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2006年3月19日 (日)

「ヴォーン・ウィリアムスのさわやかな世界」 マリナー

marriner_williams 今日のN響アワーは、ネヴィル・マリナーの特集だった。最近、忘れ去られてしまった感のあるマリナーの絶頂期の客演を取り上げた番組の見識にまずは敬意を表し、今晩は彼の「さわやか」代表作ヴォーン・ウィリアムスの作品集を取り出して聴いてみた。
 79年のN響客演時は、番組で取り上げた「タリスの主題・・」、ブリテン、ベト8や四季やメンデルスゾーンの4番、などお得意の作品ばかりを演奏し、好評を博した。当時フルオーケストラを指揮し始めたばかりだったこともあって、何のかんのという評価もあった。その少し前には、東京フィルに客演し、惑星を演奏したりしている。ともかく、本格好きの日本人には、あまり「うけ」がよくない指揮者の一人かもしれない。

私は数年前に、都響に来たマリナーを聴いたことがある。ブリテンの「シンフォニア・ダ・レクイエム」、N・シュトッツマンの独唱でヘンデルのアリア、そしてすばらしかったのが、エルガーの「エニグマ変奏曲」。巨匠と呼ぶべき風貌のマリナーは、滋味溢れる指揮ぶりで、エルガーの高貴な調べを都響から引き出していた。

そんな、マリナーの若き代表作は、今回のCDといってよいだろうか。
ヴィヴァルディからティペットまで、幅広いレパートリーを持つなかで、一番の適正は、こうした英国音楽だと思う。ドイツ物では、あまりのアッサリぶりに拍子抜けしていまうが、英国物はそうした懸念はプラスにしか作用しない。
N響でもやった、「タリスの主題による幻想曲」はイギリス教会音樂の大家の主題によるもので、静かに始まるがやがて弦楽の熱い思いを込めたような合奏が極めて感動的に歌い尽くす作品だ。マリナーとアカデミーのコンビのもっとも得意とする「弦楽合奏の極」。
古民謡を扱った「富める人とラザロ」は懐かしく、高名な「グリーンスリーブス」も正にさわやかさの代名詞ともいうべき演奏である。こんなに何気ない演奏ってかえってないだろう。
 アイオナ・ブラウンのヴァイオリン・ソロの「揚げひばり」は、この曲のエヴァー・グリーン的な要素を巧まずして描きだした演奏。これより美しい演奏、巧い演奏はあると思うが、こんなに水墨画のようにさらりと、ひばり舞う田園情緒を描きだした演奏はないと思う。

ジョン・コンスタブルの絵をあしらったジャケットが郷愁を誘い、ロンドン・キングス・ウェイホールでのデッカ録音がこれまたすばらしい。(72年の録音)

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