ヤンソンスのワ-グナー
マリス・ヤンソンスは、昔ムラヴィンスキーの後、レニングラード・フィルを率いて来日していた頃の馬車馬のような威勢のいいだけの指揮者のイメージがずっとあって、あまり積極的には聴かない指揮者の一人でした。ところが、この1~2年のうち、大阪キタにあるクラシック・バー「アインザッツ」に通ううち、マスターのヤンソンス贔屓に感化されて、CDを片っ端から集め、昨年のコンセルトヘボウとの来日も聴き、生ヤンソンスも体験しました。 こうして、かつての印象はすっかりぬぐい去られ、今はヤンソンスの魅力にすっかり引き込まれてしまった自分であります。 その魅力は、音楽の「若々しさ」と「躍動感」、「新鮮さ」そして「音楽への熱い情熱」これらを聴き手に対して、溢れる泉のように嫌味なく感じさせてくれるところだと思います。
そのヤンソンスがオスロ・フィル時代の91年に録音したワーグナーを聴きました。いわゆる管弦楽曲集ですが、冒頭の「マイスタージンガー」がいきいきとした快活な演奏で、シンフォニックに聴かせてくれて、後続が期待されましたが、あれれ、そこまででした。「トリスタン」や「黄昏」などは特に何も感じさせないスルスル系の演奏で、ただいい音楽がなっているだけになってしまってます。最後の「リエンツィ」で挽回し、立派な演奏となりましたが、やはりこの時点でのオペラに対する経験不足なのか、「オーケストラ・ピースとしてのワーグナーをやりました」の域を出ない感がありました。
ところがです。今の彼はもっと進化しているのです。ネットラジオで、手兵のひとつバイエルン放送響を指揮した最新のライブで、「トリスタン」前奏曲と愛の死を聴きました。 これがすばらしいのです。CDとはまったく違う。タメや思い入れがじんわりと効いてきて、熱い思いに焦がされる曲の真髄に迫る演奏なのでありました。 これには驚きました。ワーグナーを知悉したオケの優秀さもあるかもしれませんが、このコンビでのワーグナーの全曲が是非聴きたくなる罪な演奏でありました。
今月来日する、ヤンソンスとバイエルン。私も2回聴きに行きますが、トリスタンもあるのです。こりゃともかく楽しみ楽しみ。
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コメント
お邪魔します。
ヤンソンスのCD、EMIから出ている展覧会の絵(オスロ・フィル)とシェエラザード(ロンドン・フィル)をよく聴きます。溌剌として元気な演奏であったことを覚えています。
以前、マーラーの6番「悲劇的」でエントリーしたことがあります。TBさせてください。
よろしくお願いします。
投稿: mozart1889 | 2005年11月14日 (月) 17時40分
コメントありがとうございます。ヤンソンスは親父ゆずりのオーケストラ・ビルダーでもあり、オスロ・フィルを一流にしました。そんな才能の一部始終はシャンドスの初期の録音とEMIの録音との比較でよくわかります。
プログ初心者です。またよろしくお願いします。
投稿: yokochan | 2005年11月14日 (月) 22時39分
興味深く読ませて頂きました。
僕のただ一度のヤンソンス体験はベルリンフィルの来日でこの時はサントリーホールでしたが前から3列目ぐらいとオケを聴くには前過ぎる位置。それがわざわいしたのかメインのドボルザークの8番、ただうるさいだけで辟易し以降封印してました。オケをドライブする能力はあるんだろうけど少なくとも僕の求めるドボルザークとは違うかなと思って・・・。世評が評判いいのもいぶかしく思っていたのですがそろそろ聴きなおしてみる価値ありそうですね。ありがとうございました。
投稿: cypress | 2005年11月17日 (木) 10時28分
あのベルリン・フィルの演奏はテレビで放送されましたね。この時のBPOは、アバドのトリスタンしか眼中になく、私は完全に打ちのめされヤンソンスなんて記憶の外でした。いまやお気に入りの一人ですから勝手なものです。是非ニュー・ヤンソンスをお楽しみください。
投稿: yokochan | 2005年11月18日 (金) 00時02分
ご無沙汰しております。
先日の西宮公演、最高でした。
ショスタコ5番は1970年に父ヤンソンスで聴きましたが35年後に息子ヤンソンスで聴けて感慨無量です。やはり親父のDNAを受け継いだ演奏でした。最高!
投稿: einsatz | 2005年11月23日 (水) 02時23分
西宮公演聴かれたんですね。親父はムラヴィンスキーの代役の時のNHKで観ただけですので、さすがeinsatsさんです。私も昨晩聴き、来週の日本の最終公演を聴きます。12月に伺いますので楽しみにしております。
投稿: yokochan | 2005年11月23日 (水) 10時00分