スクリャービン 交響曲第5番「プロメテウス」 アルゲリッチ&アバド指揮
ひときわ目を引く、さるお方の白い顔。
夜の街に怪しく微笑む。
ふっふっふ・・・・・。
アバドの録音した交響曲シリーズ。
シェーンベルクらの時代と同じ頃、ロシアで神秘主義に傾倒した作曲家、「アレクサンドル・スクリャービン」(1872~1915)が、妄想にふけっていた。
「音と色」との融合についてである。
当時開発された、色光鍵盤を用いて交響曲を作曲した。
音とその音に対応した色が出る楽器。
なんじゃそれ?の世界だが、当時はさながら極彩色映画のように眩く見えたことだろうな。
それぞれの色には、意味が込められ、スクリャービンの紡ぎ出す、ちょいとエロく、神秘的かつ陶酔の音の世界と結びついた効果を上げたことであろう。
科学や芸術、人間の持つ、諸感覚の統一により「法悦」の境地に入り込むと思っていたらしい。
「プロメテウス」はギリシア神話上の神。
音から神の姿に似せて人間を作り、魂と命を与えた。そのうえに、火と技術を与えたことで、「ゼウス」の怒りに触れた。人間がゼウスら神の好敵手となったからである。
プロメテウスはコーカサスの岩場に縛られ、その肝臓をワシについばまれることとなる。
その肝臓は枯れることなく、プロメテウスは苦しんだ・・・・・。
それを後に救ったのが「ヘラクレス」である・・・・。(ジャケット解説より)
なんともまぁヘンテコな話であること。
この作品は交響曲というよりも、幻想曲のようで、ピアノが活躍するから協奏曲的イメージもある。
サブタイトルは「火の詩」。
アバドはベルリン・フィル時代、毎シーズンのテーマを決めてコンサートプログラムを考えた。
1992年は、「プロメテウス」がテーマ。
一夜に、ベートーヴェン、リスト、スクリャービン、ノーノの題名曲を取上げたコンサートのライブが今夜の1枚。
ピアノは朋友「アルゲリッチ」で、息のあった二人は、激情よりも精妙な神秘性をクローズアップしたスクリャービンを作りあげている。
スクリャービンの持つ一方の特徴、後期ロマン派風の特徴をむしろ引き出している。
DVDも出ていて、やはりこちらの方が面白い。
発色ピアノではなく、ホールの照明を駆使しての演奏。
フィルハーモニーザールが、青や緑、赤や黄色に変幻自在に変わってゆくのが妙に心くすぐられる。ときおりクローズアップされる、ライスター、ツェラー、シュレジンガーらの超名手たちも、同じ色に染まっている。
でも法悦の境地には私は達しなかったぞ?
こんな曲でも美しく、しなやかに聞かせてくれるアバドに感謝。
若き頃、ボストン響と録音した「法悦の詩」が懐かしい。同曲一の名演だと思っている。
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コメント
こんばんは。アバドの「プロメテウス」が収録されたCD。
スクリャービンは先に聴いたのがアバドですが、「交響曲全集」のアシュケナージになると恐るべき。重厚な低弦と金管が支えているところがロシア指揮者らしい。ピアノ独奏のヤブロンスキーは元々、ジャズ畑なのか、大人の夜の音楽と都会的。カクテルよりもウォッカ(飲めないけど)かな。
他にベートーヴェン、リスト、ノーノと古典から近代まで違った雰囲気が味わえます。やはり、アルゲリッチの独奏が決めてですね。
最後にリストはハイティンクも火花を散らすサウンド。アバドと並び、現役指揮者では持ち数が多い。
投稿: eyes_1975 | 2010年6月26日 (土) 21時30分