ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界から」 ロストロポーヴィチ指揮
初めてロストロさんを聴いたのは、ご多分にもれず、カラヤンとのドヴォルザーク。
68年当時、西側での活動は極めて限られたものであったろう。そんな一期一会の顔合わせの妙は、「リヒテル&カラヤン&ウィーン響(!)」のチャイコフスキーにも伺える。
当局の外貨稼ぎでもあったかもしれないが、「オイストラフ・リヒテル・ロストロポーヴィチ」のトリオは「まぼろし」的な3人として売り出された。
その極限が、3人とカラヤン、ベルリンフィルとのベートーヴェンの3重協奏曲の録音であろうか。
70年頃の録音だが、3巨頭はそろって頭髪がアレである。一番あるのが、一番早く去ったオイストラフ。みんなあの頭しか記憶にない。生まれたときからアレだったのだろうか?
そんなロストロポーヴィチは、70年頃からボリショイ劇場を中心に指揮活動に入り、同年、大阪万博で来日して、夫人の「ヴィジネフスカヤ」とともに「エウゲニ・オネーギン」を上演した。NHK放送をうっすらと覚えている。
このとき同行の指揮者が、音楽監督の「ロジェストヴェンスキー」と「シモノフ」だから凄い。
器楽奏者が、指揮者になると、表現の媒体手段が格段に拡がるためか、大柄で濃厚な音楽に傾きがちである。アッシュケナージやエッシェンバッハがそうであるように。
ロストロさんも例外でない。もちろん、かれのチェロの表現力の幅広さは普通じゃない。
今日のCDは、5年前のロストロ75歳を記念してのEMI録音のアニバーサリー。
1.バッハ 無伴奏チェロ組曲第3番 2.ハイドン チェロ協奏曲第1・2番(アカデミー)
3.ベートーヴェン 3重協奏曲 4.ドヴォルザーク チェロ協奏曲(ジュリーニ)
5.ドヴォルザーク 新世界(LPO) 6.ロシア管弦楽作品(パリ管)
7.ショスタコーヴィチ 交響曲第8番(ワシントンNSO)
こんなに盛りだくさんのCD4枚組が、4年前セールで2千円台で購入できた。
チェリストであり指揮者であったロストロさんの全貌がほぼ掴める。
欲をいえば、伴奏ピアニストとオペラ指揮者してのロストロも収納してほしかった。
この中のどれでもよかったのだけれど、連日の「あっさりマリナー」漬けへの反動から、最も濃い演奏「新世界」を選択した。
チャイコフスキー全集を作った朋友「ロンドンフィル」との相性もよく、普段ノーブルなLPOから濃密で懐かしいサウンドを思いきり引き出している。
これでもか、という思いのたけを含んだ歌に、ちょっと辟易としてしまうが、今日は追悼の気分も高まり充分OK。「ラルゴ」なんて泣きの世界。
普段聞くすっきりした「新世界」とは「別世界」の演奏に、新鮮さすら覚えてしまった。
この耳で、ドヴォルザークやバッハのチェロを聴いてみた。
その豊かな響きに、人の声を思わせるバリトンの音色に涙が出た。
そうか、そう来たか・・・・。
今更ながらに、ロストロさんの音楽表現の幅に感銘を受けた次第。
ついでに、LPOを指揮したジュリーニの巨視的な指揮にもビックリ。
カラヤンのDG盤以上かもしらん・・・(日本のOさんとボストン盤は??、同氏とのN響やウィーンでのライブも弾き飛ばしすぎで??)
そういえば、アルゲリッチとのショパンやシューマンもよかった。
ご冥福をお祈りします。
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コメント
おはようございます。
ベイスターズの快進撃、さぞやお喜びのこととお察し申し上げます。
僕のロストロ体験はシューベルトの「アルペジョーネ」でした。今思うと「重すぎるかな」とは思いますが、高校の時、シューベルトがリート作家にとどまらない、深遠な感情表現をする作曲家であることを初めて認識させてくれたのはロストロポーヴィチ(+ブリテン)でした。
さすがにそういった「アルペジョーネ」はもう聴けませんが、シュトラウスとブラームスのソナタの雄大な演奏は手放せないでいます。
それと、夫人をタイトルロールにすえた「ムツェンスク郡のマクベス夫人」。濃密で官能的な全曲。未だメルクマールといえるでしょう。
謹んで故人のご冥福をお祈りします。
[追記]
6月の新国「バラ」と「ファルスタッフ」、6月の立て込んだ仕事の日程に合わせて、別に1セットとってしまいました。すべてはジョナサン・ミラーの演出が見たいため。でも、その日程も危なかったりして・・・。
投稿: IANIS | 2007年5月 3日 (木) 08時38分
yokochanさん、こんにちは。
ロストロポーヴィチの「新世界」は懐かしいですね。LPOを振ってチャイコフスキーの全集やドヴォルザークの7・8・9番、他にはシェエラザード(これはパリ管でした)を録音していた頃の、精力的な演奏ですね。
僕はロストロポーヴィチの、チェロにしろ指揮にしろ、良い聴き手ではなかったんですが、この「新世界」はまさに「別世界」、卒倒しそうな遅さ、粘り、泣きでした。望郷の思い溢れる演奏でしたね。
投稿: mozart1889 | 2007年5月 3日 (木) 10時14分
IANISさん、こんにちは。
ベイスターズをお誉めいただきありがとうございます。
冒頭にそのことを書こうと思いましたが、追悼の意味もあった記事でしたので、見送りました。
しかし、永年のファンとしてはだまされません。いつもここまで。
あとは定位置が・・・(笑)
ショスタコーヴィチありましたね。それからブラームスのソナタも。
やはりロストロさんは偉大な音楽家でした。
6月の新国快進撃、すごいですね。私は薔薇1公演でガマンです・・・。
投稿: yokochan | 2007年5月 3日 (木) 13時15分
mozart1889さん、こんにちは。
懐かしいでしょう、この新世界。LPOといい録音を次々に録音していた頃ですね。こんな濃厚な新世界はめったに聞けるものではありませんです。
それにしても、ロメジュリとフランチェスカ、マンフレッドを含めたチャイコフスキー全集のCD化はどうなっているんでしょう?
投稿: yokochan | 2007年5月 3日 (木) 13時19分
有名なカラヤン・ドボコンやベートーベンの3重conはよく聴きましたが、バッハ無伴奏なんかは、いまいちよくわかりませんでした。いたって普通のクラシックファンです。ロストロポの指揮で、たぶんロイヤルフィルだったような気がする、東京文化会館でモーツァルト40番を聴いたことがあるだけです。残念ながらチェロは生で聴いたことがありません。小澤のTV放映されるビデオによく出てきますよね。
投稿: にけ | 2007年5月 3日 (木) 15時29分
にけさん、こんにちは。日本のオケには始終来てたのに、私は一度も聴くことなく終わってしまいました。
彼のチェロも同じです。
どうも指揮を始めてからのチェロ演奏は、かつての求心力が弱くなったような気がしますね。
投稿: yokochan | 2007年5月 4日 (金) 16時15分
こんばんは
私もドボコン以外に好きだったのがバッハの無伴奏
無骨な演奏とも思えますが、心に響きました。
トラバさせていただきます!
投稿: おぺきち | 2007年5月 4日 (金) 22時11分
おぺきちさん、こんばんは。
かつてはチェリストとしてばかりでしたが、私にとってのロストロさんは最近指揮者でした。ですが、この機会聴いたドヴォルザークやバッハには参りました。欲を言えば、バッハはもっと早く録音してくれてれば・・・、という思いです。
投稿: yokochan | 2007年5月 5日 (土) 00時15分