エルガー 交響曲第1番 ノリントン
サー・ロジャー・ノリントン、この英国オックスフォード生まれの指揮者は、エイドリアン・ボールトに学んだ筋金入りの英国音楽の使者でもある。
ロンドン・クラシカル・プレイヤーズを皮切りに、98年以来のフル・オケの手兵シュトットガルト放送響と蜜月を続け、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーン、ベルリオーズ、シューマン、ブラームス、マーラーと次々に個性的な録音をなし、一躍大注目のコンビになってしまった。
ノンヴィブラート奏法を、ドイツの放送オーケストラに完全に植え付けてしまったことも驚きだが、対するオーケストラの柔軟さ、優秀さにも特筆すべきだ。
先にあげたドイツ・フランスのロマン派はもとより、ハイドン、モーツァルトも得意分野だが、エルガー、V・ウィリアムズ、ホルストなども新鮮な切り口で手掛けてくれる。
この先何を繰り出すか、楽しみなコンビでもある。
2001年11月に来日したサントリーホールの公演、エルガーを演るとあって、期待とともに出かけた。
後日NHKで放送されたものを撮ってあつたので、本日試聴した。
ノリントンは語る、「エルガーは、ブラームスとワーグナーを融合した作曲家である」と、うんうん、激しく同意だ。「古典的な抽象性にストーリー性」を持ち込んだ。
なるほどの見地であり、私が英国音楽に見出す世界もまさにこれかもしれない。
エルガーにおいても、厳しくノンヴィブラート奏法が徹底されていて、弦楽器奏者を映像でみているとよくわかる。ここで思い切り泣きのヴィブラートをかけたいだろうにそうならずに、ツィーツィーと流れる。管楽器群の彩りも地味で、全体の色調はセピア・カラーともいえるくらいだ。透明で清潔感溢れる響きもこのコンビならでは。
こんな渋くも素晴らしいエルガーが響き渡っているが、当のノリントンの指揮振りは顔の表情も豊かで、両手を大きくぶらぶらさせているだけに見える。
客席にいた時も、エルガーの時はなかったが、「魔笛」序曲や、ベートーヴェンの2番の時など、体半分を聴衆の方に向けて、「どう、どう?」と言わんばかりのパフォーマンスを見せてくれた。拍手に応える様も、客席に手を振ったり、遠くを見やる格好をしたりと、愉快でひょうきんなのだ。
ベルリン・フィルの定期に登場したときのこの曲の映像も残っているはず。ナイジェル・ケネディとのパフォーマンス合戦のようなブラームスも演奏されている。
こんなナイスなノリントンの再来日を2005年に聴いた。マーラーの巨人である。
また今年は、N響に客演する。早速、V・ウィリアムズの抒情的な第5交響曲を演奏するプログラムのチケットを入手した。是非ともノリントン体験をお薦めしたい。
エルガーの1番は、最愛の曲。冒頭の旋律が徐々に盛り上がって行く時、思わず気持ちが高ぶっていき涙ぐんでしまう。3楽章のノーブルな旋律にもホロリ。最終段階で、冒頭の主題が全奏で再び現れると、今度は涙を押さえられない。
ノリントンの愉しそうな指揮ぶりをもってしても、涙は抑えられなかった。
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コメント
私もサー・ロジャーのエルガーは聴きに行きました。サントリーじゃなくて横浜だったような気がします。すごい良かったですね。思わずCDも買ってしまいました。
投稿: naoping | 2006年9月 6日 (水) 00時33分
こんにちは。私もこの交響曲が大好きです。
ノリントン/シュトゥットガルトの1999年ライヴのCDをゲットしました。
かなりユニークな指揮者らしいですね。
ともかく一聴して物凄く魅力を感じました。
後にゲットしたコリン・デイヴィスもすばらしい、これは正統派で、ノリントンはもっと個性が
強い、そんな印象ですね。
投稿: 丘 | 2006年9月 6日 (水) 08時14分
naopingさん、こんばんは。
私もこの演奏会を聴いて、サー・ロジャーのファンになってしまいました。前半のベートーヴェンから度肝を抜かれました。
投稿: yokochan | 2006年9月 6日 (水) 22時13分
丘さん、こんばんは。コメントありがとうございます。エルガーの交響曲はいずれもいいですね。
丘さんに教えていただいた3番も以来しっかりお気に入りです。ノリントンはいずれ、他の2曲を手掛けてくれそうで楽しみであります。
投稿: yokochan | 2006年9月 6日 (水) 22時16分
今晩は。過去記事に書き込み失礼いたします。テイト&ロンドン響の演奏でこの曲に開眼した越後のオックスです。ノリントン指揮のこの演奏をhmvに注文しました。今、出荷完了のメールを楽しみに待っているところです。テンポの速い時代楽器風の演奏が大好きなもので。他にも悪ノリしてクリダのリスト・ピアノ作品集やリリングのバッハ大全集まで注文してしまいました。全部聴けるかな・・・
大河ドラマ「坂の上の雲」、楽しみに見ています。泣いたり笑ったりしながら見ています。正岡子規や広瀬少佐が死ぬシーンでは涙腺が大決壊してしまいました。ドラマ自体もさることながら久石譲さんの音楽が最高です!
投稿: 越後のオックス | 2010年12月23日 (木) 00時48分
越後のオックスさん。こんばんは。
なかなか旺盛な視聴意欲ですね!
素晴らしいです。
フランス・クリダは、わたしの世代には、ケフェレックやコラールと並ぶ美人女流として憧れの存在でして、彼女のリストがボックス化うぃたことに驚いていた矢先でした。
リリングもそう、NHKが呼んだシュトットガルト・バッハの来日で、受難曲の素晴らしさ、そしてエヴァンゲリストのA・クラウスの見事さを知ったのでした。
ノリントンのエルガー、存外普通かもしれませんが、再来年の1月にN響に来て、この曲を指揮してくれます。
ノリントンは賛否激しいですが、わたしは確かな学究を経た解釈をする生真面目な人として好きですね。
坂のうえ・・・、ビデオにとるばかりで、今年はまだ見てません。。。。
投稿: yokochan | 2010年12月24日 (金) 00時48分