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2007年6月16日 (土)

バックス 交響詩集Ⅰ トムソン指揮

Imgp3301a 北陸、金沢の海に沈む夕日。
昨年、秋の作品。

日の出は壮大で、徐々に明るさが支配してゆく様が前向きな気持ちを鼓舞してくれる。

夕日は、すべてを曖昧な雰囲気に染めてゆく儚さがいい。刻々と闇に染まる準備が始まる。決別の寂しさに人は感傷的になることが多いであろう。
山に沈む夕日、海に沈む夕日、どちらも好き。
そして私の頭のなかでは、いろんな音楽がこだまする。
その音楽はたいていの場合、英国音楽だったりする。そう、ディーリアスやバックスが。

Bax_tone_poems1

アーノルド・バックス(1883~1953)は、裕福な家庭に育った、生粋のロンドンっ子だが、長じてケルト文明に目覚め、スコットランドやアイルランドの荒涼たる自然に大いに感じ入り、生涯愛してやまなかった。亡くなった時も、アイルランドにいた。

だからその音楽も、神秘的、伝説的なファンタジーあふれる作品ばかり。
中年以降に手を染めた7曲の交響曲は、いずれも難解だが、噛めばかむほど味のあるスルメチックな交響曲たちだ。
だが、若いうちから書いた、ピアノ作品やオーケストラ作品は、親しみやすい旋律も満載だし、表題性にも富んでいて、交響曲ほどとっつき難くはない。

ブライデン・トムソン」は、史上初めてバックスの交響曲を全曲録音し、その余白に数々のオーケストラ作品を挿入したほか、交響詩ばかりを収めたCDをシャンドスに2枚残した。
こちらはその第1集。本場アルスター管弦楽団とともに、悠揚たるバックスを聴かせてくれる。

    1.「11月の森」          2.「幸せな森」
    3.「ファンドの園」         4.「夏の音楽」
      ブライデン・トムソン指揮 アルスター管弦楽団(1982年録音)

11月の森」は、文字通り森にインスパイアされた音楽で、木々の狭間に佇み、森の風に触れるかのような気分の音楽。(1917年)

幸せな森」は、楽しく弾むようなリズムが支配する音楽。軽い足取りで踊る妖精か・・。
(1912年)

Morar_1  「ファンドの園」は、ハープの伴奏にのって、木管の神秘的な調べが始まる。この幻想的な雰囲気は誰しも心惹かれることだろう。
この曲は古い伝説によりながら、スコットランド地方のMorarの薄暮の情景に導かれて書かれた。
そして、中間部は妖精たちのラブソング、懐かしくも美しい旋律がとうとうと流れる。
シンフォニーでも中間部に必ずこうした旋律的な場面は現れる、バックスお得意のシーンだが、私が好きなのはこうしたメロディック部分が現れては消えるところ。素直に感激できる。この旋律がクライマックスを迎え、音楽は冒頭の幻想的な場面に戻り、今度はファンドの姿とともに、消え入るように静かに終わる。(1916年)

夏の音楽」は、ビーチャムに捧げられた。南イングランドの7月の物憂い夏の様子を描いた抒情的な曲で、ディーリアスのそれを思わせる。
ディーリアスが真昼の庭園だとすれば、バックスは夜の庭園に聴こえる。(1920年)

Bax_2

若い頃のバックス。ナイーブそうな男。たいそうもてたそうな。
歳とともに、頭部にややリーヴな要素が出たが、夢想するロマンテックな作曲家バックスは不倫の末、女流ピアニスト、コーエンを生涯愛し、共にした。何だかいいなぁ。

    

  

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コメント

こんばんは。
私はここ数年でバックスを知るようになりました。
交響曲も数曲聴きましたが、もう少しじっくりと聴いてみたい曲です。
割とすんなり聴けたのが弦楽四重奏曲とヴィオラソナタです。週に数回聴いています。

投稿: ピースうさぎ | 2007年6月16日 (土) 23時49分

ピースうさぎさん、こんにちは。
私は、ディーリアスの延長からバックスの世界に入り込みました。
バラエティ豊かな室内楽の世界は、私も大好きですが、ヴィオラソナタは、まだ聴いておりません。今度探してみますね。
何度も聴いて、そのよさがわかる作曲家だと思います。
どうもありがとうございました。

投稿: yokochan | 2007年6月17日 (日) 09時23分

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