ローエングリン
次のバイロイト放送は「ローエングリン」だ。「リング」が休みのため、中期の歌劇3作が上演されているのも珍しい。(マイスタージンガーとリング以外はすべて)
指揮が、数年前からパッパーノからアンドリュー・デイヴィスに変わり、今回1年置いて上演するにあたり、デイヴィスに要請あったが、ペーター・シュナイダーの登場と相成った。1年のつなぎ上演だからだろうか? が、しかしこうした場合のシュナイダーは本当に貴重な指揮者だ。代役みたいに、急場に出ては見事万全な成果を上げる。ショルティがリングを1年で降りてしまった後を救ったのもこの人だし、大植の後のトリスタンを振るのもまた、この人なのだ。かつてのシュタインのような存在といったらよいか。
今回のローエングリンも手の内に入った、安心して聴けるものだ。すごいことはない代わりに、すべてが自然で無理なくワーグナーの4拍の音楽が全編に息づいている。前日の大植との違いは歴然で、劇場の空間をすら感じさせてくれる。しかし、音楽への表現意欲というか、今回は空転してしまったが、意気込みは、若い大植の方に感じられる。そういう意味では、大植にはもう少し振らして欲しかった。
話が戻ってしまったが、シュナイダーの安定したオーケストラに乗って、歌手達もチームワーク良く、理想的な歌いぶりだ。ザイフェルトの元来リリックな美しい声もだんだんと太くなってきた。ジークフリートも視野に置いているらしいが、無理はしないで欲しいもの。夫人のシュニッツァーがバイエルンでのエヴァが見映えだけのエヴァちゃんだったのに比べ、幅広い音域が良く響きとても素敵なエルザになっていた。3幕でローエングリンに禁断の問いを発するところなど、実に迫真の歌唱である。実の夫婦だから、迫真に迫っていたのかも。(ローエングリンは押されっぱなし)考えてみると、ザイフェルトは亡くなったルチア・ポップ(大好きだった)に続き、オシドリ夫婦やってるのう。いずれも美人だし。
写真で見る、キース・ウォーナーの演出は、トーキョー・リングのようなポップな雰囲気はなく、シェークスピアを思わせるような雰囲気と演劇性の強い舞台のようだ。これは、観てみたいな。DVDにならないか? 少なくとも、パルシファルのクソ演出なんかより雲泥の差で魅力的だよ。(私にとっては)
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