ゲオルギュー&アラーニャ ヴェルディ2重唱 アバド指揮
さて、前回人気絶頂の「ネトレプコ」を取上げたばかりだが、2物賜いしもうひとかた「アンジェラ・ゲオルギュー」を忘れては片手落ち。
ショルティに起用され、一挙に花開いた彼女は、ネトレプコの少し先輩にあたる。ルーマニアの音楽の環境ではない普通の家庭に生まれ、ものすごい努力を経て歌手になった。ルーマニア特有の黒髪にエキゾチックな容姿は魅力的だ。ネトレプコは、その名前ゆえ苗字にチャンをつけてしまったが、ゲオルギューにちゃんはおかしい。この場合は「アンジェラちゃん」と呼びたいが、彼女は大人の女性のシックな魅力で一杯だ。
しかも、ダンナがイケメン・ナイスガイのテノール「アラーニャ」ときたもんだ。 「ネトレプコにMr.ビーン」は少し憎らしいが、「アンジェラにロベルト」はもう音楽的にも同質性が漂っているし、文句なしの実質コンビ。
舞台に録音にますます数が増えている。
こんな実力派同士のコンビ、しかもヒーロー・ヒロインのコンビはかつてないかもしれない。
今回のCDは、1998年に録音された「ヴェルディのオペラ・デュエット集」。
ここでも贅沢に「アバドとベルリン・フィル」がバックをつとめている。
この二人、もとはリリコからスタートしているが、徐々にドラマティコに役柄を拡張して行き、今ではカルメンやトスカ、マンリーコまでも歌うようになった。
無理をしてレパートリーを広げているわけではなく、慎重に自己の個性を活かしながら知的な歌に徹していて、その知能的歌唱は聴く側に快感にも似た爽快感を与える。
ドイツ物以外はすべてこなす驚異的レパートリーを既に手にいれているが、役の掘り下げも時代にマッチした重々しさのない、クールなもの。
アバドとベルリン・フィルは隅々まで目の行き届いた相変わらず見事なもの。ヴェルディの沸き立つ興奮よりは、悩む登場人物の心理をとらえた、これまた知的なアプローチで、二人の歌にぴったりだ。
欲をいうと、せっかくのベルリン・フィルなのだから、もう少し伴奏ばかりでない部分も選曲して欲しかった。音楽が二重唱ばかりだと、単調におちいり、全体が少し平板に思う。
まあ、これは贅沢な注文。
舞台ばかりでなく映像も、技術の加速度的な進歩で、歌手の超アップが部屋でも楽しめるようになり、オペラのあり方もかわりつつある。 歌手達も自助努力をして、美しい体とルックスを声とともに獲得・維持しなくてはならない時代になった。だから、イイ女・イイ男の歌手はこれからも続出するであろう。(たぶん)
千葉の佐倉のコスモス。
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