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2007年8月11日 (土)

ブリテン 戦争レクイエム ブリテン指揮

Odate 真夏の空に浮かぶ雲。
どんな夏にも、この空と時には入道雲があった。

あの忌まわしい戦争下においても、終戦の日を迎えた日においても・・・・。

Britten_war_requiem この時期に取り出す音楽は、「ヴェルディのレクイエム」と「ブリテンの戦争レクイエム」。
どちらも激しい「怒りの日」が展開されるが、ブリテンのレクイエムはその名の通り、単に死者を悼むミサ曲ではない。
第2次世界大戦の犠牲者を悼むとともに、不戦・平和の祈りを込めたレクイエム。

通常のラテン語による経典にまじえ、詩人オーウェの詩をテキストにしていて、その詩がまた戦争の悲惨さを描いていて切実なものだ。
オーウェンは25歳で戦死している。

スコアの冒頭には、オーウェンの言葉が記されているという。
私の主題は戦争であり。戦争の悲哀だ。そして、詩は悲しみの中にある。詩人のできるすべては、警告することだけなのだ。」

ソプラノ、テノール、バリトン、少年合唱を含む80分あまりの大作。
3人の独唱に人を得ないとならず、少年合唱もいかにもブリテンらしく重要な役割を担っている。イギリス音楽好き、ブリテン好き以外の人でも、オーウェンの歌詞を読みながらじっくり聴けば、この作品が強く発するメッセージ、「反戦と、とわに眠る犠牲者たちへの哀悼」がストレート心に響くはず。

冒頭の「レクイエム」は、映画オーメンの音楽みたいで、ちょっとミステリアス。
長大な「怒りの日」では、ブラスや打楽器が炸裂し熾烈だが、最後は涙にくれるようにして、安息を願い終止する。
しかし、最終曲のリベラ・メでのテノールとバリトンの敵兵同士の会話、おまけに片方は死んでいる・・・・、ここから、永遠の安息に導いていくエンディングは、何度聴いても胸に響く感動を味わうことになる。 

       S:ガリーナ・ヴィジネフスカヤ  T:ピーター・ピアーズ
       Br:ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ

      ベンジャミン・ブリテン指揮 ロンドン交響楽団/合唱団

戦時敵国から選ばれた名歌手たち。ブリテンの自演。カルショウ・ウィルキンソンのリングコンビによる名録音。
1963年録音以来これを凌駕する録音はなされなかったし、また超えてはならない演奏とも感じてた。
ケーゲル、ラトル、ショウ、ガーディナー、ヒコックス、ロストロポーヴィチ、マズアまで、いろいろと録音も増えてきた。時代が名曲と様々な解釈を受け入れるようになってきた。
私にとって忘れられないのは、テレビとFMで試聴した、「サヴァリッシュとN響」の名演奏。ヴァラディ、FD、シュライアーというドイツ版だったが、鬼気迫るF・ディースカウと冷静さをかなぐりすてたようなサヴァリッシュの熱演がすごかった。
あと、エアチェック音源の「ハイティンクとコンセルトヘボウ」も素晴らしい。

もう二度と、このような音楽を書かせるような機会を迎えることがあってはならない。

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コメント

お暑うございます。
ウォー・レクイエム、僕はラトルで持ってました。音響的には面白いけれど、なんかなぁ、胸に響く音楽なかったのがサイモンの限界なのかしら?新しい、痛切な演奏が望まれますが、この音楽が『共感』を以って響くとしたら、それだけ世界が危機に面しているという証しなのでしょうねぇ。NHKの「核の脅威」をみてましたが、新たな脅威が世界を侵し始めていることに震撼させられました。のほほんと音楽を聴いて幸福にひたっているのがいいのか悪いのか・・・。
ということをタズミン・リトルの「チャイコフスキアーナ」を聴きながら書き込みしておりました。あしからず、です。

投稿: IANIS | 2007年8月11日 (土) 17時16分

IANISさん、ホント、暑いですねえ。
冷房なしの部屋で、汗流しながら、戦争レクイエムしました。
やはりこの自演盤の痛切さを超える演奏はまだ現れないようです。
というか、演奏者も試聴者も、そういう音楽表現を好む時代ではなくなったんでしょうか?第三者的な演奏の時代なんでしょうか?

私は元来、のほほん主義ですので、どんなことがあっても音楽で幸せな気分を味わってしまいますよ(笑)
タスミン嬢はいいですね。今度BS2でやるみたいです。

投稿: yokochan | 2007年8月12日 (日) 09時08分

こんにちは。まず、ご自宅のリスニング・ルームに冷房がないのというのが夏ばて気味の私には信じられません(余計なお世話?)。それはさておき。先日の神奈川県民Hのライブで聴くまで、実家にあるケーゲル盤を(!)ほっぽり投げたままこの曲を聴いてませんでした。やっぱり何か心構えがないとこの曲は聴きませんね。聴いたあとどよ~んと気が重くなるのが目に見えて。はだしのゲン並みに。

投稿: naoping | 2007年8月12日 (日) 10時19分

naopingさん、こんにちは。
冷房はやっぱり、あれですよ、ご指摘の巡礼に備えた疑似体験なんですよ・・・・・。
この曲はおっしゃるとおり、聴くシチュエーションを選びますね。
夏のこの時期が最適の、考えさせる、満たされない音楽でありますね。

投稿: yokochan | 2007年8月13日 (月) 10時30分

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 終戦記念日の今日は、ブリテン作曲、戦争レクイエム。作曲者指揮、ロンドン交響楽団ほか。  レクイエムは、たとえばモーツァルトは「死」へのもの凄い怯えが、ヴェルディは恐怖が、フォーレは憧れをも感じたりするのです(これは、わがマエストロ、現田さんの受け売りであります)。  で、この曲は、R・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」のようにいたたまれない嘆きと哀しみに満ちているのであります。  それは、ラテン語の典礼文の合間に歌われる自身戦死したオーウェンの詩にあるとおりなのです。  宗教音楽としてで... [続きを読む]

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» ブリテンのブリテン指揮による「戦争レクイエム」 [音源雑記帖]
ブリテン:戦争レクイエム(カルショーの隠し取りによるリハーサルテイク付き)ガリ [続きを読む]

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