ブリテン シンフォニア・ダ・レクィエム マリナー
暑い8月が近付くと、レクィエム系統の曲を聴きたくなる。
それも悲痛で、激しく、かつ慰めに満ちたものが良い。
ヴェルディとブリテンの「戦争レクィエム」がそれである。後者は、またの機会として、今晩は「シンフォニア・ダ・レクィエム」を聴く。
ブリテンがホモセクシュアルだったことは有名だが、その彼氏であるテノールのピーター・ピアーズとアメリカ滞在中の1940年、日本政府がブリテンに「皇統2600年」奉祝の作品の依頼をして来た。そして作曲されたのがこの作品である。
日本政府は仮にも帝の祝典にレクィエム(鎮魂曲)とは何事だ!演奏せず無視してしまった。ブリテンは嫌味でなく、亡くなった自分の両親を追悼する気持ちから作曲したらしいが、真相はどうだったのだろうか。
ブリテンの作品は、社会的な問題や人間関係を深くえぐりとったような切実な音楽が多い。
「青少年云々」はほんの一面で、声楽作品やオペラにこそ深遠な作品を見出せる。
かくいう私もろくに聴いてないのだが、マッシブな叫びと優しい慰めに満ちた旋律を聴いていると心を揺り動かされる思いがする。
曲は3章からなり、「ラクリモーサ」「ディエス・イレ」「レクィエム・エテルナム」が連続して演奏される。重々しい行進曲風のラクリモーサは居たたまれないくらい切実。
厳しいくらいに鋭いリズムを刻むディエス・イレ、安息を求めるようなレクィエム・エテルナム。20分そこそこの作品だが、ズシリと重たく警鐘に満ちた作品だ。
さわやか「マリナー」ではあるが、ここではかつて主席をつとめた「シュトットガルト放送響」の機能的で鋭い音を生かし、かなり生々しい演奏振りだ。
オネゲルの交響曲「典礼風」も収め、祈りに満ちた曲と演奏の1枚である。
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コメント
夏にレクイエム。
何年か前、どこかのオケの定期演奏会で、オール・ブリテン・プログラムをするというので、嬉しげに出かけて行きました。「ホルンとテノールと弦楽によるセレナーデ」とかすごく良かったのですが、結構周りは「何か券が回ってきたから来た」とかみたいな方が多くて、なんだか不思議な雰囲気でした。
休憩中、後ろのカップルの会話がすごかったです。♂「(申し訳なさそうに)・・・つまんなかったら帰っていいよ」♀「(努めて明るく)いいよいいよ、せっかく誘ってくれたんだし。最後までいるよ」
イギリス音楽ファンの端くれとして、何故か凄く申し訳ない気分になりました。(すいません長くて)
投稿: naoping | 2006年7月29日 (土) 09時23分
こんばんは。オールブリテン・プロとはいいですね。日本では、なかなか巡りあえないコンサートでしょうが、悲しいけど、興味ない人にはつらいでしょうな、ブリテンは。「青少年」も本格的にやると、凄くいい曲なんですが、最近あまり取り上げられません。
投稿: yokochan | 2006年7月30日 (日) 23時26分
シンフォニア・ダ・レクィエムは、ブリテンの最高傑作であるだけでなく、20世紀の最高の管弦楽曲ではないかと思います。皇紀2006年に実際には、当時,演奏するだけの力が無くて演奏できなかったのは残念ですが、日本政府がこの傑作が世に現れる事に寄与したことは誇っていいのではないでしょうか。(受け取りを拒否したというのは俗説のようです。)今は、ロジェストベンスキー/BBC響のCDをもっぱら聴いています。個人的には、ラトル版、自作自演盤よりも好ましいと感じています。
投稿: ODA | 2009年10月15日 (木) 21時44分
ODAさま、こんばんは、コメントありがとうございます。
この曲が、最高傑作であること、御意にございます。
俗説に振り回されておりますが、日本政府の皇紀2006がなければ、生まれえなかった名品ですね。
ロジェストヴェンスキーは、BBC時代に英国ものをたくさん演奏してくれましたね。
ご指摘のCDは未聴なのですが、ディーリアスやRVWなど、意外な名演がありまして驚きです。
コメントいただき、この曲が聴きたくなってきました。
投稿: yokochan | 2009年10月15日 (木) 23時48分
Yokochan様 この曲の魅力に取り憑かれて、いろいろな演奏を聴いています。ルドルフケンペ 、リボールペシェック、アンドレプレビンらの指揮したCD、さらに、NAXOSミュージックライブラリー(online)で3種類、その中には、若き日のチェリビダッケもありました。これらは、それぞれに美しいです。ただ、緊迫感のあふれるロジェストベンスキーが自分の感覚にはピッタリします。今後も色々な演奏で聴き続けたいと考えています。
投稿: ODA | 2012年2月 4日 (土) 16時29分
ODAさん、こんばんは。
プレヴィン以外は、あげられた2種は未聴です。
ありきたりかもですが、ラトルの演奏が好きだったりします。
チェリにもあるんですね、この曲の演奏。
ロジェヴェンのBBCは、買いそびれてまして、いつか手にいれたと思ってます。
ロジェヴェンさんの、英国ものは、かなりいいですから。
ディーリアスまで、素敵に演奏してます。
また、いい演奏をお聴きになられましたら、是非お知らせください。
投稿: yokochan | 2012年2月 5日 (日) 00時13分