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2006年10月 7日 (土)

ハーディング/マーラー・チェンバー・オーケストラ 演奏会

Mahler_chanber 10月6日(金)新宿オペラシティにて「ダニエル・ハーディング指揮のマーラー・チェンバー・オーケストラ」の演奏会を聴いた。
演目は泣く子も黙る(たぶん)、モーツァルトの最後の交響曲3作。

この日は、朝から風雨が強烈で、外出が多い日だっただけに全身ずぶ濡れ。そんな状態でホールに駆け込んだ。
翌日(土曜)は、新潟の長岡で朝から仕事(めでたい神事だけど)が控えていて、車で向かうつもりだっただけに、天気と交通事情にはヒヤヒヤだった。

さて、 そんな悪天候にかかわらず、満席のホールに小編成のオケのメンバーは規律よく定刻にサット登場。ハーディングも、すぐさま現れた。

始まった、第39番序奏は、かなり速めのテンポで流れるように始まった。ティンパニの強打もなかなか効いている。どうなるかと思ったら主部は普通にさわやかな展開となって、気持ちが実によい。美しい2楽章も音楽に思い切り身を委ねることができた。3楽章は予想通り、快速で弾むような楽しさ。クラリネットを伴奏するオケの面々はにこやかに楽しそう。終楽章もノリのいい生き生きとした演奏でモーツァルトの楽しさ満点。

第40番は切実な切迫感が全体に満ちた厳しさが押し出されたものとなった。1楽章が終わって、緊張から解かれ息をつくことができた。
続く二つの楽章を比較的和やかに終えたあとは、再び悲壮な終楽章がめぐってきた。フレーズとフレーズの間の取り方がそうした緊張感を巧みに導きだしていたように思う。こうしたパウゼは、他の曲でも効果的に使われていて、好感をもって聞いた。

最後の41番は、大交響曲に仕立てるかと思ったら、軽やかで俊敏なジュピターとなった。ここではティンパニの活躍が目立った。おっと驚くような強打を見せたり、素手で叩いて見せたりとするものだから、目は結構ティンパニにいってしまう。ティンパニがお休みの2楽章の弱音でやり取りされる旋律が橋渡しされながら進んでいく様は夢のようだったし、楽員同士の微笑みも羨ましい光景。終楽章では、じわじわと盛り上がり、最後にはヤッタァという声がオケから沸き上がらんばかりの終結を迎えた。            

全体に、若いハーディングの意欲的な試みが溢れており、これにオーケストラが全面的に賛同して乗りに乗った演奏が出来上がった。随所におやっという場面も多く、サプライズのモーツァルトは心から楽しめた。         
指揮棒を持たず、両手を大きく降りながら指揮するハーディングは、小振りで華奢。イ
ーンと唸り声も上げながら、音楽に没頭する様は印象的だし、若き日のアバドの姿に似ている。
古楽奏法をすっかり身につけ、オケもろとも普通にふるまっている。少し前ならそこに止まるだけでも斬新だった。このコンビは、そこに今モーツァルトが東京にいて、筆を取り、筆を置いたかのような、生々しい新鮮さを見せてくれた。

すべての繰返しをおこない、曲ごとに15分休憩をいれて、終演は10時近かった。
感動したわれわれ聴衆は、アンコールを望む(序曲とか)気持ちはあったけど、本当によかったから熱烈な拍手を送った。
楽員のなかには、「もう少しやろうよ」の雰囲気もあった。
ハーディングは、聴衆に向かい・・・「モーツァルトのこれらの3曲はパーフェクトにできている。だから、このうえ、アンコールは難しいのです」・・・・とうようなことをスピーチして、コンサートはお開きとなった。

素晴らしい若い集団とそれを率いる紅顔の指揮者。音楽がほとばしり、私達に元気を与えてくれた。モーツァルトの音楽がいいから、だけじゃなく、音楽に取り組む姿勢の美しさや熱意が音になり、ホールに満ちたのだ。

すっかり満足の体で、新宿をあとにしたが、おいおい、私の住む千葉方面は雨の影響で電車のダイヤがぐちゃぐちゃ。最後はタクシーを利用したりして、夜中の1時頃に帰還。
土曜朝は、4時半に出発し、関越道をオペラを歌いながらひた走ったのであった。

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コメント

いつもご一緒ですね。僕も凄い聴きものに当たった、との感じ。今、一生懸命HPづくりです。
オペラシティには17:45ごろつきましたが、早い人はいるもので、12番目位だったか・・・。でも、2階C1ー6で聴けました。ハーディングも凄かったけど、MCOには驚かされました。驚愕です。これが母体だからLFOも最高のオケなのですね。
13日のサントリーはPM5時半前には並ばなきゃ。暇つぶしに文庫を老眼鏡かけてイヤホン・ステレオを持っている男がいたら私だと思ってください。

投稿: IANIS | 2006年10月 8日 (日) 00時09分

どこにいらっしゃるかと気にしてました。
私は出遅れて、最前列。第2ヴァイオリンの前でした。第2にの最終プルトの女性、ヴィブラートひとりかけまくりでした・・・。
 13日は、仕事無視で頑張りますよ。
探しますね。今日は長岡でした。

投稿: yokochan | 2006年10月 8日 (日) 00時30分

ティンパニを素手で?
一体どんな音になるのでしょう。
取り合えず僕は12月にN響で「ジュピター」待ちデス。
しかしN響大阪定期はチケットが高い!
S席とA席のみで8500円と7000円。
二階の一番端でも7000円!

投稿: リベラ33 | 2006年10月 8日 (日) 16時42分

リベラさん、こんばんは。
素手はですね、3楽章の出だしの部分。素手というか、指先4本を使って軽くなでるように叩いたのでした。
N響はほんと高いですよ。外国のオケが聞けちゃいます。

投稿: yokochan | 2006年10月 8日 (日) 18時39分

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» ダニエル・ハーディング [一流日記]
あなたより先に死ねるのは、私にとって一つの幸せだと思います ― ラシーヌ グリーンホール相模大野でダニエル・ハーディング指揮マーラーチェンバーオーケストラ。 これが、本当に素晴らしい演奏会だった。 モーツァルト交響曲第39番 遅いテンポで始まり、とろける様な第1楽章。 天上の響きのような柔らかい第2楽章。 そして、鬼気迫る第3楽章から圧倒的な響きの第4楽章へ。 もう、震えが止まらないほどの興奮。 モーツァルト交響曲第40番 しかし、一転、この曲ではその輝かしい響... [続きを読む]

受信: 2006年10月 8日 (日) 11時12分

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