コープランド 「アパラチアの春」 バーンスタイン
まったく嗜好を変えて、アメリカ音楽である。
1900年ニューヨーク、ブルックリン生まれ、1990年に惜しまれつつ去った「アーロン・コープランド」はまさにアメリカの生んだアメリカの作曲家である。生涯独身を通したらしいが、バーンスタインとはよき朋友であったというから、何やら想像してしまう。
そんなことはともかく、コープランドのバレエ音楽はお国ものばかり。
この「アパラチアの春」、「ビリー・ザ・キッド」「ロデオ」「エル・サロン・メヒコ」など。
題名だけで楽しくなるし、映画のワン・シーンを思い起こしてしまう。
バレエ全曲から、組曲版としたもので26分あまり。
アパラチア山脈地方に住む、若い開拓者の男女の結婚式の様子を描いたほのぼのとした音楽で、登場人物はその二人と、村の老女、信仰運動家の4人だけ。
8曲のシーンが連続演奏される。物語の内容は、たわいもない。
結婚式とそこに集まった人の紹介、披露宴におけるダンス。シェーカー教徒の踊り。
シェーカーはまさにシェイクの意味で、「振る」。イギリスに18世紀勃興したキリスト教の一派という。最後は、新居に新郎新婦だけが残され祈りを捧げる。
ここに付けられた音楽が、実に素敵だ。
静かにゆるやかに始まり、希望と自然を賛美する気持ちに満ちた音楽に終始する。
シェーカー教徒の賛美歌を用いた部分は、一度聴いたら忘れられない。
静かに祈りに満ちた終曲を聴いていると、西部劇の雪の頂の山脈をバックにした、別れのシーン、そう「シェーン」を思い起こしてしまった。
いい曲だ。
バーンスタインがロサンゼルス・フィルを指揮したDG盤は82年録音。同時期にガーシュインも録音したが、ロスフィルのカラッとした明るさがバーンスタインのキビキビした指揮にとてもマッチしていて文句ない。
ほかに、W・シューマン「アメリカ祝典序曲」、バーバー「弦楽のためのアダージョ」、自作「キャンディード」序曲というこれまた抜群のカップリング。
しみじみムードの曲と元気はつらつ曲が交互に演奏され、聴いたあとの気分がすこぶるよろしい。
DGに録音を集中した頃のバーンスタインは、各国のオーケストラと個性的な録音を残した。ウィーン・フィル、コンセルトヘボウ、ニューヨークフィル、ボストン響、シカゴ響、ロスフィル、ロンドン響、フランス国立管、バイエルン放送響、ローマ・チェチーリア響など。
もう少し、タバコと酒を控えて自制してくれていたら、もっと素晴らしいオケとの出会いもあったかもしれない。
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コメント
どうもアメリカのクラシック作曲家は食わず嫌いか、全然ディスクが有りません。
投稿: びーぐる | 2006年8月 5日 (土) 22時41分
一度、食していただくことをお薦めします。
アメリカ独特の大らかさに満ちた曲が多いです。
投稿: yokochan | 2006年8月 5日 (土) 23時16分
yokochanさん、こんばんは。TBありがとうございます!
英国の民族的な(?)音楽がお好きなyokochanさんならば、この曲を愛好されることは想像に難くないはずですが、やはりこのようなエントリーを拝読させていただくと、我が意を得たりと嬉しくなります。
ワーグナーに熱を上げて、コープランドも好き…やはり嬉しいの一言に尽きます。
またよろしくお願いいたしますm(_ _)m
投稿: Niklaus Vogel | 2006年12月12日 (火) 23時42分
TB・コメントありがとうございます。
お褒めいただいて、私も嬉しい~の一言につきます。オリジナル盤と、スラトキン、マリナー、聴きたい演奏がたくさんあって困ってます。
投稿: yokochan | 2006年12月13日 (水) 00時07分