コルンゴルト 歌曲と室内楽の作品集 フォン・オッター&フォシュベリ
本日もぬくい一日だった。この冬は鍋物が食卓に上らない最小記録の年になるんじゃないか??
でも今年は、コルンゴルト記念の年。1897~1957、ということは、ほぼ10年おきに区切りの年が訪れる目出度い作曲家なんだ。
なのに、世間からはまだまだ評価されていない人。「やがて私の時代がやってくる」といみじくも言ったマーラーのように、交響曲をもっとたくさん書けばよかったのに。
ファンは微妙なもので、あんまり持てはやされるのも困るし、無視されるのも困る。
適度に聴かれて欲しい、そんなコルンゴルトなんだな。
本日は、一度聴いたきり棚に眠っていた2枚組のCDを取り出して、じっくりと聴いている。
作曲時期が近く、お互いの引用も見られる歌曲や室内楽曲を、メゾの「アンネ・ゾフィー・オッター」と「ベンクト・フォシュベリ」率いる室内アンサンブルが演奏した実に洒落たCDだ。
「4つの別れの歌」「ピアノ五重奏曲」
「道化の歌(シェイクスピア詩による原語)」「2曲の簡単な歌」
「4つのシェイクスピアの歌」「3つの歌」
「2つのヴァイオリン、チェロ、左手のピアノのための組曲」
「マリエッタの歌(死の街から)」
作曲時期として「死の街」の後あたりの22~3歳!から、40歳くらいまでの作品。
通しで聴いていて、歌曲があって、その旋律が引用された室内楽がきて、英語の原作歌曲が出て、ドイツ語の歌曲が続き、ちょっと変わった編成の傑作室内楽。トリは有名なアリアの室内ヴァージョンで、まとまりがよく統一された素晴らしいアルバム。
管弦楽作品や、オペラ作品と同じ土俵にある後期ロマン派風の熟成した濃厚かつ洒脱な音楽。
ことさらに良かったのが、マーラーを強く意識させる「別れの歌」。その旋律を用いた連綿たる抒情に満ちたアダージョ楽章をもつ「ピアノ五重奏」。
それぞれ独立した歌ながら清冽な感情とドイツ語の見事な響きが心地よい「3つの歌」。
そしてシンフォニックでかつ、ウィーンの退廃したムードを醸し出す「組曲」。
この組曲は以前とりあげた、「左手の協奏曲」と同じピアニスト・ヴィットゲンシュタインのために書かれ、かの「ロゼー四重奏団」によって初演されている。
シェイクスピアはともかくとして、コルンゴルトが選んだ詞も付随する音楽も月の雫のように怪しいまでに美しく、ロマンテック。
世は静かな眠りに入った 月明かりのなかで沈んでいる
天空の港で金色の澄んだ瞳が開く
すると神のヴァイオリンが静かに歌いだす・・
愛しい人、私は君を想う。
君の舟にのったような旅を続け、星のなかで君を探している
幸せな愛の光が この心のなかを照らす
私たちの魂の間に対話が生まれ
夢の中で抱擁を交わす。
(3つの歌~「世は静かな眠りに入った」 K・コバルト詩)
コルンゴルトの音楽は、熱い炎のような激しい情熱と、青白く輝く抒情のきらめきが交差する。マーラーの延長として捉え、じっくり聴いて欲しい。
ツェムリンスキーや新ウィーン楽派の一派として聴いてもいい。
後年ハリウッドが音楽の簡明さや、カッコよさを植え付け、これがまた独特の魅力となっている。
やたら首が長く見えるオッター(オとムの違いで大違いの女流二人)。彼女のニュートラルな歌声が、こうしたコルンゴルトにピッタリと寄り添っている。
今年ブレイクしなくても、また10年後がある。ナチスの侵攻によって失われた作品もあると聞くし、ともかく体系的なコルンゴルト全集の完成を切に望む次第。
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コメント
フォン・オッターのコルンゴルド歌曲集・・・食指がそそられるなぁ。私の手元に彼女の「リュートの歌(死の都)」の映像がありますが、実に落ち着きかつ叙情に溢れた歌唱です。また、キルヒシュラーガー目当てで買った「マーラー・コルンゴルド歌曲集」では「5つの歌(Op38)」がやはり叙情に満ち溢れた素敵な曲です。コルンゴルドの歌曲にはメゾが良く似合いますね。
投稿: YASU47 | 2007年2月 8日 (木) 21時30分
YASUさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
この2枚組はかなり堪能してます。歌曲と室内楽。
コルンゴルドの最良の分野のひとつかもしれません。
オッターの蒸留水的な歌唱はコルンゴルドにピッタリです。
キルヒシュラーガーの盤は、ジャケットがやたら印象的です。中身も聴くべく入手してみます(笑)
投稿: yokochan | 2007年2月 9日 (金) 00時24分