ワーグナー 「パルシファル」と「千の風になって」
バイロイト放送の「パルシファル」を聴きながら、テレビをちょいとつけたら「千の風になって」が歌われていた。オペラ歌手のようだが、知らなかった。そして、この曲には惹かれてしまい、パルシファルの音を絞った。
「私のお墓の前で泣かないでください。私はそこにいません。・・・・・私は千の風になって空を吹き渡っていますから」
このインパクトある詩に誰しも聴き入ってしまうことだろう。
1995年にアイルランドでテロにより亡くなった青年が、「僕が死んだときに開封してください」と両親に託した手紙。
アメリカの同時多発テロの1周年追悼式では、父親を失った少女が朗読したという。
日本でも、JR尼崎事故の追悼式で歌われた。
悲しい死が日常的に満ち溢れている今の日本。残された人を思い、無駄な命の浪費は慎まなくてはならない。でも、死は確実にやってくる。歳を重ねると、親しい人を失うことをいやでも経験する。そんな空白感を埋めるかのような優しい歌だ。
大晦日は、ワーグナー最後の作品「パルシファル」。
シュルゲンジーフによる、とんでもないクソったれ演出も3年目。
ブーレーズから、アダム・フィッシャーに指揮が変わった。
一聴して前年と異なるのがそのテンポ。快速ブーレーズからすると、遅い。
というか、元に戻った。でも、へんてりんの演出を長い時間見せられるよりは、速くとっとと済ましてもらった方が、会場にいる人にはいいかも。
フィッシャー Ⅰ(102分) Ⅱ(67分) Ⅲ(75分)
ブーレーズ Ⅰ( 91分) Ⅱ(59分) Ⅲ(65分)
個性は弱まったが舞台なしの音楽だけなら、このフィッシャーの指揮はよい。
ためも気合も充分で、歌手をしっかりサポートする劇場型の指揮。
歌手で練られてきたのが、グルネマンツのホルとアンフォルタスのブールメスター。
ブリュンヒルデ級のヘルツィウスも余裕をもって、この奇女を歌っている。
でも、エーベルツのパルシファルは生硬な声で、やや不安定だった。
しかし、見たことはないものの、この演出はどうにかして欲しいもの。
早く退場を望みたい。3年目なのに、いまだに激しいブーイングの嵐。
キリストに見立てたパルシファル、アフリカの土人ちゃん、日本の神主、ユダヤ教の司祭、世界の宗教のオンパレード。
解説者の話では、2幕で槍を奪ったパルシファルはその槍でクリングゾルとクンドリーまでも刺してしまう。3幕の聖金曜日の場面では、アンフォルタスとクリングゾルも登場し、パルシファルに平伏す。死んだんじゃないの?最後の場面では、パルシファルまで死んじまうらしい。
ここまで、原作を捏造しちゃぁイカンだろう。こんなクソ演出を許すのも実験劇場なのだろうか? FM聴いて、年の変わり目にブツブツ言ってる私。
同じ死を考えるにしても、こんな「クソミソてんこ盛り演出」よりは、「千の風になって」の方が次元がはるかに上をいっている。
ともかく、年が明け、今年も音楽を聴きまくるぞっ、と決意したまで。
「ワーグナー」「英国音楽」「アバド」の三本柱に「オペラ」を加えて・・・・。
皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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コメント
yokochanさん、あけましておめでとうございます。
紅白歌合戦は、「千の風になって」と「長崎は今日も雨だった」を真剣に観てました。
「千の風になって」は当地伊予の西条市出身の秋川雅史が歌いました。地元では紅白出場で盛り上がっていました。紅白出場は西条からは二人目でした(一人目はトワ・エ・モアの芥川澄夫さん)。
あ、ワーグナーの話題でなくてすみません。
では、今年もよろしくお願いします。
投稿: mozart1889 | 2007年1月 2日 (火) 07時21分
あけましておめでとうございます。
昨年は本当にお世話になりました。
元日にBS-Aで2004年のアバド&ルツェルンの演奏を放映していました。
プロは、マーラー5番とベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番でした。
マーラーはDVDにもなっているようですが、ベートーヴェンはリリースされていないと思います。
このベートーヴェンのピアニストがポリーニだったのですが、これは本当に素晴らしかった。颯爽としたテンポでありながら、表情が実に美しいんです。
昨年はやはり体調が万全ではなかったのでしょうか・・・。
もう一度、絶好調のこのコンビを聴いてみたいです。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
投稿: romani | 2007年1月 2日 (火) 16時19分
あけましておめでとうございます。
なかなかすごいパルシファル、演出はギルバート=サリヴァンもビックリと言ったところでしょうか。
ワーグナー、休み中に聴いてみようかな。前に話が出たカイルベルト盤は意外と高くてまだ手に入れておりません。
指輪もパルシファルもはまるんですよねぇ。
さっき実はクレンプの激遅の第9を聴いたのですが大感動!!。最後は涙ものでしたがあの晩年のベームよりもさらになんだかわからない指揮でしかもコンマスの動きも少なく、なんであれだけの演奏ができるのかとっても不思議でありました。
あの調子でマーラーの7番などもやっていたのでしょうから全くもって謎です。
それにしてもテンポはどれもアンダンテ以上はない演奏でしたが恐ろしくスケールの大きい演奏でした。
どうも話がそれてすいません。
今年もよろしくお願い致します。
投稿: yurikamome122 | 2007年1月 3日 (水) 00時46分
あけましておめでとうございます。
今年も中味ずっしりのブログを楽しませていただきます。(^^♪
投稿: びーぐる | 2007年1月 3日 (水) 08時57分
明けまして、おめでとうございます。
本年も、どうぞよろしくお願いします。
昨年夏に、「リング」DVD鑑賞を挫折して以来、
ワーグナー氏に触れないようにしてます。(涙)
私も休みの間に、1曲くらい鑑賞しよう~。
投稿: みー太 | 2007年1月 3日 (水) 12時21分
あけましておめでとうございます。
カイルベルトのリングは全曲注文しました。
今まで買ったCDでは最高額の買い物です。
2月からはこのディスク群を聴くことになります。
今年もよろしくお願いします。
投稿: ピースうさぎ | 2007年1月 3日 (水) 17時59分
mozart1889さん、こんばんは、そして明けましておめでとうございます。
秋川雅史氏は、西条出身だったのですか。トワエモワの芥川氏も、mozart1889さんから、西条出身と教えていただきましたね。
良き音楽家を輩出するうららかな風土。いいですね。
酒も、魚もおいしいし。
今年もまた、訪問することもあるかと思います。
昨年以上によろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2007年1月 5日 (金) 00時12分
romaniさん、こんばんは。そして明けましておめでとうございます。
ポリーニ・アバドのベト4は、来日時のものと大幅に違う密度の濃さですね。今年も再放送されたんですね。元旦から良い演奏を聴かれうらやましい限りです。
今年も、いろんな場面でお世話になるかと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2007年1月 5日 (金) 00時19分
yurikamomeさん、こんばんは。そして明けましておめでとうございます。
とんでもないパルシファルですが、こわいもの見たさで映像化を期待したりしてます(笑)音楽は最高ですもんね。
クレンプの第九映像は、一度見てみたいと思ってました。
巨大な演奏のようですね。あの調子での、マーラーやワーグナーは、誰しも出来ない芸当だと思います。
今年も是非よろしくお願いいたします。
「ドイツレクイエム」で、念願の神奈フィル・デビューを予定しております。
投稿: yokochan | 2007年1月 5日 (金) 00時24分
びーぐるさん、こんばんは。明けましておめでとうございます。
今ほど、二宮より帰還しました。
貴ブログ拝見し、感激でした。今年のかの地は、やたら暖かく、箱根駅伝の観戦も気持ちが良かったです。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2007年1月 5日 (金) 00時27分
みー太さん、こんばんは。そして明けましておめでとうございます。
私のように毒され、もう体を売ってしまった人間としては、「ワーグナーに触れてはいけません」と、声を大にして言いたいところですが、「はまったらこんな素晴らし世界はない」、ということも実はささやいておきたいところです(笑)今年は是非こちらの世界においで下さい。心よりお待ちしております(また笑)
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2007年1月 5日 (金) 00時35分
ピースうさぎさん、こんばんは。そして、あけましておめでとうございます。「カイルベルトのリング」購入しましたか!やりましたね。
いいなぁ。是非、感想をお聞かせ下さい。
私は、あと数年してもう少し安くなったら買おうかと思ってますが、そこまでガマンができるかどうか?
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2007年1月 5日 (金) 00時42分