ファリャ 「スペインの庭の夜」 ラローチャ
ファリャの音楽はスペインそのものを感じさせてくれる点で、極めて民族楽派的な存在であろう。スペインの南、アンダリシア地方の生まれで、パリに学んだ時は、デュカ、ドビュッシー、フォーレ、ラヴェルらとも親交があったという。パリでオーケストラの作曲技法に磨きをかけたが、大戦でパリに止まらず、故郷に帰らざるを得なくなったことは、後のわれわれにとって幸いだったかもしれない。
いかにも、スペイン的な作品の数々がその後も生まれることとなったから。
でも、スペイン的とは何だろうか。地理的には、フランスのとなり。ポルトガルのノホホンとした雰囲気とも違う。歴史的には、ローマ人の支配、対岸のイスラム教徒の侵略、ジプシーの台頭等のエキゾチックな諸要素が絡みあって、独特の文化が出来あがったのだろう。
独特な音階を持つ旋法などもそうした要素が背景にあるのかもしれない。
素人の発想はここまで。
交響的印象「スペインの庭の夜」は、3楽章からなるピアノ協奏曲のような作品だ。
有名なるクラナダの「アルハンブラ宮殿」の印象を捉えたもの。
Ⅰ 「ヘネラリフェ(庭園)にて」
Ⅱ 「はるかな踊り」
Ⅲ 「コルドバの山の庭にて」
こんな詩的なタイトルでも、異国情緒に引きつけられてしまうが、音楽もまさにそうしたムードに溢れた期待通りのもの。
夜の庭に滴り落ちる露のきらめき、濃い花の香り、遠くから聞こえてくる祭のざわめき、静かに、涼やかに流れ落ちる噴水・・・・。
Ⅲのきらめくようなピアノに身を委ねていると、心はもうスペイン、アンダルシア地方。
昼間は灼熱の暑さなのに、夜は涼しく、冴えた空気が気持ち良い。こんな感じだ。
ちなみに、私、スペインには行ったことありません。ツアーならともかく、治安が今ひとつでかなりおっかないらしい。だから音楽で我慢する。ここにスペインの酒「カヴァ」と「イベリコ豚」や「パエリア」なーんてものがあれば申し分ない。
演奏は、「ラローチャのピアノに、コミッショーナ指揮のスイス・ロマンド管」で、この曲の理想的な演奏だ。余白(?)に「アンセルメの三角帽子」が入っていて、これまた超名演。
冒頭のカスタネットに、男性の掛け声、ベルガンサの物憂い歌が始まると、部屋はまたスペインになってしまう。
音楽による贅沢な楽しみは、こんなところにもある。
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コメント
ファリャは2枚組みのピアノ曲集のディスクがありますが、独特のリズム・メロディーが楽しいです。
投稿: びーぐる | 2006年7月30日 (日) 23時20分
ファリアの真髄はピアノ音楽でしょうね。リズムはいかにもスペイン。複雑な歴史から生まれた独特なものなのでしょうね。
投稿: yokochan | 2006年7月30日 (日) 23時29分