしたライブな自在ぶりが発揮されたのでしょう。
 最終コーダの、猛然たるアッチェランドぶりには、ホール内一体となって、熱狂をよぶ大エンディングを巻き起こしました。

そう、前回とまったくことなる展開に、びっくり。
すごかった。

アンコールの「浮気心」も、前回よりノリがよかった。
楽しそうな指揮ぶりに、聴衆は釘付け。
演奏会を繰り返すごとに、この指揮者のファンが増えていきます。
みんな、大好きゲッツェルさん。
神奈川フィルとのコンビでこそ味わえるゲッツェル・ライブは、横浜・神奈川限定にしていただきたいもの。
海外でも着々とその実力と名声を高めつつあり、日本では、ここだけに!

ファンの祈りです。

フレンドリーで気取らないゲッツエルさんは、終演後、ロビーに出てきて、気軽にサインや写真撮影に応じられておりました。
わたくしも、ワンショットご一緒いただきましたよ。

コンサートの興奮そのままに、川崎の繁華街へ、応援仲間と進攻。

これでもかと出てきた、お魚の数々に大満足のWe Love神奈川フィル一行なのでした。

Isaribi_1 Isaribi_2

Isaribi_3 Isaribi_4

ほんの一例。

まだほかに、豆腐サラダ、カルパッチョ、煮魚、くじら刺し、から揚げ、デザートなどが次々に。

音楽も、お料理も、どっちもみんな、お腹一杯。

心から、こちそうさまでした。

そして、コルンゴルトは、またこのコンビで聴きたいぞ。

音源化を強く望まん!
       

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2015年1月17日 (土)

神奈川フィルハーモニー県民ホールシリーズ第2回定期演奏会 ゲッツェル指揮

Bay

1月15日は、嵐のような天候の1日でした。

木曜日でしたが、この日は、今年度から始まった、神奈川フィルの県民ホール定期公演。

関内で打ち合わせがありましたので、傘を壊されそうになりながら、この日ばかりは、とてつもなく遠く感じた県民ホールまで難渋しながら歩きました。

さすがに写真を撮るような状況ではありません。

県民ホールのまん前は、山下公園。

ちょっと前の画像です。

ベイブリッジに、氷川丸。

みなとヨコハマを代表する景色ですね。

そして、ここ横浜に、あの人が。

この日ばかりは、まさに、嵐を呼ぶ男、サッシャ・ゲッツェルさんが帰ってきました!

201501kanaphill

  チャイコフスキー  ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調

        ピアノ:小山 実稚恵

  ベートーヴェン   交響曲第3番 変ホ長調 「英雄」

  J・シュトラウス   ポルカ「浮気心」 アンコール

     サッシャ・ゲッツェル指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

                     (2015.1.15 @神奈川県民ホール)


首席客演指揮者として2年目の登場。
そして、神奈川フィルへは、これが4度目のゲッッエルさん。

われわれも、そして何よりも、オーケストラにとっても、すっかりお馴染み。
ファンもオケも、みんなゲッツェルさんのことが大好き。

年々、その活躍の場を広げつつあり、世界的な指揮者としても注目が集まってます。
昨年は、手兵のボルサン・イスタンブール・フィルを率いて、アジアのオケ特集をしたロンドンのプロムスに登場し、熱狂的な歓声を浴びました。
わたくしも、ネットで聴きましたが、熱かったですし、トルコの音楽も巧みにとりいれた、エキゾチックな音楽運びが、とても新鮮でした。
 さらに、これは未聴ですが、ウィーン国立歌劇場で「フィガロ」を指揮して、大成功をおさめました。
ウィーンという街は、オーケストラ以外、その出身者には、とても厳しい印象があるのですが、ウィーンっ子ゲッツェルさんが、今後、かの地でどうのような活躍をするか、これもまた楽しみであります。

もちろん、日本では、われらが神奈川フィルに専念して欲しいですよ。

そんなゲッツェルさんの、今年のプログラムのひとつは、チャイコフスキーとベートーヴェン。

王道の名曲の組み合わせですが、そのブレない姿勢に、聴く前から感服。

そして、ピアノソロは、今年、活動30周年を迎えた小山実稚恵さん。

Michie_koyama

こんな小冊子も配られました。保存版ですな。

始終聴いてるし、身近な存在だからあんまり気にしなかったけれど、もう30年なのですね。
チャイコフスキーやショパンのコンクールに入賞して、もう、そんな年月が経つわけで、ほぼ同年代の自分に照らし合わせると、真っすぐに、ピアノの道を歩んで来た誠実な彼女が、とても眩しく、そして羨ましく感じてしまいます。

そんな風に思わせるチャイコフスキーでした。

えんじ色のドレスの小山さん、そのお色のとおりに、派手さや、この曲の演奏でおちいりがちな、技巧の披歴のような浮ついたところは一切なく、優しさと安定感とにあふれた、着実なピアノを聴かせてくれました。

耳にタコができるくらいの名曲ですが、ゆったりしたテンポに感じた幻想的な展開の第1楽章では、静かな、独白のような語り口に耳がそば立ちましたし、何と言っても第2楽章が絶品の美しさ。
 神奈川フィルの、愛らしい木管群と若々しいチェロたちとともに、とても素敵な緩徐楽章を築き上げましたね。
もちろん、終楽章では、押さえるところは、しっかり押さえ、じわじわと盛り上げ、やがて爆発させるゲッツェルマジックに、見事に加担して、鮮やか極まりないフィナーレとなりました。
その3楽章のコーダ突入の前の、クレッシェンドで、ゲッツェルさんは、ものすごいピアニッシモからの入りを仕掛けまして、それが盛り上がってゆく、ジワジワ感と、ついに到達するコーダの大爆発が、実に効果的に描かれました。

優れた演奏家同士にして、聴くことができる、練達のチャイコフスキーでした。

一本のコントラバスが、左側に立てかけられていて、おやっ?と思っておりましたが、後半のベートーヴェンでは、配置がガラリと変わって、妙にお馴染みの対向両翼配置。
 そう、ベーレンライター版を選択したゲッツェルさんなのでした。

2管でしたが、弦楽器はたっぷり増量されてステージは、意外なまでのギッシリ感。
そして、繰り返しも励行し、時計タイムでは、55分(多分)。

ミューザで、ふたたび聴くことになりますが、あの響きの少ない県民ホールが、実によく鳴っておりました。
しかも、ベーレンを使い、ヴィブラートも抑え気味にしながらです。
 そう、弦の皆さんは、音を思いきり、目いっぱい弾いているんです。
やってみました的な、おっかなびっくりのカサカサ乾燥肌の演奏をかつて聴きましたが、ここでは、潤い成分満開で、この巨大なホールが、たっぷりと、なみなみした音たちであふれかえったのでした。

そう、こういうことなのですな。
音を解放するってことは、いい意味で。

ゲッツェルさんによって、解き放たれたベートーヴェンの音、ひとつひとつは、その指揮棒に夢中になって反応する神奈川フィルの奏者のみなさんのもとから、われわれ聴き手に、がんがん・どんどん届き、ときに、高揚し、熱くなり、そして、泣き叫びたくなり、ウキウキしたくなり、そして気が付けば、最後のあっけないくらいの幕切れの、キッレキレのエンディングに興奮している自分を見出すのでした。

ジャンプは、ほとんどなくなりましたが、腕の振りは、相変わらずすさまじくて、腰振りも、かなりのものな、その指揮ぶり(笑)
亡きカルロスをほうふつとさせる指揮姿であり、その鮮やかな音楽造りであります。

葬送の第2楽章は、実に深かった。
泣きそうになってしまった。

木管のみなさんも、チャイコにもまして、素晴らしかったし、ホルンも輝いてました。

より響きのよい、ミューザで、土曜にまた聴き、そしてまた、その印象をしたためてみたいと思ってます。

アンコールは、もしかしたら、お決まり、確信犯的に、ノリノリのウィンナ・ミュージック。
昨年の、爆発は文字通りありませんが、しなやかで、思わず笑みを浮かべたくなる曲に、演奏。
お尻ふりふり、また見れましたよ(笑)

神奈フィルの皆さんも、精一杯、ふるまったでしょうが、もっとにこやかにして欲しかったかもね。
でも、日本人って、そういうの難しいのよね。
自分もそうだし。
欧米の、あの雰囲気はなかなか・・・・・。

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2015年1月 5日 (月)

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」 ヨッフム指揮

Azuma

東西南北、長くて広い、日本列島。

等しく、正月が訪れ、寒さ濃淡あれど、ゆったりとした束の間を過ごされたことと存じます。

わたくしの郷里の神奈川の小さな山の上は、まいど、ご報告のとおり、季節を先取りした光景が望めました。

ことしは、元旦が湘南地区とは思えないくらいの大雪。

134

これ、海沿いの134号線ですよ。

翌日朝に、箱根駅伝が走るってのに。

でも、翌日からの好天続きで、富士山との遭遇も多かったです。

そしてなによりも、駅伝も、山登りはコース変更を余儀なくされましたが、無事に行われ、なんたって、母校が初優勝。
しかも、圧勝で、陸上界に新しい風を吹かせるユニークな存在を示しましたよ。

Ekiden

復路7区を観戦。

後ろの車には、「ワクワク大作戦」を展開した、ユニークな監督さんの姿も見えますよ。

Daoshi

そして、子供時代から、もう何十年になりますかね。

初詣は、川崎大師。

若気の至りのころは、あえて、手を合わさないときとかありましたが、大人になってみると、ごく、すなおに、1年の無事を祈るようになりました。

宗教に関係ない。

人として、なによりも、日本人として、1年の「ことほぎ」として、虚心に手を合わせます。

2015年が、良き年となりますように。

Beethoven_johum_3


 ベートーヴェン  交響曲第6番 「田園」

   オイゲン・ヨッフム指揮 ロンドン交響楽団

                 
                     (1978


 新春恒例、名曲シリーズ。

やっぱりこれかな。

ほんと、いい曲だよなぁ~

この曲を嫌いな人なんて、ぜったい、いないと思う。

マニアやヲタになっても、絶対に忘れない一品。

聴くほどに味わいがあり、歳を経るごとに、その味わいもまた格別のものと、感じられるようになる。

世界中、その国々ごとに、きっと、その田園風景は、それぞれにあるだろう。
けど、その各国の田園風景に、ぴたりと、聴く人々の心情ごとに符合してしまう第6番の田園交響曲。

傑作揃いの、ベートーヴェンの交響曲のなかでも、ほんとうの意味での普遍性をもつ、人類共通の至芸品だと思いますね。

 日本人としては、田んぼがある景色の四季を想い浮かべます。

春がやってきて、ひばりが舞い、のほほんと、うららかな日差しをあびて、書を読みつつ、農作業にいそしみ、そして、楽しいお祭りも。
そこに、嵐がやってきて、叩きのめされ、いままでのことも台無しに。
しかし、天候は、一転して、青空が広がり、われわれは、荒天をしのいだ軒先から、篤い感謝をいだきつつ、暖かな日の光を目一杯に浴びつつ、豊穣を喜び、そして、明日への備えも怠りなく、静かに一日を終える。。。。

 こんな「田園」のイメージに、ぴったりなのが、ヨッフムの演奏でした。

懐かしくも、古びてない、おおらかな演奏。

こんなドイツ的な指揮者は、いまや存在してませんね。

各国の個性を、思いきり担った演奏家が、年々、枯渇してますし、今後も、さらに拍車をかけていなくなると思います。

 こうして、過去の演奏は、ますます、希少なものとして、われわれ愛好家に親しまれてゆくのでしょうね。
 しかして、昨今の演奏が、数十年後に、このヨッフムの演奏のように、長く、親しまれるのでしょうか・・・・。

悲観するばかりじゃいけませんね。

演奏スタイルと、聴く側のスタイルも変わる中、新しい流れも、聴く耳を、自身、育てて行かなくてはなりません。

今年も、たくさん、音楽を聴き、そして、感じていきたいと思います。

それにしても、ヨッフムが、最充実期、ロンドンのオーケストラで、ベートーヴェンとブラームスの全集を残してくれたところが、実にうれしいです。
ドイツのオケでは、もしかしたら、こうはいかなかった、絵に書いたような、ふたりの作曲家の演奏ですから。

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2014年12月20日 (土)

神奈川フィルハーモニー県民ホールシリーズ第1回定期演奏会 小泉和裕 指揮

Akarenga_a

赤レンガ倉庫では、恒例のクリスマス・マーケット。

ドイツやオーストリア、スイス、フランスなど、各国で、街の中心の広場で行われるクリスマス・マーケット。

クリスマスの飾りや、ソーセージやパンなどの食材に、ホットワインが、可愛い出店で売られ、寒い夜が、とても暖まる光景を、かつては、羨望の思いで、雑誌などで見ておりました。

Akarenga_b

日本各地でも、大小のマーケットが出現するようになりました。

なかでも、横浜の赤レンガ倉庫のものは、一番大きくて、そして美しい。

でも、人が多すぎなところがちょっと難点。

 ベートーヴェンもホットワインの飲んだのでしょうか。

今年も、第9が巷にあふれる季節に。

神奈川フィルは、これまでの特別演奏会から、県民ホール定期に。

Kanaphill201412

  ベートーヴェン 交響曲第9番 ニ短調

   S:佐々木 典子    Ms:手嶋 眞佐子

   T:福井 敬        Br:小森 輝彦

     小泉 和裕 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
              神奈川フィル合唱団
             合唱団音楽監督:大久保 光哉

                (2014.12.19@神奈川県民ホール)


特別客演指揮者の小泉さんの第9。

となれば、楽譜は、当然にブライトコプフ版と予測でき、まさにそのとおりの演奏でした。

多くの方が聴きなれた版であり、その版による、まさに安心安全の演奏が、堂々と、そして最後には熱気もはらんで演奏されました!

神奈川フィルのファンをやってると、ほんとに久しぶりの従来の第9が帰ってきた、という感じ。
そう、5年間の聖響さんの第9は、ベーレンライター版で、対抗配置、バロック・ティンパニということで、ある一定のイメージが、「聖響&神奈フィルの第9」ということで植えつけられてしまいました。
5年のうち、3年は聴きましたが、それでも、都度印象が異なり、指揮者がまだ、その版を使っての演奏の解釈に揺らぎを持っていることも感じており、まいど、複雑な思いで、年末を過ごすこととなっておりました。

今年の小泉さんの第9は、王道をゆく、ゆるぎない信念のもとに、奏者一同が、音楽そのものに打ち込んで、熱のある演奏になりました。

版の違いは、第1楽章冒頭からはっきりとしてます。
ベーレンライターでは、弾むようにして始まる第1楽章は、疾風怒涛のような印象を受けるし、神奈フィルの演奏姿で、3度も体験しちゃったから、そうじゃない、1楽章は、妙に歯がゆかったという、実に不思議な体験をすることとなりました。
 それでも、小泉さんの指揮を見ながら、だんだんと慣れてきました。
そう、神秘的な雰囲気と、劇的な展開は、ブライトコプフならではで、小学生の頃から聴いて、耳にタコのように貼りついているカラヤンの演奏の響きを求めておりました。
 

 ちょっと脱線。
いまはどちらでもありませんが、アンチ・カラヤンになる前は、大のカラヤン・ファンだった。
第9のレコードは、DGの62年盤を、小6で購入。
中1のときに、父親にせがんで、カラヤンの第5と第9の演奏映画を、新宿厚生年金会館に観劇に行った。
目をつぶって、オーケストラを導くカラヤンの姿は、もう神かと思いましたよ。
その指揮ぶりを、子供の自分はすっかり真似しちゃって、4楽章で、独唱が入ってくるところで、つぶっていた目を、かぁっ!と見開くわけですよ。
 ちなみに、多くの一般ピープルと同じように、ヲタクの子供に付き合わされた親父は、終始、意識がなく、カラヤンが目を開いた瞬間、すなわち、ワルター・ベリーのバリトンの声で、飛び起きるという微笑ましさを発揮してくれたものです・・・・。

各楽器の橋渡しが見ていても楽しい2楽章は、繰り返しがなしで、やってもらったほうが、もっと楽しめたかもです。

そして、いつも、美しいけれど、さらさらと流れてしまって不満だった3楽章が、実に気持ちがこもっていて、平穏な祈りにあふれたような名演でした。
しかめっ面のベートーヴェンでなく、わたくしは、こんな柔和な表情のベートーヴェンの音楽が好きです。
デッドな県民ホールの音響ですが、それでも、カナフィルの弦はきれいに鳴りましたし、木管やホルンもとても美しかった。

 アタッカでなだれ込んだ4楽章。
思わず、おっ!と思いましたね。
これ好き。

あとは、ど定番の展開に、ホールのお客様も一体になって、最後の燃えるようなアッチェランドに突き進むわけでした。
わたしの大好きなバリトン、小森さんの明るくも、滑らかなドイツ語により明快なソロ。
スピントする、力強い福井さん。
輝かしい佐々木さんのソプラノに、艶のあるメゾを聴かせてくれた手嶋さん。
 ワーグナー歌手がそろったかのような豪華な独唱陣でした。
欲を言えば、みなさん立派すぎ。
佐々木さんは、声がドラマティコなので、第9にはほんとうは、もっと軽いソプラノの方がいい。
 そういえば、佐々木さんのマルシャリンは、神奈フィルがピットにはいった「ばらの騎士」で体験してますし、若杉さんの指揮による「ダナエの愛」も聴いてます。
日本人歌手として数少ないバイロイト音楽祭出演経験を持つ、すごい方なのです。(バイロイトのことは、わたくしの勘違いです、のちに訂正いたします2015.03.26)

そして、合唱。
力強い響きでしたし、大きな県民ホールに、オーケストラに負けずに、その歌声を響かせました。
でも、ちょっと苦言を申さば、今少しの明晰さが欲しいところ。
毎年思いますが、数を少し刈り込んだほうがいいと。

1~3楽章は、とても素晴らしい音楽だと思います。
ベートーヴェンは、まったく神がかかっていると思います。
しかし、お叱りを受けるかもしれませんが、4楽章で、盛大な合唱は、それまでの神妙な世界を、へたをすれば、お祭りさわぎにしてしまいます。
このあたりのバランスと、4楽章の座り心地の悪さが、歳とってからどうも強く感じるようになりました。
ですから、合唱も小編成にして、楽器のように扱って、「合唱付き」じゃなくて、「合唱なし」・・・なんてのはどうでしょう
あぁ、なんて不遜なことを言ってるのでしょう。
これはあくまで、私見ですので、ご笑い草におとどめ置きくださいまし。
合唱をやられてる皆さま、第9好きのみなさま、こんなこと書いてすいません。。。。

 でも、オーケストラをつぶさに拝見しながら、感心したのは、ベートーヴェンの音楽の造り方のすごさ。
いつも、幻想交響曲を聴いて、ベルリオーズのこの曲が、第9のほんの6年後と、感心しているわけですが、その逆もありで、第9の6年あとに、幻想が生まれた、とみれば、第9のスコアには驚きがたくさん詰まっているわけですね。
 小節内の多彩な音符の数、長いのも、短い刻みも、それぞれ多様で、奏者の必死の演奏ぶりをみてると、あの分厚いポケットスコアが頭に思い浮かびました。
そして、打楽器の効果的な使用。
ティンパニの活躍も目覚ましいのですが、太鼓、シンバル、トライアングルというトルコ調の打楽器を導入したことも、ベルリオーズのファウストにも通じるものかもしれません。

そんなこんなをあれこれ思いながら、熱いエンディングを迎え、わたくしも大いに胸が高鳴り、かつ胸のすく思いで、音楽にのめり込みました。

大きな拍手と、ブラボーに包まれたことはいうまでもありませんね。
やっぱり、第9はこうでなくちゃいけません。
気持ちよかった!

アフターコンサートは、We Love神奈川フィメンバーと、お疲れのところ楽員さんにもご参加いただき、県民ホールのお楽しみのひとつ、中華街へnote

Chainatown_a

中華街も、ちょこっとクリスマスしてます。

Keichinrou1 Keichinrou2

こんな美味しいお料理をお腹いっぱい食べ、ビールと紹興酒をたらふく飲んで、そしてなにより、音楽や、いろんなお話で大いに笑い、楽しかった。

みなさま、ありがとうございました、今年も、たくさんお世話になりました。

そして、来年もよろしくお願いいたします。

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2014年11月16日 (日)

神奈川フィルハーモニー第304回定期演奏会  金 聖響指揮

Landmark_2

今年も、やってきました、冬のクリスマスに向けたイルミネーション。

みなとみらいホールへは、桜木町より歩いて向かいます。

ランドマークプラザには、11月の定期では、毎回、出来たてのツリーイルミが輝いていて、これより聴く神奈川フィルの演奏する音楽への期待と不安も、美しく飾り立てて迎えてくれます。

さて、11月は金聖響さんが定期に戻ってきました。

Kanaphil201411

  クセナキキス   「ピソプラクタ」

  ベートーヴェン  ピアノ協奏曲第3番 ハ短調

        Pf:ギューム・ヴァンサン※

  ブーレーズ    「メモリアル」

        Fl:江川 説子

  ラヴェル      バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲

      金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

   ※アンコール

  リスト       ハンガリー狂詩曲第6番

  ショパン     ノクターン第1番 op9-1

                 (2014.11.15 @みなとみらいホール)


どうですか、このプログラム。

もう前衛とは呼べないけれど、現代音楽を、前半・後半のあたまに。

それに、王道コンチェルト(でも、3番とはまた渋いねよ)と、オーケストラの花形作品をエンディングにもってくるという、ひとひねりも、ふたひねりもあるプログラム。

こんな演目がのると、いつもと違うお客さんも聴きにいらっしゃる。
もちろん、わたくしのまわりには、いつもと同じお客様がいらっしゃって、きっと、一緒になって、ひぇ~、とか、えぇ~、とか、なんじゃそりゃ、的な思いで聴いていらしたと思います。

コンサートって、これだからおもしろい。

会場の空気を感じながら、音楽を聴くこと。

 で、その空気が、張り詰めた緊張感と好奇心で満たされたのが、クセナキス。

わたくしは、クセナキスその人の存在を、大阪万博のとき以来、名前のみを脳裏に刻みつけてはおりますが、その音楽を、まともに聴くのは、実は初めて。
アバドがウィーン時代に録音した曲を持ってますが、それがなにか思いだせないくらい。
 ですから、この作品も、ブーレーズ作品も、わたくしには語る資格がございません。

尊敬する音楽仲間、IANISさんに、神奈川フィルの応援ページに、クセナキスとブーレーズ作品について、紹介記事を投稿していただきました。→こちらをご参照

ピソプラクタ=確率的行為、というお題が、こうして生演奏で聴いてみて、なるほどと納得できる作品にございました。
弦・ウッドブロック・シロフォン・トローンボーン、合計49名。

弦のみなさんが、楽器を膝に立てたりで、一斉に、それもばらばらに、無秩序に、その胴を、コトコトと叩くところから曲は始まりました。
 ウッドブロクが、カツンカツンと決めゼリフのように、合いの手を入れるなか、弦は、ちゃんと弾くかと思いきや、それぞれの奏者が、思い思いに、ちょいちょいと弾いたり休んだり。
お馴染みのメンバーの皆さんを、右に左に目で追いながら、あっ、ここで弾いた、あっやめた、あっ、ピチカートだ、おっ、トロンボーンもぶわーーっときたし、シロフォンもコキンコキンやるし、ともかく、どこもかしこも気が抜けないし、目も耳の離させない。
 いったい、どんな風な譜面なんだろ。
ひとつの譜面を二人で見ながら、全然違うとことやってるし。
 お家に帰って、聴けばきくほど、悩みが多くなる。
そして、オーケストラのみなさんも、たいへんだったご様子で、それが痛いほどわかりました。
そして、指揮者は、よく振れるもんだと感心。
 同行の造詣深いIANISさんは、もっとはじけてもいい、おっかなびっくり弾いているとのご指摘でしたが、このようなチャレンジを重ねることで、オーケストラは成長するし、わたくしたち聴き手も、おおいなる刺激を与えられて、耳が豊かになっていくのだと思います。

 その次は、ほっと一息ベートーヴェン。
でも、ウィーンの当時は、びんびんの現代音楽作曲家だったベートーヴェンさん。

配置換えで、久しぶりに出てきたバロック・ティンパニに、あっ、今日は聖響さんの指揮だった・・・・と、思い当たり、ちょっと不安が走る。
でも、クセナキスがあったし、対向配置はなくて、通常。
そして、弦も管も、みんな普通にヴィブラートかけてます。
クセナキスのあとですから、潤い不足を感じることなく、自宅に帰ったかのような、ほんわかムードを味わうことができましたよ。
ことに、第2楽章は、素晴らしく優しく、抒情的。
 そう、この日のソロは、見た目はオジサンですが、91年生まれの若きフランスのピアニスト・ヴァンサン氏で、麗しくも優しいタッチの持ち主で、明快かつ透明感ある音色は魅力的なのでした。
 オケもばっちりで、ことに、神戸さんの叩くティンパニが、スコンスコーンときれいにホールにこだまして、とても心地がよろしいこと、このうえありません。
 クセナキスの緊張感が、ここでは薄れて、わたくしは、夢の中に、誘われそうな瞬間も何度かありました。あぶないあぶない。

大きな拍手に気をよくした、ヴァンサン氏。
いきなり、リストの大曲を弾き始めました!
繊細さとともに、驚きのバリバリの爽快超絶技巧を披歴してくれましたよ。
ベートーヴェンで見せた顔と、違う姿をわたくしたちに、見せたかったのでしょう。
ともかくすごかった。

割れんばかりの拍手に応えて、あれあれ、また1曲。
 今度は、しんみりとショパン。
わたくしの周りでは、ため息すら聞こえましたよ。
若いということの可能性と、魅力をたっぷり味わえました。
 もっとアンコールをしかねない雰囲気のヴァンサン君。
それを察したかのような、われわれ聴衆も、もうお腹いっぱい、と拍手の手を休めました(笑)

Landmark_3

 後半は、短いですよ。

初聴き、ブーレーズ作品。
こちらも、IANISさんの解説をどうぞ。→こちら

これはもう、フルート協奏曲かも。
ホルン2、ヴァイオリン3、ヴィオラ2、チェロ1の室内楽スケールの、透明感あふれる音楽で、ブーレーズが率いてきたアンサンブル・アンテルコンタンポランのフルート奏者追悼のオマージュとして作曲されたそうな。
こうした曲は、ともかく身をゆだねるしかありません。
聴いていて、わたくしは、ワーグナー(とくにトリスタン)→ベルク→ウェーベルン→ドビュッシー→武満・・・・というような音楽の流れを感じ、受け止めました。
 江川さんのフルートソロが、まったくもって素晴らしかった。
音の艶と粒立ちが明快で、音楽が耳に次々に届いてきました。

次ぐ「ダフニスとクロエ」でも、江川さんは桃源郷のようなフルートの音色を聴かせてくれました。
ベートーヴェンで首席をはった山田さんとともに、神奈川フィルのダブルフルート首席は、頼もしい限りです。

そして、その「ダフニス」。
われわれ聴衆の溜飲を下げるかのような、大爆発。
文字通り、たっぷりぎっしりのフルオーケストラでもって、まさに「全員の踊り」は、やったぁーーと叫びたくなるような快感と五感の喜びをもたらせてくれました。

IANIS兄貴が言ってたとおり、ブーレーズの精緻な音楽から、そのまま、ラヴェルの「夜明け」につながるような、そんな連続演奏も望ましいと思いましたが、神奈川フィルの本領発揮と思われる、美しくも眩しい、その夜明けでした。
そして、先にふれた無言劇はステキすぎだし。
ラストは、打楽器陣が、8人で、ばりばり!
爽快すぎるラストは、聖響さんのひと振りも見事にきまった!

いやぁ、面白いコンサートでした。

Landmark_4

クィーンズスクエアのツリーは、まだ点灯してません。

また来なくちゃ。

Kamon1

そして、野毛に進攻!

今回は、新潟からお越しの仲間に、さらにほんとうに久しぶりのお方や、若いお兄さん、そして、いつもお世話になってる楽団事務局の方にもご参加いただき、まいど楽しく、飲み食べ、そして、大いに盛り上がりました。

こちらは、湘南野菜の盛り合わせ。

カラフルざんしょ?
生でパリパリ食べちゃいました。

Kamon2 Kamon3

しらすピザに、たこ焼きも焼いちゃいましたよう~

みなさま、お世話になりました。

そして神奈川フィルのみなさま、いつもいい音楽を聴かせていただきありがとう。

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