モーツァルト 交響曲第40番 J・テイト
若いと思っていた、イギリスのジェフリー・テイトも1943年生まれで63歳。生粋のロンドン子だが、ケンブリッジ大学で医学も修めた秀才肌で、音楽キャリアはロンドンを皮切りに、ドイツの歌劇場で叩き上げた職人である。76年のシェロー=ブーレーズのバイロイト100年リングで副指揮者を務めたくらいの劇場のキャリアの人である。同じ医学系でも、分析的なシノーポリとはかなり異なる個性だ。音を素直にシェイプアップして、すっきりと聞かせる才能の持主なのだ。体にハンデを持ちながらの努力の人で頭の下がる思いだ。
そんな彼のレパートリーの中枢は、モーツァルトでもある。
80年代指揮者をつとめたイギリス室内管とは、全曲を残したのだろうか。
今晩の最後の2曲の交響曲は、最初期の録音。
古楽奏法には目もくれず、従来のメソードで極めてオーソドックスに演奏している。
イギリス系モーツァルトのスッキリ・さわやかの系統ではあるが、もう少し踏み込みが鋭い。
内声部まで透けるように、すべての楽器に透明な響きを与えていて、時には克明すぎる場面もある。終楽章などは、その典型でかなり遅めのテンポは印象的である。
それにしてもイギリス室内管弦楽団は優秀で精度と順応性の高いオーケストラだ。
バレンボイムの頃は、かなり濃い音を出していたが、このテイトのもとでは、精緻でガラス細工のような繊細な音が響いている。2楽章の木管と弦の掛け合いなどは、文字通りささやくような微細なやりとりとなっていて聴きものである。
テイトは現在ヨーロッパ各地で、オペラを中心に活躍している様子だが、特定のポストを持たないせいか地味な活動に終始している。激務かもしれないが、この人がコヴェントガーデンの指揮者になればいいと思っている。ドレスデンでもいい録音を残している。
自国の音楽の演奏にも熱心だ。コリン・デイヴィスの後継はこの人だぁ。
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コメント
テイトが63歳ですか?
驚きです。
彼は一時、ハイドンの全集に取り組んでいたような気がしますが、あれは完成したのですかね?
投稿: リベラ33 | 2006年6月18日 (日) 20時16分
こんばんは。万年青年のイメージあるので驚きですね。ハイドンはいくつかのセットのみで終わったみたいです。この人もレコード不況のあおりを受けたひとりなのでしょうか。
投稿: yokochan | 2006年6月18日 (日) 23時42分
テイトが日本でデビューしたときは「クレンペラーの再来」というコピーで、EMIが特に力を入れていましたね。このモーツァルトなど、とてもイイ演奏でした。イギリス室内管も頑張っていますしね。
今は、EMIの激安廉価盤全集で聴いています。懐かしさがこみ上げてくる演奏ですね。
投稿: mozart1889 | 2006年6月22日 (木) 09時28分
mozart1889さん、こんばんは。出張先につきご返信遅くなりました。テイトのモーツァルトはおっしゃるように懐かしい、俗にまみれてない純粋さがありますよね。
しかし、日本のEMIは本国系の作曲家や演奏家に対して極めて消極的だと思います。ファンはますますEMI輸入盤に頼らざるを得ないことを認識してるんでしょうかね?
投稿: yokochan | 2006年6月24日 (土) 00時38分