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2006年7月 5日 (水)

モーツァルト 弦楽五重奏曲第3番 スメタナSQ&スーク

Smetana_sq 昼間の蒸し暑さにも体が慣れ出した。日本の夏の到来も近い。しかし、不規則な昨今の天候はおいそれと普通の夏を準備してくれない。
それでも夜は、窓を開けて風を通すと実に気持ちの良い風が通り抜ける。
こんな晩に、モーツァルトの室内楽はいとも爽やかでよろしい。

6曲ある弦楽五重奏曲は初期の1番を除き、中期から後期にかけての円熟期にまとめて書かれている。この形式の場合、シューベルトに代表されるように、通常の四重奏団にチェロをもう一挺追加した作品が多い。
モーツァルトは、ヴィオラを二挺として重くならずに、全体の均衡や、協奏的なバランスを考えたらしい。

いずれの作品もモーツァルトにしか書けない名作だが、長調と短調の姉妹作のような今日の「ハ長調の3番」と「ト短調の4番」の2曲がとりわけ好きである。
この調性を見て思い起こすのが、最後の二つの交響曲であろう。
ハ長調の五重奏曲に「ジュピター」のような圧倒的な壮麗感はないが、伸びやかで穢れのない晴朗な明るさに満ちているように思う。
 その典型が、下から上昇するような旋律で始まる1楽章。2楽章のアンダンテの抒情的な旋律はいつまでも浸っていたくなる。ここでのヴァイオリンとヴィオラの掛け合いが素晴らしい。3楽章はメヌエット。トリオの優美さは、単なる優雅さとは違い、深いものがある。こんなのは言葉にできない。そして終楽章はロンド形式で冒頭の単純だが印象的な旋律が繰り返されつつ全楽器が見事なまでに結びついて完結する。

こんな名曲を4人がいつもひとつの楽器のようなスメタナ四重奏団に、同郷のスークのヴィオラの全集から聴く。スークのヴィオラは当たり前のように同質化している。
こんな緊密なアンサンブルはめったに聴けるものではない。私のような楽器の素人には、ヴァイオリンを主業とする人が、こんなにヴィオラを弾けちゃうということ事態が驚きだ。

76年PCM録音のデンオンの代表盤で、名曲・名演・名録音は誉めすぎか。
こんな名曲がありながら、ミサイルは何故必要なのだろう。
あの顔がブツブツの国家主導者のオジサンの耳にモーツァルトでも700曲くらい突っ込んでやりたいものだ。
加えて、ココログの激重にも辟易とする思いだ。

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コメント

こんにちは。この曲、この演奏で持っています。
仰る通りのPCM録音で、3,4番と2,6番の2枚を。 ト短調の方をよく話題にされていて、よく耳にしたものですが、ハ長調もいいですね。
PCM録音は針音がしないというか、雑音がなくて、澄んだ音がいいです。
盤の最初から音が出始めるまでが長いのもいいが、ちょっと長過ぎて、心配することも^_^;。

投稿: | 2006年7月 6日 (木) 15時15分

丘さん、こんばんは。私もまず3・4番のレコードからでした。冒頭の無音は確かに不安になりましたね。不良品ではないかと・・・。CDでこうして聴いても、なかなかの名録音ではないかと思います。NHKのライブも時おりPCM録音による放送なんて、わざわざ言っている時代がありました。

投稿: yokochan | 2006年7月 6日 (木) 22時24分

K516が大好きなんですが、この組み合わせのディスクは多いですね。

投稿: びーぐる | 2006年7月 6日 (木) 22時40分

スメタナ四重奏団の演奏、大好きでした。
この弦楽五重奏曲も素晴らしい演奏でしたね。スークが綺麗に同化して、スメタナ五重奏団になってますもんね。
DENONがスメタナSQのLPを次々に発売していた70年代末から80年代前半が最近妙に懐かしく思えます。

投稿: mozart1889 | 2006年7月 8日 (土) 06時49分

びーぐるさん、こんにちは。初めて出たこの全集の1枚目もこの2曲の組み合わせでした。モーツァルトの短調はどのジャンルでもいいですよね。

投稿: yokochan | 2006年7月 8日 (土) 10時01分

mozart1889さん、こんにちは。デンオンのスメタナSQのシリーズはいつも彼らがジャケットを飾っていて、どれもこれも一緒に思えたりもしましたが、今見るとなかなかに豪華で重量もある手作りのようなレコードでした。私も懐かしいです。

投稿: yokochan | 2006年7月 8日 (土) 10時06分

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