ブルックナー 交響曲第9番 ハイティンク指揮
「コンセルトヘボウ・シリーズ」はいよいよ第4代音楽監督「ベルナルト・ハイティンク」の登場。ベイヌムの急逝を受けて、1959年、32歳の若さでコンセルトヘボウの主席指揮者に就任した。(在任は1959~1988年)
若さゆえ、ヨッフムを補佐につけての就任で、ベイヌムの死後の急な布石だったかもしれないが、オランダ国が自国の生え抜き指揮者にこだわり、いかに嘱望していたかがわかる。
当初から、フィリップスもお国のトップオケだけに、その録音に積極的で、ブルックナーとマーラー全集は70年代初めに完成させた。日本では、評論家筋の憶えが芳しくなく、散々だったが70年代半ばの来日や、新録音がようやく評価されその頃から名指揮者の仲間入りをした。
実に、評価の机上にのるまで20年あまり。
コンセルトヘボウとともに、熟成した「じっくり男ハイティンク」。同時に兼任した「ロンドン・フィル」を建て直し、渋く落ち着きのある「コンセルトヘボウ」のようなサウンドに変貌させた。
このLPOは、ハイティンク後ショルティやテンシュテットの時代になり、かつてのいぶし銀サウンドは変貌し、今はあまり耳にする機会も減ってしまった。(マズアではどうもまずい)
なんだかんだ、オーケストラ・ビルダーでもあるハイティンクである。
今回の「ブルックナーの第9交響曲」は1980年の録音で、CD化されてすぐに薄給から購入したが、何と4000円もした。このCDをケースごと持ってみると、今のものよりズシリと重い。演奏スタイルもそうだけど、技術の進歩と共にみんな軽く・スリムになってゆく。
このブルックナーも重量感溢れ、音の密度も濃く本当に充実感が隅々にみなぎっている。
1楽章、ホルンの朗々たる響きを残しながら、コーダに向かっていくところに大いに感激。
2楽章の着実・整然たるスケルツォは立派すぎ。
3楽章、無常の中に救いの響きが心を打つ音楽は、マーラーの世界にひたすら近付いているようでこれまた感動。
ハイティンクの時代がコンセルトヘボウの黄金期ではないかと思う。
ハイティンクも前任と同様、弦出身の指揮者で、弦の幾重にも重なりあう響きの美しさは特有で、低域から高域までのピラミッド構造は安定感抜群。
フィリップス録音もひとつのピークに達していた。
オーケストラ・ホール・指揮者の個性が三位一体となって造りあげられた音楽芸術。
ハイティンクは、今や最後の本格派として「ひっぱりだこ」だが、古巣との録音も是非継続して欲しいもの。
| 固定リンク
コメント
マーラーほどブルックナーを頻繁に聴く方ではないですが、このハイティンクの演奏はベストだと私は思っています。
冒頭からそのスケールと響きの充実に引き込まれてそのまま第3楽章まで連れて行かれてしまいます。
このディスクでハイティンクの凄さを再認識しました。
投稿: ピースうさぎ | 2006年12月19日 (火) 22時33分
私も9番はこのハイティンク盤ですね。ついでに8番もこのコンビが最高です。いいオーケストラと優れた指揮者が生み出す音楽は、優れた建築物のようであります。
投稿: yokochan | 2006年12月19日 (火) 23時28分
yokochanさん、おはようございます。TBありがとうございました。
このジャケット、懐かしいです。やっつけ仕事のような妙なジャケットでした。
そしてCDは高かった!本当に高価でした。4000円。ですから、僕は買えなかったのです。今僕が聴いているのは1500円盤です。隔世の感があります。今や中古盤などでもっと安価で入手できるのでしょう。
素晴らしい演奏であり録音だと思います。コンセルトヘボウ管の最良の姿が聴けると思います。
投稿: mozart1889 | 2007年1月11日 (木) 05時52分
mozart1889Ⅰさん、コメント・TBありがとうございます。
そう、8番も変なジャケットでしたね。
ジャケットと演奏の中身がこんなに違うCDも珍しいです。
あの頃の4000円は、今の何の価値に相当するんでしょうかねぇ?
投稿: yokochan | 2007年1月12日 (金) 01時13分
連投失礼いたします。私めの記憶が正しければハイティンクは最近コンセルトヘボウとブル9を再録音し、その演奏はDVD化されているのではないでしょうか?記事のお題になっている演奏は中学生の時に図書館で聴きました。ジャケットはマエストロ・ハイティンクが楽譜を読んでいる写真でした。ブーレーズやW・メストやノリントンといったアッサリ・サバサバ系のブルックナーを好む私ですが、ハイティンクのような重厚で濃密なブルックナーもまたいいものですね。
私が大好きだった例の恩師は結婚されたそうです。それもかなり以前に。亡くなったのではなかったのですね。安心しました。私のほうは気が会う女性がいますから大丈夫です。その女性がサインをしてくれたシューベルトのオペラのCDを宝物に最近はしています(笑)。
投稿: 越後のオックス | 2009年11月18日 (水) 03時31分
越後のオックスさん、こんばんは。
ハイティンクの新ブル9は、NHKで放送され録画済みです。これがまたとてつもない名演です。
ペライアとのシューマンも演奏されました。
NHKの功罪はDVDが売れなくなることと、私のような人間が喜ぶことです(笑)
憧れのご恩師の件は吹っ切れてよかったですね。
CDにサインとはなかなかやりますね。
彼女ともども大事になさってください。
投稿: yokochan | 2009年11月18日 (水) 23時32分
管理人様へ:
またもや古い記事の中から懐かしい録音を見つけてしまいました。
ブルックナーの作品で特に愛聴しているのは7番、9番と「テ・デウム」あたりです。ブル9で聞き込んだ演奏、LP時代はシューリヒト・VPO、デジタル~CD初期がこの演奏、最近はハイティンク・LSOのSACD盤です。NHK・BSの放送は残念ながら録画しそびれました。
LSOとのSACD盤は録音状態が素晴しいうえに、ハイティンクの指揮はさらにスケールが大きくなり、枯れすぎずかつ無駄な力みを全く感じさせずで、見事です。ハイティンクの晩年を代表する名演の一つと思います。私にはヴァント晩年のBPOやMPOとの録音よりこちらの方が感覚的にしっくりきます。未だであれば一聴をおすすめします。
81年録音に話を戻します。それまでは某評論家の影響もありハイティンクに関心はなかったのですが、偉そうな言い方ながらこの録音がハイティンクを見直すきっかけになったということで思い出深いです。録音状態がシューリヒト・VPO盤より良い事もあり、一時期ブル9はもっぱらこの演奏を聴いていました。音の取り方が自然で、既に消滅してしまったフィリップス・レーベルらしいという事も記憶に残る要因になっています。
投稿: ハーゲン | 2019年1月 7日 (月) 15時30分