ラフマニノフ 交響曲第1番 デュトワ
ラフマニノフとは、当然のようにピアノ協奏曲の第2番から始まり、第3番を親しむようになり、ピアノ作品を通じて出会いであった。
管弦楽作品は、後にこれまたよくあるように、第2交響曲をプレヴィンの演奏で聴いてからだが、あまりの悠長な作品になかなか馴染めなかった。
それが一転したのは、FMでエアチェックした「ヤン・クレンツとケルン放送響」の演奏を繰返し聴いてからだ。滋味と憧れに満ちたその演奏で、一気にラフマニノフが近い存在となり、以来他の交響曲や管弦楽作品、声楽作品、そしてピアノ曲などを聴き親しむようになった。
交響曲第1番は、ラフマニノフが意欲満々書いた作品だが、1897年かのグラズノフ指揮による初演が惨たんたる失敗に終わり、ただでさえ神経質で控えめだったラフマニノフは精神的に大きなダメージを受けたとされる。スコアも消失し、本格的に復活したのは戦後のことだという。
こんないわく付きながら、第1交響曲はラフマニノフらしい歌とロマンテックで耽溺的な場面に満ちている。
第1楽章は、冒頭から弾むような旋律ではじけるように始まるが、そのあとはお決まりのラフマニノフ・ワールド。思い切り切なく第2主題が歌われ、その後再び冒頭のリズムが回帰する。ここで明らかになるのは、「グレゴリア聖歌」の高名な「ディエスイレ」風の主題。
この主題が全曲に影のように付きまとう。
第2楽章は、スケルツォ的楽章。散文的な印象を与えるが、ロシアの大地のような地の底から湧きあがるような旋律が魅力的。
そして詩的な第3楽章、これぞこの曲の真骨頂ともいえるロマンテックなラフマニノフ節が聴かれる。うなりをあげるかのような低弦、それに拮抗するかのような耽溺的な木管のソロ、歌いまくるヴァイオリン。2番の先取りの姿がここにある。
一転、終楽章の印象はやや散漫だ。とらえどころがなく、開放的に感じる一方、ジワジワと色々な旋律をかき集めながら盛上げてゆく。その絶頂で、遂にドラが一発鳴らされ、最後には重々しい雰囲気に満たされ、曲はこの作曲者独特のエンディングを迎える。
すなわち、ジャン・ジャンである。
「ディエスイレ」はよっぽどラフマニノフの心を捉えたのであろう。
「パガニーニ・ラプソディー」、「死の島」、「交響的舞曲」などに現れるモティーフとなった。
「デュトワとフィラデルフィア管」の組合せはラフマニノフのみ録音した。作曲者ゆかりのオーケストラを贅沢に起用したデッカ最後の頃のCDは、青・赤・緑のと色を変えた、統一デザインのジャケットで、全集を1枚1枚集める喜びも与えてくれた。
デュトワがこうした曲で見せる聞かせ上手の手腕は目を見張るものがあるが、フィラ管のとの手探り状態も若干あり、オケの音は華麗というよりは少し重めに感じる。
これはこれで上質のラフマニノフに思うが、当時の手兵モントリオールのほうがクールな演奏が出来たのではないかとのささやかな願望もある。
この1番は、アシュケナージがオケの魅力もあって例外的に良い演奏。
あと、イギリス指揮者「アサートン」がN響を振ったFM録音が個人的には好きだ。
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コメント
今日は。過去記事に書き込み失礼いたします。
トリスタン観劇お疲れ様でした。
ラフマニノフの第1及び第3交響曲はマゼール&ベルリンフィルの演奏しか持っていなかったのですが、先日、前から欲しいと思っていたアシュケナージ&コンセルトヘボウの交響曲全集を買いました。シドニー響を指揮した新盤はオケの技量なんかが不安だったもので・・・アシュケ旧盤に私は大いに満足しました。マゼールとアシュケ(それも80年代)では、バトン・テクニックなんかマゼールの方がずっと上だと思うのですが、アシュケの方がずっと私に感銘をもたらしてくれました。マゼールのラフマニノフは交響曲3曲に、交響的舞曲や小品も聴きましたが、新ウィーン楽派みたいなキツイ感じがしてあまり感心できませんでした。アシュケにとってラフマニノフはレニーにとってのマーラーやグールドにとってのバッハのような掛け替えの無い作曲家なのだと思います。デュトワやスラトキンや尾高先生の演奏も聴いてみたいと思います。
それではブログ主様、よいお年をお迎え下さい。
投稿: 越後のオックス | 2010年12月31日 (金) 10時42分
越後のオックスさん、こんにちは。
アシュケの1番は、わたしも好きな演奏です。
やはりコンセルトヘボウのヨーロピアンサウンドが効いてます。
あと、マゼールは3番と交響的舞曲しか聴いてませんが、こちらはベルリンフィルの先鋭さが出た演奏に思いますが、以外に好きなんです。
ラフマニノフの交響曲は、はまるとドンドン聴きたくなりますから、是非に。
今年1年ご覧いただき、コメントも数々頂戴しありがとうございました。
よい年をお迎えください。
投稿: yokochan | 2010年12月31日 (金) 13時03分